アイドルワールドカップの試合は、全試合ライブ配信されている。
初戦を除くすべての試合で、監督たちは敵チームの映像を見て、分析をすることになる。それも、アーカイブも残るので徹底的に。
都「うちらに引き分けたサンジュ、このまま0−0引き分けるんか?」
ジュン「このままやったらどうなるの?」
ナナニジは自粛中、第4節の試合を見る。サンジュが、ナナニジが5節に戦う相手と戦っているのを配信で画面の共有をしながら見ていた。
あかね「私たち勝ち点は4。このままいけばサンジュは2。次の試合、私たちが勝つか、サンジュが勝ち点を落としたら無条件で私たちが2位通過です」
都「なんや、なんか数日前はシリアスの頂点見たいな雰囲気流れとったけど、そこまで悲観する順位やないんやなって。だから相手チームにはあと試合終了までの数分間━━━━」
みう「あ、決めた」
都「何ーーーーーーーー!」
あかね「と、なればサンジュとうちの勝ち点は4で並びます。もし次の試合お互いに試合に勝つようならば、得失点差の勝負になるでしょう」
桜「つまり、どういうことなのかな?」
あかね「もしこのままサンジュが1−0で勝ち、次の最終節で勝つとします。サンジュが勝ったときの点差よりも多くの点差で勝たなければなりません」
そう話していると……。
みかみ「終わったで。次はゆーちゃんや」
悠希「僕か。じゃあ紡久のところに行ってくるよ!」
そう言って悠希はズームを抜けていった。
ジュン「みかみんはどんなこと話したの?」
みかみ「オフ・ザ・ボールについて15分くらい言われたわ」
ジュン「15分? そんなにしか経ってないの!?」
絢香「1番のAIが5分で終わった分、4番もあたしまでさっさと終わるな、なんて思ってたけど、ま、AIが優秀なだけだったな。そこから子どもと風紀委員で1時間かかったもんな」
麗華「そうね……。あれだけ言われるとは思わなかったわ……」
麗華「そういえば、みんなはもう症状大丈夫なの?」
月渚「熱はもう下がったぞ」
つぼみ「つぼも! お水も変な味しなくなったよ!」
みう「私は、殆ど大丈夫」
麗華「とはいえ、感染者はしばらく試合に出れないのよね…………」
紡久は、ナナブンノニジュウニと、その後輩たち22人と面談をして、それぞれのプレーについて互いに話し合った。
紡久「おっ来たか」
悠希「ああ。とりあえず紡久に言われたようにこれ持ってきたぞ」
悠希は、紡久にあるものを持ってきた。それは、中学の時の全国大会の映像だ。鹿児島の実家から送られて来た、仲間たちとの記録。
悠希「見てくれ! この決勝点! あのままPK戦かなとみんなが思っていた瞬間、裏に抜け出した僕が決めたんだ!」
紡久「凄いスルーパスだな。よく見えてたんだ」
悠希「そうだろ! 翔太って言うんだけどな、他にもものすごいパスをどんどん出してくれたんだ! もちろん二人で話し合ったぞ。『俺はここに必ず出すから、悠希はここに抜けてくれ』って」
紡久「めちゃくちゃ上手いな。年齢は悠希と同じだろ? どこかJの下部組織にいるのか?」
悠希「いやあ。実は病気になって……」
紡久「ごめん。嫌なこと言わせちゃったな」
悠希「いいさ。病気を治す手術の勇気付けのために、僕は国立を目指してるんだ。こんなことで、怖気づいたら駄目だし、そもそもサッカーってそういうもんじゃないか! 見ているみんなを楽しませなきゃな!」
紡久「そうだな……」
悠希「じゃあとりあえず、僕のプレーについて話そうか。 紡久はどう思ったんだ?」
紡久「それに関して何だが……。実は悠希にはもっとプレーに関わってほしいんだ」
悠希「と、なると……」
紡久「もちろん悠希の役割は、まずゴールを決めるストライカーだ。だけど、試合中隙を見て少し降りてくるようにもなって欲しい」
悠希「ええ! 確かにこれまでも紡久にここは少し落としてボールに絡めとか言われてたけど……いきなりプレースタイルを変えるなんてそんな」
紡久「お前はプレー中に無駄が多すぎる。意味のないところでゴールキーパーやディフェンダーにプレッシャーかけに行くし、そんなとこ出せないだろってところに裏抜けしだすしな。これは翔太ってやつがすごすぎただけ説あるけど」
悠希「じゃあどうすれば……」
紡久「もっと試合中に考えるようになれ。ここは撃つべきか、パスすべきか、ドリブルすべきか。そんな判断がもっとできるようになれば、お前のポテンシャルをもっと引き出せる。お前はただのストライカーだけで終わるようなやつじゃ無いからな」
悠希「それは、翔太見たいなパスを出せるようになるってことか?」
紡久「そうだ。国立国立って言ってるけど、お前はそこで日本一になるだけじゃあ物足りない力があると見ている。女子チームといえど、ヨーロッパのビッククラブに言って活躍できる未来があるんだ」
悠希「じゃあ、いつか日本一じゃなくて世界一になれたりするのか?」
紡久「ああ。2011年になでしこジャパンがワールドカップ獲っただろ。あの時の澤穂希以上の存在になれる可能性をお前は持ってるんだ。どうだ。やって見ないか?」
悠希「…………僕は一度サッカーをやめて、アイドルになったんだ。もちろんそれからもボールは蹴り続けたりはしたけど、そこからはナナニジのみんなで国立に立つことで夢中だったんだ。でも今こうやって卒業が決まってこれから先どうしようかって考えてたんだけど、もう一度サッカーを全力でやってもいいのかなって」
紡久「いいんじゃないか。て言うかサッカー選手からアイドルって、何があったんだよ?」
悠希「まあ、色々あってだな……」
悠希(壁のことなんて言えないよなあ)
コロナウィルス感染者の接触者になったメンバーの自宅待機期間が終わった。オンラインで体力維持をしたりと大変だったが、外で練習できるのはここまで嬉しいのだと再確認できた。
桜「やっと外に出れるよ〜」
絢香「私は原稿進めたから良かった部分もあったんだけどな……」
悠希「おりゃああああああああああ」
ジュン「どりゃああああああああああ」
絢香「子ども二人は外に出たくて仕方なかっただろうな」
都「それにしても、自粛中に、12月末のライブのセトリを一気に送ってきて、『振り付け思い出しとき』なんて言われてびっくりしたわ」
ニコル「ま、それだけメンバーの感染は運営側にとっても予想外だったということね」
絢香「それにしても、基本ずっと家に引きこもってる私が罹らず、フィジカルお化けの風紀委員が罹るなんて、いつ誰が感染するかなんてわかったもんじゃねえなあ」
あかね「全くです。最近はコロナもだいぶ落ち着いて、その機にこの大会を開催しようとしたという意図も見えますしね」
桜「早く終息してほしいよね。つぼみちゃんとか、ロケに全然行けないって嘆いてたし、それ以上に誕生日企画が無くなったことに対して怒ってたけど、なかなか行けないまま卒業って可愛そうだよ」
あかね「ですが、まだまだ終息にはほど遠いでしょう。いつまたデルタ株のような変異株が出てくるかわかりませんしね」
紡久「よし、みんな来てくれ!」
向こうで自分たちの監督が呼んでいる。そこに集まる。
絢香「うわ。くま大丈夫か?」
紡久の目の下が青黒くなっている。それに気づいたのは、漫画の執筆活動で良く徹夜をする絢香だからこそ気づいたのだろう。
紡久「ああ、大丈夫だ。後輩たちのプレーについて見てたからな。さらに週末のバルセロナのの試合を見てたし寝れてないだけだ。練習終わったら二度寝するし、今現在深夜テンションで眠くないから安心しろ」
巴「いやそれ安心できるくらいのくまじゃないと思いますけど。何日徹夜してるのですか」
かすか「私たちのために、一生懸命……」
紡久「いや、そういうわけじゃあ……。ってそこ何で泣いてる?」
京子「紡久監督! 私感動いたしました〜〜〜〜! 一生付いていきます〜〜〜!」
紡久「やめろ! 泣きついて来んな! どっちかが感染でもしたらどうする!」
陽夏莉「確かに濃厚接触は駄目ですが、このまま二人が濃厚な関係になることに興味あります。このままディープにいってしまいましょう!」
晴菜「え? このままディープに? まさかその後━━━━」
ニコル「八代さんやめなさい! アイドルが恋愛ってやっちゃだめよ! って飛口さんも監督ならこういう選手のマネージメントも仕事でしょ」
紡久「限界があるわ! こんなやべえやつしかいないなんて思って無かったわ!」
心彩「それにしても、やっぱり晴菜ちゃんってむっつりだにゃー」
紫苑「やべえやつって、すみませんすみません。私なんかこんなとこにいちゃ駄目ですよね……」
桜「そ、そんなこと無いよ。きっと個性的ならそれだけチームの選択肢が増えるってことだよ」
鈴音「マスターとサーヴァント。二者の盟友の契は、私たちを彼方へと導くのかしら……」
絢香「と、いうわけで親父、おもしろを何とかしてくれないか?」
紡久「お、親父?」
絢香「そ。頑固だから親父」
紡久「喜んでいいのか分からないあだ名だな……」
そうして互いに練習を重ねた。残り一節。ナナニジはサンジュと勝ち点が並び、得失点差が1離されている。となれば、彼らが勝つのであれば、ナナニジはさらに点差をつけて勝たなければならないのだ。
ナナニジを決勝トーナメントへと導く。これは、紡久の使命なのだ。