【ORAS10周年記念】Re:Re:ポケットモンスター REALIZE   作:暁色の王冠

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平穏なる港町④

「怖い顔をしているね?」

 

 神々廻(ししば)(まこと)と名乗ったスーツ姿の老人は、そう言いつつも笑顔を絶やさなかった。

 

「少し、お話があるんだけど……宜しいかな?」

 

「先生、彼は……」

 

「いいんだよ。私なら平気だ。彼と話がしたい」

 

 時間を取られたくなかったからだろうか。神々廻の後ろに控えていたスーツ姿の男が横槍を入れようとするも、本人がそれを跳ね除ける。見た目と距離感から察するに彼は秘書のようだった。

 

「いいかな?」

 

「申し訳ないが今はダメだ。"ヤツら"も居る」

 

 (なばり)はそう言って意識を後ろに集中させる。振り返るまではしなかったが、一瞬だけ首と目を動かす。

それと同時に、ダークボールを掴んでは彼等に見せびらかした。その気になれば動くぞ、という隠なりのメッセージだ。

 

「では、二人でどうだろうか? そこにベンチもある」

 

「お互い手出しをしないと約束するなら」

 

「よし。いいでしょう」

 

 そう言うと神々廻からベンチに腰掛けた。その隣に、隠が座るには余裕のある空間が出来る。

隠は念の為にと誰にも気付かれないように"イリュージョン"を込めながらゾロアークを放った。隠に何かあった時のための予防策だ。

 

「まずは……。怖がらせてしまって申し訳ない」

 

 隠が座ってすぐに神々廻は再び頭を下げた。

 

「君の事は今日此処に、この街に居るとハッキリと分かるまで多くの事柄を調べておいたんだ。君は……何度か議員さんと戦っているね?」

 

「流石は議員サマ」

 

「いやいや、ちゃんと理由も調べた。その上で判断したんだ。君は"分かってくれる"人だと」

 

「何が言いたい」

 

 優しい顔、優しい口調の話し相手だが、隠は一度として忘れた訳では無い。今目の前に居るのは結社の人間だと。つまり、五百城(いおき)(わたる)と同じ種類の人間だと。

 

「私は君の敵では無い。味方ですよ」

 

 そう言って神々廻は微笑んだ。口角の動きに合わせて口髭も小さく揺れる。握手を求めたがっているのか、それとも単に癖なのか掌をそわそわさせていた。

 

「信用されると本気で思ってるのか」

 

「私は目的を持って今日君に会いに来たんだ。その為に部下を使って基地を調べさせたり、前日まで大学に潜入させて君の行動を見させてもらったよ」

 

「テメっ……まさか!?」

 

 再び隠は心臓の鼓動を早まらせる。そして察知した。やられた、と。

よりにもよって結社の人間に、自分と比べて天地ほどの実力の差こそはあれど、決して逆らえない権力を握った人間相手に、絶対に知られてはならない基地の情報が漏洩した。プライベートである大学生としての動きも把握されてしまった。明らかな脅迫、交換条件の素材だと隠は悟ったのだ。

 

「いやいや、落ち着いてほしい。これらの情報は、今日君が確実に此処に居るという証明のための小さい情報に過ぎない。私と君とは今日まで接点も何も無い、赤の他人同士だったからね」

 

「結局……何なんだ?」

 

「私が得られた君の情報を秘密にする代わりに私の頼みを聞いて欲しい……なんて事は言わないよ。私は君の味方だからね」

 

 その言葉の全てを信じる訳にはいかないが、明言してくれた分隠が抱えていた苦しみが少しだけ緩和された。もしかしたら、本当に味方なのではないかとも一瞬思ったがまだ油断は出来ない。

 

「お願いがあって訪ねたんだ」

 

 神々廻はそう言うと、胸ポケットから小さな石を取り出す。よく見るとメガストーンだった。

 

「これを君に託す。その代わりに私の願いを聞いて欲しい。中央議会下院議長の五百城先生を知っているね。先生を、彼を……処分してくれないだろうか?」

 

 その唐突でしかない物騒な単語を聞いたせいで。

 

「なっ……」

 

 隠の息が詰まった。

 

「ご存知の通り、五百城先生は中央議会の下院議長だ。私たち議会には下院と上院が存在していてね。五百城先生はその二つを繋ぐパイプ役みたいなものなんだ」

 

「なのにあんなクソふざけた真似を……」

 

「そう。そこなんだ。実は五百城先生の最近の行動には私たちも困り果てていてね。だけど誰も諌める事は出来ないんだ。そんな事をしてしまえば誰であっても立場を失ってしまう」

 

 そう言えば、と隠はひとつ思い出した。神々廻は先程自分を"下院議員"と名乗った。対して五百城は"下院議長"。五百城の方が立場は上である。二人の年齢を比べると明らかに神々廻の方が年上であるのに対し、五百城は議員という立場から見てもかなり若い方だ。ここにもなにか裏があるのではないか、と勘繰ってしまう。

 

「正に誰も文句を言えない訳だ」

 

「そう。五百城先生の言い分には理解出来る点はあるにはあるんだ。どんなに擁護したとしても、君たち深部(ディープ)集団(サイド)にはよろしくない連中は居る。私たち議会にも従わない連中も居る。取り締まるべきだという点では賛成だ。だが、先生のやり方には全くもって賛同出来兼ねる。どんな人間が居るにしても君たち深部(ディープ)集団(サイド)は私たちが抱えるべき仲間だ。現場で動いてもらっている仕事仲間と言ってもいい。だが、先生はそんな仲間に対していちゃもんや難癖をつけ、無理難題を押し付けて、それが得られないとなると不穏分子として処断している。更には彼らが抱えていた財も全て没収しているんだ。内部の情報によると、その没収した財産が議会宛に送られたという形跡は皆無とのことらしい」

 

「本当に好き勝手やってるのな」

 

「正に、その通り」

 

 隠の神々廻に対する不信感は怒りへと変貌し、その矛先はいつの間にか彼から結社へ、そして五百城へと向かっていた。あれだけ警戒していた神々廻だったのだが、今となっては目線こそは合わせないものの、その話を真剣に聞いている自分がいる。

 

「五百城先生が何を企んでこんな真似をしているのかは私たちでも分からない。だが、やっていい事の範疇をとうに超えている。このままでは私たちでもどうする事も出来ない。だから……お願いだ」

 

 神々廻は身体の向きを変えた。ベンチに座っているので上半身を隠に向ける。

 

「貴方の命と立場は私が保障する。この石も差し上げる。だから、どうか……。五百城渡を処分してほしい」

 

 それまで港を眺めていた隠は、横目で神々廻を見つめる。地位や立場を忘れ、両手を膝に当てて、正に強く頼み込んでいた。

 

「……理由は他にもあるんだろ」

 

 微かに感じ取った違和感に気付いた気がした隠は、軽く鼻で笑いながら視線を港に戻した。

 

「議会全体の問題なら、何もアンタが俺の元に来る必要は無い。アンタが来て、アンタが頼むことに意味があるんだろ。例えば……五百城が消えたとして、そのポストに着くのがアンタ。とかな」

 

 神々廻は姿勢を正すと、ほう、と小さく声を発した。その目も、面白い物を発見したという眼差しをしているので今の彼が何を思っているのかそのイメージを隠は出来ない。

 

「まぁ……そこは俺には関係ねぇか。あ、あともう一つ。俺の事調べたって言ったよな?」

 

「う、うむ。私で追えるものの大体まで……ね」

 

「"どこまで"調べた?」

 

「……」

 

 隠は唸るように言った。語気をはっきりさせ、強く訴えるかのように。

それに神々廻はほんの一瞬だけ狼狽えたらしかった。

 

「私が分かる範囲まで。君の経歴の全てを……かな」

 

「そうか」

 

 内心そうだろうとは思った。だが、そうなると神々廻がこんな物騒な頼み事を自分にしてくるには引っ掛かる点がまだひとつだけ在る。

 

「俺の事を調べたのなら分かるはずだ。俺は人を殺さないと」

 

「そのよう……だね?」

 

「頼む相手は本当に俺で良いんだな?」

 

 そう言われた神々廻は暫し唸った。その様子を見て、隠は余計な事を言い過ぎてしまったかもしれないと若干の焦りと後悔を覚える。

 

「君でいい。いや、君だからこそだ。君は……"この世界"の頂点に位置する最強なのだろう?」

 

「やはりそう来るかよ」

 

 

 それから少しして神々廻は隠の元を去った。

約束通りメガストーンを渡し、そして自身の連絡先も添えて。

 

「ね、ねぇ……。今の誰だったの?」

 

 嫌な胸騒ぎを同様に覚えたのだろうか、ミナミがまず先に駆け寄って来る。

 

「結社の人間だ。だが五百城の差し金じゃねぇ。むしろその逆のようにも見えた……」

 

「アイツじゃ……ない? ウチらの味方って事?」

 

「それを殊更に強調していたようだったが、正直油断は出来ねぇかな」

 

 隠は見たことも無い色合いをしたメガストーンを眺めながら丁寧にポケットへとしまう。

二人より離れた位置にて、サークルのメンバーたちが物珍しそうな目で隠たちを眺めていた。

 

 

 気を取り直して隠は本来の活動を再開した。

手始めに隠は穂積(ほづみ)裕貴(ゆうき)を呼ぶと、指定した地点に立つように指示する。

 

「何があるってんだ?」

 

「まぁまぁ。少しだけ協力してくれ。代わりにそこにあるであろうメガストーンやるから」

 

「なるほどね。何処まで歩けばいいんだ?」

 

 穂積に問われた隠は、地図アプリと交互に見ながらメガストーンが埋まっているであろう方向を指した。陽射しで分かりにくいが今回も埋まっている場所は輝いているようだ。

 

「おーけーおーけー。右に二百歩、下に二百五十六……」

 

「異世界に飛ぼうとすんな」

 

 穂積が目的地に到達したので、その場で手を翳すように言う。言われた穂積もその場でしゃがんでは、何かを掴んだような、違和感を覚える苦い顔をした。

 

「どうだ、何かあったか?」

 

 隠もそこまで一目散に走っては地面に触れる。やはり、メガストーンだった。

 

「ミナミ! お前もだ」

 

 隠はやや離れた位置に立つ彼女の姿を捉えると手招きしつつ叫んだ。ミナミも恐る恐るこちらへとやって来る。

結果として、三人の手には同様の色をしたメガストーンが光っていた。

 

「おい、レン……これは……?」

 

「どうやらアブソルナイトのようだな。お前も俺みたいにキーストーンを手に入れた状態でアブソルをバトルで使えばメガシンカが出来るぞ。穂積お前アブソルは?」

 

「ボックスに居たかも……。てかお前俺を利用したな!?」

 

「別にいいだろ、お前だってこれで強くなれるんだし。とりあえずこれで答えが出たかもしれねぇな……」

 

「答え? レンお前何言ってんだ?」

 

 巻き込むだけ巻き込まれて置いてけぼりにされている穂積を無視して、隠は物思いに耽る。自分を含めた、三人の掌とそこに輝くメガストーンを見つめながら。

 

「成程、これもゲームの"再現"ってワケか」

 

「レン?」

 

「何だって?」

 

 独り言に反応したミナミと穂積にこの事をどう説明しようか、そもそもその必要があるのかで一瞬悩んだがそのままにするのも可哀想だと感じたのでここまでの流れを話す事にした。

 

「俺はずっと気になっていたことがあるんだ。このメガストーンてやつはな、誰でも触れられる場所にある事が多いんだ」

 

「触れられる……。そりゃ、まぁ、確かにな」

 

 穂積は言われて気付いて周りを見た。この山下公園は常に人の出入りが激しい。

 

「なのに、俺の手元にあるメガストーンの探索アプリでは常に反応が示されたままなんだ」

 

「なんでそんなわけわかんねーアプリがあんだよ。……って事はつまりあれか? メガストーンが現実に存在する以上、有限だと。んで、人の多い場所に配置されている。途中で誰かに取られててもおかしくないのに、反応が消えないと。それがおかしいと。お前さんはそう言いたいのか?」

 

「それだ。そう言いたかった」

 

「確かにおかしいな……」

 

 隠の所属するサークルは、ポケモンを遊ぶ人は多いが全員では無い。当然メガシンカを知らない人も居る。穂積がここまでスラスラと理解出来たのは彼が最新作のポケモンに触れているのが大きかった。

 

「だが、今日で確信した。この反応はゲームと同じだ。ゲームだとデータの数だけアイテムがあるだろ?」

 

「それを言ったらデータの数だけカロス地方がある事になるんだが……。いや、だとしてもよ? だとしてもおかしくねぇか? 実質無限に湧き出る物質なんて科学的にどうなんだってなるだろ」

 

「そこは俺も分からん。分からんが……」

 

 腕を組みながら隠は"かつての世界の姿"を瞼の裏で思い出した。その世界で敵対し、しかし長い間心強い仲間だった老人から発せられた言葉が、まるでたった今聴いたかのような鮮やかな音質で蘇ってくる。

 

 世界そのものが大きく変わろうとしている。変化している。隠はそれを言おうとして喉元で止めた。今ここで言っても恐らく理解される事は無いだろう。

結局隠は分からない、とだけ言うと今回の目的を終えた。あとは皆に任せてついて行きつつ横浜という街を楽しむだけだ。

 

 

「あー、疲れたぁ」

 

 陽が落ちて大分時間が経った。

みなとみらいという街を象徴する観覧車のコスモクロックが示す時計は夜八時を指していた。観覧車そのものが派手なイルミネーションで飾られ、デジタル式の時計が備え付けられている。

 

 あれから隠たちは山下公園を通った後は商業施設である赤レンガ倉庫で少し買い物をしたあと、遊園地であるよこはまコスモワールドに寄って一通りのアトラクションを楽しみ、後に運河の上に敷かれた遊歩道である汽車道を通って桜木町駅へと到着。そこにあるランドマークタワー内にあるポケモンセンターヨコハマでポケモン勢を湧かせるといった形で今回のイベントは終わりを迎えた。

 

 疲れたと言った割にはその顔は清々しいものがあった。思えば、神々廻とのやり取りを除けばここまで深部(ディープ)集団(サイド)の要素が無い平和な休日を友人たちと過ごせた事がとても珍しく、楽しいものだった。ずっとこのままでいいのに、とも願うもそれは彼がジェノサイドである限り決して実現しない。

 

 今回集まった面々は帰りの方向が違う。駅前で佐野(さの)が解散、と叫ぶとそれぞれが散った。近隣に住む大三輪(おおみわ)と穂積と樋端(といばな)は地下鉄方面へ、それ以外の者は大学近く若しくはその周辺に住んでいるので途中までは帰りが一緒だった。

電車に揺れて一時間と少しして聖蹟(せいせき)桜ヶ丘(さくらがおか)という駅に着いた。大学への最寄り駅のひとつだ。ここで大学近くに一人暮らしをしている同級生や先輩が一気に降りる。

 

「それじゃあね、レン君。お疲れ。またね」

 

 そう言って手を振ったのは佐野だった。隠はサークルの先輩とは誰とも仲が良いが特に気に入られているのが彼だった。わざわざ一言添えて別れるのは佐野一人だけである。一応ホーム越しに手を振っている先輩たちも居ることには居るが。

 

 気が付いたら一緒に乗っているのは隠とミナミだけだった。他のメンバーは既に降りていたようだ。

 

「楽しかったね、横浜。また行きたいかも」

 

「物の値段がいちいち高ぇけどな。だが、あれを都会って言うんだろうな。物や移動には困らないのは流石としか言いようがねぇわ」

 

 そう言って隠はポケモンセンターで買った色違いのメガメタグロスのストラップを見せびらかした。本人曰く少し高かったというアピールのつもりだろうが、今日集まった人の中で一番のお金持ちが言っても自慢にもならない。

 

 電車はそろそろ基地の最寄り駅である八王子(はちおうじ)駅に着こうとしている。

乗った時と比べて乗客が減っている空間の中で、ミナミがそっと口を開いた。

 

「ねぇ、これからどうするの?」

 

「これから?」

 

「結社とのイザコザに関わる気?」

 

「そうだな……」

 

 駅に停車した電車から降りた二人は改札を抜けて外の空気に触れる。暫く歩いて人気も無くなった頃に会話は再開された。

 

「そんな面倒な事する訳ないだろ」

 

「言うと思った。けど、それだとウソついた事にならない?」

 

 事情が変わった。

これまでは五百城という絶対悪が存在し、自分たち深部(ディープ)集団(サイド)の人間はどのような立ち振る舞いをすれば良いか模索していた間に、この問題は結社内での権力闘争へと化していったことになる。

 

「半分嘘……かな。メガストーン欲しかったからあの時は承諾したようなフリしたけど、本音では五百城が邪魔ってのはあの人と一致している。殺す、とまでは言わなくとも上手く対処しないとだよな」

 

「前にウチにはどうにも出来ないとか言ってた癖に。まぁいいや。でも意外。あんな変な奴でも殺さないんだね」

 

「当たり前だろ」

 

 二人は街灯の光も満足にない薄暗い、一見何も無いところで立ち止まる。だが、実際には基地を囲むように広がっている林が目の前にはあるのだ。

 

「決めてんだよ。誰も殺さないって。最初から……ずっとな」

 

 

「ただいまー。お土産あるぞー。ほら食え食えお前ら」

 

 基地に帰還したジェノサイドは広間に入ってそう叫んだ。案の定、多くの構成員が集まっている。

ジェノサイドはポケモンセンターで買ったポケモンのクッキーをこの部屋の真ん中に置かれていたテーブルに置いた途端、この部屋に居た自分以外の全ての人間が群がった。

中にはわざとなのか、吠えたり取り合ったフリをした者もいる。それらを知った上でかジェノサイドはそんなにねぇよ、と呟いてその部屋を後にした。次に向かったのは今となってはミナミとレイジの部屋と化している談話室だ。

 

「それで、どうでした? デートは」

 

 言った途端レイジは枕で殴られた。殴ったのは当然話を聞いていたミナミだ。

まるでお約束とも取れるような二人のやり取りを見て慣れてるな、と感じたジェノサイドはロッキングチェアに座ってレイジの質問に答える。

 

「別に。途中で結社の人間と会って暗殺依頼された。謎のメガストーン貰った」

 

「……楽しいんですか、それ」

 

「あとは中華街でグルメ楽しんで公園で散歩して遊園地で遊んであとは買い物もしてきたかな」

 

「……理想的なデートじゃないですか、それ」

 

 再び枕で殴られるレイジ。二度目はやや強めだった。レイジは元にあった場所に枕を戻し、ミナミは洗面所へと向かう。

 

「それはどうでもいいだろ。だが同時に疑問も解消された。メガストーンの場所さえ分かっていればその場に居る誰もがメガストーンを手に入れられる事が分かったからな。お前も望むなら今後の探索に加えるが……どうする?」

 

「まるでそれが本来の目的のようですね。ですが……良いですね。面白そうです」

 

 レイジの了承を聞きながらジェノサイドは椅子を揺らす。一日中歩き続けたせいか疲れが一気に寄せてきた。

 

「お疲れですか?」

 

「あぁ……眠くなってきたかもしれん。快適だからついこの部屋には来ちゃうもんだが、そのまま寝ることがあったらすまん」

 

「気にする程でもありませんよ。私は適当に眠る事にします。では、ちょうど良い頃合ですし、私はこれで。おやすみなさい。ジェノサイド様」

 

「あぁ……」

 

 椅子を揺らしていた足の動きが止まりつつあった。

暖炉から発せられる暖気を感じながら、ゆっくりと目を閉じる。意図せずして意識が剥がされた。

それから二時間後、お風呂から上がったミナミが彼が椅子の上で眠っているのを確認する。

 

「げっ、此処で寝てるし。別にいいけどさぁ……」

 

 タオルで頭を拭きながら下着姿で部屋を闊歩するミナミは人一人が横になれる広さのカウチソファを眺めながらうんざりしているような口調で呟く。

 

「こんな所で無防備でいるなんて、命が危ないとも思わないのかしら? いや、そんな事が無いから平気でいられるのね……」

 

 今日一日を通して、ジェノサイドのもうひとつの顔を見られた事で彼がどのような人間なのか、それが垣間見られた。ミナミにとっては不思議な一日だった。

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