魔法少女リリカルなのはStrikerS もう一人のストライカー 作:藤月沙月
「はい、到着です!」
転送先は、見慣れないコテージ。辺りを見回して、フォワード陣は初めての地球に目を丸くしている。
ミッドチルダとあまり変わらないが、やはり細かな部分は異なっていた。ここ・海鳴市には初めて来たが、故郷とそう変わらないように思える。――それはきっと、故郷の記憶がほとんどないからだろうけど。
「なのは! フェイト!」
「アリサちゃん!」
そして現れた自動車と、それから降りてきた金髪の女性。ちなみにティアナはこっちにも自動車があることに驚いていた。ミッドチルダの自動車はモーターモービルと言って、水に微量の化学触媒を組み合わせた燃料によって内燃機関が駆動するもの。廃棄はごくわずかな触媒煙を含む水蒸気で、自然や生物への害は極めて少ない。ミッドチルダは「クリーンでより安全な」魔法技術を採用しているだけあって、環境保護にも結構うるさ――否、敏感なのである。
「あ、紹介するね。私となのは、はやての友達で幼馴染」
「アリサ・バニングスです。よろしく」
「「よろしくお願いします!」」
女性――アリサさんは頷いた。そしてその視線が私を捉える
「あ、あの……?」
「あ、ああ、ごめん。知り合いの後輩に雰囲気が似てたから」
まあそいつは男だけど、とアリサさんは笑った。その言葉に私は内心で首を傾げた。秋月の関係者がいるのだろうか。けれど秋月の直系はあの人達しか残っていない。私と伯父はそこから外れていた。――一定以上の能力を持つ魔導師は、正式な認可を得ずに管理局の管理外の世界に滞在できないから。
伯父は当時既に高校を卒業していたし、私は学校に通っていなかった。だから認可が下りず(欲しいとも思わないけど)ミッドチルダに渡ったということ。このため私と伯父は直系から外されている。
秋月の家は後継ぎ(伯父)がいなくなったため、長女であったかつては私の母だった人が後を継いだ。けれど当時から分家筋の殆どはその血が薄れていたはず。いくら直系筋で異端とは言え、長男である兄を差し置いて生まれたばかりの私を跡継ぎとして祭り上げなければならない程に祖父は焦っていたのは覚えている。
そこまで思い出して、私の脳裏にあの人の声が過った。
『私は、あれの母ではありません。母になどなった覚えはありません』
それは、私が伯父と初めて会った日のこと。
『あなたなんか、産まなきゃよかった』
(深琴、どうかした?)
考え込んでいると、スバルが念話を繋いできた。
(なんか考えてるみたいだけど……顔色、悪いよ?)
(……大丈夫だよ。心配かけて、ごめん)
その言い方がまたみんなの不信感を煽ることは分かっている。けれどどうしても押さえきれなかった。
「さて。じゃあ改めて、今回の任務を簡単に説明するよ」
言って、なのはさんは空間モニターを起動させた。そこにはここ、海鳴市全域の地図、地形が表示されている。
「捜索地域はここ、海鳴市の市内全域。反応があったのはここと、ここと、ここ」
ロストロギアの反応が確認された場所は、日を追うごとに移動していた。ティアナが指摘すると、フェイトさんは頷く。
「そう。誰かが持って移動しているのか、独立して動いているのかは分からないけど……」
「対象ロストロギアの危険性は、今のところ確認されてない」
「仮にレリックだったとしても、この世界は魔力保有者が滅多にいないから、暴走の危険はかなり薄いね」
つまるところガジェットさえ出てこなければ、被害をほとんど出すことなく遂行できるはずだ。
「じゃあ中距離探査は、リイン、お願いね」
「お任せです!」
「クロスミラージュにも簡易版の探索魔法をセットしてあるから、そっちとこっちの二人ずつで、少し離れて探していこ」
「あとは市内の各所に、サーチャーとセンサーを設置。作業としてはこんな感じかな」
ちなみに私は一人で設置作業だ。――というのも地球出身で、現地住民とトラブルになってもほぼ自力で対処できるだろうから、らしい。まあ地球初体験組を別行動させる、というのは大変だから。色々と。
(深琴も、なんかあったらすぐ呼べよ)
(はい。ありがとうございます、ヴィータ副隊長)
上空からサーチャーを散布しているヴィータ副隊長が声をかけてくれる。黒のハンチング帽を目深にかぶって気合を入れ直し、私は一歩を踏み出した。