セラどろの雑談。
どろしーの一番になりたいセラヴィー。

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第1話

 たとえば庭の花が咲いていた時、空に虹が出ていた時、嬉しいことがあった時に一番初めに教えたくなるのは──

 

「しいねちゃんよね」

 

 うん、わかってました。

 雑談で出たちょっとした話題、いいことがあった時に最初に教えたくなる人……つまりは大事な人は誰?と。

「じゃあ次は?」

「チャー子と犬かしら」

「じゃあじゃあ、次!」

 もうひと声!と次をうながすけど、どろしーちゃんは大きくため息をつくと「付き合ってられない」とにゃんこハウスを出て行ってしまった。

 

 どろしーちゃんの口から出たのは一番弟子の名前。

 子供の時に家を出た彼女は家族とほぼ縁が切れている。弟子として幼い頃から育てているしいねちゃんを一番に思うのは当然だろう。

 僕も同じようにチャチャという弟子を抱え、大事に愛情をそそぐ気持ちもわかる。けれど僕にとっての一番は常にどろしーちゃんであり、心の中に燦然と輝く一番星だ。

 子供たちの家をはさみ同じ敷地に家族のように暮らす僕ら。毎日からかっては追いかけられ小競り合いはするものの、それなりに愛情は育んで来たと思っていた。

 せめて3番目くらいに僕の名を出してくれてもいいのに。

 大きくため息をついて立ち上がる。にゃんこハウスの掃除をしよう、気が滅入った時は何か作業をするのに限る。

 

「……こんなところでしょうか」

 部屋も家具も水回りもピカピカに磨き上げてしまった。僕の家も昨日掃除したばかりだし依頼もないから特にすることがない。仕方がない、凝ったおやつでも作ろうか、と台所に向かおうとするとドアが開く音がした。

 どろしーちゃんがやってくる。

「はい」

 差し出された小さな紙袋を受け取る。中には焼き菓子が2つ。

「もらったから1つあげるわ」

「……僕に?」

「2つしかないから子供たちにはナイショよ」

「いいんですか? 自分で2つ食べてもいいのに」

「2つも食べたら太っちゃうものね」

「……わかった、じゃあ一人で太るわ」

 エリザベスの一言で紙袋を取り上げられそうになる。

「冗談ですよどろしーちゃん、お茶淹れるから一緒に食べましょう」

 

「おいしい~」

 どろしーちゃんはほっぺをおさえて身もだえする。

 クリームとイチゴがサンドされてしっとりと柔らかくなったビスケット。適度な甘さと酸味でたしかに美味しい。これくらい僕にも作れる……と言いたいところだけど、ビスケットとクリームは簡単に再現できてもイチゴの吟味が必要かもしれない。

 そんな風に考えながら味わっていると、どろしーちゃんは手についたクリームをなめながら残念そうにする。

「しいねちゃんにも食べさせたかったけど、他の子たちにもあげないわけにもいかないから」

 やっぱり一番はしいねちゃん。それはさながら子を思う母親のようだ。けれどチャチャたちも同じように大事に思ってくれているのは何だか嬉しくなった。

「共犯ですね」

 残りを口の中に放り込み、証拠隠滅する。

 2つしかなかった内の1つを僕に、この僕に分けてくれた。その幸せをゆっくりと噛みしめて飲み込む。

 どろしーちゃんの一番は今のところ僕ではない。けれど罪を分けてくれるのは僕。それは幸せを分け与えてくれるより、もっと強い結びつきじゃないだろうか。

 ニッコリとどろしーちゃんに笑いかける。

「いつかどろしーちゃんが取り返しのつかない罪を犯した時は、僕も一緒に罪をかぶりますからね」

「そんなことするワケないでしょ!」

「地獄の底まで付き合いますよ」

「お菓子ひとつで大げさなのよ」

 どろしーちゃんは深くため息をついた。




「一番星」の比喩が正しいか迷ったけど赤チャ世界では同じとは限らないし
タイトルと関連があるからまあいいか、と残しました。

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