22/7 時計の時間   作:友だち

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虐殺

0−3。

 

 これでナナニジが勝つ可能性は殆どなくなってしまった。特に、デイフェンスラインの顔に活気は無い。

 

 ここ3試合で8失点。前がかりになって攻撃するサッカーをするため、その分失点はしやすくなる。しかし、やられすぎだ。

 

悠希「みんな! 顔を上げろ!」

 

 前線から悠希だけが声を出す。チームはボロボロなのに、それでもまだ、点を奪いに行く。

 

麗華「もう、悠希に頼むしか道はないんじゃ……」

 

 最終ラインの頭はチームのエースにボールを預け、点を取ってもらう。そのことで頭が一杯になった。

 

 ここでナナニジ側に交代があった。鈴音が入り、紫苑が入る。

 

 笛の音がなる。

 

 そして、パスを回しながら悠希に渡そうとする。しかし難しい。相手のハイプレスがそれを邪魔をする。それでも、彼女にボールを渡そうと、僅かな希望を持っていた。

 

 ゴールキーパー前まで侵入されても何とか取り戻し、取られてもボールをすぐに奪い返す。その瞬間こそが、飛口紡久が求めるサッカーに最も近づいた瞬間だった。

 

すみれ「やらせるかっ!」

 

 ボールを持ったジュンに詰め寄る。ジュンは必死にボールを出す。その直後ジュンにすみれの足が当たる。

 

ジュン「あがっ!」

 

 スパイクの下がジュンの足の甲に当たる。

 

 それでも、悠希にボールが渡る。

 

悠希「みかみ!」

 

 悠希は逆サイドのみかみに渡す。

 

 みかみは前を走る悠希に、ボールを渡す。

 

 悠希は前へドリブルを始める。左サイドから中央よりへドリブルをする。相手ボランチが来るが、悠希は右足のアウトサイドで交わす。

 

 そして━━振りかぶる。

 

(撃つつもりか……)

 

 彼女の位置は、ペナルティエリアよりも、まだまだ外だ。

 

 インサイドハーフが戻って、悠希のシュートコースを消そうとする。滑る。しかしシュートを許してしまった。

 

 ドン!

 

 ボールはそのままキーパーから逃げるようにボールが動き、ゴールの右上隅に突き刺さった。

 

 1−3。

 

悠希「まだあるぞ!」

 

 ゴールを確認した悠希はゴールの方へ走り、ボールを取りに行く。

 

 まだ勝負は諦めきれない。残り10分。

 

 すると、マイドールズ側にも交代が生まれた。彼らは、さっき一枚使っていて、残り二枚。そして彼らは二枚使うことになった。

 

 それはボランチと、右サイドバックだ。

 

 そして、ナナニジはみかみに変えて紅葉を投入する。

 

 もう一度キックオフ。

 

 ナナニジはハイプレスをかけていく。相手のディフェンダーに向かって全力で、プレッシャーをかけていく。体力はきついが、前線三人が元気なので前からかけに行ける。

 

 しかし。ボランチの選手があることを支持されていた。彼女の名は小澤美姫(みき)。

 

美姫(やっぱりナナニジは、中盤と前線の間延びがすごい。前線はハイプレスをかけられているけれども、中盤がそれに連動していない)

 

 ボールをもらう。当然そこに、桜も真紀も来ていない。そして右サイドを走る、もう一人同じ時にしてピッチに立った選手へボールを渡す。

 

 彼女の名は、倉敷愛乃(よしの)。右のウイングは中に入っている。彼女のためのスペースを開ける。

 

 そこめがけて走り出す。

 

 彼女を止めるのは、左サイドバックのつぼみ。

 

つぼみ「はっや!」

 

 一瞬でものすごいトップスピードになり、つぼみをすぐに抜き去ろうとする。走るスピードだけなら、悠希より速いだろう。

 

 つぼみが驚いたときにはすでに、もうほぼ正面にそこに手と体を入れて対応しようとした。

 

 その時。

 

つぼみ「うっ…………」

 

 つぼみの足が止まった。そのまま愛乃は前に出る。

 

絢香「やべえ」

 

 絢香は追いつきそうにないものの、全力で抜け出した彼女の元へ走る。しかし、愛乃はそのままシュートをした。

 

 しかし、ボールは心彩が弾く。

 

 マイドールズのコーナーキック。

 

 ここで審判は笛を鳴らす。さっき倒れたつぼみの方へ駆け寄る。

 

紅葉「つぼみ先輩。大丈夫ですか?」

 

つぼみ「足を……つったっぽい……」

 

紅葉「わ、わかりました」

 

 そうして、紅葉は両手で、つぼみの右足のつま先をつかんで、前へゆっくりと押し倒す。

 

つぼみ「ぐう……」

 

 幾度もなくカウンターをさせられ、その度に全力疾走で戻ってきたつぼみ。足には乳酸菌が溜まりに溜まって、つってしまったというわけだ。

 

 というわけで、ナナニジのつぼみに変えて、晴菜を出すことにした。残り8分。まだ二点差。

 

晴菜(あれだけ頑張ってたつぼみ先輩の代わりを、私が……)

 

 愛守香がつぼみをピッチの外に出す。

 

愛守香「はい。水」

 

つぼみ「ありがとう」

 

 愛守香はもう一度、つぼみの縮まった筋肉を伸ばす。

 

つぼみ「ねえ愛守香っち。水に何か塩とか入れた?」

 

愛守香「いや? そこの水道水」

 

つぼみ「なーんか。変な味するんだよね〜」

 

 二人がそんな風に話しているうちに、マイドールズのコーナーキックだ。

 

 すみれが蹴る。そのボールを心彩が弾く。しかし、弾いたボールを相手に拾われる。相手がゴール前へ放り上げる。

 

 そして、撃たれて━━━━失点。

 

 1−4。

 

つぼみ「嘘━━━━」

 

 ピッチの横で見た、勝負を決める相手の4点目。残り5分。

 

 アディショナルタイムを含めても、負けから逃げられる時間ではない。ナナブンノニジュウニのチームの目は、絶望の色で染まっていた。

 

 

 

凌駕「決まったな」

 

育秀「ああ。残り五分ちょっとで、ナナニジに3点は無理だろう」

 

育秀「凌駕。もう出るのか?」

 

凌駕「ああ。ナナニジの女のコたちが可愛そすぎる」

 

 そう言って凌駕はその場を去っていった。

 

 

 紫苑にボールが渡る。足元の技術は強いため、抜きにかかる。しかし、取られる。さすがに2、3人が一勢に取りにかかったのならば、さすがの紫苑でも抜けはしない。

 

 そして美姫に渡り、そのまま、愛乃の元へ渡る。

 

晴菜「止める……!」

 

 そう言って飛び出ていたものの、彼女の足の速さに対応することは出来なかった。そのままぶち抜かれる。

 

 絢香が次にプレッシャーにいくが、足の速さ敵に追いつくことはできない。そもそも、抜かれた晴菜の尻ぬぐいをしているような状況なため━━━━。

 

 クロスをマイナスにあげられる。そのまま敵のインサイドハーフが折り返しシュート。

 

 1−5。

 

 

 

 ほぼこれがラストプレーだろう。

 

 悠希がボールを持って攻めに行く。だが、紫苑のように囲まれる。

 

 それでも何とか抜かそうとして、シュートを撃つがキーパーに弾かれる。

 

 サポートに来てくれる味方も、こぼれ玉に反応する味方もいない。

 

 ロングボールが、ジュンの上をすり抜け、今度はすみれに渡る。

 

麗華「私が行く」

 

 ジュンは、今度は麗華のスペースを埋めるように動くことができた。麗華の横後ろをつき、ジュンにかかってくる敵の左サイドバックの動きにびっくりする。

 

 ジュンが対応に当たる。後ずさりながら、ペナルティエリアの中へ。

 

 またぐ、またぐ、またぐ。シザースを繰り返し、ナナニジの右サイドバックを抜かそうとする。

 

 そして。

 

 ガッ。

 

 ジュンが伸ばした足に引っかかり転倒。もちろんファール。それも、ペナルティエリア内なのでPKだ。

 

 イエローカードがジュンに提示された。

 

ジュン「ごめん。ごめん…………」

 

麗華「いいの……。ジュンは良く頑張ってるわ……」

 

 散々自分の背後を取られ、そこから攻め続けられた。彼女の心はズタズタになっている。今にも涙が溢れそうだ。

 

すみれ「私が蹴る」

 

 ペナルティスポットに、ボールを置く。笛の音が鳴る。

 

 そして当然のように決めた。心彩は逆をつかれ、止めるかどうかのところではない。

 

 これで1−6。

 

 ここで、試合終了の笛。ナナニジの攻撃も守備も心も破壊し、紡久のサッカーを完全に否定するかのような、絶望的な敗戦だった。

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