まだ見ぬわたしの碧色【完結】   作:Yuki_Mar12

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 戦争をすぐ近くに控えている状況で、よそ者だったわたしたちが、比較的安全である後方の仕事を進んで選択するというのは、やや無理があった。

 

 周りの目が厳しいのである。まだ深い交わりを結べていない移住者のわたしたちが、生まれも育ちもメイローゼのひとたちに優先されて守って貰うのは、やはり容認されることではなかった。

 

 わたしたちは、戦争までの日々を、正規の兵士たちと合同の訓練に費やした。女性であっても、男性と同等に数えられたが、平等という意味ではなく、徹底的にしごかれるのだった。

 

 13歳で一番若いわたしも、例外ではなく、大人たちに混じって走ったり、剣を振るったり、槍を構えたりした。

 

 リベルタさんも、訓練に参加していた。彼の場合、職が警備である程度戦闘に明るいということで、徴募兵として早い段階で望まれ、採用された。

 

 ある晴れた日、わたしたちは訓練のために近くの森林へと赴いて、その中の開けたところで摸擬戦をやっていた。晩夏の残暑は、森の中では、いささか落ち着いているようだった。

 

 訓練が休憩のために中断され、一時的に皆が解散すると、わたしたち、サラメーナのメンバーと、リベルタさんとが、たまたま互いに近い位置で木陰に腰を下ろしていた。

 

「お前ら、大変だったようだなぁ」

 

「えぇ」、とサリーさんが応じる。「わたしたち自身に悪意はないんですが、疑いたがるひとがいるもので、ちょっと体を張らないといけなくなりました」

 

「俺も、メイローゼに来た頃はそうだったさ。誰も信頼してくれない。助けてくれない。でも、ずっと我慢していたら、その内にポツポツ親交を築けるようになっていった」

 

「我慢。そうですね。大切ですよね」

 

「今度の戦いで活躍して勝てば、疑り深い奴らは絶対見直すに違いない」

 

「そうでないと困ります。何と言っても、命を賭すわけですから」

 

「リベルタさん」、と彼等の会話に、わたしは時機を見つけて割って入る。

 

 リベルタさんとサリーさんがわたしの方を向く。

 

「リベルタさんって、どこから来たんですか?」

 

「言ったって分からないと思うぜ」

 

「名前を聞いても、きっと知らないだろうから、分かりません。けど、どういうところだったか、興味があるんです」

 

「クローネ。あまり不躾に尋ねごとをするものじゃないよ」

 

 と、隣のお母さんが注意する。

 

 だが、リベルタさんはお母さんを制止し、微笑した。

 

「いいんだ。別に。俺としては興味を持ってくれて嬉しい」

 

 お母さんは、ちょっと不服そうに眉をひそめた。

 

「俺の故郷は、アルナシルプっていう小さい町だ。どこにあるかというと、メイローゼの西側の森をずっと奥深くまで進んで、途中で北方に折れて、更に直進すると、砂漠に出るんだ。その険しさを知ってるヤツなら、必ず行ってはいけないって口を酸っぱくして言うほど、ヤバい砂漠さ」

 

 行ってはいけない砂漠……何となく、わたしは、覚えがあるようだった。

 

「――ねぇ、クローネ」、とお母さんが耳打ちしてくる。「あのひとの言う砂漠って、ひょっとしてサラメーナの近くの砂漠じゃないかしら」

 

「うん」、とわたしも小声で返す。「ひょっとすると、わたしたちの知ってる砂漠と、リベルタさんの砂漠とは、繋がってるのかも知れないね」

 

「だけど、俺はその砂漠を渡って、単身この町へと来たのさ」

 

「大丈夫だったんですか? 砂漠を旅するのは、ずいぶん厳しいものと思いますが」

 

「大丈夫……ではなかった。勿論。まぁ、色々あったのさ。色々とね」

 

 そう、はっきりしない感じで言うと、リベルタさんはしおらしく頬を緩めた。まるで遠い過去を思い返し、その趣きにしみじみ浸っているようだ。

 

 わたしは、リベルダさんの話の続きが聞きたかったが、指揮官に呼集され、話を中断せざるを得なかった。

 

 リベルタさんと砂漠。

 

 立ち入り禁止の砂漠を渡ってきた彼の過去のことは、わたしの関心を惹いて止まなかった。

 

 

 

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