いまだけダブチ食べ美に愛を向けられたから注ごうとするお話です。

※pixivからの転載です。

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第1話

「あははっ、なーんだ。悩みがあるって真剣な顔して言われたから何かと思ったらそんなこと!?」

 

自分の悩みを食べ美に話したところ軽く笑われたが、これは自分にとっては死活問題である。というのも、先日同じマクドナルドで働く後輩の女の子と雑談をしていたところ「先輩って女心が分かってないですよね。」と言われたのだ。その子とはバイトをしている上で特に険悪ということもないので、本気で言っているわけではないのは分かっているから問題はない。そして確かに自分は幼い頃には、異性以前に他人の感情がうまく理解できない、という悩みを持っていた。しかし、その悩みは大人になるにつれて改善されていった。特にここ数年は、相変わらず恋人というものには縁はなかったが、そのほかの人間関係はうまくいっていた。あくまで女心だけがわかっていないというのだ。

 

「いやいやいや、わかるに越したことないでしょ!一応俺、歴長い方だし男女関係なくみんなのことはきちんと理解できるようになりたいよ〜〜」

 

俺はクルールームの真ん中にある机に突っ伏したまま喋っていた。

 

「もうダメだ…俺このまま友達はいるけど恋人はいないっていう悲しい人生送るんだ…はぁ…」

 

自分は大きなため息をつきながら、今度は天井に顔を向ける。いまだけダブチ食べ美は苦笑いしながら話を聞いていた。

 

「マジで女心をわかるようになりてぇ…」

 

自然と口から言葉が漏れたその時

 

「うーんと…そこまで言うなら、その悩みを解決するの手伝ってあげようか?」

 

食べ美はそんな提案をしてきた。

 

「えっ、いやそんなこと頼めないよー。悪いというか、迷惑をかけるというか…」

 

「あはははっ、良いよ良いよ、気にしないで!私も君のこと知りたいし!」

 

食べ美は本当に気にしていない感じで言ってきた。むしろ乗り気っぽく、ここで断るのは悪く思えた。

 

「じゃあ…お言葉甘えて。頼みます。」

 

「え、ほんと!?やったー!」

 

俺の悩みを解決することが目的なのに、何故か食べ美の方が喜んでいる。その理由をこの時の俺には理解することができなかった。

 

「そこまで言ってくれるのなら、乗らない手はない、か…よしっ、じゃあ頼もうかな。」

 

「それじゃあ今度の休み、私とデートに行こうよ!そこで、女心を読む練習しよ!」

 

食べ美はそんな提案を軽やかに口にする。彼女の笑顔に、妙に緊張してしまいながらも、どこか心が弾んでいる俺がいた。

だが、これはあくまでも練習——そう言い聞かせて深呼吸をすると少し寂しさも感じた。

 

 

数日後。待ち合わせの時間よりもずっと前に、俺はその場所に着いていた。正直なところ、女心を読む練習などはこの際どうでもよくて、ただ食べ美との二人の時間を楽しみにしていた。少し早く着いた自分がどこか浮ついていることにも気づいていたが、この姿を知り合いにも見せるつもりはない。俺はただひたすらに時間が過ぎるのを待っていた。

 

そうしてしばらくすると、いまだけダブチ食べ美が現れた。

しかしそこには普段宣伝している時の制服とはまるで違う、柔らかで可愛らしい女性がいた。私は思わず息を呑んでしまう。

 

「お待たせしました、俺君。」

 

食べ美は、にっこり微笑みながら軽く頭を下げる。その立ち振る舞いを見て俺はただ茫然と見ていた。

 

「ん〜?なんか反応悪くない〜?こういうのあんまり好きじゃない感じ?」

 

「あぁ…いやっ、そんなことはないよ」

 

俺は思わず視線を外した。この路線で来るとは思ってもいなくて、戸惑ってしまったからだ。それと同時に、普段の制服姿とのギャップに萌えてしまった自分に驚いた。

「ふ〜ん?だったら良いんだけど」

 

食べ美は一息つくと腕を組んで

 

「それじゃあ早速、問題!私は今、君に何て言ってほしいでしょうか!?」

 

唐突に問題を出してきた。突然すぎてまるでわからない。感情を読む練習とはいえ、こんなにすぐ直球な問題を投げかけられるとは思っていなかった。自分は必死に考えを巡らすがもちろん答えなど出てこなかった。

 

「……時間切れでーす。ポテトが揚がっちゃいましたー。」

 

食べ美はため息混じりに少し拗ねた感じで不満を口にする。

 

「正解は……か…んっ…やっぱ、まだ言わなーい……。そんなことより早く行こ!」

 

と明るい様に振る舞っていてもどこか落ち込んでいるように見える食べ美。その姿を見ると余計に何を言って欲しかったのかがわからなくなる。しかし、何か言わなければならないことは察せられたので俺は背中を向けて歩き出した食べ美の手首を握ってそのまま口を開いた。

 

「ごめん……ただの感想なんだけど……その…今日は一段と可愛いね?」

 

「……っ!!」

 

彼女は顔を隠すように手を振り払った。

 

「あー、もう、生粋の人たらしめ……」

 

食べ美は悔しそうにそう言いながらも、口元は緩んでいた。取り敢えず、嫌悪感を抱かれなくて良かったと一安心する。

 

 

その後、俺たちは街を歩き、映画を見て、カフェに寄り、一緒に一日を過ごした。特に何か特別なことをしたわけではないが、食べ美との時間が心地よくて、いつもより自然体でいられた。久しぶりにこんな楽しい時間を過ごしたかもしれないとすら思える。

 

「今日はこれくらいかな〜?」

 

「そうだね、時間も時間だし今日は解散しようか」

 

午前から一緒にいたということもあって、退勤ラッシュに巻き込まれるかどうかくらいの時間に俺たちは解散することにした。実際には、ちょうど落ち着いたのがその時間だったと言う方が正しい。そのくらい今日一日は楽しいものであった。

 

「今日のお出かけで、少しは女心がわかるようになった??」

 

「うーん…」

 

俺は誤魔化すように苦笑いをした。

 

「あはは、これはまだまだかかりそうかな」

 

食べ美は軽くため息をつきながら、でも笑いながらそう言う。

 

「でも、また休みの時とかあったら誘うよ!ゆっくりでもいいでしょ?」

 

「まぁ、それもそうか。」

 

俺は空を見ながら納得した風を装った。

 

「今日は楽しかったよ!じゃあ、またマクドナルドでね!」

 

食べ美はそういうと、私に背中を向けて歩き出した。

 

「ごめん、ちょっと待って。」

 

私は食べ美の手を握って止めた。帰り際、どうしても言いたいことがあった。いや、正確には今日一日を通して言いたくなった、という方が正しいかもしれない。

 

「ごめん、一つだけ。いつもありがとう。今日だけじゃなくて、これまでも。助けられていない時はないんじゃないかってほどだし。こんなありきたりな言葉しか言えないけど…でもほんとに、ありがとう。」

 

そう言って微笑むと、食べ美は視線を下げた。一瞬曇ったような表情が見えたが、きっと気のせいだろう。今の発言のどこを切り取っても不快になるようなことは言っていないはずだ。

 

「じゃあ、俺はこれd…」

 

しかし私はその場から歩き出す事ができなかった。食べ美が私の手をぎゅっと握りしめていたからだ。

 

「えーっと…あの…」

 

しばらく沈黙が流れる。俺はその手を振り解いたりなど抵抗はせずにその場にとりあえず立ちすくんでいた。

 

「ずるい、ずるいよ……」

 

ふとそんな言葉が聞こえてきた。ずるい…?自分は何かしでかしたのかと思考を巡らせるが全くピンとこない。

 

「キミだけ、わからないで、私だけ……こんなに熱くなっちゃうなんて……」

 

普段の彼女からは想像もできない、儚げな表情だった。その姿に呆気に取られて、いや見惚れていると突然食べ美が俺に抱き着いてきた。

 

「流石に、ここまでされたらわかるよね……?いや、わかって。わからせるから……!」

 

彼女は、さらに強く抱きしめながら続けた。

 

「キミのことが……好きなの。もうこのまま、今だけじゃない。今だけじゃなくて、これから一生離したくないくらい。本当に好き。大好きなの……!」

 

その言葉に、俺は思わず微笑んでしまった。驚きというより、どこか納得したような気持ちだった。

 

「なんだ、やっぱりそうだったんだ。勘違いじゃなくてよかった。」

 

いや、その声は安堵の声だったのかもしれない。自分の思っていたことは何も間違っていなかった。もう既に2人の心は繋がっていた。食べ美はその言葉に驚いた様子で顔を上げた。

 

「え?そ、それって……」

 

彼女の動揺した表情を見て、俺は微笑みを浮かべたまま、そっと彼女の背中を撫でた。食べ美の頬が赤く染まり、その瞳に宿る感情が、これまでにないほど鮮明に伝わってきた。

 

「俺も今だけじゃない。ずっと前から好きだったし、この気持ちはずっと続くと思う。」

 

俺も腕の力をいっそういれて、強く抱きしめる。

 

「俺のダブチはずっと食べ美だよ。」

 

「なにそれ…意味わかんない。」

 

彼女は涙を目に溜めながら、でも普段宣伝しているようなものとは別の、満面の笑顔をこちらに向けてきた。

 

「ほんとに?今だけダブチじゃない?」

 

「うん、今だけじゃない。これからも、ずっと不動のNo.1だよ。」

 

「わかった…私はずっとキミだけのダブチでいるね……!」

 

俺達はしばらくの間、ずっとハグをしたまま離れることは出来なかった。俺といまだけダブチ食べ美の2人で、一つの素晴らしい感情を生み出せることに、喜びを覚えながら。

 


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