試合に出れないのは、まず怪我をしたあかね。月渚はすでに回復しているが、コロナウィルスに感染して、発熱もあり、試合に出れない状況だ。また、感染しているのが、月渚の他に、5人。症状があるのが、みう、つぼみ。無症状なのが麗華、みかみ、真紀の三人だ。
合計7人の選手が試合に出ることは出来ない。つまり、スターティングメンバーが11人としたら、ベンチ要員はわずか4人となる。
なお、この話の時系列は11月末。8Thシングル《覚醒》が発売された頃。
しかし、もう少しの未来。FCバルセロナのトップチームもコロナと怪我によって、出場出来ない選手が計18人となったこともあった。その時、監督のチャビは、下部組織から一時的にメンバーを補強した。
もちろんナナニジはそんなことは出来ない。壁に選ばれた11人。二人三脚プロジェクトにおいて30人の中から選ばれた後輩11人。計22人。これ以上増えることは無い。
試合に出れるのは15人。彼女たちは自分たちがさらに高いところへ行けるように全力を尽くす。
京子「わ、私が麗華先輩の変わりなんて監督も見る目があるようね」
絢香「だからといって、いつもどおり変にテンパって盛大にパスミスして失点したら命取りだからな」
京子「それもそうですよね。このひじょ〜うに重大な役割を任された今、私が大会屈指のセンターバックへの昇華するチャンスなのです。あ、何だか胸が痛くなってきました」
絢香「全く、プレッシャーの管理はしっかりしろよ。ていうか。何で私がキャプテンなんだよ。そういう柄じゃ無いんだけどな。どういうことだよ、親父!」
紡久「麗華と同じポジションだからなのが大きいな。それと、俺に変なあだ名をつけたから、っていったらどうする?」
絢香「はいはい。わかりました。いくぞ、おもしろ」
京子「了解しましたあああ!」
そう言って、今日のセンターバック二人はベンチを離れていく。
都「さぁ、うちはようやく試合に出れるわ。これまでずっとベンチにおったから暇やったわ」
巴「都先輩と同じポジションでプレー出来て嬉しいですわ。先輩が気持ちよくプレーできるように誠心誠意やって参りますわ」
都「ええんや。ええんや。そもそも最初出てたのは巴やろ。このポジションにおいては、巴は二枚目。うちは精々三枚目や。頑張るのはうちの方やって」
巴「そうでしょうか……」
紡久「さあお前ら、俺の予想じゃ最低三点は必要になる。だからお前たち前線二人が点を取ってくれなきゃ困るからな。悠希、そしてニコル」
ニコル「ええ。分かってるわ」
桜「みんな行こうよ!」
心彩「あかね先輩……」
向こうのスタンドの方で、先輩がこっちを見ている。
心彩は気を引き締める。
晴菜「このままずっと私なのかな……」
紅葉「分かりません。それに私みかみ先輩の頬をもみもみしてないので調子が……」
晴菜「それはあまり関係ないかもだけど、先輩の凄さが分かったよ。練習を通しても、試合に出ても……」
紅葉「そうですよね。そもそも隔離期間が長いんですよ! 例えこの先出れたとしても体力的にフル出場は厳しいかもですし……」
晴菜「紅葉ちゃん。政府への文句は色々とセンシティブだから今はやめたほうが……」
ジュン「大丈夫だよ。二人とも」
紅葉「ジュン先輩?」
ジュン「私なんて、序列はるーちゃんのほうが上だし、いざ出てみるとなると狙われて穴になるし。二人とも気楽にやってもいいんじゃない?」
晴菜「別にそんなに卑屈にならなくても……」
ジュン「大丈夫。分かったんだ。私はるーちゃんみたいになれないって。だから、私は私なりに頑張るんだ。それで、試合後にみんなで一杯笑お!」
感染したのは偶然か必然か、主力が多かった。だからこそ、この最終節はベンチにいたメンバーの多くが試合に望むことになる。
例え自分と、彼女がサッカーにおいてどうであろうと関係ない。自分たちはナナブンノニジュウニというチームの一員だ。
今日は真っ赤なユニフォーム。暗めの色が多いナナニジの制服の中でも極めて特殊な『何もしてあげられない』の衣装がモチーフとなっている。そして、胸元にはナナブンノニジュウニというマークがついている。このエンブレムがある限り、彼女たちはナナニジのために全力を尽くさなければならないのだ。