廃寺院のそばでの小休止は、休息の時間であると同時に、思案の時間でもあるようだった。
わたしたちはそれぞれ、あるいは沈黙し、あるいは他者との対話を通じ、頭の整理をしようと試みた。残された村人はどうなったのだろうとか、蛮族に遭遇して襲われたらどうしようとか、食べ物は道々に必ずあるとは限らないとか、大なり小なり、色々と、考えの種はあった。
「サリーさん」
と、寺院の壁に背を持たせているお母さんが、ある木陰でしゃがみ込み、地面をじっと見つめている彼女に話しかける。
サリーさんは、顔を上げる。他のひとも、何となく、流し目などして、二人の様子を気にかける。
「あなたはとても利発そうにお見受けしますが、今後のことなど、すでに見通しは立っているのでしょうか」
「いえ」、とサリーさんは、再び俯く。「特にこれといった見通しはありません。今、考えているところです。名案が浮かべばいいのですが」
「サラメーナに時々来ていた肉屋さんの町へ行くのが、無難ではないでしょうか」
と、ひとりの男のひとが彼女等の話に参加しようと口を挟む。彼の振る舞いを見て、他のひとも、互いに近く寄り合い、話し合おうとする様子だ。
「えぇ、そうでしょうね」、とサリーさん。「わたしたちが知っている村外の人里といえば、あの肉屋さんの町くらいのものです。けれど、いかんせんくわしい地理の分かる地図がないので、道順を定めることがかなわないのです」
「道なりに行けば、大丈夫よ。きっと」
と、ひとりの女のひとが、言う。
「人跡を辿れば、おのずと人里に出るのだと思うわ」
「そうね」、とお母さんが賛意を示す。「ひとが歩いた足跡は、目を凝らせば見えるはず」
わたしは、ぼんやりと物言わず、突っ立っているばかりだった。
「町へ行く道に、関所があれば、通行税が取られます。足跡が消えないほど残るということは、人通りが繁多ということ。果たしてそのひとたちが、わたしたちにとって、友好的に振舞ってくれるかどうかは、定かではないですし、むしろ、あまり楽観視するべきではないでしょう」
「敵として見るべきと、サリーさんはおっしゃるわけ?」、とお母さんが尋ねる。
「そこまでは言いません。ですが、いい道路を堂々と通るのは、やんごとない身分の方に相違ありません。わたしたちは下等の流浪の身……接点を求めても、詮無いことでしょう」
「ひょっとしたら、殺されてしまうかもなぁ」
と、男のひとが言う。
ただ聞いているだけのわたしは、そのセリフを聞いて、にわかに胸が悪くなる。
「最悪の場合、そうですね」
そうサラリと肯定し、サリーさんは、ゆっくりと立ち上がる。
「だから、考えるのです。明るい内は、あまり出歩かないのが、よいのではないかと」
彼女が、仰向いてそう誰に答えるともなしに呟くと、風が起こり、木立へと吹き込んで来、木々の葉をざわめかせた。
皆はどこか沈んだようにしょんぼりとし、道理をまだ解さないわたしの心にも、冷たい風が、ヒュウと吹き込んでくるようだった。