「クソッ、援軍はまだか?!」
ここはエリシオン第3ニケ研究所。突如としてラプチャーの大群によって包囲され、阿鼻叫喚の騒ぎとなっていた。警備の量産型ニケたちや防衛システムで応戦しているが、多勢に無勢であり、攻め落とされるのは時間の問題であった。
「落ち着いてください、エイブ。必ず援軍は来ます。だからそれまで持ち堪えましょう」
「落ち着いてられるか!第二世代型を全員起動しても勝てるかどうかも分からないんだぞ!上は一体何をしているんだ?」
赤いメカメカしいブーツを履き、白いレオタードを着たニケ、レッドシューズが宥めるが、ここの最高責任者兼第二世代型のニケの開発者、エイブは怒りが抑えられず、不満をぶち撒けた。
彼女たちは元々V.T.C.の主席研究員であり、各々の理由でニケ化し、第二世代型の開発に勤しんでいた。当初は多大な資金のおかげで、順調に開発が進んでいたが、徐々に人類連合軍とV.T.C.の権力争いが顕在化し、その弊害が研究にも出始めたのだ。部品が期日に届かないのは序の口で、視察の名を騙った粗探しや難癖、挙げ句の果てには事実無根の告発により開発が止められたことすらあった。予定は遅れに遅れ、当初の予定より半年経って、やっと完成したのだった。
「こんな時に限って、アイツらは……!!」
いつもは過干渉をしてくる連中がこちらが助けを求めた途端、ダンマリを決め込んだこともエイブの怒りを増幅させていた。レッドシューズも上層部には思うところがあるため、エイブを咎めることはしなかった。
「被害はどれくらいだ?」
「防衛システムの50%がダウン、量産型の皆さんの30%が、戦闘継続が困難な状態です。更にシェルター内部へのラプチャーの侵入が確認され、その対処にも追われています」
怒りを吐き出し、少し冷静になったエイブはレッドシューズに被害状況を報告させる。彼女の口から説明された状況は正に絶望的と言っていいものだった。
「そうか…。かくなる上は、第二世代型を全員起動させるしかないか」
「しかし、彼女たちはロールアウトすらできていません。そのため実戦経験はゼロ。戦力になるかどうかは怪しいでしょう」
レッドシューズの発言の後、お互いに沈黙した。ここまでお手上げな状況には彼女たちでさえ黙るしかなかった。
暗い雰囲気が張り詰める中、エイブが静かに口を開いた。
「せめて第二世代型だけでも逃す。研究所を取り囲むラプチャーの包囲網の、戦力が薄い所を一点突破する!」
「ですがそれは…」
苦言を呈しかけたレッドシューズはエイブの表情を見て口を噤んだ。彼女の瞳には強い覚悟が宿っていた。
「第二世代型は人類の希望だ。だからこそ量産型ニケはおろか、研究所内の人間よりも優先して守らなくてはならない。お前もそこは理解している筈だ」
この作戦を行えば、量産型の犠牲はかなりのものになるだろう。そしてこの研究所内の人間は生き残れない。しかし、第二世代型はゴッデスを凌ぐ戦力を有しており、彼らの命以上の価値を有しているのも事実であった。レッドシューズもそこは認めるところであり、涙を飲んでエイブの作戦に乗ることにした。
「逃げ込めれるところに当てはありますか?」
「遠くないところに早乙女研究所があった筈だ。そこなら安心して逃げ込めるだろう」
互いに覚悟を決め、第二世代型の起動に向けて動き始めた時、無線に連絡が入った。
「緊急です!レーダーに謎の飛行物体が高速でこちらに近づいてくるのを検知しました。」
「新手か!」
更なる状況の悪化にエイブは頭を抱えた。しかし無線の向こうの研究員はその言葉を否定する。
「いえ、コア反応が確認されないため、ラプチャーではありません。おそらく救援かと…」
「救援だと!数はどれくらいだ?」
「三機です…。早乙女研究所の方向から一機、その反対方向から二機来ています」
声に喜色を滲ませるエイブに研究員は恐る恐る事実を述べる。研究員はこの事実に彼女が落胆すると考えていたが、エイブは少し考えた後、その機体に目星をつけた。
「恐らく早乙女が研究していた兵器だ。ようやく完成したのか…」
以前から早乙女研究所は大量の軍人とニケを使い潰し、新たな兵器を作っているという噂が立っていた。V.T.C.内でもその噂は広まっていたため、嫌でも耳に入っていた。エイブは軍人達の経歴からおそらく戦闘機だろうと以前から考えていたため、今回その機体の正体を察知することができた。
「しかし、三機だけですか…」
「それは分からないぞ。少なくとも上層部は、形勢逆転の一手として高く評価しているようだ。何しろ動力源はあのゲッター線だからな」
援軍の少なさに落ち込むレッドシューズであったが、エイブの言葉を聞き、はっとする。
ゲッター線。突如として発見された新たなエネルギー資源。その存在は今までの常識を覆すものであり、これまでのエネルギー問題は全てゲッター線で解決すると言われる程の化け物エネルギーである。ほんの少しのゲッター線で、一国家が一年で消費するエネルギーを賄えるほどに。ただし技術の問題で実用化には三大企業はおろか、V.T.C.ですら至っていなかった。
「早乙女研究所はついにゲッターエネルギーの実用化に…」
レッドシューズ自身、ゲッター線の神秘に魅せられ、研究してきたため、僅かな嫉妬とそれ以上の崇拝が心の中を占めていた。
エイブは研究員に早乙女研究所と連絡を取るよう指示を出す。そして惚けているレッドシューズを起こし、第二世代型の起動に入った。
「早乙女、お前の新兵器がどれほどのものか?見せてもらうぞ」
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「遅いぞ!君たち!」
「うるせえ!!あたしらはな、仲間の置かれた状況を後回しにしてこっちに来てんだ!少しくらい感謝しろ!」
「2人とも喧嘩はやめて下さい!今は目の前の敵に集中するべきです!」
紅蓮がエリシオン第3ニケ研究所に到着してから、一分後にレッドフードとラプンツェルが到着し、早々喧嘩になっていた。
ラプンツェルが何とか2人を宥め、状況の把握に移る。
「小型と中型を機関銃で一掃しているが、あの空に飛んでいるクジラから何度も補充されイタチごっこだ。それに…」
3人共会話を切り、放たれたレーザーとミサイルを操縦桿を駆使して、回避に移る。
「このように空と陸から攻撃が何度も放たれるのでな、回避で精一杯だ。おまけに放ってくるのは大型で、ゲットマシンの兵器では撃破できないときた」
レーザーは四足のクモ型の大型ラプチャー"ハーベスター"、ミサイルは鷲型の大型ラプチャー"ストームブリンガー"から放たれており、それはまるでこちらを玩具のように弄んでいるかのようなものだった。
「舐めやがって…!」
こちらを敵とすら認識していない敵の様子に、レッドフードがイラつくが、そのタイミングで早乙女博士の無線が入った。
「3人共現地に着いたな。では合体に移れ!必要な知識はお前たちの脳に入っている筈だ」
「「「了解!」」」
これまでの実験でゲットマシンの重加速度に耐えられたニケはほんの少しだが存在する。しかし、ゲッターロボの合体シークエンスのタイミングの難しさや求められるコントロールの精細さにより、皆合体に失敗し、空の藻屑と化していた。
「いくぞ、お前ら!」
「おう!」
「はい!」
レッドフードの掛け声と共に、三機のゲットマシンが一気に急上昇する。まずベアー号がジャガー号とドッキングした。ベアー号のミサイルポートから足が伸び、ジャガー号の側面から腕のフレームが展開され、それを小型の金属チップが覆っていく。
「チェェェンジ!ゲッタァァァ!!ワンッ!!!」
レバーを押し込み、顔に変形したイーグル号をジャガー号に合体させた。その瞬間カメラアイに光が灯り、合体で生じた余剰エネルギーが稲妻となって周囲の空間を駆け巡った。
「ゲッター合体成功!!!」
早乙女博士の嬉しそうな声が狭いパイロット内で木霊する。今まで遊んでいたラプチャーも唯ならぬ気配を感じ、本気の攻撃を向ける。これまで以上のミサイルとレーザーがゲッター1に殺到し、当たり一面を爆風と煙で埋め尽くした。
「遅えよ。色んな意味でな」
音速以上のスピードで全ての弾幕を掻い潜り、近くのストームブリンガーの真正面に現れたゲッター1は、コア周辺を覆うバリアごとコアを貫手で抉り、そのまま地面に叩き落とした。
「まずは一匹」
動かなくなったストームブリンガーを一瞥した後、尚もこちらに放たれたレーザーを避け、撃ってきたハーベスターへ急降下する。
「ゲッタートマホーク!」
肩部からゲッタートマホークを取り出し、レーザーを刃面で防ぎながら一気に近付く。ハーベスターはレーザー以外の兵器も使用し迎撃を試みるが、ゲッターロボを構成するゲッター合金の前には何の意味も為さず、そのまま叩き切られ、爆発した。
「二匹目」
ゲッター1が残ったラプチャーへと目を向けると、ラプチャー共は怯えたように後ずさった。
「散々楽しんだだろ、お前ら。次はあたしらがお前らを狩る番だ!」
残ったもう一体のストームブリンガーは恐怖に突き動かされるまま雷をゲッター1に落とし、五体目の大型ラプチャー"ウルトラ"も毒液を発射する。
「そんな攻撃が今更通用する訳ねぇだろ!」
落雷をものともせず、ゲッター1は毒液を避ける。
「トマホークブーメラン!」
お返しとばかりに右手に持ったトマホークを高速で投げつけ、そのままウルトラを縦に真っ二つに斬った。そしてきちんとトドメを刺すため、2本目も投げ付け爆発させた。
「これで三匹目。ゲッターウィング!」
ゲッター1は反重力マントをはためかせ、残ったストームブリンガーへ飛び上がる。ストームブリンガーは全ての兵装を投入し、迎撃を試みた。しかしフェザーミサイルはゲッター合金の前に意味を成さず、頼みのストーム発生装置のストームもゲッターロボの出力の前ではそよ風に過ぎなかった。
「お前で四匹目だ!ゲッターレザー!」
そのまま肉薄され、左腕部に備え付けられた刃により、上下に切られ、恐怖の叫びを上げながら、爆散した。
「残るはあのデカいクジラか…。一気に行くぞ!」
ゲッター1を急上昇させ、高高度に鎮座している一回り大きなクジラ型のラプチャー"マザーホエール"に接近して行く。
「そのデカい腹、掻っ捌いてやる!」
ゲッタートマホークを勢いよく振りかぶり、マザーホエールに振り下ろすが、バリアに阻まれてしまう。
「エネルギー障壁?!」
ラプンツェルが驚きの声を上げるが、その間にマザーホエールは召喚ポートから小型ラプチャーを出し、ゲッター1に殺到させる。
「クソッ、キリがねえ」
ゲッター1もトマホークやレザーで大量の小型を撃墜していくが、召喚される数も同程度であるため、千日手であった。このままではクジラとやり合っている間に、研究所が落ちてしまうと考えたレッドフードはアレを使うことにした。
「仕方がねえ、ゲッタービームを使う」
かなり高威力の切り札をここで使うことを宣言したレッドフードに、ラプンツェルが警告する。
「ゲッタービームは威力が高すぎます。しかも今のゲッターロボは前回よりも出力がかなり上がっています。そんな状態で撃ってまえば、発生する被害は前回の比ではありません」
「このままだと研究所が先に落ちんだぞ!それを黙って見てろって聖女サマは言うのかよ!」
「そうではありません!それ以外の方法があるはずです!」
「んなもんねぇから、あたしは…」
「レッドフード!前を見たまえ!」
紅蓮の大声での注意を聞き、前を見ると夥しい数のミサイルが前方一面を埋め尽くしていた。急いで迎撃態勢を取るが、威力を殺しきれず、地面に一気に吹き飛ばされる。
「ガハッ…」
地面に叩きつけられた衝撃で、強く頭を打ちつけ、レッドフードは軽い脳震盪を起こした。モニターで他のパイロットの状態を確認すると、紅蓮もラプンツェルも頭から血を流していた。
「大丈夫か?!」
「問題ない!」
「すみません、私がレッドフードの気を散らしたせいで…」
「終わったことは気にすんなよ。聖女サマ」
3人共戦闘継続に支障はないが、打開策がないのは相変わらずであり、状況は最悪であった。そんな時無線に通信が入る。
「少々手こずっているようだな」
「耳が早いな、爺さん」
「そこの研究所の責任者と連絡を取っておってな。その間物凄い地響きが発生したのでな、お前たちに繋いだのだ」
レッドフードは今までの経緯と直面している問題を早乙女博士に説明した。一通り聞き終えた後、博士はため息をつき、呆れたように話し始めた。
「たかが大型ラプチャーごときで、このザマとはな。儂が作ったゲッターはその程度の敵など一瞬で殺せる性能をしておる」
「じゃあ、打開策があんのか?ゲッタービーム以外で」
「ゲッター2のドリルを使え!それでヤツのバリアを破壊しろ!」
「そう言うことね。センセイ、いけるか?」
以前ゲッターロボを操縦したことがあるレッドフードに対して、紅蓮は初めてである。そして今彼女はほんの少しの緊張とそれ以上の高揚感を味わっていた。最後まで自身の出番は無いと思っていたが、どうやら最後の最後で出番のようだ。
「勿論だ!やはり姉さんは私自身の手で助けたい!」
「オーケー。いくぜ!オープンゲット!!」
紅蓮の覚悟を聞き、レッドフードはレバーの側面のボタンを押し、ゲッター1を三機のゲットマシンに分離させる。
「チェンジ!ゲッター!ツー!!」
紅蓮が右手のレバーを強く前に押し込む。
飛び立ったゲットマシンがジャガー号、ベアー号、イーグル号の順に合体し、ゲッター2が地面に降り立つ。
赤色の細い脚部と白色の細身につばの少ない白いとんがり帽子を被ったロボットであった。右腕部には巨大なパワーアーム、そして左腕部には巨大なドリルが付けられている。
「ドリルアーム!!!」
左腕のドリルを高速回転させながら、背中に格納されたロケットと脚部スラスターを点火させ、マザーホエールのコア目掛けて一直線に飛び立っていく。その速度はゲッター1の速度を上回り、一瞬でバリアと激突した。
「はあああああああ!!!」
ゲッター2はドリルを突き立て、バリアを削っていく。マザーホエールも異変に気がつき、ラプチャーを急いで召喚していく。
「いけえええええ!!!」
「頑張ってください、紅蓮!!!」
「負けるかああああ!!!」
3人の感情に呼応して、ゲッター2のカメラアイが一瞬強く輝き、ドリルの回転数とロケットとスラスターの勢いが一気に増した。そして遂にバリアにヒビが入り、そのままバリアを突き破って、コアごとボディを貫通した。
マザーホエールは動力源を失い、悲痛な叫びを上げながら、徐々に落下していく。研究所に向かって…
「あとは君に任せる。オープンゲット!」
「いきなりかよ!チェンジ!ゲッターワンッ!!」
紅蓮の即席の分離に対応し、ゲッター1の合体を成功させたレッドフードは、マザーホエールにゲッター1を体当たりさせ、進路をずらす。
「これで最後だ!!!」
最初はトマホークを取り出そうとしたレッドフードだが、何かを思いついたような顔をした後、マザーホエールのボディに空けられた穴にゲッター1を飛び込ませた。
「ここなら問題ねぇ!
ゲッタァァァ!!ビィィィィム!!!」
そして腹部の発射口を開き、ゲッタビームを放った。
マザーホエールの内部で放たれたゲッタービームは内装と載せられていた小型ラプチャーを一気に溶かした。溢れたゲッターエネルギーがマザーホエールの全身から緑色の光となって飛び出し、マザーホエールは絶叫を上げながら、周囲のラプチャーと共にゲッター線の光に呑まれていった。
「あたしたちの勝ちだな!」
マザーホエールが光となって消えた後に、無傷のゲッターロボが現れ、勝鬨を上げた。
「はあ〜。後は雑魚だ。ゲットマシンで各個撃破していくとしよう」
「分かりました。ではレッドフード、分離をお願いします。あと全て終わったら、話があります」
「お、おう…」
紅蓮は呆れ、ラプンツェルが静かに激怒していることを察したレッドフードはすぐさま分離を行い、戦々恐々としつつ、真面目にラプチャーの掃討を行ったのだった。
・ゲッター2
陸戦特化の形態であり、最もスピードに優れている。ジャガー号、ベアー号、イーグル号の順に合体し、メインの操縦はジャガー号のパイロットが行う。主な武装は右腕のパワーアームと左腕のドリルであり、マッハ3以上の速度で翻弄しながら戦う。ドリルを発射することも可能。また、ドリルで時速300kmで地中潜航することも可能である。