我は世界の全てを、眺望せし者なのだ…
Pixivにてユーザー企画に参加した際の作品です。
この季節に相応しい冷気が重々しく
薄暗いこの空間を隅々まで包み込み
蔓延るカビの臭いが若干混じりつつも、古めかしい木の香りが漂う
梁が剥き出しの天井は低く直立はできない
板張りの床を分断するかのように
中央には古びたレッドカーペットが敷かれており
その先にあるのは古いアルミ枠に囲まれた硝子窓
眼下に広がるのはほぼ同じ様式で建てられた街並み
木枯らしが吹き付ける中その家々が夕陽に照らされる
バサリと身に纏うマントを広げ、片膝をついたままに
窓越しにその眩い光を全身に浴びて不敵に笑う。
「あぁ、美しい…なんて素晴らしき光景なのだ。あの、禍々しいほどの真紅に燃える夕陽が、世界を、この俺を、染め上げていく…。ハハッ、フハーハハハハっ!カタルシスを感じるとはこのコトなのか。あぁ鬱屈した心のシコリが溶解し、浄化されていく……」
暫く落日燃ゆる様子を眺め黄昏の空に想いを馳せていると、徐々に濃い青の空へと変わっていく
これから世界は漆黒の闇に覆われ、虚無と混沌が訪れる街となるのだ。そして俺はー…
ガタン!
この幻想的空間を壊す無粋な音が。
「お兄ちゃん、こんなホコリ臭い
「妹よ…この気高く優雅で高貴な雰囲気を理解出来ないとは、なんと愚かで憐れなことよ、ククク…。………それはそれとして
そう叫ぶも既に妹の姿は階下に消え、部屋は静寂を取り戻していた。
「お母さ〜ん、声掛けてきたよ〜」
「ありがとう。じゃあこのお皿運んでくれる?」
母親から取り皿を受け取り食卓へ運んだ娘は、チラリと2階へ続く階段を一瞥し、ため息をつく。
「まったくお兄ちゃんったら…なんかさぁ、アレ中二病になりかけてなぁい?夕日見て笑ってる姿とか不気味なんですけどー」
「まぁまぁ、あぁいうのは一時的なモノだから。すぐに収まるわよ」
そう笑いながら味噌汁を注ぐ横で、肉を揚げる良い香りと音がしている。
「あとから振り返ると恥ずかしくなるものよ。今は温かい目で見守ってあげましょう。さて最後のが揚がったわ、食べましょう」
「いわゆる【黒歴史】ってやつになるのね…流石に恥ずかしいから家の中だけにしてほしいなぁ〜」
テーブルに並べられた、トマトと千切りキャベツが付け合わせとして乗った取り皿。ジャガイモとわかめのお味噌汁。炊きたてのご飯にキュウリのお漬物。そして特大の皿に盛られたメインディッシュ。
全てが揃ったところで娘はすぅ~っと大きく息を吸い、わざと大きな声で…。
「わぁー、今日の夜ご飯も美味しそう〜!!お兄ちゃんの分まで食べちゃっていいよね、お母さん!いっただきま〜す!!」
その途端、ガタン!!と2階から物音がしたかと思えば、バタバタと階段を降りてくる足音が大声と主に食卓へ飛び込んできた。
「オレの手羽先の唐揚げ!!ちゃんと残しておいてと言っただろう!!」
「知らな〜い、欲しいならさっさと食べればぁー?」
「心配しなくても、出来あがって並べたばかりだから大丈夫よ〜。ほらお兄ちゃんも席について食べちゃいなさい」
そう言われると妹と向かい合わせに座り、ガブリと
主人公の“オレ”は中学1、2年くらいの男子を想定してます。