「総員、今回の任務は覚えているな。
ラプチャー生産工場の探索及び破壊だ。
工場は地下1000mより下に存在するため、付近のラプチャーを掃討したのちにゲッター2で移動し乗り込む。そして内部に爆薬を仕掛けた後に離脱する。
何か質問はあるか?」
早朝5時、作戦区域付近の上空。
ゴッデス部隊は勝利の翼号の滑走路にて最後の打ち合わせを通信越しに行っていた。
彼女達は各々ゲットマシンに乗っており、イーグル号にレッドフードとスノーホワイト、ジャガー号に紅蓮とリリーバイス、そしてベアー号にはラプンツェルとドロシーという組み合わせである。
ちなみに指揮官も同行することになっており、イーグル号は3人乗りとなっている。
「わざわざ乗り込むより、直接焼き払ったほうがいいんじゃねえの?」
「奴らの情報が得られるまたとない機会だ。みすみす逃すわけにはいかない」
ラプチャーには多くの謎がある。どこから来たのか、誰が創ったのか、なぜ人類を襲うのか、そして彼らの司令塔は一体どこにいるのか。
「上手くいけばく奴らのボスであるクイーンの居場所が分かるかもしれない」
ラプチャークイーン。
それは理論上存在しているラプチャーのリーダー。
ラプチャーは一つの命令系統で動いている。それは大型未満のラプチャーにはインプット機能しか存在しないことがその証明となっている。
つまり司令塔を倒してしまえば、指揮系統の混乱により、ラプチャーの侵攻が止まる可能性が高いのだ。
「居場所はある程度目処が立っているが、決定的な証拠が欲しい。それさえあれば"計画"を実行に移せる」
人類連合軍上層部のほとんどが"計画"には強く賛同している。あとはV.T.C.からの承認のみであり、あと一押しなのだ。
「リリス、"計画"について何か知ってるか?」
「すぐに知ることになると思うわよ。そこまで驚くようなことじゃないし…」
たまたま耳に入れる機会があったリリーバイスにしてみれば、わざわざ承認を取る必要があるのか甚だ疑問ではあるが…
「ともかくだ。今回の作戦は今後の戦況を左右するほど重要なものになる。皆心してかかれ!」
『了解!!!』
指揮官の言葉と共にゲットマシンが滑走路から飛び出していく。
「隊長、体は大丈夫か?」
「問題ない。乗るだけなら平気だ」
彼は早乙女博士の耐G訓練を突破しており、搭乗のみであれば大丈夫とのお墨付きを貰っている。
「そんじゃ飛ばすぜ!」
ゲットマシンの速度が音速に到達し、轟音が辺りに響く。
一瞬で作戦区域に到達した後、ゲットマシンで隊列を組んだ。
指揮官は冷や汗を流しこそすれど、涼しい顔だ。
「今から戦闘に入るけど、問題はねえな。合体は飛行中と比にならない負荷が掛かるから、気合い入れろ!
チェェェンジ‼︎ゲッッッタァァァ‼︎ワァンッ!!! 」
レッドフードの叫びと共にゲットくマシン三機が急降下し、合体シークエンスに入る。
指揮官のポーカーフェイスが崩れ、スノーホワイトの顔が引き攣る。
レッドフードはそれを無視して、合体の操作を進めていく。
ジャガー号とベアー号が連結し、胸部と脚部を形作る。その後、イーグル号と連結し、ゲッター1に変形を完了させる。
そして真下にいるラプチャーの大群にそのまま急襲した。
「ゲッターマシンガン!!」
両腕部から展開された二丁の短機関銃からラプチャー目掛けて大量の弾丸を射出し、鉄屑に変えていく。
「この武器凄いです!
腕部と弾倉を直結させてそこから弾の補充を行うのでリロードの必要がありません!しかも、激しい動きをしているのに一切弾が詰まらない!さらに徹甲榴弾だからラプチャーのコアに届かなくても中で炸裂して確実に葬ることが可能!これをニケで代用できれば革命が起きるかもしれない!今から導入案を考えないと。やっぱりまず腕に弾倉を…」
武器に興奮し、早口で捲し立てるスノーホワイト。彼女の思考に敷島的発想があったような気がしたが、他のメンバーはあえて無視した。
「初めての武器をここまで使いこなせるとは…。
レッドフード、君の才覚には驚かされるな」
大型ラプチャーを一瞬でスクラップに変えるレッドフードに指揮官は純粋な賞賛を送る。
「そりゃどうも。
帰ったら、久しぶりに飲み会やろうぜ!暫く休みが無かったからさ」
「考えておこう」
ほぼ毎日ゲッターロボで出撃を繰り返していたため、レッドフードは久しぶりの飲み会を所望しており、指揮官もそれに応えるつもりであった。
何気ない会話をしている間に周辺のラプチャーは撃破されていき、あっという間に一機残らず壊滅した。辺り一面に散らばる鉄屑を前に紅蓮は目を細める。
「おや、君一人でラプチャーを全て片付けてしまうとは。私にも出番を回そうという気遣いは君には無いのか、レッドフード?」
「そうカッカすんなよ、センセイ。
これからはアンタの仕事だろ」
「フン、穴掘りだがな」
「あたしも穴掘りしたかったな〜。ドリルとか超好みだし」
「そうか。では今から変われ!
コクピットはこちらから開けてやるから遠慮はしなくていいぞ」
「2人とも、今は任務中よ。
喧嘩なら他所でやってくれる?」
どうでもいい話題でヒートアップしていく2人に柔らかい声で注意するリリーバイス。なお目は一切笑っていない。
「はあ〜。とりあえずゲッター2に変形合体しろ」
何度か見たやり取りに呆れた指揮官が命令を下したことで、喧嘩を終わらせて、ゲッター2に変形させた。
変形が完了した後、レッドフードは、ハッと思い出したように指揮官に質問した。
「そういや隊長、聞いてなかったんだけどさ。
あたしたちが地下に潜ってる間はここどうなるんだ?
戻った時もまた掃除するのは嫌だぞ」
「そこは気にするな。助っ人を呼んでいる」
指揮官が目を向けた先を見ると、朝日に照らされながら謎の人型物体が飛行してくるのが確認できた。
「あれは?まさか!」
「量産型ゲッター。その記念すべき一号機だ」
姿形はゲッター1に似ているが、装甲の色が漂白されており、モノクロを思わせた。
その機体はアサルトライフルを両腕で抱えたまま、ゲッター2の真正面に降り立った。
『ゲッター部隊の凛です。
だだ今よりゲッター部隊は作戦区域の警戒任務に当たります、どうぞ』
「了解した。後ろは任せる」
ゲッター部隊からの通信に応えた後、指揮官はゴッデス部隊に向き直り量産型の説明を行う。
「量産機は見ての通りゲッター1をベースに製作されている。様々な機能の簡略化とコストカットにより、性能は控えめだが、量産型ニケだけではなく一般軍人も使えるように調整されているらしい。
ようやく我々はニケ以外の有効手段を手に入れられたというわけだ」
指揮官は早乙女博士からの情報を嬉しそうに話す。
彼としてもニケに頼りきりな現状には思うところがあったのだ。
「それは喜ばしいことです。一刻も早く戦いが終われば人類がこれ以上苦しむこともなくなります」
「ええ、そうですね。
ニケより先にコレの量産化が整うのは意外でしたが…」
「普通の人間が戦力としてカウントできるのが大きかったんじゃない?ニケの量産化も着々と進んでるみたいだし、そこまで気にしなくてもいいと思うわ」
少年誌に出てくるような合体ロボの方がニケより評価されていることに落ち込むドロシーをリリーバイスは慰める。
ラプチャーを一方的に殲滅するだけであればゲッターロボだけで良いが、民間人救助や戦線の維持等はニケが担う必要があるため、一概に比較できないというのもある。
尚リリーバイスとしては少女の脳髄を詰めた倫理観無視の兵器より合体ロボの量産化の方が好ましいと思っている。
「さてと、地上の安全も最低限確保できたわけだ。早速奴らのアジトに乗り込むとするか」
「じゃあ、紅蓮。お願いできる?」
「承知した、リーダー」
紅蓮はゲッター2のドリルを地面に向け高速回転させ、空回り音が周囲に響く。
「なあ、センセイ。ゲッター部隊は元々センセイのところの部隊だろ?何か話さなくていいのか?」
「不要だ。作戦行動中に他愛のない話をする必要はない」
さっきまで下らない喧嘩をしていた紅蓮の言葉に、他メンバーは疑問符を浮かべたが、面倒ごとを避けるため心の中に飲み込んだ。
「そっか。じゃああたしが今からそいつらと話すけどセンセイは無関心決め込むんだ、へぇ〜」
「それはどういうことだ、レッドフード!?」
紅蓮の言葉を無視して、レッドフードは量産型ゲッターとの回線を繋いでいく。回線を繋ぐと驚いた顔をした凛の姿が画面に映った。
「久しぶりだな、お前ら。
この作戦が終わったら、飲み会やる予定なんだけどさ。一緒にどう?」
『えっ?』
気の抜けた返事を返すゲッター部隊。
まさかのお誘いに3人ともまとめてフリーズしてしまったのだ。
「急な話だと思うから、ゆっくり考えて決めてくれ」
『参加します!いえ、参加させてください!!!」
勢いよく返事を返すゲッター部隊の3人。
これには突然の誘いで困惑させたかと感じたレッドフードも気圧されていた。
「他の皆んなにも声をかけていいですか?多分喜ぶと思いますので…」
「おう、いいぜ」
「金を出すのは私なのだが…」
喜ぶゲッター部隊の声を聞きなら、ゴッデス部隊の方も他の部隊の友好を深める良い機会だと考えていた。勿論指揮官の懐事情は寂しくなるが…。
「よし、帰ったら宴だ!
センセイは何か言うことはあるか?」
レッドフードは紅蓮に話を振る。これも彼女なりの気遣いであった。
突然振られた紅蓮は暫く考え込んだ後、口を開く。
「飲み会があるからといって、作戦中は気を緩めるな。不手際があれば、帰還後久しぶりに稽古をつけてやる」
元副リーダーの言葉に気を引き締めるゲッター部隊。これにはレッドフードも額に手を当てる。久しぶりの会話が説教になるとは思っていなかったのだ。
「それと凛、お前は部隊のリーダーだ。お前の判断一つで部下の命が左右される。その覚悟を持って任務に当たれ」
近接戦闘部隊では甘いところのあるリーダーの薔花に変わって、部隊の規律を担っていたこともありその癖が出てしまう。
「せいぜい私に恥をかかせるな。各員作戦に戻れ」
そのまま通信を切り、ため息をつく紅蓮。本当は話したいことがたくさんあったのだが、いざ口に出すと前の癖で説教になってしまった。
「良かったのか、センセイ?」
「今は作戦に集中する」
紅蓮は操縦桿を握り、地面を掘り進んでいく。
心の内を無視するかのように、彼女はゲッター2の速度を上げていくのだった。