ゲッターロボGODDESS   作:ノーボディ

5 / 16
今回はかなり長めです。


第5話 紅蓮が来る

「今日付けで早乙女研究所に所属することになる近接戦闘部隊のニケたちだ。仲良くするように」

 

 早乙女研究所のモニタールームに集められたゴッデス部隊一同は指揮官より近接戦闘部隊の紹介を受けていた。近接戦闘部隊は総勢7人であり、ほとんどの者がゴッデスを前に緊張していた。

 

「私は隊長の薔花です。昨日は自己紹介できなくてごめんなさい」

 

 薔花の発言に疑問符を浮かべるゴッデスのメンバーに、リリスが事情を説明し、全員が"あの博士の奇行か"と納得する。

 

「私とレッドフードはもう自己紹介したから、みんな自己紹介して」

 

 近接戦闘部隊の緊張をほぐすため、リリーバイスが自己紹介を行うよう催促し.順次自己紹介を行っていった。その後、近接戦闘部隊も各々自己紹介を行い、和気藹々とした空気が流れる。

 

「何か質問があったら、言ってね。これから協同作戦を行う機会もあるかもしれないから、疑問は今の内に解決していた方がいいでしょ」

 

 リリーバイスがそう提案すると、紅蓮がすぐに手を挙げた。薔花は嫌な予感がし、止めようとしたが一歩遅かった。

 

「では君たちの強さを教えてくれ。一対一で戦えば、自ずと分かるであろう」

 

 そう言うと徐に腰に携帯した鞘から刀を抜いた。引き抜かれた赤い刀身は部屋の薄暗さも相まって、より一層濃さを増していた。

 

「レン、時と場所を考えなさい」

 

「??それは後にしない?」

 

 薔花が咎め、リリスが軽く困惑する。さっきまで良い雰囲気だったのに、一瞬で変な空気になってしまった。レッドフードが話題を変えようと発言する前に、ドロシーが口を開く。

 

「失礼ですが、ここはそのような野蛮なことを行う場ではありません。あくまでこれからのための情報交換を行う場です。意図を汲んでください」

 

「ああ、すまない。少しはやってしまった。なにしろ昨日から君たちと戦うことしか考えられなくて、ずっと体が疼いているのだよ」

 

 刀を鞘に収めながら返答する紅蓮を、ドロシーは冷やかな目で見つめる。初手で戦いを挑むのも論外だが、量産型のくせに特化型に勝てると思っているなど愚かにも程がある。

 

「だいたいその棒切れで私たちと戦おうなど浅ましいにも程があります。スペックの差を理解して、もう少しきちんとした武器を持ってきてください」

 

「……今この剣を棒切れと言ったのかい?」

 

「ええ、そう言いました。そんなものを振る前に、撃たれるのが明白です」

 

 ドロシーとしては剣と銃の適正距離の違いとボディのスペック差を示し、紅蓮を諭すつもりだったが、それは紅蓮の闘志に火をつける結果となった。

 

「ならば試してみようじゃないか。君の銃撃が早いか、それとも私の剣が早いか」

 

「正気ですか?ここまで野蛮だとは驚きました」

 

 紅蓮が不敵に笑い、それをドロシーが睨みつける。双方剣呑な雰囲気が流れており、一触即発の状態であった。さすがにまずいと感じ、指揮官が止めに入る。

 

「二人とも落ち着け。そういうのは後にしろ」

 

 紅蓮とドロシーは指揮官の命令に渋々従い、お互いに謝罪し距離を取る。あたり一帯に重苦しい空気が流れ、リリスが流れを変えようと近接戦闘部隊の面々に質問を行うが、回答の歯切れが悪く、流れを変えることはできなかった。

 

 気まずい雰囲気が漂う中、レッドフードが口を開いた。

 

「よし、紅蓮!あたしと戦おう。あたしも昨日から戦ってみたいって思ってたんだ!」

 

 周囲が急な提案に驚くなか、レッドフードは更に続ける。

 

「この研究所の外でやろうぜ!外庭が広いんだよ、ここ」

 

 そう言うと紅蓮の手を掴み、外に連れ出す。周囲は一瞬呆気に取られたが、そのまま二人を追って外に出た。指揮官は彼女たちを止めようと必死に叫ぶ。

 

「そこは私有地なんだぞ!せめて勝利の翼号の甲板で行うとかないのか!」

 

 空母型飛行船であり、且つゴッデス部隊の拠点でもある勝利の翼号は戦闘機を格納するために頑丈に、そして大きく作られており、外庭以上に戦闘に適していた。

 

「指揮官、勝利の翼号は改修中で今使えませんよ。あと私たち、あの博士に散々迷惑かけられてるので、ちょっとくらい迷惑かけてもいいんじゃないですか?」

 

 そばに控えていたリリーバイスがあっさり切り捨てる。彼女としても早乙女博士に思うところがあったようだ。指揮官もその言葉に強く同意する。

 

「それもそうだな。私は博士の許可を取ってくる。あの二人を頼めるか?」

 

「わかりました。では行ってきます」

 

 リリーバイスはそう言い終えると、すぐに外に出て行った。その姿を見送った後指揮官は早乙女博士へ連絡を送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 雲一つない青空の下、外庭に出たレッドフードと紅蓮はいつでも戦えるよう武器の点検を行っていた。模擬戦であるため、刃を潰した剣とゴム弾に取り替えられている。リリスから指揮官が来るまで待つよう指示があり、2人ともその時を待っていた。暫くして紅蓮が静かに口を開いた。

 

「レッドフードだな。君には感謝を」

 

「何に対しての感謝だ?紅蓮」

 

 真剣な表情で感謝を伝えてくる紅蓮に、レッドフードはにやけ顔で応じた。感謝を告げられるのは意外であったため、ほんの少しからかった。もちろん何に感謝しているのかは理解している。

 

「色々だ」

 

 紅蓮は無愛想に短く切ると武器の点検に戻った。"意外とシャイなんだな"と彼女の評価を改めながら、レッドフードも武器の点検に戻った。

 

 5分くらい経過した頃に、指揮官が外庭に出てきた。

 

「隊長遅えぞ。迷子にでもなってたか?」

 

「いや、君たちの戦いを見たいという人が居てな。その人を迎えに行って時間が掛かったんだ」

 

 すると指揮官の後ろから、白衣を着た老人が出てきた。豊かな毛髪の早乙女博士とは違い、落武者のように禿げており、何故かネジが一本頭から飛び出ていた。

 

「ワシの名は敷島じゃ!さあ思う存分ニケ同士で殺し合え!!そしてワシにインスピレーションをよこすんじゃ!!」

 

「?模擬戦だぞ!?」

 

 急に興奮し出した敷島博士にレッドフードが食い気味に突っ込む。周囲もコイツヤベェと思いながら静かに見守る。そんなことお構いなしに敷島博士は続ける。

 

「どんな形で殺すんじゃ!?そのデカい銃で脳漿をぶち撒けながら撃ち殺すのか、それともそっちの刀で目、耳、鼻を順番に削ぎ落としてた上で斬り殺すのか!?それとも!それとも!!」

 

「おい隊長、コイツ何なんだ?」

 

 早口で捲し立てる敷島博士にドン引きしながらレッドフードが指揮官に尋ねる。指揮官は嫌そうな顔をしながら答えた。

 

「敷島博士は兵器開発を担当されている方だ。少々アレだが、頭脳は本物らしい」

 

 どうやらコイツもマッドサイエンティストらしい。この研究所に勤めている博士は基本的にやばいとレッドフードは結論づけた。

 

「あ〜、そろそろ本題に入らないかい?」

 

 痺れを切らし、紅蓮が割って入る。この博士のペースに巻き込まれたなら、試合の時間がかなり遅くなると考えての行動であった。

 

「許可は下りた。ただし、これより一時間後ゲットマシンの飛行訓練があるため訓練の支障をきたさない範囲で、とのことだ」

 

「承知した」

 

「オーケー」

 

 レッドフードと紅蓮はお互いに約5メートル距離を取り、戦闘態勢をとる。

 

「はーい、私が審判ね。先に一撃与えた方が勝ち。あと、頭は狙わないように。それじゃ準備はできた」

 

 リリーバイスが審判に立候補し、勝利条件と注意事項を伝えていく。

 

「いつでも」

 

「あたしも大丈夫だ」

 

 紅蓮とレッドフードの両名が静かに応える。戦いに加わらないゴッデス部隊と近接戦闘部隊のメンバーは指揮官と共に、二人の状態を固唾を呑んで見守る。敷島博士はビデオカメラを設置し、撮影を始めた。

 

 紅蓮とレッドフードの準備が万端であることを悟り、リリスは試合開始の宣言を行う。

 

「それじゃ、始め!!」

 

 試合開始の合図と共に、レッドフードの対物ライフル、ウルフスベインが火を吹き、緋色の弾丸が紅蓮に向かっていく。本来であればこの一撃で決まっていただろう。

 

「はぁっ!!」

 

 紅蓮は気合いの入った掛け声と共に、その弾丸を横一閃で真っ二つにした。ゴッデス部隊の面々だけでなく、近接戦闘部隊の一部もこれには驚いており、歓声が飛ぶ。

 

 レッドフード自身も面食らい、ほんの少し固まってしまった。その隙を逃さず紅蓮が一気に距離を縮め、首筋に一閃を放つ。

 

「な…!」

 

 レッドフードはその一撃をライフルの銃身で受け止め、お返しとばかりに横腹に蹴りを入れる。紅蓮は蹴りをバックステップで回避し、距離を取った。冷や汗をかきながら、レッドフードは紅蓮に言葉を投げ掛ける。

 

「やるじゃねえか、センセイ!弾丸を斬ってくるとかマジかよ」

 

「私もできるとは思っていなかった。姉さんであれば、もっと余裕を持って斬っていたであろう。それに君も私の剣速を目で追っていたじゃないか。お互い様というものだ」

 

 紅蓮は言葉を言い終えると、すぐさま攻撃に移る。今度は左肩から右脇腹まで袈裟斬りにしようと上段に振りかぶり、高速で接近する。

 

 レッドフードはその動きを予想しており、紅蓮の足元に銃弾を撃ち込み、足場を崩壊させ、バランスを崩させる。バランスが崩れたのを見計らい、また一発発射するが、今回も刀によって切り捨てられる。

 

 しかしレッドフードは弾を斬ったことによって、刃こぼれが生じているのを見逃さなかった。紅蓮もそこには気づいているようだった。

 

「おいおい、刀ちゃんと点検してんのか?刃こぼれしてっけど」

 

「私の未熟な剣の腕ゆえだな。だが君もその銃の装填数はいくつだ?発射間隔から推察するに、そこまで装填されていないようだが」

 

「いやいや、あたしの銃の装填数は無限だから」

 

 ウルフスベインの装弾数は六発であり、既に三発消費している。おそらく刀はあと二発で折れると考えられるが、紅蓮は弾速を見切る技能を持っており、そう易々と当たってはくれないだろう。その上弾切れでリロードなんてしようものなら、一瞬で距離を詰められてゲームセットである。レッドフードはそこまで考え上げた上で、勝利条件は距離を離した上で、三発以内に紅蓮に当てる、もしくは刀を破壊することだと結論づけた。そして敗北条件は、刀を破壊しきれず、弾丸が尽きたときだとも。

 

 紅蓮に先手を打たれる前に、レッドフードはウルフスベインで狙撃した。避けにくい右膝を狙っており、紅蓮は仕方なく刀を使う。今度は刀身にヒビが入った。

 

「くっ!!」

 

 弾丸を斬った後紅蓮は、ジグザグに進むことによって狙いを定めにくくした。彼女もあと一発で刀が折れることを理解しており、弾がなくなるまで全弾避ける方針に切り替えたようだ。

 

「予想済みだぜ!!」

 

 予め予想していた場所に紅蓮が来たのと同時に、二発目の弾丸を発射した。かろうじて避けたようであったが、バランスを崩し、動きが止まった。

 

「チェックメイトだ!」

 

 最後の弾丸を発射し、刀を破壊しにかかる。弾がなくなったとしても、ブラフを利かせて、降参させることができると踏んでのものでもあった。

 

「ふんっ!!」

 

 甲高い金属音がなった後、レッドフードは刀の状態を確認した。

 

 刀はヒビが更に深くなっているものの、折れてはいなかった。

 

「なっ!!」

 

「斬っているうちにどうやら上手い斬り方を会得していたらしい。その様子だともう弾はないな」

 

 淡々と紅蓮は答えると一直線にレッドフードに向かっていく。ウルフスベインで受け止めようとするが、その前に紅蓮に蹴り飛ばされてしまった。

 

「これで終いだ!!」

 

 紅蓮はレッドフードに向かって刀を振り下ろす。紅蓮は勝ちを確信したが、次の瞬間信じられない光景を目にした。

 

「真剣白刃取りぃぃぃ!!」

 

「馬鹿な!」

 

 レッドフードは最後まで諦めず、素手によって刀の攻撃を防いだ。そのままヒビの入った刀を折ると、紅蓮の顔目掛けて拳を叩き込んだ。

 

「!!」

 

 紅蓮はそのまま吹き飛ばされ、何回か転がった。レッドフードの勝利である。その戦いぶりを観ていた外野もここ一番の歓声を上げる。

 

「おっしゃ、あたしの勝ち!!」

 

「いいえ、あなたの反則負けよ」

 

 興奮するレッドフードにリリスが冷水を掛ける。ルールでは頭への攻撃は禁止であり、事前に説明を受けている。

 

「マジかよ、そうだった…」

 

 肩を落とすレッドフードに紅蓮が近寄り、声を掛ける。

 

「私の負けだ。見事な戦いぶりだった」

 

「そっちこそな、久しぶりにピンチだったぞ」

 

 お互い健闘を讃え、握手を行いながら紅蓮は続ける。

 

「だが、次に勝つのは私だ!」

 

「いいや、次もあたしだね」

 

 お互い軽口をたたきながら、次の戦いに想いを馳せた。興奮の冷めない外野をリリスが纏めようとした時、敷島博士が叫んだ。

 

「がははは、見事じゃ!見事じゃ!!見事じゃ!!!誰も死ななかったのは減点じゃが、ここまで興奮する戦いは初めてじゃ!ビデオに収めてよかった。これで次の研究に活かせるわい、だあああ〜はははは!!」

 

 全員が敷島博士の存在を忘れていたので、反応が少し遅れた。そのまま敷島博士はレッドフードに近づき、武器に関する質問を飛ばす。

 

「その武器の仕組みはどうなっておる?武器の機構は?最大射程範囲は?それに弾の種類は何じゃ?それにそれに!!!」

 

「だあー、もううるせえぞ、ジジイ!!」

 

 急に捲し立て始める敷島博士に、レッドフードはイラついて怒鳴りつける。ただし効果は薄く、尚も質問は続く。それを見かねたスノーホワイトが助け舟を出した。

 

「あの、その武器は私が作ったので、私に聞いてください」

 

 それを聞き、敷島博士はスノーホワイトに質問を投げ掛けていく。一通り質問を行い、疑問を解消した後、敷島博士はスノーホワイトの両肩を突然掴んだ。

 

「ヒィッ!」

 

「お嬢ちゃんは武器作りの天才じゃ。ワシが認める。じゃが、足りないものがある。それは何じゃと思う?」

 

「ええ〜と、何ですか?」

 

 急に迫真な声で尋ねられたスノーホワイトは小さな声で尋ね返す。敷島博士はやれやれと首を振った後答えた。

 

「そう…人間をいかに大量に、そして残虐に殺せるかという観点じゃ!!!」

 

「はいっ??」

 

 この時敷島博士以外の全員の心は一つになった。"コイツ、ヤバいを超えて終わってる"と。更に敷島博士は続ける。

 

「どうやらその様子じゃと、美しい殺し方を一つも知らないと見える。ワシのラボに案内しよう。そこで、ワシが考案した美しい殺し方を徹底的に伝授してやる!!」

 

 そう言い終わると、スノーホワイトを小脇に抱え、早速早乙女研究に駆け込んだ。「何で人間がニケ運べるんだ?」という疑問が一瞬全員の頭を駆け巡ったが、リリスの声に引き戻される。

 

「皆んな、急いでスノーを取り返すわよ!あんなヤバいヤツに染められる前に!」

 

 全員はっとし、急いで敷島博士を追い、早乙女研究所に入って行った。残された指揮官は"連れてくるんじゃなかった"と静かに後悔した。

 

 結局追いかけっこは約一時間程度続き、レッドフード、紅蓮、ラプンツェルの三名は訓練に少々遅れることとなった。

 




すいません、次週投稿できないかもしれませんのでご了承ください。

あと敷島博士のエミュ大丈夫でしたか?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。