ハッピーエンドをお求めですか? 作:私のせいです
基礎情報
【コードネーム】Order
【性別】男
【戦闘経験】不明
【出身地】ロドス・アイランド
【誕生日】非公開
【種族】???
【身長】180cm
【鉱石病感染状況】
メディカルチェックの結果、感染者に認定。
能力測定
【物理強度】標準
【戦場機動】卓越
【生理的耐性】普通(再測定の結果、変更の可能性あり)
【戦術立案】優秀
【戦闘技術】■■
【アーツ適性】標準
情報資料
『ロドス前衛エリートオペレーター、Order。ケルシーに並ぶロドスの古株であり、ロドス屈指の作戦遂行能力と戦闘技術を持つ。単独による外勤任務を主に担っていたが、最近はある事情により外勤任務を禁止されている。彼の持つ剣には特殊な力があり、決して使用を許可してはいけない。なお、Orderに
「ドクター、いますか?」
「ああ」
時の人であるOrderが執務室に書類を抱えて入ってきた。彼は私のデスクの上を見ては怪訝そうな顔をする。
「何か?」
「いや⋯⋯やけに少ないなと」
そう言う彼の視線は私が終わらせた書類に向けられている。⋯⋯確かに、彼が持っている書類の量と比べると少ないと感じる。
「⋯⋯⋯⋯」
「Order? 何がそんなに気になるんだ?」
「実は最近⋯⋯アクセス権限がケルシーと同等になってたのに気付きまして。つまり、ドクターが処理すべき仕事まで俺の管轄になっちゃった訳ですよ。俺の書類仕事はもしかしたらドクターの分も紛れちゃっているのかなと思いまして⋯⋯ドクター?」
「⋯⋯すまないが、君の仕事で間違いないと思う。忙しいのはわかるが、そう睨まないでくれ」
Orderはアーミヤとケルシーから仕事を振られている。Orderが手持ち無沙汰になって勝手に外に出るのを防ぐとはいえ、容赦のない仕事量らしい。可哀想だがこれもOrderの為だ。
「あと最近アーミヤがどこかよそよそしくて⋯⋯。心当たりはありませんか?」
「そうなのか? 分からないな」
ケルシーが再三語る危うさは今の所感じられない。色素の薄い印象を受ける彼は親しみやすいエリートオペレーターだ。白く透明で儚く見えても剣を持たせれば一騎当千の剣士。指示に対する躊躇いの無さは気がかりだが、彼が制止を振り切って行方を暗ますとは到底信じられない。
「ドクター、お仕事持ってきましたよ」
アーミヤがファイルにまとめた書類を持ってきたようだ。Orderはジッとアーミヤを見て、私の机の上を見て、最後に自分の手元を見た。
「やっぱり俺の仕事量おかしくないですか?」
「Orderさん⋯⋯、その⋯⋯」
「君の単独外勤任務が禁止されている以上、それ以外の仕事が振られるのは自然なことだと思うが?」
「いやまあ⋯⋯そうなんですが。はぁ、分かりましたよ。何を隠しているのかは聞きません。例え俺が聞いてもあまり意味があるとは思えませんし。黙って仕事しますよ」
トボトボと重い足取りで帰るOrderの背中を見守る。⋯⋯そんなに仕事が辛いのだろうか?
「ありがとうございます、ドクター」
「アーミヤやケルシーも、ほどほどにしないと彼が拗ねてしまうよ」
「わかってはいるのですが⋯⋯すみません、どうしてもあの光景を思い出してしまって⋯⋯。ドクターは1回だけなんですよね?」
アーミヤが言っているのは
「私はドクターのように上手くやれませんでした。何回も何回も何回も繰り返して、何度も何度も彼を殺しました」
「アーミヤ!」
いけない、トラウマとなった光景がフラッシュバックして多大なストレスを与えている。アーミヤの持っていたファイルは手から落ち、顔を覆う両手の隙間から涙が零れる。
「私では駄目だったんです。最後だって⋯⋯全てOrderさん一人で解決しました。Orderさんにお願いすればどんな脅威も倒してくれるんです。だけど⋯⋯私のせいで⋯⋯⋯⋯Orderさんは、し、⋯⋯」
「アーミヤ! 大丈夫だ。Orderは生きている。ちゃんと生きているんだ。ゆっくりと呼吸して、落ち着いて」
背中をさすって落ち着かせる。彼の力はこれが厄介だ。麻薬より強い依存性、過程で自害を強要する残虐性。繰り返してしまえばより依存してしまい、気付いた時にはきっと流れ作業のようにOrderを殺してしまっている点だ。それは、優しい人ほどよく壊れる。
「ごめんなさい⋯⋯私の⋯⋯せいで⋯⋯」
私に彼女たちを真に理解することは出来ない。一度しか経験していない私に数十回を超えるタイムループの苦痛は想像上のものでしかない。今のアーミヤにかける気の利いた言葉なんてものは1つも浮かんできやしない。
「ドクター⋯⋯私は、どうすればいいんでしょうか?」
何も言えない自分の無力さを恥じた。
『ドクター、対象の保護完了しました』
『よくやった、Order』
レユニオンを襲う黒装束はOrderの剣に斬り捨てられた。フロストノヴァ含むスノーデビル小隊は約束通りロドスに協力し、この戦争の発起人であるタルラを止めてチェルノボーグ事変は幕を下ろした。Orderの力は強大無比だ。外勤任務に就かない彼なら最初から作戦に参加させておけば被害はより抑えられたはずだと思い、ケルシーに聞くと。
『Orderの剣は特別なものだ。戦闘は前衛エリートオペレーターである彼の得意とする分野だが、その行為が彼に及ぼす影響はとてもじゃないが看過できない。戦いは彼の生命を削り、医療では手の施しようがない傷を付け続ける。彼の身体状況は鉱石病感染者のそれとは比べ物にならないほど酷い。彼はエリートオペレーターとして誰よりも戦ってきた身だ、彼を信じるのはいいが決して頼るな。もう彼から戦場を取り上げてくれ』
現在の彼は前衛エリートオペレーターは名ばかりの事務員ということになる。他のオペレーターに剣の手ほどきをしているらしいが、教官職も向いているのかもしれない。
『記憶喪失? 石棺にそのような機能はありません。もしや⋯⋯。いや、なんでもありません。俺がロドスの一員である限り、俺はドクターを信じます』
真面目で、気さくで、親しみやすい。言葉にするとあれだが、ケルシーとは真逆だ。もしかしたら、彼がケルシーのそういった部分を補っているのかもしれない。
『Order! Orderっ!』
『どうした!?』
『ドクター、Orderが⋯⋯』
たまたまブレイズと彼が倒れたのを目撃したことがある。ケルシーによると、免疫力の低下、睡眠障害、食欲不振、それらによるストレスで時折気絶することがあると。どう考えても前線から退くべきだ。Orderはロドスに多大に貢献していた。もう剣を置いていいはずだ。
『まだ使命がありますから』
忘れないでほしい。君が死んだら悲しむ人がいることを。君の帰りを待ち続けている人がいることを。
今日も変わらず書類仕事。少し煩い来客を除けば通常運転だ。
「あらあら、辛気臭い顔しちゃって。私が手伝ってあげましょうか?」
「嫌なら別に手伝わなくていいぞ、W。エレーナに頼む」
「はぁ? フロストノヴァが? 何よアイツ、一人だけ⋯⋯」
「それに、緊急の仕事もない。ゆっくり寛いでいけ」
赤い角を持つサルカズ傭兵のW。俺が知る傭兵で最も純粋で、傭兵らしい傭兵。彼女とはロドスの前身であるバベル時代に知り合った。一端の傭兵だったが何の因果か、彼女は俺に会いに来るようになった。
「ねえOrder。あのドクターは信用できるの?」
ソファに寝転ぶWが珍しく真剣な顔で質問してきた。
「俺は指示を裏切らない。結果を求められればそれに応えるだけだ」
「つまんない答えね」
「俺にはお前はドクターを信じたいように見える。俺に聞いたのも自分を納得させたいからだろ?」
「⋯⋯でも、あいつはテレジアを殺したわ。あんたは全部知ってんでしょ? どうして、どうやって殿下が殺されたのかを」
「⋯⋯⋯⋯」
「本当に憶えてないの⋯⋯?」
静かになったかと思えば、後ろから抱き着かれる。荒野に生きる傭兵とは思えない甘い香りは強い雄を引き寄せるフェロモンのようで、思考が乱される。
「ねえ、あたしたち恋人だったことがあるって言ったら、信じる?」
「え?」
「⋯⋯⋯⋯それ、私も手伝うわ」
「⋯⋯そもそもお前は読み書きが得意じゃないだろ?」
「なによ、読み書きできるのがそんなに偉いっていうの?」
「少なくとも仕事はできる」
「っ! フロストノヴァ⋯⋯」
最近というか、ほぼ毎日訪れるフロストノヴァは我が物顔で俺の隣に座ると書類仕事を始める。有難いことこの他ないが、ここに来る他のオペレーターといざこざが起きるのは勘弁願いたい。
「あんただってまともな教育を受けてないじゃない。どうせ適当にやってんでしょ」
「まさか。私の筆跡は美しいと、Orderは言ってくれた。2人っきりで夜な夜な勉強したんだ。当然だろう?」
「は?」
ドスの効いた低音ボイスが響く。今すぐに何気ない顔して退室したい。仕事を放って逃げ出したい。変な圧が部屋中を満たしていてもう怖い、誰か助けてくれ。
「本当なのOrder?」
「た、頼まれたからな」
「夜な夜な?」
「その時間しか空けられなかったんだよ」
「2人っきりで?」
「教わりに来たのはエレーナだけだった」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ふーん」
「これでわかっただろ? 私1人居れば十分だ。私たちも暇じゃない。邪魔するなら帰ってくれ」
もう俺が帰っていいか? いいよな?
立ち上がろうとした瞬間、肩を押さえられる。逃げ出せる唯一のチャンスと思っていた俺の姿はさぞお笑いものだろう。
「私にも教えなさいよ」
「え」
「だーかーらー、夜中2人っきりで勉強しましょって言ってんのよ。いいでしょ?」
「あ、は「駄目だ。Orderの仕事量を見てないのか? そんな時間は無い」ッスー」
「あんたには聞いてないわよ白ウサギ。いい加減黙ってて頂戴。今はOrderと話してるの」
「私はOrderの代わりに答えただけだ。煩い女は嫌われるぞ」
誰かっ! 助けてっ! ケルシーっ!
「Order、今いいか?」
「け、ケルシー! ああ、今行く。悪いな二人とも。少し席を外す」
「「⋯⋯」」
部屋を後にしてケルシーについて行く。まさに危機一髪。垂らされた蜘蛛の糸が如き慈悲。俺のケルシーへの信頼が留まることを知らない。
「助かったよ、ケルシー」
「気にするな。お前は多くの人を惹き付ける。勘違いする者が出てきても不思議じゃない。どうだ? このまま私の部屋で飲まないか?」
「酒を控えろと言ったのはケルシーじゃないか」
「確かに私は酒類を控えるよう言った。しかし、私と飲む場合はその限りじゃない。何かあった時対処しやすいからな。医師と安全面が確保されて飲むというのは悪い話じゃないと思うが?」
ふむ⋯⋯現状の酒の弱さを知るという意味でも、ケルシーとサシ飲みはありかもしれない。仕事は明日にすればいいし、ケルシーから誘ってくれるのは本当に稀だ。この機会を逃すのはあまりにも惜しい。
首元を弛めて、ケルシーの部屋に招かれる。ケルシーの視線が鋭くなった気がしたが、気の所為だろう。ケルシーが俺なんかをそんな目で見ることはないし。
「ケルシー⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
ちなみに、1杯目から後の記憶は無い。