サラメーナを出て以後、わたしの脳裡には、たびたび、村の警吏だったマークさんの像が現れた。
愛郷心の強い彼は、外部の訪問者とひと悶着起こしかけていて、ひょっとすると、今回、サラメーナの改編に当たり、トニオ村長の、村を解散するというスピーチの後に勃発した暴動に乗じて、マークさんは、派遣されてきた兵士たちと血なまぐさい真似をしているかも知れない。
もし彼がこのパーティーにいてくれれば、きっと頼もしいだろうなどとぼんやり思っていたわたしの前に、彼はふと姿を現して、わたしを、そして他の皆を、唖然とさせた。
「あなたは、マークさん……!」
サリーさんが、びっくりして、彼を凝視する。
「どうしたの、森の中で、あかりも持たずに」
「ハハ」、と彼はランプのあかりの範囲で、しおしおと苦笑した。「結局、ぼくも村を追いだされて、外へ来ちゃいました。行くところもなく、テキトーにブラブラしてたんです」
「あなたは、ひとり?」
「えぇ、ひとりです。やっぱりぼくは旅は慣れなくてダメですね。すっかり村に定着してしまっていました」
――こういう風に、その土地でしかうまく生きていけないひとがいるもので、そういうひとを、無理矢理ふるさとより引き離して、流浪の身に晒すというのは、悪魔のやることだ。
「まぁ、こうして行き会わせたことだし、あなたも一緒に来なさい。皆さん、よろしいですか」
と、サリーさんは言い、わたしたちに異存がないかサッと訊く。
「申し訳ないです。ぼくなんかが同行することになって」
「卑屈になることはないわ」
マークさんは、村を追いだされたことで、すっかりしょげてしまっているようで、とにかく元気がなかった。サリーさんの励ましは、さほど効果を見せないようだった。
彼は警吏だったという経歴を考慮し、果然、パーティーのガードを任ぜられた。武器を持っているのは彼だけだったので、適任だった。
道中、声をひそめて、わたしたちは会話し、マークさんによれば、彼は、しばらく村に残って暴動する村民と鎮圧しようとする兵士たちの擾乱を見ていたようだが、やはりと言うべきか、武器も防具もしっかりしたものを備えている兵士たちと、ただの農民、職人がカッとなっただけどの者とでは、戦闘力に開きがあった。
暴れる村民はひとり残らず、命を奪われ、残った者は、血の気の多い兵士たちのなぶり殺しの標的となるか、逃げるかの二択を迫られた。勿論、皆逃げた。
畢竟、サラメーナは最早帰れる環境ではなくなっているようで、その事実は、わたしたちにとって、理不尽で腹立たしく、悲しいものだった。
わたしたちは夜闇の中、あまり積極的ではない旅を続けた。普段朝に起きて夜寝るという生活習慣で暮らしてきたわたしたちは、暗いこの時間に起きて動かないといけないというのが苦痛で仕方なかった。
だが、マークさんだけは、村での夜警の経験で慣れているのか、割と平然と、わたしたちパーティーの後端で、歩みの鈍いわたしたちを怪訝そうに見つつ、歩いているのだった。