ゲッターロボGODDESS   作:ノーボディ

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すいません、遅れました。それではどうそ。


第10話 巣立ち

「あらレン、助けに来てくれたの」

 

「無事だったか、姉さん!」

 

 紅蓮は薔花を発見し、勢いよく抱きついた。ずっと心配していた姉が生きているという事実が、紅蓮には嬉しかった。

 

「やっぱりレンは甘えん坊なのね。涙拭いてあげるね〜」

 

「泣いてなどいない!目にゴミが入っただけだ!」

 

 顔を胸に埋め、強がる紅蓮を薔花は静かにあやすのだった。

 

 暫くして紅蓮が泣き止んだのを見計らい、薔花は2人で座れる大きさの瓦礫に腰掛けさせた。

 

「そう言えば、レンはあのロボットに乗っていたでしょ」

 

「ゲッターロボのことか?」

 

「そう。凄かったね、あの暴れっぷり。正に鬼神って感じだったね」

 

 薔花としても、あそこまでラプチャーが一方的な攻撃に晒されている状況を今まで見たことがなかった。ゲッターロボとラプチャーの関係は捕食者と被食者を思わせ、今の不利な戦況を一瞬忘れるほどの衝撃であった。

 

「ほんの少し手間取った部分はあるが、あのロボットが既存のラプチャーでは太刀打ちできない程の戦闘力があるのは認めざるを得ない。あれを作り出した早乙女博士は天才という言葉で括れる人間ではないな」

 

「レンがそこまで言うなんて…」

 

 薔花は紅蓮が強さ以外で人を評価した事実に驚いた。彼女は常に強さへの関心しか持たず、それ以外には基本無頓着であった。

 

「そんなことより、姉さんは外に出て何をやっているんだ?」

 

「後片付けよ。ラプチャーの残骸や壊れた機材の回収ね」

 

 大型ラプチャーを全て討伐した後の戦闘はスムーズに終わった。統率を失ったラプチャーなど烏合の衆でしかなかったのだ。そのため、救援が来るまでの間出来る限りのことをやろうと量産型のニケや研究員が総出でラプチャーの残骸の回収や壊れた設備の修復などを行っていた。ちなみに紅蓮が外に出ているのは、残った仲間の確認を終えた後、レッドフードがラプンツェルにどこかに連れて行かれ、暇になったためである。

 

「私も手伝おう。暇なのでな」

 

「レン、無理は禁物よ。あの戦いの後なんだから、しっかり休みなさい」

 

「そこまで疲れていないから、気にしないでくれ。そう言う姉さんこそ、先ほどの戦闘で疲れているのではないか?」

 

「私はシェルター内に侵入して来たラプチャーを何体か斬ったくらいだから、そんなでもないかな。本当に頼っても大丈夫なの?」

 

「皆が動いているのに、休んでいるのは性に合わない。何か手伝わせてほしい」

 

「分かったわ。じゃあお言葉に甘えて、中型ラプチャーの残骸の処理お願いできる?」

 

「面倒な仕事をこちらに押し付けるでない!一緒にやるぞ!」

 

 紅蓮が薔花の仕事を手伝う流れとなり、一騒動ありつつも、テキパキと作業は進んで行き、早めに終わった。

 

「暇になっちゃったね、レン。何か聞きたいことあったりする?」

 

「そうだな。ジャガー号でラプチャーを掃討している時に、光の雨がラプチャー共に降り注ぐのが見えた。あれは一体何だったんだ?」

 

 手持ち無沙汰になった薔花に紅蓮が終わり際に見えた光の正体について問う。ラプチャーの残党狩りはあの光のおかげで早く終わったと言っても過言ではなかった。

 

「あれはね、第二世代のフェアリーテールモデルのニケみたいよ。その中でも殲滅に特化したした娘みたい」

 

「もう既に第二世代のフェアリーテールモデルのニケは完成していたのか」

 

 紅蓮は早乙女博士から第二世代についての話を聞いていたため、あまり驚かなかった。

 

「何でも、今日ロールアウトされて初の実戦投入だったみたい」

 

「それは難儀な…」

 

 通常ニケは性能テストを行い、ある程度の有用性が示されてから実戦投入が行われる。それは近接戦闘部隊も例外ではなかったため、紅蓮は第二世代の境遇にほんの少し同情した。

 

「それでも、ちゃんと役目を果たしたのだから見事なものよ。将来的にゴッデスを超えるかもね」

 

「そうだな。手合わせする日が楽しみだ」

 

 相変わらずの様子の紅蓮に呆れる薔花。彼女は前日やらかしたばかりであった。

 

「レン…」

 

「勿論、相手の許可を取った上で行う」

 

 さすがにマズイと思い紅蓮は言葉を付け加える。薔花が"そういうことではない"と彼女に注意をしようとした時、セーターの上に白衣を纏った量産型のニケが彼女たちの元に来た。

 

「私はエリシオン第3ニケ研究所の所長、エイブだ。お前があのロボットのパイロットだな?」

 

「その通りだが…」

 

 エイブは紅蓮に確認を行った後、頭を下げ、感謝の意を示した。

 

「救援感謝する。第二世代だけでは、あの状況を打開することができなかった」

 

 紅蓮はほんの少し驚いた。彼女はニケとして作られてから、姉や仲間以外から感謝を受けたことが無かった。

 オロオロする紅蓮に薔花が感謝に応えるよう耳打ちし、紅蓮はぎこちない謙遜を行った。それを薔花は微笑ましく見るのだった。

 

「他のパイロットの姿が見当たらないが…」

 

「彼女たちは今取り込み中だ」

 

 レッドフードは今ラプンツェルにかなり詰められているだろうと紅蓮は思っている。彼女としてもレッドフードはかなりきつく灸を据えられる必要があると感じており、同情はしないが…

 

「そうか…。また後日伺うとしよう。あと今日送られて来たお前、作業が終わったらシュミレーションルームに来い」

 

 そう言うとエイブは研究所に戻って行った。彼女が見えなくなった後、薔花が紅蓮に話しかける。

 

「その2人って…」

 

「そうだ、レッドフードとラプンツェルだ。任務の途中にわざわざ来てくれたのだ」

 

 薔花は大きく瞳を見開いた。自分のことは二の次だろうが、ゴッデスに助けられたという事実が嬉しかったのだ。

 

「いつかこの恩は返さないとね」

 

「姉さんの言う通りだな」

 

 ふと薔花は気になったことを紅蓮に聞いてみた。 

 

「そういえばレン、あなたゴッデス部隊から入隊の打診はあった?」

 

「あったが、断らせてもらった」

 

 淡々と答える紅蓮に、薔花は不満そうな表情を向ける。

 

「えぇ〜、もしかしたら私と一緒に戦えるかもしれないのに…」

 

「そうかもしれないが、私は残された皆が心配なのだ」

 

「そうかもね」

 

 紅蓮の言葉に同意しながらも、薔花は続ける。

 

「でも本当にそう思っているの?」

 

「どういう意味だ、姉さん?」

 

「だってあなた以外はみんな量産型に乗せられるのよ。それをあなたはどうやって守ろうというの?」

 

「それは…」

 

「あのロボットを動かすにもゴッデスの助力が必要よ。それなら尚更ゴッデスに所属するべきよ」

 

 薔花の言葉に紅蓮は押し黙る。実際紅蓮以外の近接戦闘部隊のメンバーが量産型ゲッターの部隊に組み込まれることを彼女は知っていた。そんな彼女たちを守る一番の方法がゴッデスと共にゲッターを駆ることであることも。

 

「レン、あなたは近接戦闘部隊が無くなることが怖いんじゃないの?」

 

 紅蓮は、はっと息を呑み、観念したかのように話し始めた。

 

「私にとって仲間が全てだった。人類を助けたいという気持ちより私たちの剣で世界を救いたいという気持ちが強かった程にな」

 

 人間時代の記憶が無い紅蓮にとって仲間と剣は誇りであり、家族のようなものであった。それをしんみりとした表情で話す彼女の言葉を薔花は静かに聞いていた。

 

「しかし、研究所内で私たちがこれから剣ではなく、ロボットに乗って戦うことを告げられた」

 

 近接戦闘部隊が早乙女研究所に引き取られた理由は紅蓮の引き抜きが主だが、それ以外の近接戦闘に慣れているであろうニケの回収という理由もあった。紅蓮は当初この話を鼻で笑っていたが、そのロボットが大型ラプチャーに無傷で勝利した映像を見せられ、その認識を改めた。

 

「剣で戦い続けた果てが、ロボットのパイロットなど笑い話にも程がある。本当はなりたくなどなかったが、皆限界だった。あのままでは全員斃れていただろう」

 

 紅蓮にとって剣は己のプライドだ。だが満足な補給と修理を受けられていない仲間たちの命には代えられなかった。泣く泣く彼女はパイロットになることを決心したのだ。

 

「その上姉さんの離脱を突然伝えられた。剣だけでなく姉さんさえも失うのは本当に耐えられなかった」

 

 紅蓮の声にほんの少しの嗚咽が混じった。薔花は紅蓮の側により、背中を摩り始めた。表面上は平静を保っていても、紅蓮の心の中はボロボロだった。

 

「その時に思ったのだ。近接戦闘部隊はこのまま終わるのかと。私はこのような形で終わるのが嫌だった。私たちはまだ何も果たせていないのに!」

 

 近接戦闘部隊として幾たびの戦場を駆け、色々なことを経験してきた。ラプチャーを初めて斬った感触、初めて飲んだ酒の味、そして皆で杯を交わし夢を語りあったこと。そのどれもが紅蓮にとってかけがえのないものだった。そんな思い出が詰まった部隊が無くなることを阻止するため、紅蓮はゴッデスからの勧誘を断ったのだ。

 

「レン、終わりはどんなものにも必ず来るわ」

 

 薔花は静かに泣く紅蓮を宥めた。彼女としては全滅するよりは幾分かマシな終わりであったため、気に留めていなかったが、剣と姉への思い入れが強い紅蓮への配慮が欠けていたことを後悔した。

 

「私たちの部隊はここまでだったけど、少なくともあなたは違うわ」

 

「どういうことだ?」

 

 薔花の言葉に訝しがる紅蓮。そんな彼女に薔花は優しく語りかける。

 

「レンだけが剣の腕前でスカウトを受けているじゃない。あなただけが剣で戦うことができるのよ」

 

「それがどうしたと言うのだ?」

 

「あなただけが近接戦闘部隊の生き証人になり得るのよ」

 

 目を大きく見開いた紅蓮に、薔花は続けて語りかけた。

 

「近接戦闘部隊は確かに終わるわ。でもね、その戦い方を誰かが実践し続ける限り、近接戦闘部隊の在り方は続いていくの。それができるのはね、剣を握ることができるレンだけなの」

 

「姉さん…」

 

 沈んでいく夕日に照らされた姉の顔を紅蓮は見た。陰であまり分からなかったが、微笑んでいるように感じた。姉との別れも近い。彼女は今決断を迫られていた。

 

「私は……」

 

 紅蓮の言葉を薔花は静かに聞いていたのだった。

 

 

 

 

 

----------

「これに懲りたら、二度とあんなことはしないでください」

 

「わかったわかった、もう二度とやらねえから」

 

 長時間にも及ぶラプンツェルの長い説教を終え、レッドフードとラプンツェルはゲットマシンに戻っていた。優しい人を怒らせてはいけないというが、普段の聖人ぶりからは想像できない表情にレッドフードは純粋に驚かされた。暫くトラウマになりそうである。

 

「オカシラにもあんな風に怒られたことないのに…」

 

「何か言いましたか?」

 

「いや、何でもねえ」

 

 ゲットマシンが見えてくると、既に搭乗している紅蓮の姿があった。

 

「待たせたな、センセイ」

 

「君たち、思ったより説教が長かったようだが…」

 

「すみません、すぐに終わらせるべきでした」

 

 2人はゲットマシンにすぐに乗り込み、離陸の準備を行う。

 

「そういや、姉貴には会えたのか?」

 

「ああ、無事だったよ」

 

「そりゃよかったな」

 

 全員離陸の準備を終え、ゲットマシンが垂直方向に上昇していく。

 

「そうだ、君たちにはこれから世話になる。よろしく頼む」

 

「マジか、頼りにしてるぜ」

 

「こちらこそ宜しくお願いします」

 

 紅蓮の加入に沸き立ちながらも、ゲットマシンを早乙女研究所の方向に向けて発進させる。

 

「よし、帰ったら歓迎会の準備だな。隊長にも言っとかねえと」

 

「気が早いな、君は」

 

 レッドフードに呆れつつも、紅蓮は姉が残った研究所を後にするのだった。

 

 




・大型ラプチャー
ニケ本編において、タイラント級ラプチャーと呼称されるもの。トップダウンの命令にのみ従う他のラプチャーとは一線を画し、ある程度の自律的な行動が可能。また周囲のラプチャーに命令を下すこともできる。戦闘力は一個師団に相当する。現代兵器や量産型程度では相手にならず、ゴッデスクラスのニケでのみ対処が可能。
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