【ORAS10周年記念】Re:Re:ポケットモンスター REALIZE   作:暁色の王冠

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夢の国の悲劇②

「なーんでこういう時はいっつもこうなんだろうな」

 

 あれからジェノサイドは一時間掛けて敷地内をほぼ一周してみせた。

そして、そのゴール地点にメガストーンを発見した。

 

「三時間掛けました。念願のメガストーン見つけました。場所は目の前のお城の真裏! いや、ふっざけんなよ……労力返せマジで……」

 

 本来であればわざわざ三キロメートルほどの距離を歩く必要すらも無かったはずなのだが、それに気付けなかったジェノサイドは律儀に走破した。あれほど欲しかったはずのメガストーンなのに、何故か心から喜べない。

灯台もと暗しとはこの事か、と二度とこのような真似はしないと強く心に誓ったジェノサイドは、その時自分の名を叫びつつ近付く人間を認めた。ミナミだった。

 

「おーい、レンー。こっちこっち」

 

 その後ろをレイジがやや遅れてやって来る。

 

「どう? 見つかった?」

 

「メガストーンだろ? ま、まぁな……」

 

「いやぁお待たせしてしまって申し訳ありませんジェノサイド様。私と若はこの通り遊んでまいりましたっ! とても楽しかったですよ〜。もう満足であります」

 

「そうか、それなら良かった」

 

 レイジはよほど楽しかったのか、普段よりもテンションが高めである。内心で自分の成果と比較したのも相まってテンション下がり気味のジェノサイドは適当にあしらう。

彼はその時、手に入れたメガストーンを二人に見せようかと思ったが、そこまで会話が踏み込まれなさそうなのを察してポケットから手を出す。

 

「では……どうされます? 若も二つほど楽しまれたので私としても次に向かっても良いかと思いますが」

 

「次ってことはシーって事か? 俺は全然構わないが……ミナミ、どうする?」

 

「えっ、そこウチに聞く!?」

 

「此処にあるメガストーン欲しくないのであればこのまま行くぞって意味な」

 

「そっちね。うーん……。石による。此処にあるの? 何だった?」

 

「色見た感じだとライボルトナイトだな」

 

「……一応貰っておこうかなぁ。場所は?」

 

「すぐそこ。目の前の城の近く」

 

 そう言ってジェノサイドは石が置かれていた大まかな位置を指で示す。自分はもう手にしてしまったので見えないが、ミナミにはメガストーン特有の光が見えているはずだ。もっとも、今は人が多くて中々見えたものではないが。

 

「ジェノサイド様、もしかしてかなりの時間待ちました?」

 

「まぁな。でも大したことはねーよ、ベンチに座ってたり適当に軽いモン食べて休憩してたからな」

 

 真っ赤な嘘だった。ジェノサイドは退屈などしていない。この敷地内を長い間歩き回っていたのが正解である。

レイジが聞いた理由は、メガストーンの位置を確認したうえでジェノサイドの単独行動がすぐに終わってしまったものだと解したためだ。

 

 ミナミがやや嬉しそうな顔をして戻って来る。最初は何だかんだ言っていたが、結局楽しいものは楽しいのだ。

彼女はある程度満足したと言っていい。

 

「では、参りましょうか。お次は……」

 

「お隣のシーだな。ちょっと勿体無い気がするが、ここでランドは退場して、同じようにシーに入ろう。俺は引き続きメガストーン探索。お前たちは……どうする?」

 

「若にお任せします」

 

「えー、ウチもどっちでもいい」

 

 このやり取りさっきも見たぞと思いつつモノレールの乗り場方向へと歩く。ランドからシーの行き方は色々あるらしいが、一番楽なのは二つのテーマパークを回るモノレールだとジェノサイドは判断した。

 

 モノクロカラーのモノレールに乗り込んだ三人は、目的地着くまでのおよそ十分の間、揺られていた。

ランドに居た際も思ったことだが、この乗り物もファンシーな雰囲気があり、当然だが日常とは一線を画すデザインとなっている。これもまたこのコンテンツが人気であり続ける理由の一つなのだろうとジェノサイドは思った。

それと比べると深部(ディープ)集団(サイド)にはそういった工夫が見られない。そもそも、そんな物は必要ない世界であるのだが。

 

 三人はシーへと到着した。

先程使ったパスポートは今回使えないため、同じように入場ゲートでパスを買わなければいけない。ジェノサイドたちは再び列に混ざる。

 

「ったく、面倒だし高いし……明らかに儲かってんだからもう少し便利になってもいいと思わないか?」

 

 ここまでで相当疲れたのかジェノサイドが二人に愚痴をこぼす。

 

「逆かと。これが精一杯なのですよ。むしろ、これ以上緩和させてしまうと殊更に混んでしまいますよ。一番良い方法はチケットの値上げでは……ないでしょうか」

 

「うげぇ、更に高くなんのかよ……」

 

 別の意味で戦慄したジェノサイドはそれ以降黙ったまま素直に三人分のチケット代を支払うとそのまま入場ゲートをくぐる。

 

「さて、と。どうしようか? 見た感じさっき程ではないだろ、混み具合。とは言え、待つものは待つからさっきみたいに俺が探している間に二人でまた遊んできてもいいんだぞ」

 

「今度はウチも探すよ。その方が早いでしょ?」

 

「そうですね。三人で探した後に最後に何か乗りましょうよ」

 

 二人の反応を見て、ジェノサイドとしても悪くない案だと思えた。少なくとも、あの悲劇をもう一度迎えるなどという事は余程のことがない限り無さそうだ。

 

「じゃあそうしますかね。俺はどちらかと言うとあっちよりかはこっちの方が好きなんだ。高校の時行事で行ったことあってさ、それで……」

 

「行事で此処ってどういう事!? まさか修学旅行とか?」

 

「いや、それとも違って、なんかー……学年上がった直後の新しいクラスを迎える上でのイベント的な。これを機に皆さん仲良くしましょー的なやつ?」

 

「あんたがよく覚えてないとウチらはもっと分からないから……」

 

 ジェノサイドが高校の行事でこの場所を訪れたのは二年前だった。それくらい前だとまだ記憶に新しいものかもしれないが、如何せんジェノサイドは学生生活の裏で血みどろの深部(ディープ)集団(サイド)の生活を送り続けて来た。日常の記憶がすっ飛ぶほどの凄惨な過去が彼にはあったのだ。

 

「さっき居た時にも思ったんだけどさ」

 

 ジェノサイドは歩きながら二人に声を掛けた。丁度三人は絶叫マシーンとて好評なアトラクションの前を通り過ぎる。

 

「夢の国って一々お洒落だよな。なんかよくね? 雰囲気」

 

「ハイカラと言いますか……ビンテージなイメージですよね。どうやら、そういう時代のアメリカをイメージしているようです。先程調べてみました」

 

 メガストーンを探す事に集中しすぎてそれまでは希薄だったが、敷地内を歩くだけでもどこか楽しめている気がする。レイジの言う通り、クラシカルな雰囲気に触れる事で非日常を楽しめる事が出来、普段の日常では味わえない時間を過ごしているようにジェノサイドは感じた。

 

「通りで世界中の人から愛されるわけねー。……ん、」

 

 ミナミが何かに気が付いたようだった。

ジェノサイドとレイジの後ろを歩いていた彼女はふと足を止める。それに気付くのに遅れた二人もやや遅れて動きを止めた。

先程の絶叫マシンのアトラクションを過ぎた先に見える大型の豪華客船。そこの乗船口。そこが多くの来場客の無数の足に隠れつつも、よく見るとぼんやりとした光を放っている。

その場へ向い、何かを手にしたミナミが二人の元へ駆け足で戻って来る。

 

「メガストーンだよ。あそこにある。ほら」

 

 そう言って彼女の小さな掌には確かにメガストーンが輝いていた。ライボルトナイトと同じく、ジェノサイドがゲーム内では見た事のない色合いをした石だ。

 

「俺がプレイしているのはYなんだが……このメガストーンは見たことがないな。それはつまり……カイロスナイトと言うところか」

 

 メガカイロスと言えば特性が強力という事で評価が高いポケモンだ。そのメガストーンともなれば必ず手に入れておきたい。すぐに手にしなければとでも思ったのだろうか、その場で走り始めたジェノサイドは途中親子連れとぶつかりそうになる。軽く会釈して道を譲ったあと、その地点まで来ると手をかざした。

 

「これで今回の目的達成だな。二人とも、協力ありが……とう?」

 

 振り返ったジェノサイドは語尾を弱々しくさせて二人を見る。

ミナミとレイジはその場にはいた。だが、少し違和感があった。

 

「なんか……人が少ないような……そんな気がしねぇ?」

 

 そう言われたミナミとレイジは互いに顔を見合せて辺りを見る。確かにそうかもしれないが、そこまで気にする程のようには見えない。それが二人の率直な感想だった。

 

「パレードか何かやるんじゃない? これから」

 

「……かもしれねぇが、なんか急に消えた気がしたからちょっと気になって、な」

 

 三人は少し歩く。

 

「やっぱり人居ねぇよな?」

 

「そういう傾向だと先程仰りませんでした? ジェノサイド様」

 

「いや、そうだけどさ」

 

 また少し歩いた時、ミナミとレイジもその異変に気付く事が出来た。

 

「待って……。人が居なくない?」

 

「私達三人以外……誰もおりません……」

 

「気のせいじゃなかったようだな」

 

 文字通り彼らを除いて誰もが居なくなった。

つい先程まで鬱陶しく感じた人々が、誰一人として存在しない。たまに見掛けるとしても業務を行っているキャストだけだった。

 

 そして、ジェノサイドはその異変の原因を知ってしまった。

その視界に、見慣れた人影が映ったからだ。

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