明るい内に、サリーさんが寝る間を削って道路を探索してきてくれたようだ。
道路は、この森林の内、この小川のそばのわたしたちの居場所より、樹木50本分ほど隔たったところにあるようだった。遠いと言えば遠いし、近いと言えば近い、どちらともはっきりとは言いにくかった。
「簡素でした」、とサリーさんは帰ってきて、道路に関してサッと報告した。「だけど、馬車が離合出来るほどの巾があり、恐らく街道か、街道に類似したものなのでしょう」
移動は、日暮れにする予定だ。今はとにかく休息し、英気を養う時間だった。
わたしがお母さんとほとんど同時に目覚め、探索に行っていたサリーさんを迎えた時、火の番はマークさんではなく、別のひとになっていて、彼は木陰でいびきをかいて熟睡していた。
***
ストレスと疲労を回復するのに、一日の日中だけというのは、やや足りない感じがあった。
日没の時が訪れ、陽光を受けて青々と輝いていた葉々、苔や、褐色の樹皮や、深緑色の川水などは、その彩りを日が沈むに従って暗くしていった。
サリーさんが、わたしたちを彼女の見つけた道路まで、先頭に立って案内する。小川のそばを離れ、道なき道を、草を踏み付けて、掻き分けて行くので、一同は枝で切り傷を作ったり、蜘蛛に噛まれたりして、そこそこ難儀した。
従ってようやく開けたところに抜け出た時、わたしたちはホッとした。
オイルランプを携えたサリーさんが、道の両端をそれぞれ交互に見た。
「どっちへ行けばいいかしら」
どうも、進むべき方向を迷っているようだ。
「日が沈んでいった方へ行けばいいですよ。おれたち、日が出てくる方から来たので」
マークさんがそう、助言する。
「そっか。日の出の方角、わたし、すっかり忘れてたわ。ありがとう。マークさん」
ただ付いていくだけのわたしたちには、はっきり分かることなどひとつとしてないのだけれど、割合、順調にことが運んでいるようだということは、何となく察せられた。均された広い道は、歩くのにとても快適だった。
辺りはすっかり暗いけれど、今後の展望が開けてきそうという予感がして、わたしは、マークさんとの海への旅を期待して、密かに高揚していた。一散にこの道を駆け抜けていきたいくらいの気分だった。
ところが……
バサバサ、という鳥たちが一斉に羽ばたいていく風の音がし、わたしたちは驚きと恐怖でビクッとなった。
サリーさんは、ピタッと足を止め、ランプを携えている手を下ろすと、「シッ」と、静かにしろと言うように発して、ランプのない方の手の指を口の前に立てた。
「まずいわ。誰かいる」
その言葉に、わたしたちは揃って当惑した。
誰なのだろう? いいひとなのだろうか? 悪いひとなのだろうか?
息を呑む音がしたかと思うと、足音と思しき音が、徐々に近付いてくる。正面だ。
やがて、ぼんやりと誰かが姿を現す。
チュニックを着た、白髪に男性。短い顎鬚も、白髪がまじっている。彼もランプを携えている。
見覚えのある顔……
「トニオ村長――!?」
わたしたちは愕然とした。そして畏怖した。
彼は兵士ふたりを引き連れている。一体、夜更けの森の中などで、彼等は何をしているのだろう?
この出会いが与えた印象は、決していいものではなく、悪いものだった。
不吉の予感が、わたしたちの背筋を寒くした。