22/7 時計の時間   作:友だち

30 / 42
止まっていく思考と体

麗華「みんな! 落ち着いて! フリーキックで点を取られただけよ!」

 

絢香「集中しろ! 点取りに行くぞ!」

 

悠希「僕が決める!」

 

 そういうものの、ナナニジはボールを持つことで精一杯だ。相手のプレッシングが厳しく、前に進めない。桜も真紀はボールを後ろに戻すばかり。

 

 確かにボールは持っている。だが、バックラインで回しているだけだ。縦パスを通したところで意味がない。

 

ジュン「ううぅ……どうしたら……」

 

 麗華からボールが来る。

 

ジュン(るーちゃんなら確実に回せていたのに、私は全然回せない。きっと私の足元がないせいだ……)

 

 それでも自分は彼女の代わりに入ったのだ。

 

 月渚の怪我は全く重くない。ナナニジは4節は無く、これが終われば最終節に出ることは可能だという。

 

 この試合は、彼女のようにならなければならない。後輩より序列が低いのは、先輩として情けないがやるしかない。

 

 ジュンは鈴音に渡す。

 

 鈴音は折り返して桜へ。

 

桜(相手をかわさないと、前回は私が繋げなかった。私が不甲斐なかったから後半失速してしまったんだ……)

 

 桜は後ろから来ているボランチをみる。左前から来ている。ボールが動く方へ付いていくような動作を見せる。しかし、相手はそこに反応して足を伸ばす。なのでボールをちょんと浮かし、相手が出した足の上を通し突破。

 

 そして向こう側のみかみの方へ。

 

 みかみがボールを持つ。

 

 分析されているだろう。一節目の自分のゴールを。

 

 そう思い、横に入れるように見せかけて縦にいく。敵は逆を取られたもののついてくる。

 

悠希「みかみ!」

 

 悠希がニアに走る。後ろでは、ファーに走る真紀の姿も。みかみはクロスを上げる。しかしボールが相手の足に当たり、コーナーキック。

 

みかみ「ゆーちゃん、すまんなぁ」

 

悠希「いいさ。コーナーキックで獲ろう!」

 

 悠希はボールを広い、コーナーフラッグの元へ駆け寄ってくる。

 

 ゴール前にはセンターバックコンビの麗華と絢香も。ここでヘディングで合わせ、ゴールを決めたい。

 

悠希「やっぱり、相手は大きいな……」

 

 ゴール前にいる相手チームはみな背が高い選手たちだ。160センチ以上ありそうなのが5、6人。こちらで160以上あるのは、麗華(162)、みかみ(161)、絢香(160)のみ。

 

 ショートコーナーを使うのも一つの手かもしれないと思いつつ、それでもゴール前へ蹴り上げる。

 

 ボールを見て、当てに行こうとしたのは絢香だ。しかし、共に競った相手はフィジカル差で絢香を寄せ付けることなくヘディングでクリア。

 

絢香「やばっ!」

 

 クリアされたボールは相手に渡る。そこに巴が駆け寄り、プレッシャーをかける。激しくぶつかり、ボールを奪う。

 

 そのままシュート!

 

 ゴールキーパーの眼の前だ。

 

巴「いけませんわ……」

 

 さすがに、初戦のようなスーパーミドルシュートは撃てるようなものではない。

 

 だが、そこからだった。

 

 相手ゴールキーパーが、すぐさま味方の選手にボールを出す。

 

つぼみ「戸田っち遅らせて! カウンター!」

 

ジュン「オッケー!」

 

 ジュンは、上がって来る相手を見ながら、遅らせようとする。だが、ボールホルダーの横からもう一人、マイドールズの選手が走ってくる。

 

 パスを貰い、ジュンの横を過ぎ去っていく。

 

ジュン「まずい!」

 

 

 

 

凌駕「あーこれまずい」

 

育秀「戻っているのは、7番、3番だけ。空に対してマイドールズの選手は━━━━5人だ」

 

 

 

 

つぼみ「リーダー!」

 

麗華「任せて!」

 

 と言いつつも、対ジュンのように横に出されて、麗華の爆速プレスバックも意味をなさないものになってしまう。

 

 つぼみは、左サイドのほうでボールを持っている選手を見る。行ってとりたいのだが、取ることは出来ない。

 

 後ろの選手にすぐに出されてゴールキーパーと一対一になってしまう。

 

つぼみ「まずいよ……。これ……」

すみれ「こっちだ!」

 

 戻ってきたあっちのエースが、ボールを貰い二点目を決めようとしている。

 

 ボールホルダーは、そのままピッチの奥へ、つぼみは後ろをみる。

 

 先程フリーキックを決めた、相手の10番にへ、戻ってきた麗華がついている。なのでつぼみはいく。

 

 そろそろ行かなければ、シュートを撃たれる。

 

 心彩はゴールからあまり飛び出てはいない。シュートに反応するつもりだ。ならば、自分はクロスに対応する。そう思い、ボールを奪いに詰め寄る━━━━。

 

つぼみ「やば!」

 

 相手はクロスを上げた。それも、つぼみの股を通り━━━━。

 

麗華「やらせない!」

 

 そうしてボールが行き渡りそうな相手の10に、麗華は詰め寄る。スライディングをして足を出せば先にボールを触れる。

 

 しかし、すみれは麗華に対して体を入れ、スルー。

 

 麗華は触ることが出来ず、クロスは二人を方を抜ける。

 

 そしてもう一人の敵へ。ジュンが後ろにいるが、追いついていなかったのだろう。

 

 そうしてボールを貰った選手はシュート!

 

 心彩は全力で手を伸ばすが、シュートに対応するため左サイドによっていた。右サイドよりの場所からくるシュートを止めることなどできるはずがなく、ボールはネットを揺らした。

 

 0−2。

 

 

 

 

 

 

 

 

 攻めれどシュートを撃てず、攻められは撃たれる、そんな前半が終わった。

 

 リードされて前半を折り返したことは始めてだ。だが、点差以上にメンバーの心はぐちゃぐちゃにされている。

 

悠希「みんな! まだまだ諦めるな!」

 

みかみ「せやな。うちも点を取らなあかん」

 

桜「そうだよ。ディフェンダーのみんなも頑張って! ジュンちゃんも、きっとできるよ! ……………? ジュンちゃん?」

 

ジュン「うん……」

 

麗華「ジュン。辛いのはみんな同じよ。だからあと30分。頑張りましょう」

 

 すると、戦術ボードを持った紡久がナナニジに指示を与えようとしていた。

 

紡久「いいか。まだまだ全く出来てない。言っただろ? 相手は3トップだから、4バックで繋げって」

 

紡久「真紀。お前は無茶にドリブルをしすぎ。桜も、変に交わそうとして取られてばっかりだ。しっかりとスペースを見てつなげって」

 

桜「う、うん……」

 

真紀「そうね……」

 

紡久「あと巴。何回も何回も持ち場を離れてるぞ。サイドにボールがいった時、次を予測しろ」

 

巴「わかりましたわ……」

 

麗華「みんな行くわよ。絶対追いつきましょう!」

 

「「おお!」」

 

 そうしてナナニジはピッチに立つ。

 

真紀「はあ……」

 

みう「真紀ちゃん大丈夫?」

 

 みうが自分の後輩を心配する。すると、真紀は小さく囁く。

 

真紀「私は、私たちは、このサッカーをしてていいんでしょうか?」

 

 みうは一度黙る。

 

みう「分からない……。私は、サッカーのことは全く知らないから。それに、バルセロナのサッカーは、本来どういうものなのか見たことないから何も言えない。だけど………」

 

真紀「だけど…………?」

 

みう「真紀ちゃんは、紡久君が求めてることを、実際にやったり、やろうとすることに対して、すこしでも嬉しかったりするのかな?」

 

真紀「……………………どうでしょうか……?」

 

みう「ナナニジがこれからどうしていくか、きっとここに問題があるのかもしれない……」

 

 

 

 

 

 

 そうして始まった後半。

 

 相手はキックオフ後、一旦ボールを下げる。そして相手は蹴る。

 

愛守香「いきなり蹴ってきた!?」

 

紡久「こっちのコートでプレーするためだ」

 

 ボールは麗華、絢香の後ろの方へ。絢香が戻りながら回収をして心彩へ。これで相手がボールを持つことになるが、押し込まれる形になったわけだ。

 

 ナナニジはビルドアップを始めようとする。二点差ついているので、相手のフォワードはあまりプレッシャーに来ない。

 

 心彩は絢香へ。絢香は麗華へ。麗華はジュンへ。ジュンは麗華へ。

 

 こうしてDFラインで自由に回すことが出来るが、なかなかボールは前に行かない。

 

 こちらはボールを持っている。しかし、主導権を握っているのは、相手の方のように感じる。このゲームをは支配しているのは、自分たちではない。彼らだ。

 

 麗華は巴に渡し、巴は前の桜の方へ出す。しかし、ドン! と横から強い力が加わり、桜転倒。

 

真紀「ファール!」

 

 と、近くにいた味方が反応するが、笛はならない。なぜなら、普通のショルダーチャージをしたからだ。肩で、肩に当たっただけ。ファールだとは競技規則には書いていない。

 

 ボールを持った選手は、味方のセンターフォワードへボールを出す。その選手は、麗華と絢香の真ん中に位置していたので、センターバック二人は、どちらが当たりに行くか悩んでしまう。

 

絢香「やばっ!」

 

 相手は振り向く。そしてドリブルを始める。味方を待つこともあるのか、少し左斜めに。

 

絢香「こっちか!」

 

 絢香はこちら側にドリブルしてきた相手に一対一を止めようと対応に掛かる。しかしその瞬間、パッとかかとで、後ろの味方選手にパスを出した。

 

絢香「やばっ!」

 

 その選手は二人の真ん中を通り過ぎようとした。本来なら、麗華が、絢香の外へ流れながらの対応に反応し、二人の距離感を詰めなければならない。しかし、麗華はボールの方へ近寄るだけで、センターバック間の距離を意識してなかった。

 

 絢香は自分の横を通り過ぎようとしている選手から、ボールを取ろうと必死になって足を出す。滑ることになった。ここを抜け出されてしまってはほぼ決定機。だが━━━━。

 

 ボールは足に当たらない。

 

 絢香はやられた! と思ったのだが、そうではなかった。絢香の足が、相手の足に当たる。足が引っかかった相手は転倒。

 

 当然ファールだ。笛の音が鳴る。

 

 ピーーーー。

 

 おそらく、それも━━━━。

 

 審判は立ち上がった絢香に駆け寄り、ポケットから何かを出す。イエローカードだ。決定機には至らなかったものの、大きなチャンスを消したということで、警告が提示された。

 

絢香「ぐ…………」

 

麗華「ごめん絢香。前からくる敵に反応出来なかった……」

 

絢香「なら次はやってくれ」

 

 そうして下がっていく絢香。そこからは怒り、そしてどこからか諦めが感じられる。

 

 そうして相手のフリーキック。ゴールからド正面だが、直接蹴ってくることは恐らくないだろう。

 

心彩「壁二枚でお願いします。桜先輩と鈴音さんで」

 

桜「オッケー!」

 

鈴音「承知したわ」

 

 キッカーはもちろん向こうの10番。

 

「狙う?」

 

すみれ「いや、当てる」

 

 笛の音がなる。

 

 すみれは蹴る。その軌道はゴールには外れるものの、敵のもとへ。

 

「ふん!」

 

 相手はフリーキックにヘディングで合わせた。ナナニジは完全に対応を誤り、相手に殆ど自由にボールを触らせてしまった。

 

 心彩は手をのばす。しかし届かない━━━━! 

 

 カン!

 

 クロスバーだ。

 

すみれ「詰めろ!」

 

 マイドールズはバーに当たったボールに対して、詰め寄る。

 

麗華「しまった……」

 

つぼみ「やばっ……」

 

 ナナニジは詰め寄ることはできず、完全にキーパーと一対一になり、そのままゴールを決められた。

 

 0−3。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。