次の日、学校が終わって家に帰り、服を着替えて、イリスが居る洞窟へと向かった。
向かっている途中で、綾奈さんと合流した。何やら手にビニール袋を持っていた。
「綾奈さん、その袋に入っているのって、イリスのご飯?」
「うん」
どうやらイリスのご飯を持ってきてくれたようだ。
「ありがとう綾奈さん、僕も何か持ってこれば良かったなぁ...」
「いいのいいの」
綾奈さんがそう言ってくれた。
そうやって、会話しながら歩いていると、鳥居が見えてきた。
鳥居をくぐった先には守部君がいた。どうやら祠を開けて中に入っている何かを取り出そうとしていたようで、僕達に気付いたのか、中の物を戻して、こちらに寄ってきた。
「なぁ…2人ともほんまに育てる気なんか?」
守部は複雑そうな顔をして、震えた声でそう言ってきた。
「「うん」」
綾奈さんと俺は一緒に返事をした。
返事を聞いた守部は一瞬戸惑った顔をした後に、こう言ってきた。
「なぁ…イリスに関わらん方がええんとちゃうか?、このまま育てて大きくなって食われでもしたらどうすんねや」
それに対して綾奈さんがムスッとした顔で返事をした。
「別に私と彼がイリスついてどう思おうが勝手でしょ?」
そう言われると守部は何処か悲しそうな顔をしながら黙り込んでしまった、それを横目に綾奈さんが話しかけてきた。
「壱輝行くよ」
守部の奴なんで悲しそうな顔をしたんだろうか?まさか…綾奈さんの事が好きだったりするのか。いや、それは分からないな…。
「あ…あぁ」
俺と綾奈さんは洞窟に入り奥へと進んで行った。途中で足音が多いような気がし、後ろを振り向くと守部が着いて来ていた。どうやら綾奈も気付いたようで、途中で振り返って見ると、すぐ前に向き直していた。
「ん…あぁ、着いて来たのか守部。来るんだったら言ってくれればよかったのに」
「そ…そやな。まぁ理由は聞かんとってくれや」
守部はなんとも言えなさそうな顔をしながらそういった。
少し前から「キュウ…キュウ…」とイリスの声が微かに聞こえてくる。
着いた。イリスは見た感じ元気良さそうだ。綾奈さんが腰を下ろしビニール袋から缶詰め・コンビーフ…など色んな食材を取りだした。
「結構色々持ってきたんだね」
俺がそう聞くと綾奈さんが返事をする。
「まぁ…そうだね、イリスがなんの生物とかが色々よく分からないし。とりあえず色々持ってくればその内の1つくらい食べられるやつがあるかなって」
イリスにコンビーフを出してみたが、中々食べない。
「食べないの?イリス」
綾奈さんがそう言った。
「いや…よく見てみぃ、口がないやろ?…少しきしょいな…」
と、守部が言った。
あ、ホントだ…、よく見てみるとイリスには口がない。前々から思っていたが、生物としてはとても歪な姿をしている。何処かアンモナイトなどの貝類を思わせる渦巻き模様の殻、周りに蠢く赤道色の触手。そして深淵を思わせる何処までも黒い瞳…だが、イリスは可愛い!
「そうか?、イリスは可愛いと思うが?」
そう言うと守部は「まじ?」と言うような、戸惑った顔をしている。何故だろうか…?
と、言ってるとイリスが突然缶詰めに触手を突き刺した。
「!?」
守部は驚いたようで、腰を抜かしていた。
カン…触手が缶詰めを落とした。俺は落とした缶詰めを拾い上げ、よく見た。貫通している…しかも中身が全部無くなっている?。あの触手に口らしきものはなかった…まさか、吸引したのか?
「2人共見てみろ、イリス食べたようだぞ」
僕は拾い上げた缶詰めを見せた。
「食べたのイリス?美味しかった?」
綾奈さんが撫でながらイリスに聞いていた。それを見ていると僕もやりたくなってきた。
「また食べさせてやるからな」
僕はイリスを撫でながらそう言った、その時のイリスはなんとも幸せそうな顔をしたような気がした。