紫苑がPKを外したこともあり、未だに1−1だ。あれ以降まるっきり紫苑のドリブルは息を消した。
前半は残り1分ほど。
紡久「紫苑降りて貰え!」
紡久から指示が降りるが、遅い。
紡久「ボールが渡ればいいんだが、渡らないんだよなぁ」
相手ディフェンダーは紫苑のパスコースを消すようにしている。しかし紫苑はそのことに気づいておらず、サイドに突っ立ったままだ。更にいうと、すでに疲れている。
一方、もう一人のWGはどうか。
紡久はみかみに何を求めたか。彼女はナナニジ陣営の中で足元はある方だ。
ちなみに、悠希を除き、ボールをどれだけ上手く動かせるかでは以下の通り。
⬆ある
桜
絢香
みう
都
みかみ
あかね
ジュン
つぼみ
麗華
ニコル
⬇ない
となっている。もちろんこれが全てではない。足元の技術はどれだけボールを上手く使えるだけではないわけだ。
このようにみかみはある方だが、ある、と言い切ることは出来ない。更に背が高いが、体の芯は細い。空中戦での強さはあまり無い。
だがみかみには大きな武器がある。紫苑に比べてすごい技術はないものの、崩しという場面では大きく力を発揮する。
そしてもう一つ。みかみには大きな武器がある。
桜がボールを麗華から受ける。横に入っていた巴に渡す。巴が抜ける。ボランチ間をうまく向ける。
悠希「こっちだ!」
悠希が抜け出す。走る。走る。プレスバックに負けずにみかみにボールを出す。左サイドではつぼみが上がる。みかみの外側ではなく、内側。
ボールを持っている選手の外側を回ること、今回のように内側を回ることを、それぞれオーバーラップ、インナーラップという。
しかしそこに出さない。横にいた真紀に渡す。そこでワンクッションを入れて、ようやくつぼみへ。センターバックがついてきている。
つぼみは一瞬走るスピードを遅くしようとして、再び加速。こうして抜けようとするができなかった。相手がボールに足を伸ばし、当たり、ボールはタッチラインへ。
すぐにボールへ走り、スローインから再開しようとする。サポートに来た巴にパスを出す。そして更に右前にいた真紀に出す。敵が二人にプレッシャーをかけにいく。そしてその瞬間、みかみが走り出す。真紀はつぼみに渡し、つぼみは縦へ走るみかみへスルーパス。
敵は足を出すが、股を通る。そしてみかみはサイド突破を図ろうとするができなかった。
だが相手のセンターバックがついてくる。みかみはゴールに対って整体し、目の前のディフェンダーと一対一。みかみは右アウトでボールをいったん戻して、クロス。走り込んできた悠希に当てようとしたが、並行して走るもう一人のセンターバックがブロック。ボールはみかみの頭上を超えていく。
つぼみ「みかみっちOK!」
つぼみがそのボールにいち早く反応する。胸でトラップしようとするも、うまくタッチできずに前へ。みかみはいったんペナルティエリアの外へ出ようとしていたので、さっきみかみからボールを取ろうとした相手がこっちへ詰めてくる。そこを何とか足を出して右足のアウトサイドでみかみへ。
センターバックが開けたスペースを埋めてカバーリングしようとしていたサイドバックがこちらに来る。向こうでは悠希たちがいる。押しこんでいるが、相手に引かれている。これでは相手ディフェンダーを崩すのは難しい。
そう判断したらもう迷わなかった。
みかみは得意のアウトサイドで内側へ。相手もそれについてくる。しかしそこでみかみは、シュートを撃ったのだ。
一瞬の出来事だった。ゴールから外れると思っていたボールは回転がかかっていて、カーブした。それをゴールキーパーが認識したときはすでに遅かった。ゴールの左隅に吸い込まれていた。