まだ見ぬわたしの碧色【完結】   作:Yuki_Mar12

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 わたしたちは、無給の徒弟として慣れない職種にチャレンジすることと、ある程度慣れてはいるが、元々やっていた小作農に惰性に甘んじて立ち戻ることとの間で揺さぶりを受けた。

 

 中には、必ずしも小作農ではいけないわけではないひとたちがいて、それぞれ、考えは異なっていた。

 

 サリーさんは、サラメーナを発った後、自然の成り行きでわたしたちのリーダーとして、統率を担っていたが、こうして人里へどうにか到着した今、共通の目的は達せられ、もう個人の行動を制約する集団は不要になったとの判断で、独自に行動しようと提案し、わたしたちはいささかの不安を伴ってはいたものの、首肯した。

 

 パーティーは、解散した。

 

 お母さんは、小作農を選び、わたしはお母さんに付き従った。他にも、小作農を選ぶひとがいたが、その他は、みずからギルドに行き、徒弟になることを申し込んだ。

 

 また農作業に従事する日々が帰来し、細かいところでは違う部分があるが、おおむね大差のないやり方で畑を耕したり、種蒔きしたりした。

 

 新しい家屋は、わたしたちの所有するものではなく、農業ギルドが管理する建物の一室を充当され、わたしとお母さんはそこで生活するようになった。

 

 藁小屋と比べれば、ある程度の堅牢さのある扉の壁と屋根に守られていて、また使い古されてはいるが家具調度が揃っており、おおむね快適だった。他の小作人と部屋は違うけど同じ建物に住むので、ちょっとした騒音が煩わしかったりするのが玉に瑕だった。

 

 

 

 さて、そうして、変わったようで変わらない環境において、わたしはお母さんと過ごし、季節は移ろっていき、春が夏になり、ぶどう園のぶどうの実がたわわに膨らんできていた。太陽の光が眩しく、また焼けるように熱かった。

 

 わたしはとりあえず生活が安定してきたことで、また頻繁に想像――否、妄想を弄ぶようになり、海へどうやって行こうか、半ばまじめに、半ば暇潰しとして、思案した。

 

 

 

 長雨がしばらく降り続いた後のある蒸し暑い日の朝、広場に召集令が出された。

 

 わたしとお母さんを含め、町の広場に人々が集まり、その様はパッと見ではお祭りのようだったが、その実、違った。

 

 兵士が公衆の正面に3人立っており、スピーチが始まるようだ。

 

「皆に伝えねばいけないことがある」、とひとりの兵士が大声で叫んだ。

 

 ガヤガヤ騒ぎ声の絶えなかった公衆が押し黙り、水を打ったように静まる。

 

「――近く、戦争が始まる」

 

 にわかに、辺りがどよめきだす。誰もが嫌忌を込めて『戦争』と口にする。わたしのお母さんは、眉を下げてひどく不安げだ。その顔を見ることで、わたしも胸が悪くなってくる。

 

「宣戦布告を受けたのだ。相手はサラメーナという森を隔ててある町だ」

 

 ――サラメーナ!?

 

 その名を聞いてドキッとし、わたしはお母さんと目を合わせ、また、キョロキョロ周囲を見回し、見覚えのある、今は別れたがちょっと前までは同じパーティーのメンバーだった者を探す。その中にはやはりサリーさんもいる。彼女も、わたしたち同様、地主の土地で小作農をやっている。

 

 ご丁寧に宣戦布告してきたのは、兵士曰く、騎士道を重んじてのことではないみたいだった。

 

 ある日、外部より訪問者があり、彼等はサラメーナの使いだった。

 

 使いたちはまず、わたしたちが対抗せずに屈すれば、その支配下に入り、命と生活が保障されるのだと言い、メイローゼに屈服を要求した。

 

 だが、メイローゼはその要求を斥けて聞き入れず、話は平行線を辿り、今回の戦争の決定へと繋がったのだそうだ。

 

 兵士は、町民より徴募兵を集める予定を伝え、スピーチは終わりとなった。

 

 だが、公衆の多くは戸惑いが治まらず、また、わたしたちがメイローゼに馴染み、サラメーナという村の出身であることが知れているということで、わたしたち、敵地の出身者は皆、メイローゼのひとに疑惑を持たれ、砂をかけられたり、ゴミをぶつけられたりした。

 

 中には、わたしたちに疑惑を持たず、その場の騒擾を鎮めようとしてくれる良心のあるひとがいたが、わたしたちはそそくさと逃げ出さざるを得なかった。

 

 そして、わたしたちは、バラバラだったのが、今回の件に関する話し合いの必要性より、またしても、ひとつの集団へと戻ることになったのだった。

 

 

 

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