生まれ変わりを経験するとは思ってもいなかったが、俺が転生したこの世界は、ヒロアカ世界の遥か未来の世界であるようだ。
車は空を飛んでいるし、宇宙にも気軽に行けるようになっている未来のヒロアカ世界。
人類の全てが個性持ちになっていて、強力な個性だけしか存在しないこの世界にも、いまだにヒーローとヴィランは存在していたが、人が人である限り、犯罪というものは消えないのだろうな。
個性特異点という終末論じみたものが遥か昔には存在していたヒロアカ世界だが、ある意味では、それは正しかったのかもしれない。
代を増すごとに、交ざり合い強力になっていく個性というものは確かに存在していて、個性であらゆるものを造り出せる今生の俺の先祖が、生物以外なら様々な物体を創造可能な「創造」という個性持ちなヒーロー「クリエイティ」だったことは今も語り継がれている為、俺が八百万百の血を受け継いでいるのは確かだろう。
まさか現代日本から、ヒロアカ世界の遥か未来に生まれ変わるとは思ってはいなかったが、今生の俺の名字が轟であったので、八百万百は轟焦凍と結婚したのかもしれないな。
轟焦凍に関しての情報は「ショート」というヒーロー名で「半冷半燃」の個性持ちだったとは残っていたが、それ以外の情報は残っていない。
ヒロアカについて知っている転生者な俺だけが、轟焦凍がどんな奴だったのか知っているということになりそうだ。
今生の俺の名は、轟全造というもので、その名の通りに、全てのものを創造可能な個性「全創造」というとんでもない個性であり、めちゃくちゃヴィランに狙われる個性であった。
ヴィランにつけ狙われること、実に1469回。
暇なのかテメーらと言いたくなる位、ヴィランに襲撃された俺は、毎回毎回ヴィランを返り討ちにするのも面倒になる。
そんな訳で、この世界にうんざりした俺は、ランダムに別世界に繋がるが、1回使うと壊れて消えるように設定した扉を「全創造」で作成し、扉の向こう側にある別世界へと移動することにした。
個性の使用に、脂質ではなくエネルギーを使用することになる俺は、体内に「全創造」で造り出した永久エネルギー炉を創造しているので、俺自身のエネルギーが枯渇することはない。
相応のエネルギーが必要だが、イメージしたものを自由に造り出せる「全創造」は、構造や素材を知らなければ造り出せない「創造」よりも、融通が効く個性ではあるな。
だからこそヴィランに狙われることになったんだろうが、いつまでもヴィランに付き合ってやる必要はないだろう。
ランダムに別世界に繋がる扉を開いて、足を踏み入れていき、さらば遥か未来のヒロアカ世界、ついでにヴィランのクズ共、なんて思いながら別世界に移動した俺。
閉じられた扉は自壊して完全に消滅し、痕跡も残ることはなかった。
さて、この世界はどんな世界なんだろうな、と考えながら歩いていると村を発見した俺は、とりあえずドラえもんの秘密道具な「ほんやくコンニャク」を「全創造」で創造して食べておき、どんな世界でも言葉が通じるようにしておく。
フィクションの道具であろうとイメージできるなら創造可能な「全創造」は、やはりとんでもない個性で間違いない。
とりあえず流れの商人を装う為に、食料品なども「全創造」で創造し、様々な食料品を袋に入れた状態で、試しに村に入ってみることにした俺。
村人達に話しかけてみて、流れの商人としてドライフルーツなどを売り捌いてみると、ヴァリスという通貨を支払われたが、どうやらこの世界はダンまち世界で間違いなさそうだ。
時期的には既に神時代になっているようだが、ゼウスとヘラのファミリアが壊滅しているかどうかで、原作の何年前なのかが理解できそうではあるな。
なんてことを考えていると白髪赤目が特徴的な幼い少年が近付いてきて、此方が提供している商品を興味深そうに眺めていた。
この子ベルくんじゃねぇかな、とか思っていると「一人だけで先に行くなベル」と、やはり名前がベルくんだった幼い少年に話しかけていた灰色髪の女性。
アルフィアらしき女性がベルくんと一緒生きてるってことは、静穏の夢ルートみたいだな。
そんなことを考えながら、推定アルフィアにも商品を見せていき、柿のドライフルーツを試食してもらうと、気に入ったようで、それを購入していた女性。
珍しい食料品ということで後から現れたザルドらしき男性も、俺が用意した商品を興味深そうに確認していて、複数の乾物を試食して「いい味だな」と頷いていた。
旨味が沢山あるが魚臭くはない鹿肉を使った鹿節を購入したザルドらしき男性は「他にも何かないか?」と聞いてくる。
「それじゃあとっておきの商品を出しましょうか」
そう言った俺は、袋の中に手を突っ込んだ状態で「全創造」の個性を用いて「ザルドを蝕むベヒーモスの毒を完全に解毒できる薬」という特定の個人にしか効果がない飲み薬(リンゴ味)を創造。
「全創造」で瞬時に造り出した飲み薬を、あたかも袋から取り出したかのように装って渡し、ザルドらしき男性に飲んでもらうことにすると「リンゴ味のジュースのような味だが、これは解毒剤か!ベヒーモスの毒が消えたぞ!」と驚いていたが、やはり男性はザルド本人で間違いなかったようだな。
その後、やはりアルフィアだった女性にも不治の病の特効薬を飲んでもらい、完全に健康になったアルフィアだったが「もっと早くお前が生まれていればメーテリアは」と悲しそうにしていた。
現在の俺は少年と言えるような年齢だから、もっと早く生まれていなければメーテリアを助けられなかったのは間違いではないかもしれない。
タイムマシンも創造しようと思えば創造できるが、この世界の過去を変え過ぎると、どんな世界になるかが分からないから、それは止めておくとしよう。
まあ、現在は好き放題させてもらうとするがな。
ダンまち世界には黒竜という脅威が存在するが、体内に存在する永久エネルギー炉で、ドラゴンボールの人造人間17号みたいな技が使える俺なら、容易く消し飛ばせるだろう。
しかし黒竜が消え去ったとしても、遊び半分で地上に降りてきた享楽的な神々が消え去る訳ではなく、邪神や悪神に従う人間も少なくはない。
平和な世界には程遠いこの世界を良くする為に、地道に活動するなんてことを俺はやらないんで、代わりに頑張ってくれそうな存在を「全創造」で創造して、お任せしておくとしよう。
世界が英雄を求めているとするなら、此方は飛びっきりの英雄を用意してやるだけだ。
という訳で、個性「全創造」を用いて創造するのは、ヒロアカ世界では永遠に語り継がれていた平和の象徴。
俺が手のひらを向けた前方の空間に、放射されていったエネルギーが形作るのは長身で筋骨隆々な男性の肉体。
設定などを含めたイメージを形にして、消費されたエネルギーによって行われる創造。
金髪で筋肉が凄い大男といえる男性が、頑丈なヒーローコスチュームを着込んだ状態で俺の前方に創造されたが、何処からどう見てもオールマイトで間違いない。
八木俊典ことヒーロー名オールマイトを、受け継がれてきたワン・フォー・オールの個性有りで、負傷無しな全盛期の身体で創造した俺。
創造したオールマイトが宿している記憶は、宿敵なオール・フォー・ワンが倒された後の余生を雄英の教頭として生き抜いた記憶までは存在するように設定しておいてあるので、いきなりヒロアカ世界にどうにかして戻ろうと考えることはない筈だ。
いきなりこの世界に創造されて困惑しているオールマイトに話しかけていき、ヒロアカ世界とは別世界なこの世界について説明していきながら、ついでに「全創造」で用意した「ほんやくコンニャク」もオールマイトに食べてもらい、ダンまち世界でも言葉が通じるような状態にしておく。
「まあ、貴方にとっては異世界転生したようなものかもしれませんねオールマイト」
「若い子達にはちょっと流行ってたみたいだけど、私が実際にそうなるのは驚きだね」
そんな会話をしながら、この世界で竜の谷の竜による被害が頻発していることを教えておくと、早速竜を倒しに行くと決めたオールマイトには、この世界の詳細な地図以外にも、便利な道具となりそうなものを渡したり、装備させたりもしておいた。
どんな負傷も回復する回復アイテムとしてドラゴンボールの「仙豆」を30粒と、素早さを2倍にするドラゴンクエストの「ほしふるうでわ」や、攻撃力を2倍にするバイキルトの呪文と同様の効果を発動可能な「ゆうじょうのつえ」という杖など、幾つかの道具をオールマイトには渡してある。
30回までは、どんな負傷も回復し、素早さと攻撃力が2倍な全盛期オールマイトとか、どう考えても強いのは間違いない。
送り出してから数日もしない内に、竜の谷の竜を、黒竜を含めて殲滅してきたオールマイトが戻ってきたので、労っておくことにした俺。
負傷して胃が全摘されてからは、大量に食べられなくなっていたという肉を、しっかりと食べてもらうことにしたが、どうせなら美味い肉がいいかと考えてトリコ世界の「ジュエルミート」を「全創造」で創造した俺は、大量の「ジュエルミート」をオールマイトに食べてもらう。
ヒレやサーロインはもちろんハツやレバーといった内臓など、全身の肉の旨味を全て兼ね備えた肉こそが、宝石の肉と呼ばれる「ジュエルミート」だ。
職人が幾重にも手を加えたかのような工芸品を思わせる霜降り模様に、高級フレグランス顔負けの気品溢れる芳醇さと本能を撃ち抜くような濃厚で原始的な肉の香りがする「ジュエルミート」は、単なる肉とは段違いである肉。
その「ジュエルミート」を盛り合わせた「ジュエルミート盛り」をオールマイトと一緒に食べていってみたが、あまりの美味さにオールマイトは物凄く驚いていたな。
「ワイルドな歯応えに砂肝を噛んだようなゴージャスな快音と、同時に口一杯に溶け出す肉汁の旨味とコクがたまらないね!」
「ハツのようなコリコリとした歯応えで、噛むごとに肉汁がどんどん出てくるけど、あっさりしていて全然しつこくないですよ」
「この部位はレバーで、レバ刺しの食感だけど、匂いやクセは全くなくて、しっとりとクリーミーな味わいだ!」
様々な部位の味を兼ね備えた宝石のように輝く肉をオールマイトと一緒に食べていった俺の身体は、宝石の肉を食べた影響で輝き出す。
オールマイトも輝きまくっていたが、宝石の肉を食べる手を止めることはない。
腹一杯「ジュエルミート」を食べた俺とオールマイトは、心地いい満腹感に満たされており、美味いものが沢山食べられて満足していた。
「こんなに美味しいお肉を食べたのは初めてだね」
「まあ、別世界では古代の食宝と呼ばれるリーガルマンモスからしか取れない希少な肉ですからね。食べたことがなくてもおかしくはありません」
「マンモスのお肉だったの!?凄いの食べちゃったな私」
「ジュエルミート」がリーガルマンモスの肉だと知り、再び驚いていたオールマイト。
まあ、別世界の美味い肉を食べられたことには、オールマイトも喜んでいたので、労いは成功したと考えても大丈夫だろう。
ゼウスとヘラのファミリアがオラリオを追放されてから、闇派閥が活発に動くようになっている今のオラリオは、随分と荒れているらしい。
竜の谷の竜を殲滅するという仕事を終えたオールマイトは「オラリオに困っている人が居るなら助けてくるよ」と言っていて、オラリオにまで向かうと決めているようだ。
追加で「仙豆」を50粒位オールマイトに渡しておき、オラリオにオールマイトを送り出した俺は、暇になったんで、また誰か創造してみようかと思っていたが、死んだ妹のことを思い出して悲しそうな顔をしていたアルフィアのことが思い浮かんだ俺は、アルフィアの妹を創造してみようかと考えた。
アルフィアの妹で病弱だったメーテリアという情報だけでは、イメージが固まらないと判断し、個性「全創造」で創造したドラえもんのひみつ道具の「タイムテレビ」で、まだ生きていた頃のメーテリアに関する情報を集めておく。
過去すらも映像として映し出せる「タイムテレビ」を用いて、収集したメーテリアに関する情報。
病弱でありながらも怒ると、アルフィアすらも平謝りするしかない迫力を出せるメーテリアは、やはりヘラ・ファミリアの女性であったな。
ゼウス・ファミリアの赤目なクラネルと出会い、恋をして、クラネルとの子を宿し、ベル・クラネルを産み落として亡くなったメーテリアの生涯。
それら全てを見届けるとイメージが充分に固まってきたので、今ならメーテリアを創造できると思った俺は前方に手のひらを向けると、放射したエネルギーで女性の身体を形成していった。
「全創造」の個性により、創造されていくのは白髪の若い女性。
若く健康な身体でありながらベル・クラネルを産んで亡くなるまでの生涯の記憶を宿したメーテリアという設定でイメージを形にしていき、創造されていくメーテリアの肉体。
メーテリアを創造することは死者の蘇生と同様なことではあるが、蘇生魔法なんてものが使えるフェルズなんて存在が居るこの世界なら、別に禁忌とされていることではないのだろう。
神が神力で奇跡を起こして死者を蘇生するのはルール違反だが、人が行うなら別にルール違反という訳ではない筈だ。
なら人である俺が個性という超能力を用いて、メーテリアを創造しようが構わないということになるな。
まあ、この世界の神に文句を言われようが、知ったことじゃあない。
やりたいように好き勝手やらせてもらうとしよう。
なんてことを考えながら、放射していったエネルギーが形成していく白髪の若い女性の身体。
「全創造」の個性により創造されたメーテリアが、その場に立った状態で閉じていた目蓋を開くと、まず最初に自身が生きていることに驚いていた。
困惑を隠せていなかったメーテリアには「若く健康な身体で生まれ変わったようなものですよメーテリアさん」と説明しておき、ベル・クラネルがアルフィアに育てられていることも教えておくと「ベルと姉さんに会いたい」と言い出すメーテリア。
健康になったとはいえ、ここから歩いてベルくんが住む村まで向かうのは、メーテリアには大変だろうと考えた俺。
という訳で、ドラえもんの劇場版であるドラビアンナイトに登場した「空飛ぶ絨毯」を「全創造」で創造し、メーテリアと一緒に「空飛ぶ絨毯」に乗って移動して、ベルくんの住まう村まで向かってみた。
村人達は「空飛ぶ絨毯」に驚いていたが、アルフィアとザルドにゼウスは、俺と一緒に「空飛ぶ絨毯」に乗っていたメーテリアの姿に、凄まじく驚愕していたのは確かだ。
最初はメーテリアに似た別人だと考えたのか警戒していたアルフィア達だったが、俺が「この世界には、死者を復活させる蘇生魔法を使える存在も居ますよ」と言うと、それが嘘ではないとゼウスが判断したことで、蘇生魔法でメーテリアが復活したと勘違いしたアルフィア達。
メーテリアを看取ったアルフィアからすれば、死者である筈の妹が若返って復活しているというとんでもない状況で、流石のアルフィアもどうすればいいのか解ってはいないようであったが、メーテリアから「姉さん」と積極的に話しかけていくと、アルフィアはメーテリアのことを抱き締めて放さなくなってしまう。
メーテリアの家族であるアルフィアが、俺が創造したメーテリアを、メーテリアそのものだと思っているとするなら、イメージ通りに創造できたということになるかもしれない。
その後、メーテリアはベルくんと対面し、お母さんであることを告げたが、ベルくんは「おかあさんが2人になるの?」と戸惑っていたな。
伯母さんと言われることを嫌がったアルフィアが、おかあさんと呼べ、と言っていたことで、ベルくんにとっては「おかあさん」と呼ぶ相手が、今回で2人に増えたということになるのだろう。
「姉さん」
ジト目でアルフィアを見たメーテリアから、無言で目をそらしたアルフィアを見ていると、この姉妹はやはりメーテリアの方が立場が上らしい。
こうして姉妹揃って健康な身体となったのなら、家族と一緒に長生きしておけばいいと、俺は思う。
それからメーテリアはアルフィアの妹として、村で過ごすことになり、健康な若い身体で元気に暮らしているようだ。
まあ、元気に暮らしているなら、俺から特に言うことはないな。