【ORAS10周年記念】Re:Re:ポケットモンスター REALIZE   作:暁色の王冠

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第3話

 

 サークル活動時間から二時間後。二十時。

時間になったのでこの日は解散となった。終始自由気ままに遊んでいた彼らではあったが、当初の予定であった週末の日程も無事に決められたことで御巫(かんなぎ)は一安心している様子であった。彼女は来年からこのサークルの会長になる事が決まっているらしく、今の段階である程度の責任感を背負っているように見える。

 

 (なばり)は机に無造作に置かれたゲーム機やお菓子の袋、ファイルを纏めながら黒板に書かれた文字を目で追った。

 

「今週の土曜に調布(ちょうふ)で飲み会かぁ……」

 

「どうかした? まさかレン、行けないとか?」

 

 隠は隣から飛んできた声を耳で捉え、それが誰のものなのかを判断した上でゴミを捨てつつ自分の荷物を鞄にしまい、最後にスマートフォンで乗換案内のアプリを立ち上げて画面をなぞってはすぐに閉じる。そして最後にその声の主に答えた。

 

「いや、家から少し遠いな……と思って。まだ大学の最寄り駅とかが目的地なら行きやすかったかなって」

 

「んー。それも話し始めの頃の案にはあったんだけどね。でも仕方ないよ。皆の集まりやすさを考慮したものだしさ。それに土曜だし」

 

 彼の名前は佐伯(さえき) 慎司(しんじ)

物静かで自分からはあまり提案も会話もしないタイプの性格だが、整った顔立ち、平均的な身長を持つ隠よりも高い身長を誇るという意味では外見的特徴が見られる、彼と同学年の男子生徒だ。

更にポケモンの腕も立つときている。今回の日程決めの最中も、隠と対戦しては軽くねじ伏せたばかりである。このサークルの中では一番の実力を持つ人間であるのは間違いないだろう。

 

 隠は二重の意味で悔しさを表すかのように、

 

「まぁ、それもそうだな」

 

と呟いて教室を出た。

 

「なぁなぁ、それよりもさ。お前らこの後飯食いに行くよな?」

 

 樋端(といばな)が隠と佐伯の二人に声を掛けた。サークルが終わった後は近くで外食を済ますのがいつもの流れである。

 

「こっちは行くよ」

 

「佐伯が行くなら俺も行くかな。バトルのリベンジしてぇし!」

 

「頼むから飯食うのかポケモンするのかどっちかにしてくれ……」

 

 隠の間抜けな言動に樋端は頭を抱えつつ笑う。佐伯はそんな二人を見て軽く微笑む。彼からは戦う意思は無かった。今日は既に満足だ、と言いたげに。

 

 これが彼らの日常であった。毎日とまではいかないまでも、よく見る光景、いつもの景色。

 

 平和な日々が、確かにそこにあったのだ。

 

 

 翌朝。講義のために大学に来ていた隠は、構内にあるバスロータリーを歩いていたところを聞き覚えのある声に呼び止められた。

 

「おはようレン。相変わらず眠そうな顔してんな」

 

「生まれつきこんな顔なんだよ。別に眠かねぇ」

 

 一人だと思っていたら二人の男がこちらに走り寄ってくる。樋端と佐伯だ。

二人は途中の駅が一緒らしく、今日みたく時間が合った日はよく二人で来るそうだ。

大学に着くまで終始一人の隠からすると少し羨ましかった。

 

「レン、今日は講義のコマ幾つあるんだ?」

 

「俺か? 俺はー……。そうだなぁ……」

 

 樋端にそう聞かれた隠はスマホに入れてある時間割のアプリを立ち上げるとそれを眺める。昼前にひとつと、昼休み後にひとつ、そしてその次のコマにひとつの計三つの講義だ。彼らの大学の講義はひとつ一時間半なので今日は四時間半の一日だ。

 

「なんだ、レンお前今日二つじゃねぇのか。バイトまで少し時間あるから遊びたかったんだけどな」

 

「仕方ないんだ。お前と違って俺は"去年遊び過ぎた"せいで少しだけ単位足りないんだよ。ここで取れるものは取っておきたくてな」

 

「レン……。一年生の時が一番取りやすいはずなんだけどなぁ……。一体何をしていたの?」

 

「まぁ色々だ」

 

 彼らが所属しているのは"神東(じんとう)大学"という私立の大学である。

神奈川県と東京都の境に位置しているため、このような名前になってはいるのだが、実際の所在地は都内に収まっている。

もっとも、都内で括るには自然が多すぎる地域なため、地方からやって来る人はそのギャップに驚くというのが毎年恒例の光景である。

 

「今日はサークルも無いもんね」

 

「月曜と火曜と木曜だっけか。何で水曜の今日にねぇもんかなぁ?」

 

「あったとしてもお前バイトだから来れねぇだろ樋端」

 

「そしたら今日会えるとしたら昼休みだね」

 

「そうだな」

 

 佐伯の発言は言い換えると「昼ご飯一緒に食べない?」であった。

この大学に入学して二年。つまり彼らとの交流も二年ともなると、自然とどのような性格であるのかが分かってくるものである。

 

「じゃあレン。いつまでも眠そうにしてんじゃねーぞ。講義中寝るなよ?」

 

「寝ねーよ! いつまでそのネタ引っ張る気だ」

 

 そう言うと三人は別れた。

佐伯と樋端がとある校舎の棟に向かって行ったが、隠はそれらの反対方向にある九階建ての校舎棟へと足早に進んでいった。

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