「やっほー、みんな元気だった?」
「はい、みんな元気です。お姉ちゃんも元気そうで良かったです」
クラーケンもといグラトニー討伐作戦から一週間後、検査を終えたリリーバイスが早乙女研究所に帰ってきたのだ。今回の検査で異常が見つからなかったため、早めの退院となった。屋上のヘリポートに着いたヘリから降りてきた彼女をスノーホワイトが出迎える。
「お代わりなくて、何よりですリリス」
「相変わらず堅いわね、ドロシー。リーダー代理は大変だった?」
「ええ、貴方の苦労が嫌という程分かりました」
死んだ目で答えるドロシー。それは今まで彼女がどれほどの苦難に見舞われたのかを知るには十分なものだった。リリーバイスは軽いジャブのつもりでクリティカルヒットを放ったことを後悔した。
「ラプンツェルは淫語を撒き散らすし、スノーホワイトも工房に籠りきりだし、何よりレッドフードは酒を飲んでばかり!あの人ミーティング中に吐きましたからね。あの方達にはゴッデスとしての自覚があるのかどうか、本当に疑問です!!」
「そ、それは大変だったわね。紅茶の茶葉買ってきたけど、飲む?ドロシーこの銘柄好きだったでしょ」
「いただきます」
「良かったら、このお菓子もどうぞ」
恨みつらみを吐き出し始めたドロシーにすかさず紅茶の茶葉を差し出すリリス。近くにいたスノーホワイトもドロシーの様子から今までの行動を反省し、リリスに用意していた洋菓子を手渡した。
「せっかくですし、お茶会でも如何ですか?お菓子と紅茶が丁度手元にありますので」
「良いわね!スノーもどう?」
「はい!喜んで!」
2人の答えを聞き、ドロシーは2人を研究所内の貴賓室に案内した。
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「このお菓子思ったより紅茶と合うわ。良いチョイスだったわね、スノー」
「このお菓子も意外と悪くありません」
「喜んでもらえて何よりです」
リリス、ドロシー、そしてスノーホワイトの3人は大理石で作られた机を囲み、お茶会を楽しんでいた。
「レッドフード達も来れば良かったのに。そういえばあの4人は今何してるの?」
「あのレッドフード、ラプンツェル、紅蓮の3人はあのロボットで出撃、指揮官は"とある作戦"の打診のため、本部に向かいました」
ドロシーの返答にどこか納得した表情をするリリス。ここ最近レッドフード、紅蓮、ラプンツェルの3人は毎日のようにゲッターロボに搭乗していた。グラトニー撃退の功績を以て、正式な運用が認められたのだ。基本的にはラプチャーの群れに単騎で突入して、殲滅するという脳筋戦法である。恐らく彼の打診する作戦もそれに関連するのだろう。
「ゲッターロボの性能はすごいです。何万もの群れをビーム一撃で薙ぎ払ってましたから」
あの作戦以降、レッドフード達も操縦に慣れ、本来の性能を引き出せるようになったこともあり、ラプチャーとの戦いで苦戦することはおろか、装甲に傷一つつけることすら無かった。ラプチャー達の砲撃を物理法則を無視した動きで掻い潜り、ビームやドリル、そしてミサイルなどで奴らを大量の鉄屑に変えていった。ラプチャー側も手をこまねいているわけではなく、自己進化能力により対ゲッターロボ用に武装や装甲を強化しているが、効果はまるでないようだった。
「悔しいですが、あのロボットの実用性は認めざるを得ません。漸くラプチャーに勝利できる可能性が見えてきましたから」
ゲッターロボの戦線投入は戦局をほんの少し影響を与えた。まずラプチャーの数が減ったことにより、襲撃自体が少なくなった。それにより人類全体に余裕ができ、人類軍への志願者及びニケ化手術の希望者が増加し始めていた。またV.T.C.がゲッターエネルギー兵器の実用化にむけて動き出しているという噂も流れている。
「あら、ゲッターロボに役割取られちゃったわ。やっと休みかしら」
「市街地が戦場だと、まだ出番はありますよ、リリス」
ゲッターロボの活躍によりゴッデスの出撃回数が減りつつあるのも事実だが、市街地や重要施設が近くにある場合は徒らに被害が出せないため、その時はきちんと出撃した。
「あら、それは残念。私が居なくても大丈夫だった?」
「最初は苦戦するところもありましたが、今は問題ありません。紅蓮が思ったより素直で助かりました」
「それは意外!てっきりドロシーとは水と油の関係だと思ったのに」
好戦的な紅蓮と貴賓高いドロシー。顔合わせですら一触即発であった彼女達が予想を裏切り、良好な関係を築いていたことはさすがのリリスも驚いた。
「当初は彼女を唯の蛮族だと考えていたのですが、話してみると案外気が合いまして…」
ミーティングを終えた日の夜、紅蓮に花茶を振る舞われたのをきっかけに、2人は定期的にお茶会をする仲になっていた。紅蓮の淹れた茶は香りも味も良く、彼女への印象を変えるには十分だった。
「それは良かった。私が見ないうちにみんな立派になっちゃって」
安堵とほんの少しの寂寥感がリリスの表情にあった。もうゴッデスはリリーバイスという最強が居なくてもやっていける。まさに子の成長を実感する親のようであった。
「お姉ちゃん……」
不安そうな瞳でスノーホワイトが呟く。どこか悟ったような態度があまりにも似つかわなくて…。しかし呟きが拾われることは最後まで無かった。
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「今日は楽しかったわ。今度は皆んなでやりましょう」
「ええ、一層良い品を準備しておきます」
お茶会はお開きになり、貴賓室を出る3人。唐突にドロシーがスノーホワイトに質問した。
「そういえば、スノーホワイトは最近工房に籠りがちでしたが、何を作っていたのですか?」
「それ今聞きますか?」
「御三方が帰ってくるまで少々時間がありますし、せっかくですからリリスに見せてはいかがですか?」
怪訝な表情を見せるスノーホワイトに、イタズラな笑みを向けるドロシー。それは一種の意趣返しであり、八つ当たりであった。彼女としてはスノーホワイトが何を作っているかある程度見当がついており、それをサプライズで見せようとしていることにも気がついていた。
「私も気になるな〜」
「はぁ〜、分かりました」
リリスも乗ってきたことで、ついに観念したのか項垂れるスノーホワイト。肩を落としながら、歩き始める彼女を2人は静かに着いて行くのだった。