ゲッターロボGODDESS   作:ノーボディ

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先週投稿できなかった分です。クリスマスプレゼントとしてお楽しみ下さい。


第6話 飛行訓練

「早く来い。定刻を過ぎている」

 

「あんたのとこのイかれたジジイのせいで遅れたんだ!何か言うことあるだろ!」

 

 淡々とこちらに来るよう命令する早乙女博士にレッドフードは噛みついた。本来の予定時刻に遅れたのは、敷島博士によるスノーホワイトの拉致未遂が原因となっている。敷島博士が繰り出す対ニケ用の催眠ガスやサイボーグ化された四肢から放たれるミサイルと銃弾の雨には大いに苦しめられた。挙句のはてには目からレーザーを放つなど、最早人ではない何かであると全員認めざるを得なかった。

 最後はリリスが最大出力を出して、何とか捕まえることに成功した。捕まった後も敷島博士はニケの体をまさぐるなどの奇行を続けたため、リリスの本気のパンチをくらい気絶することになった。

 

「敷島博士は天才だったであろう?」

 

「あぁ、間違いなく天才だよ。頭がおかしいという意味でな」

 

 今まで色々な任務を受けてきたが、ここまで苦労したのは初めてであった。とりあえずスノーホワイトが改造される前に、取り返せてよかったと安堵していた。そんな心情を知らず、早乙女博士は淡々と述べる。

 

「レッドフードはイーグル号、紅蓮はジャガー号、そしてラプンツェルはベアー号だ」

 

 今いるのは、レッドフード、紅蓮、ラプンツェルの3名のみであり、その他のメンバーは敷島博士との追いかけっこによる疲れを癒すため、各々休めるところに戻っていた。

 レッドフードは早乙女博士が指さした方向に目を向けた。それは戦闘機というより赤いレーシングカーと言われた方がしっくりくるような形状をした機体であった。白色のジャガー号や黄色のベアー号も若干の違いはあれど、概ねそのような感じであった。それらが研究所内部の三段式の発射台に、上から順番に乗っている。

 

「珍妙な形だな。あれで飛べるのか?」

 

「問題ない。既に飛行実験は成功している」

 

 紅蓮からの疑問に答え、早乙女博士は整備士にゲットマシンを動かすよう指示を出していく。3人もそれぞれのゲットマシンに案内され、搭乗することになった。ゲットマシンの内部は、夥しい計器の中にレバーが左右に2つと真ん中に丸いモニターがあるといった一風変わったものだった。

 

「今回の飛行訓練はゲットマシンの速度と重加速度に慣れることだ。今回は全員オートパイロットにしておけ」

 

搭乗した3人に、早乙女博士がモニターを通して今回の目的を伝える。すぐに全員頭の中に挿入された情報に従い、オートパイロットに切り替えていく。

 

「では1分後に飛行訓練を行うが、全員準備はいいか?」

 

「イーグル号、オーケーだ」

 

「ジャガー号、問題ない」

 

「ベアー号、大丈夫です」

 

 全員問題がないのを確認し、早乙女博士は飛行訓練までのカウントダウンを始めた。それを聴きながら、レッドフードは初めて乗った時のことを思い出す。あの時はいち早く仲間の元に行くので頭がいっぱいで、無我夢中で操縦していた。なぜか操縦している時はずっと自分は"昔からこのロボを知っていた"かのような感覚があった。まるで最初から"それ"に乗ることが運命づけられていたかのような。そこまで考えてから、レッドフードは馬鹿らしいとその考えを捨てた。

 

 カウントがゼロになり、早乙女博士が叫ぶ。

 

「今だ!ゲットマシン、発進!」

 

 3機のゲットマシンのロケットが点火し、一気に発射台を駆け、空に飛び出す。音速を超えた速度によって生じた凄まじい重加速度が全身を駆け巡り、レッドフードは一度ゲッターロボを操縦したにも関わらず、一瞬意識が飛びかけた。

 

「全員意識はあるか!」

 

「あたしは何とか…」

 

「大丈夫だ…」

 

「はい、大丈夫です」

 

 早乙女博士の確認にレッドフードと紅蓮は息も絶え絶えに応えた。ラプンツェルは日課の祈祷によって培われた集中力と忍耐であっさり耐えた。

 

「ラプンツェル以外はへばったか。モニターで確認したが、ボディに目立った外傷は無し。コアも大丈夫そうだな」

 

 量産型を乗せた飛行実験では、最初の重加速度でコアごとボディがバラバラになることが多く、たとえ耐えられたとしてもその時のストレスで思考転換を起こしてしまうことが常であった。その第一の関門を彼女たちは乗り越えたのだ。早乙女博士にとっては最低条件に過ぎないが。

 

「では、訓練を続行する。異論はないな?この程度耐えてもらわねば困る」

 

「二人とも大丈夫ですか?」

 

 早乙女博士は訓練の続行を冷酷に告げ、ラプンツェルは2人の状態を心配そうに尋ねる。2人とも本音では速度を緩めて欲しかったが、ここで妥協するのはニケとしての自負が許さず、続行することにした。

 

「気にすんな!聖女サマ、あたしはほんの少し面食らっただけだ!」

 

「私もだ。もう少し速度を上げてもらってもかまわん!」

 

 ラプンツェルは2人の状態を何となく理解しているため、彼女たちが全力で意地を張ったことに若干呆れ、一応の忠告を行った。

 

「分かりました。ですが、あまり無茶はしないで下さい」

 

 その後、早乙女博士は彼女たちに負荷を掛けるために、雲の上まで一気に急上昇させたり、機体を高速回転させたりした。最初のうちは青い顔をしていた2人も暫くすると、慣れたようだった。

 

「おい爺さん。もっと速度上げられないか?退屈すぎてあくびが出そうなんだけど」

 

「よく言う。あんなに顔を引き攣らせていた癖に」

 

「そういうセンセイだって、産まれたての子鹿みたいに足を震わせてたよな」

 

「ほう、では確かめてみるか。早乙女博士、私からも頼む」

 

 訓練そっちのけで、意地の張り合いを始めた2人をラプンツェルが咎める。

 

「レッドフード!紅蓮!今は訓練中ですよ」

 

 ラプンツェルの注意をよそに、早乙女博士は冷静に彼女たちの状態を確認していた。ゲットマシンはオートパイロットで出せる最高速度に到達しており、その状況でも彼女たちに異常は見つからなかった。

 これであればゲッターの合体までいけるかも知れない。そう早乙女博士が考えた時、研究所員が早乙女博士の元に近づき、耳打ちした。話を全て聞き終えると、ゲットマシンに乗っている3人に無線を飛ばした。

 

「3人共、訓練はそこまでだ」

 

 2人程不満そうな表情であったが、オート操作で無事研究所の格納部に帰還した。全員が無事ゲットマシンから降りたのを見計らい、早乙女博士は全員を自身の元に召集した。

 

「連絡事項がある。まず、近接戦闘部隊のリーダー、薔花が異動する日程が決まった。明日の朝だそうだ」

 

 それを聞いた紅蓮の反応は顕著であり、掴みかかりに行く勢いで早乙女博士に詰め寄った。流石にまずいと、レッドフードとラプンツェルが早乙女博士の前に立ち、静止させる。

 

「早乙女博士!どういうことだ?そんな話は聞いていない!」

 

「やはり聞いておらんか。薔花は第二世代のフェアリーテールモデルとして改修を受けることが決まっておってな。明日エリシオン第3ニケ研究所に送られる」

 

近接戦闘部隊に情報が伝わっていないことは想定内であり、早乙女博士は抑止力となるレッドフードとラプンツェルがいる時に伝えることにしたのだった。

 

「しかし…」

 

「既に決まっていたことだ。後ほど改めて説明する。」

 

 尚も食い下がろうとする紅蓮を諭した後、早乙女博士はレッドフードとラプンツェルに向き直り、本題に入る。

 

「あとゴッデス部隊は明日急遽任務が入ったようだ。指揮官殿がこれからブリーフィングをモニタールームで行うようだから、詳しい話はそこで聞け」

 

 話を終えると、早乙女博士は格納庫から出ていった。残されたのはやるせない表情を浮かべた紅蓮とどう動けばいいか分からないレッドフードとラプンツェルであった。

 暫くして、紅蓮が格納庫の出口に向かって徐に歩き始めた。

 

「私は先に帰る。一人の時間が今は必要だ」

 

 そう言い残し、紅蓮は去った。

 

「とりあえず、あたしたちはブリーフィングに行くか」

 

「はい、そうしましょう」

 

 気まずい空気の中、2人はモニタールームに向かうのだった。

 




・思考転換
ニケの脳に多大な精神負荷が掛かることにより、記憶を失い、性格が大きく変化する現象。大抵の場合は攻撃的な性格に変わるかつ制御を受け付けなくなり、廃棄処分となる。主な要因としては、ラプチャーとの戦闘によるストレスや自身が人間でないと強く意識することが挙げられる。ゲッターロボのパイロットになるにはボディの性能だけではなく、戦闘によるストレスに耐える精神力も重要となる。
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