好きとかとちゃうし!   作:白米おじさん

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本編完結です。
長らくのお付き合い、ありがとうございました。









借家:好きとかとちゃうよ。

 洛風が借家街へ飛び込んだ時、周囲は既に人の子ひとり、猫一匹ですらおらず、悲しい程の沈黙が走っていた。鎖国前は穏やかな灯を宿していた家々も今や物静か。隣のフォンテーヌ人、お向かいのスメール人、そういう人々を思い出しながらも、洛風は慣れた石畳を駆けた。

 角をみっつ曲がって、奥から二番目の家。海の向こうに璃月が微かに見える借家。

 己が家に辿り着いても、やはりそこは真っ暗に沈黙している。

 

(トーマのやつ、慰めのつもりで嘘ついたんやなかろか……)

 

 とはいえあの真摯な男が──それも数年にわたって片思いの相談役であった彼が──だまし討ちなどするわけもなし。

 洛風は期待するような、それでいて失望に備えるつもりで、玄関引戸に手を掛けた。

 ──果たして、勝ったのは期待であった。

 

 いくらあちこち開放的な稲妻式住宅とはいえ、玄関は鍵を閉めるのが普通だ。それが開いていたのだ。

 ……本当に宵宮が来ているのかもしれない。抜き足、差し足……音を立てずに中へ入り、土間を通り過ぎる。嗅ぎ慣れた火薬の匂いが旧い思い出を蘇らせていく。

 あの日、宵宮に見送られた冬の日の続きのようだ。ただいま、と口の中で呟いて。靴を脱ぎ捨て、(はや)る心臓を押さえながらも障子を引いた。

 

(…………あ、…)

 

 実際に声が零れたかどうかも分からないまま、洛風はただ茫然と部屋の中を見下ろした。見慣れた荷物や小物類など視界には入っていない。洛風の狐目の先は、部屋の中心で眠る人影、ただ一点だけだった。

 腕の中に男物の外套を抱え込んだ細い腕。小さくこんもりとした服の山の中で綺麗な金髪が流れている。

 障子の隙間から差し込んだ月明かりに照らされて、星屑のように煌めいていた。

 

(……大人になったなァ、)

 

 毎日のように成長を見ていたあの頃は気付いていなかったけれど。少女の成長とは早いものだった。

 眦に映える鮮やかな赤色。外套を握り締めている指先も爪紅で彩られていた。化粧(けわい)の似合う年齢になったのだ。

 それだけではない。尻端折(っぱしょ)りをした臀部の下に伸びるのはむっちりと柔らかな太腿。艶やかな腰の括れも、彼女が成熟したことを知らしめている。

 肉感、である。

 イヤしかしちょっと引っ叩きたいくらいに無防備すぎる。玄関を開けたまま寝るなだとか、男は狼なんやからって教えたやろとか、いろいろ言いたいことはあるけれど。洛風は何も言えないまま立ち尽くす。

 

 ……すぅすぅと小さな寝息だけが、彼女の幼さを醸し出していた。

 あまりにも無垢で、あまりにも可愛くて。愛おしいという感情に形を作るなら、きっと彼女の色をしていることだろう。

 

(ドゥワ~~、据え膳……いや…あかん、あかんって、しゃんとせぇ…)

 

 洛風とて男である。想い人のやわ肌に視線を奪われるのは致し方なし。初恋を拗らせた三十路手前(アラサー)童貞にはちっとばかし……いやもうめちゃくちゃに刺激が強かった。

 このままでは縋りついて唇を奪いかねん。洛風は視界に収まり切れないほどの豊満な乳房から必死に狐目を逸らし──同時に、くらりと脳が揺れる感覚にたたらを踏んだ。

 船酔いに似た感覚。風元素の力を借りたことで三半規管が狂ったのだろう。期待感で誤魔化されてはいたが、冷静になろうとすれば流石に不調には気付くもので。

 

(いったん引こ、せや、トーマのところで休ませてもらったらええわ……)

 

 ふらついた状態で再開したくない思い半分、欲を抑え込む時間が欲しい思い半分。どれも男として、大人としての、浅ましくてみっともないプライドだった。

 洛風は来た道を戻るようにして踵を返し、眠る宵宮に背を向ける。

 綺麗に掃除された床板に爪先を滑らせ、開いた障子の隙間から式台へ降りた。

 そっと踏み出た足の下で、ギィ、と鈍い床鳴りがした。木造住宅にはままあることだ。前からずっと鳴っていた、悪い場所やからなァ、と、ぼんやり考えて……。

 

「──……だれ?」

 

 動きが止まる。ア、しまった、なんて思う暇もない。

 起こしてしまった。起きてしまった。なんや、いつも昼寝するときは寝汚いくせに。

 しゅる、と、衣擦れの音がする。彼女が外套を取り落としたのだと、見ないでもわかった。

 長く重い沈黙。心ノ臓がまろびでてしまいそうなほどの緊張。耳の穴が痛い。宵宮の一挙一動を聞き逃すまいと、聴覚を冴えさせているのだ。

 このまま眠ってほしい。──すぐ帰ると言って、二年、ずぅっと置いていたのだ。せめて外面を繕ってからでなければ、合わせる顔がない。

 しかし現実は非情だった。洛風の耳には、「──るぉふぇん、」と。鈴のような音で名を呼ぶのがハッキリと届く。

 

「ッ、」洛風は咄嗟に逃げようとして。

「いやッ、行かんとって! 待ってぇ!」──どんっ、と軽い衝撃が背を襲った。

 

 跳び起きた宵宮がしがみついてきたのだと気付くのは早かった。背にもっちりと当たる柔らかな感触。熱い肌。華奢な女子(おなご)の体重。ふらつく足元──それらすべてが一気に洛風の脳を焼く。

 式台を降りて逃げようとしていたのだ。押されて行く先は硬い土間。しかも二人分の体重を受けて落ちたら()しガエルもいいところだろう。つまるところ、走馬灯である。

 

「──ッぶな、いッ!」

 

 咄嗟に振り返り、部屋の中へと逆戻り──しかし勢いを殺しきれず、洛風は宵宮を背に引っ付けたまま床へすっ転んだ。年下の想い人に傷をつけるわけにはいかず、どうにか腕を引いて抱きしめて庇う。結果、肩を強かにぶつけたが、不思議と痛みは感じない。

 床に転がった痛みなんかよりもずっと、胸元が湿っていく感覚の方が強かった。

 腕の中の宵宮が、ひぐひぐと喉を締め付けて泣いている。さみしかった、と小さく呟いている。想い人の悲痛な涙に洛風の心臓は酷く痛んだ。冷静になるまで待とうとか、ちょっと外に出て、とか、そういう安っぽいプライドなんてもういらない。肩を震わせ泣く想い人を置いて行けるほど、洛風は大人ではないのだ。

 かといって、寂しがりやなァ、とか。そんなに会いたかったん? 何て言えるほど、子供でもない。

 もう何も言えないまま、強く抱きしめる。──嗅覚とは人の記憶に一番深く染みつくものだという。洛風の脳はもう想い人……宵宮に支配されていて。ああ、素直になってもいいか、と。抱きしめる腕を強めた。

 

「るぉふぇん、洛風、…っ、」

「宵宮」

「…ぐす、」

「僕もずっと会いたかった」

「ぁ…っ、」

「待たせてごめんなァ」

「…っ遅いわ、あほ…ッ!」

 

 いつもならば殴られているタイミングだというのに、宵宮は(えり)にしがみ付いて泣くばかり。陽だまりのようなこの子を泣かせてしまった心痛が身を襲い──せめて少しでも安心できるように、と、洛風は背を撫で続けた。

 

 

 

 ────やがて、月が雲で陰る頃。

 洛風は痛む頬を撫でながらも、宵宮の金髪を手櫛で梳いていた。

 〝ほら鼻水出とうよ。チーンしぃ〟

 〝この期に及んで子ども扱いしなや(しないで)あほッ!ボケッ!ばか!〟

 ……という会話を経て、盛大に平手打ちを食らっていたのである。

 マ、彼女を待たせ泣かせたことは事実。一発、二発程度ならば許容範囲だ。多分、泣きすぎて冷静になったから恥ずかしかったんだろうなァという、想い人の可愛らしさに緩んだ頬が引き締まるいい機会でもあった。

 

 さて。これからどうしよう。──三十路手前(アラサー)初恋拗らせ(チキン)童貞(ボーイ)の洛風は苦々しく眉を顰めて悩む。

 据え膳食わぬは武士の恥というが、洛風は武士ではない。感動の再会を経たわけだし、宵宮は家に帰してやらねばなるまい。とはいえ離島は現在鎖国令により見張りが立っているとのことで、しかも宵宮の家(花見坂)までは徒歩二時間かかるのだ。こんな夜更けに帰らせるわけにはいかなかった。

 洛風は男だ。ひと晩程度寝ずとも支障はないし、なんなら元・離島住み。古い知り合いを探しにいってもいい。

 

(宵宮はここに寝かして、いったん外に出たほうがええやろな……)

 

 鼻を啜る宵宮の背を撫でながら、洛風はぼぅっと考える。イヤ別に、胸板に当たる豊満な乳房の感触だとか、指先を滑る伸びた髪の柔らかさだとか、そういうのに思考回路が焼かれたとかいうわけではない。そうじゃないったらないのだ。

 脳裏に走る思考を、仕事の仕込みだとか昨日の夕食といったどうでもいいもので誤魔化しながら、洛風は……ほな僕はこれで、と口を開きかけて……。

 

「…な、洛風、」…と。先に言ったのは宵宮だった。

「うん?」

 

 動揺が悟られぬよう、洛風は端的に応える。胸元を見下ろせば、泣きすぎて赤く腫れた眦の想い人がじっと見上げていた。上目遣いの丸い瞳。ときめく心臓と興奮しかねない愚息を必死に抑えながら、洛風はもう一度、「どないしたん」と問う。

 

「洛風は、さぁ……」

「ん?」

「まだ好きな子、おるん?」

「──、っげほ、…」

「どうなん?」

 

 ──お前やがな、この小娘! 小悪魔!

 なんてことを叫ぶわけにもいかず、洛風は奥歯をギッと食いしばり……やがて、大きなため息を吐いた。

 

「……おるよ」

「城下町の子やろ」

「せや」

「な、その子のこと、忘れてよ」

 

 息を飲んだ洛風とは裏腹に、宵宮はまたほろほろと涙を零して言った。

 

「好きな子のこと、わすれてよ。なんもおらんかったことにして」

「……」

「ほんで、……うちのこと、好きになって」

 

 願望が引き起こした幻聴か。そう疑ってしまう程度には、洛風の片思いは拗れている。

 はじめから。好いてくれていることは分かっていた。

 鈍感の頂点を極めた宵宮が想いを自覚することは無いんだろうなと諦めてもいた。

 いつかこの子が誰かと結婚するとき、相手をぶん殴って、泣いて泣いてゲロ吐いて終わる恋なんだろうなとも、ほんのり思っていた。

 それが………なに? 宵宮が恋を自覚したうえで? 僕に好きになってって我儘を?

 

(…………ぼく、きょう、しぬ……?)

 

 不安げに見上げてくる宵宮の金の瞳と、しがみ付かれた衿元が、これは現実だと言っている。

 洛風はハクハクと口を開いては閉じ、どうにか喉に空気を通して……(もうこれええやろ告白して。宵宮も自覚したんやし。)と、完全なる開き直りに至る。

 問題があるとすれば──洛風は璃月人である。人生の半分以上を稲妻で暮らしてはいるが、授かった神の目は璃月模様。多少の文化概念は稲妻に寄りつつあるものの、生死観や恋愛観は璃月のものであった。

 だけどまあ構うものか。好いた人に好いていると伝える思いに違いはない。

 洛風は眦を細め、居心地悪げに頬をかく。

 

「……忘れるんは無理な相談やな…」

「なんで、…なんでなん、そんなにその子がええの……?」

 

 胸元にしがみ付いた宵宮の指に力が入る。

 小さな声だ。しかし酷く悲痛な、恋に苦しむ乙女の嘆きだった。

 

「その子やって、きっとええ子なんやろ、あんたが好きになったんやもん…」

「宵宮」

「でも、うちやって、うちも、…っうちのほうが! ずぅっと好きや!」

「宵宮、聞きよ」

「いややッ! うちのこと好きって言ってぇ…!」

 

 好きなんて言葉では足りない。

 もっと本心から。本能から、想いを伝えたい。洛風はすぅ、と息を吸い──。

 

風雨摧折(幾度雨風に拒まれても)願帰於君(君の元に帰るから)、」

「──……はぁ??」

執子之手(君の手を取り)與子偕老(共に老いるまで生きたい)

 

 璃月で古くから親しまれている求愛の言葉だ。これ以上ない程の愛情と、生涯を奉げる覚悟の意味を持つ。

 照れて赤くなった洛風の顔とは裏腹に、宵宮はぽかんと間の抜けた顔をして、数度瞬き──眉尻を怒りの形に釣りあげて叫ぶ。

「す、好きって言うてって、言ったやんか!」

「もう言うた」

「──?、」

 小首を傾げた額から金色の髪がさらりと揺れる。ずっと()(ねが)った髪だった。泣いて腫れた眦。瞳の奥に大輪が咲いている。金色の睫毛が上下に揺れて、途惑っているのが見て分かる。だけど洛風は説明などしなかった。

 する余裕すらなかった。

 まろい頬を撫で、手のひらで包むように添える。洛風は口を寄せた。

 

 ──薄く、しかし、柔らかな唇へ。

 

 

 

***

 

 

 

 

 なんだか暖かく……そして硬いものに包まれているような気がして、宵宮の瞼がぱちりと開いた。

 寝起き特有の穏やかな眠気。深く息を吸う度に身体の力が抜け、心地よさで微睡む。二度寝なんて贅沢な朝や、と、瞼を閉じて──「ふぎゅっ、」と情けない悲鳴を上げた。鼻をむぎゅっと抓まれたらしい。

 いったい誰が! と、思考が目覚め、同時に昨晩のことを思い出した。

 

 瞼が重いのは泣いたから。暖かくて硬いのは……洛風の腕!

 バッと飛び起き、ぱちぱちと瞬いて焦点を合わす。霞んだ視界はすぐに澄み、あきれ顔の洛風が映った。眠たげな狐目は記憶の中よりも柔らかい。

 その目に宿るものが〝愛しさ〟だなんて宵宮には気付けない。だけどなんとなくドキドキと胸が高鳴って、頬が熱くなった。

 

 昨晩、宵宮と洛風は結ばれた。一年超えの長い片思いが実ったのだ。

 あんまりにも嬉しくて気絶してしまったが──接吻もされたし。

 本当のところ意味は分かっていないが──どうやら告白もされたらしい。

 

 宵宮は熱くなった頬を手のひらで扇ぎ冷ましながら、チラッと視線を落とす。

 腕枕をしてくれていたらしい洛風が、手を握っては広げて痺れを確かめているのが視界に入った。大きくあくびをした喉仏が色っぽい。仰向けに寝っ転がったまま黒髪をたゆらせて、「……ん?」と囁く掠れ声。

 ずっと会いたかったひと。

 ああ、帰って来たのだ。嬉しくて幸せでたまらない。胸に咲き誇る大輪の花火のような明るい気持ちにつられ、宵宮は両腕を広げて目の前の男の胸へと飛び込んだ。

 

「──ッわ!? 僕を潰す気かいな」

「えへへ、」

「こ、の……ッ!ええいかわゆく笑いおって!」

「うち可愛え?」

「そらもうめちゃくちゃかわいい……──ッて、こら。そないにくっつかんの!」

 

 肩を押し返されても離れるつもりはない。ぎゅうっと強く抱き着いてやるが、洛風の抵抗は強かった。

 いつもはどれだけ手を引っ張ったってついて来てくれるのに。……こういう力強さが、大人の男の人なのだなと気付いて胸が疼く。

 

「……あかんの?」

「あかんよ」

「む……昨日は許してくれたやんか」

「そら宵宮を置いて外で寝るつもりやったからなァ……、まさかしがみついたまま寝るとは」

「あんたが帰ってくるの遅いんが悪い!」

「それはほんまにすまん」

 

 怒り任せに叫んで頬を膨らませて。拗ねた顔をしたら甘やかしてくれるということは経験則で分かっている。──が、今回はダメらしい。

 いくらくっ付こうと頬を寄せても、優しく肩を押し返されるばかり。しばらく押して引いての問答を繰り返し、宵宮はぷくー! と頬を膨らませて眉尻を吊り上げた。

 

 

 

 

 ……そんな可愛い顔を見ている洛風の内心はあまりにも荒れ狂っていた。

 いやもうほんまに生殺し。この一言に尽きる。

 相手は昨晩口づけただけで気絶した小娘だ。洛風が抱えている欲望だとか肉欲だとかそういう醜いものに思考が行きつくはずもあるまい。ただ単に好きだからくっ付きたい! という幼い好奇心が丸見えである。

 こんな小娘に実際に手を出して見ろ。逃げ出すか気絶するかのどちらかになるのは目に見えている。

 

 こうなると、大人の男である洛風は手が出せない。

 しかし年頃の青年である洛風はもう手を出したくてだしたくてしょーがないのだ。

 

 柔い唇に噛みついて舌をねじ込む妄想を何度したことか。柔肌を抱きしめてまさぐりたいと本能が訴えている。

 だけど好きな子に嫌われたくない童貞(チキン)な洛風は、見た目ばっかり大人の素振りで首を横に振った。もちもちと肌を寄せる宵宮をべりっと引き剥がし、布団の上に座らせる。

 

「いけず」

「……当たり前やろ。嫁入り前のお嬢さんが同衾やなんて、親父さんひっくりかえらはるで」

「ほなうちのことお嫁さんにしてよ」

 

 こいつほんまに(放送禁止用語)。

 洛風は大きく息を吸い、吐き、どうにか思考を鎮め、どうにか優しい声を取り繕って問う。

 

「……いつがええの」

「今や!」

 

 天性の小悪魔と想い合うというのは地獄である。

 

「……今はあかん。まずは朝ごはんや」

「朝ごはんって()うてもこの家なんもないんやけど」

「ほな外で食べておいで。モラは出したるから」

「……朝ごはん食べたら、お嫁さんにしてくれるん?」

 

 もういっそ殺してくれ(絶望)

 

「…………」

「沈黙は金やろ。な、洛風、一緒にいきたい」

「あとから行くから、はよ行き」

 

 ぶつくさと駄々をこねる宵宮をどうにか追い返し、洛風は「ッッは──……」と、深い深いため息を吐いた。

 障子が締まった部屋に一人残り、その場に突っ伏す。こっそりと前かがみになって下肢を隠していたことを、あのニブチン小娘が気付いていることはないだろう。

 いい匂いがした。イヤもうほんと。柔らかいし。愚息も朝から超元気になるのは仕方がない。

 とはいえ性の香りを一切持ち合わせない宵宮には手を出せないし。稲妻の文化を考えれば婚前交渉はNGすぎる。まず親父さんへ挨拶しに行かないと。でもでもだってどうしよう云々。

 

「うん。よし」

 

 悩みつくした洛風はひとつの結論に行きついた。

 ──逃げよう。

 だって洛風の片思い歴は2桁を超えているのである。童貞を拗らせる(思考停止する)にはあまりにも長すぎた。

 

 こうして洛風は借家から姿を消した。

 帰ってきた宵宮が怒髪天を突き、稲妻中を巻き込む大騒動となるのは……また別の話。

 

 

 

 

 

 ──洛風が取っ捕まる(嫁を取る)100日前の話である。

 

 

 

 完

短編書き出し予定です。読みたい章を教えてください。

  • 洛風、スメール留学中(出会い前)
  • 無自覚宵宮、洛風と海遊び(鎖国前)
  • 洛風、神里兄に絡まれる(鎖国前)
  • 自覚済宵宮、八重神子に遊ばれる(鎖国後)
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