魔法少女リリカルなのはStrikerS もう一人のストライカー   作:藤月沙月

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2014年03月16日、書き直しにつき再投稿


08:願い、二人で

 昔――ミッドチルダに渡る前、よく見ていた夢がある。実は全て夢だったという、そんな夢。

 母の声に起こされた私と、父と、兄、そして母の四人で食卓を囲み、兄と共に学校に向かう。学校では友達と、昨日の見たテレビとか、宿題のこととか他愛のないことを話して。学校から帰ったら習い事とか、家の手伝いとかして。そして再び家族全員で食卓を囲み、団欒し、そして一日を終える――そんな夢を見続けていた。自分に都合のいい夢を、飽きもせず。

 きっと、私という人間は「不幸のヒロイン気取り」なのだろう。社交辞令を鵜呑みにしてしまうほど単純で、弱くて、情けなくて。

 そして再び、心は迷う。こんな私が、このままでいいのかと。

 私なんかが、魔導師になってよかったのかな。

 ――魔導師を辞めた方が、いいんじゃないかな……。

 泣いているだけで、何も出来ないのに。前に進むことも振り向くことも恐れているだけ。……どん底まで落ち込んだ思考は、ぐるぐると後ろ向きに回りだす。

 目の前で泣いている人がいても、手を差し伸べることも――声をかけることも出来ない自分なんか――。

 

『……違うよ』

 

 ふわりと、羽が舞う。夜色にも似て、それよりももっと色鮮やかな――紫色の天にも似た、その羽。記憶には無い。けれどもどこか懐かしいその色と、声の主を私は知っている。姿を現した少女は微笑んでいた。

 

『大丈夫……あなたは強いから。それは、私が一番知ってる』

 

 少女が私の手を握る。彼女の名前を口にしようとした瞬間、少女が首を振った。何故と問おうとした私の言葉を遮って、少女は口を開く。が、その言葉は風に掻き消されたかのように、私の耳には届かない。

 

「待って……!」

 

 陽炎の様に消えていく少女に手を伸ばす。指先が触れた瞬間、寂しげな声が聞こえた気がした。

 

 ――ごめんね、と。

 

 

 ◇

 

 

 目を覚ました時、なぜか視界は歪んでいた。天井も、顔を覗き込む人も見えないほどに。

 

「目が覚めたみたいね」

「……シャマル先生……?」

 

 上体を起こし、目を擦る。下した手の甲には雫がついていた。手早くバイタルチェックを終えてほっとした様子で、シャマル先生は椅子に腰かけた。ここはどうやら、機動六課の医務室らしい。

 

「気分はどう?」

「特には……少し、頭がぼーっとするくらいで……」

 

 私、なんで医務室にいるんだろう。ホテル・アグスタにいたはずなのに……。

 ふと体を見れば、至る所に白い包帯が巻かれていた。……そうだ。ホテル・アグスタにガジェットが現れて、フェアクレールトと見慣れない召喚獣と戦って、それから……それから、どうなったんだっけ。

 声を聞いた気がする。その声に身を委ねた瞬間からの記憶が、全くと言っていいほど残っていない。あの声は、なんだったんだろう。

 

(お爺様に似ていた気もするけど……)

 

 とは言っても、私が最後に祖父と会ったのはもう10年近く前のこと。それから秋月家からの音沙汰は無いし、年齢的にももう亡くなっているだろう。いい思い出も無いし、顔も覚えていないのに。

 ……だけど、今大事なのはそこじゃない。

 

「……私、どうなったんですか?」

「典型的な魔力エンプティと、大威力砲撃の反動をもろに食らっちゃったの。三日間眠ってたんだから」

「三日も……!?」

「あ、駄目よ! まだ安静にしてなきゃ!」

 

 ベッドから降りようとした私を、シャマル先生は止めた。

 

「でも、私……!」

「……落ち着いて、よく聞いてね。例のアンノウンと召喚獣は逃がしてしまったけど、奪われたのはレリックとは異なるロストロギアよ。ガジェットは全機撃墜したし、オークション会場や客に被害はなかったわ。奪われたロストロギアは密輸物で、今108部隊とフェイト隊長、それとアーウィング執務官が密輸ルートとか合同で捜査中よ」

「アーウィング執務官が……?」

 

 そういえば会場にアーウィング執務官がいたんだっけ……。彼の言葉を思い出すと、胸がチクリと痛んだ。私は彼に嫌われていたんだ。迷惑がられていたんだった……。

 口を閉ざした私に、シャマル先生は微笑む。

 

「ええ。でも、深琴を一番に発見したのはアーウィング執務官なのよ? それに、合同捜査を提案したのも――」

 

 続くはずの言葉が、扉の開閉音で遮られた。

 

「あら、なのは隊長」

「深琴の目が覚めた、って連絡があって……」

 

 陸士制服に身を包んだなのはさんが、ベッド傍の椅子に腰かけた。

 

「ごめんね、深琴。援護するって言っておきながら、何もできなくて」

「いえ。独断で動いた私が悪いんです。ちゃんと部隊長の指示に従っていれば……」

 

 そうだ。元をただせば私が悪いんだ。

 

「まあしばらくは絶対安静ね。訓練は一時中止。ロゼットは今メカニックスタッフがデータ解析してるから、終わり次第持ってきてもらうね」

「ですが……」

 

 ――「もう平気です」と続けようとした瞬間、なのはさんが安心半分、困惑半分の微笑を浮かべた。

 

「深琴は、ちょっと一生懸命すぎるんだよね。それは深琴の長所でもあるけど、短所でもあるよ。……まずは怪我の治療を最優先。万全の状態で復帰しよ?」

「……はい……」

 

 でも、ここで立ち止まってはいられない。……というより、立ち止まっていたくない。何かしなければ。ただでさえ私は訓練を三日も休んでいるのに……これ以上どう休めというのだろう。

 

「あの、なのはさん。前にいただいた、仮想戦闘データは続けてもよろしいでしょうか?」

 

 私の言葉になのはさんは目を細める。その視線の鋭さに、思わず私は肩を竦めた。「怒ってるんじゃないんだよ」というフォローに、小さく安堵の息を吐く。

 

「……すいません。何かしてないと落ち着かなくて……」

「そっか。……分かった。でも、一日一時間、時間厳守でね」

「ありがとうございます!」

「うん。それじゃ、お大事にね」

 

 言ってなのはさんは立ち上がり、医務室を出た。そして入れ違いに、見覚えのある――ここにいるはずのない人物が入ってくる。

 

「失礼します。レオン・アヴァンシア捜査官候補生です。秋月三士が目を覚ましたと聞いて――」

「ああ、いらっしゃい。どうぞ」

「はい。ありがとうございます」

 

 眩い金色の髪と、穏やかな海面を思わせる碧眼の青年。

 ――レオン・アヴァンシア。士官学校時代の同期で、同じチームを組んでいた「首席卒業生」の一人。階級は三等空尉で、現役捜査官候補生。

 やや足早に、レオンは私のベッドに近づいた。その眼差しは鋭く、彼の機嫌が悪いことを示している。……彼がここまで分かりやすく機嫌を表情に出すなんて珍しい。

 

「アーウィング執務官から聞いた。また無理しやがったな」

「えっと……ごめん」

 

 シャマル先生が席を外したのを見届けて、レオンはいつもの口調で言う。即座に謝罪すれば「謝るくらいなら最初からするなと何度言えば分かる!?」と怒られた。けれどそれすらも懐かしい。そして彼の訪問で、私の中で何かが弾けた。

 

「……深琴? どうした?」

「レオン、私、私……」

 

 再び視界が歪み、呼吸が苦しくなる。必死に笑顔を作ろうとしたが無駄だった。

 

「私……このままでいいのかな……?」

「お前、何言って……」

 

 あの言葉はただの社交辞令だった。勝手に浮かれて、調子に乗って。何も気づかずに、あの人のことを勝手に尊敬して、迷惑掛けて。こんなことなら、私――。

 

「……魔導師になるんじゃなかった……」

 

 

 ◇

 

 

 同時刻、機動六課隊舎会議室。その一角で、ディバイン・アーウィングは提供された資料を睨みつけていた。ガジェットとアンノウン――フェアクレールトとの戦闘データ、奪われたロストロギアとその密輸ルートの推測など、機動六課と陸士108部隊、そして彼と部下がこの三日で可能な限り集めた情報である。

 

「……ここにいたんだ」

「なのはか。何の用だ」

 

 その背中に声をかけたなのはは、返ってきた冷たい声に肩を竦めた。

 

「深琴、目が覚めたよ」

「知っている」

「顔、出さないの? 深琴も喜ぶ……わけないか」

 

 きっと今会えば、彼女の心はさらに乱れるだろう。そう予測したなのはは苦笑する。

 

「はやてちゃんから聞いたよ。ほんとに、『あんなこと』言ったの?」

 

 あんなこと、とぼかされた言葉に、ディバインは唇を噛み締めた。しかし振り向きはしない。

 

「深琴、ショックだったろうね。ようやく会えたのに」

「……お前に、何が分かる」

「分からないよ。でも……」

 

 言い返したなのはは躊躇う様に唇を噛み、一歩彼に近づいた。

 

「……深琴ね、実の母親にその力を疎まれていた。あんなの自分の子供じゃない、産まなきゃよかったって、面と向かって言われて、捨てられるようにミッドチルダに送られた」

 

 六課が活動を開始して間もない頃、なのはは深琴に聞いた。なぜ魔導師を目指したのかと。そして将来はどんな道に進みたいのかを。

 

『憧れなんです』

 

 彼の名を紡ぐたび、深琴はそう続けた。彼にかけられた言葉が嬉しくて、認められたことが誇らしく、だから憧れたのだと。彼のようになりたい、彼のように『誰かを守れる自分』になりたいと深琴は言っていたのを、なのはは思い出す。インターミドルに出場したことも、士官学校に入学したのも全部『誰かを守れる力』を手に入れるためだと。

 それは彼も分かっている。だからこそ。

 

「……本気で、魔導師を辞めさせようと思ってる?」

「ああ。俺は本気だ」

「それを、深琴が望んでいないとしても?」

 

 魔導師でなければ、現場に出ない。管理局員にとってそれはほぼ絶対的の安全だ。無論、それは彼女本人が望まないことなど理解している。それでも、ディバインはそれを望まずにはいられなかった。

 何より、とディバインは三日前の戦闘を思い出す。なのはを始めとした上司の誰もが知らなかった、深琴の身に起きた異変。己の血で染まったその姿を思い出し、ディバインは唇を噛んだ。

 自分がこの目で確認しただけの情報は、いつでも提出できるよう纏めてはいる。だが。

 

(……あれは、本当に深琴なのか……)

 

 破壊と殺戮を絵に描いたような、あの異変。自分が知る彼女とは程遠い不吉な姿に、言いようの無い嫌悪感と後悔が呼び起こされる。

 あんな戦い方をするために、彼女は魔導師になったんじゃない。

 あんな戦い方をさせるために、なのはや零――自分の親友たちは彼女を育てているんじゃない。

 ――こんな思いをするために、自分は彼女を救い出したんじゃない。

 

「……誰が好き好んで、危険な現場に出すか」

「……相変わらずだね。深琴限定で」

 

 肩を竦めて、なのはは呟いた。

 

 

 ◇

 

 

「あ、深琴さん」

「もう大丈夫なんですか?」

「うん。二人とも、心配かけてごめんね」

 

 それから、数日。その日は午前訓練のまとめで模擬戦を行う日だった。もちろん私は今日も医務室で点滴を受けていたのだが、フェイトさんに付き添われ、陸士制服を着崩した姿で私は2on1の模擬戦真っ最中のスターズを見た。

 ウイングロードを発動させたスバルが、なのはさんに向かっていく。ティアナは地上でクロスファイアシュートを発動させる。過去の一件で砲撃型を愛用する私とは違って、ティアナのそれは誘導型。見てて勉強になるんだけど……。

 

(あれ……何か、変?)

 

 いつもよりキレが無い誘導弾が、なのはさんに向かっていく。萎縮か不調か……どちらにせよティアナらしからぬ異変に気づいたヴィータ副隊長とフェイトさんも首を傾げていた。そしてもちろん回避して移動を続けるなのはさんに、スバルが突撃する。でも、あれは……。

 

(フェイクじゃない……本物!?)

 

 桜色の誘導弾を防いだスバルはそのままなのはさんに突撃する。近接戦になったが、なのはさんはレイジングハートでリボルバーナックルを捌いた。

 そして再び、違和感。何かがおかしい。スバルも、ティアナも、そしてなのはさんも――。

 スバルがなのはさんの攻撃を受け、その隙を突いて上空からティアナがオレンジ色の魔力刃でなのはさんへ攻撃する。

 

「おかしいな。……二人とも、どうしちゃったのかな?」

 

 スバルの拳と、ティアナの刃。それらを片手ずつ受け止めたなのはさんは呟いた。

 

「頑張ってるのは分かるけど、模擬戦は喧嘩じゃないんだよ。練習のときだけ言うこと聞いてる振りで、本番でこんな危険な無茶するんなら、練習の意味、無いじゃない」

 

 小さな、けれど確かに届いたその言葉は。

 

「ちゃんとさ、練習どおりやろうよ。ねぇ。私の言ってること、私の訓練……そんなに間違ってる?」

「私は、もう誰も傷つけたくないから! 亡くしたくないから! だから……強くなりたいんです!」

 

 ――ティアナには届かなかった。

 

「……少し、頭冷やそうか」

 

 なのはさんの指先は、ティアナへと向けられる。誘導型の魔法で射撃準備に入っていたティアナを攻撃したなのはさんは同時にスバルをバインドで縛り上げ、こう言ったそうだ。「じっとして。よく見てなさい」と。

 戦意を失い、倒れる寸前のティアナを、なのはさんは砲撃型のクロスファイアで狙い撃つ。

 その光景を目にした瞬間、私は手すりを掴んでいた左手に力を込め、飛び降りていた。

 

「ティアナ!」

「深琴!?」

「馬鹿、戻って来い! 深琴!」

 

 フェイトさんとヴィータ副隊長が声を荒げた。けれど、動き始めた私は止まらなかった。展開状態のウイングロードに一旦着地し、直前にかけていた魔法で一気に加速する。

 目的地は、回避も防御もしない――否、できないティアナの元へ。

 

「ラウンドシールド……!」

「……深琴……」

 

 桜色の砲撃がティアナを直撃する。その刹那発生した淡紅色の円形の盾を見たなのはさんが、こちらに視線を遣った。気遣わしげな、視線を。

 その視線を受け止めた途端、心臓が一際大きく揺れた。

 ――あれは敵だと、声がする。

 

(……違う。なのはさんは、違う!)

「――そこまでにしろよ、お前ら」

 

 内側から聞こえる声を否定した瞬間、意識にもう一つの声が割り込む。

 見ればフローターで衝撃を緩和しウイングロードに落ちたティアナを庇う様に、零さんが刀を抜いた。……もう大丈夫。零さんが、守ってくれる。それを見届けた私は、意識を手放した。

 ――彼の視線に、兄のそれを感じながら。

 

 

 ◇

 

 

 意識を手放した深琴が、倒れ落ちる寸前で零と共に訓練場に急いでいたディバインに抱き留められる。それを確認した零は無言で刀を鞘から抜いて突撃し、その刃先をなのはの首筋に向けた。

 

「……零くん、何のつもり?」

「そこまでにしろって言ってるんだよ。模擬戦は喧嘩じゃないんだろ? ならお前が今、スバルとティアナにしたことは何だ?」

 

 言って、零は黒曜石にも似た瞳を細める。そこに浮かぶのは、確かな怒り。

 

「言うことを聞かない部下への制裁か? それにしては武力行使が過ぎるんじゃないか? 二回目の砲撃は、深琴の盾が間に合ったから良いものの――防御も回避もしない、できない奴に直撃したら、いくら威力を調整してると言っても、大怪我は免れないよな?」

「でも、こうでもしなきゃ……」

「『将来間違えるから意味が無い』ってか? それで見せしめの様に、圧倒的な実力差で撃墜させられた本人はやりきれないよな」

「……ティアナは、焦ってる。強くなろうとして、間違った方向で無茶をしてる」

 

 なのはが、呟くように口を開いた。スバルやエリオ、キャロ、フェイト、ヴィータが心配そうに自分たちを見る。内フェイトとヴィータからは敵意すらも感じるが、零は気に留めることなく話を続けた。

 

「そんなことは分かってるよ。自慢じゃないけど、俺はお前がティアナを大事に思ってることも、伝えたいことも分かってる。その上で言わせて貰う。文句は後で聞くし、気に入らないって思うなら砲撃ぶち込むなりなんなり好きにしろ。その時は俺も、そのつもりで迎撃する」

 

 刀を一旦下げ、零は意識を失っている深琴に視線を遣った。ディバインの腕の中、目覚める様子も見られない。本当は俺たちが間に合わなければいけなかったんだけどな、と内心で呟いた。

 

「基礎は大事だ。それはこいつらだって痛いほど分かってる。なら何故逆らうか? 簡単だ。『強くなっている自信が持てないから』だ」

 

 そもそもこの部隊の保有戦力は明らかに異常だ。ランクは当然のこと、将来有望な才能を秘めた新人達を寄せ集めている。だが彼ら――及び本局だってこう思っているのではないか。『何かあってもなくても、なのは達が何とかしてくれる』と。

 新人たちの動きは、決して悪くない。けれど同時に「頑張っても、どうせ最後はエースが持っていく」のではないか。そう思ってもなんらおかしくは無い。

 もちろん、なのはやフェイト、はやてが強くなるために、誰かを守れる様に努力していることは零も分かっている。けれどライトニングと比べて、スターズは――なのはとスバル、ティアナは関わっていないのではないか?

 それは深琴にも言える事だが、幸いなことに、彼女が所属するロングアーチは隊員同士の年齢も近く、気が利く隊員が殆どだ。入隊して間もない、局員としての経験もない深琴を心配し、自分たちの輪に引き込めるほどに。

 

(こういう役回りは苦手なんだがな……)

 

 そう内心で吐き捨てるも、自分以外に口を開く者はいない。ディバインからの援護射撃を期待しつつ、零は深い溜息を吐いた。

 

「ホテル・アグスタでもそうだ。確かにティアナは致命的なミスをした。ヴィータが間に合ったから良かったものの、一歩間違えれば仲間を殺しかねない。スバル、それは分かるな?」

「……はい。でも、ティアは……」

「ああ、ティアナはそんなことしないだろう。けど実際問題、人間だからミスをする。これはティアナだけじゃない。お前やエリオ、キャロ、深琴だってそうだ。もちろん俺やディバイン、言ってしまえばなのは達だって『いつミスをしてもおかしくない』んだ。人間だからな」

「特に射撃型のセンターはな。状況を見て指示を出し、自分も攻撃に回らなければならない。誰よりも本人が思っているだろうな」

 

 零の言葉に頷いたディバインは、そっと深琴を抱え直す。大慌てでやって来たシャマルと共に、未だ目を覚まさない深琴とティアナを医務室へ運んでいった。

 

「問題はそれ以前。当時フォワードの担当は、ホテル防衛のための最終ライン。あそこでガジェットを全機叩かなければ、敵はホテルに侵入し、客諸共攻撃する。深琴は既に裏口から侵入しようとしたアンノウンの迎撃中。しかも敵は召喚魔法のエキスパートで、転送魔法も使用可能。――ではここで問題です」

 

 ピンポーン、とどこからか気の抜けた音が響く。小さな笑いも起きない状況に不満を覚えない零ではなかったが、「この不器用共が」と内心で吐き捨ててこらえた。

 

「もしガジェットが侵入を果たしたとして、会場内にいたお前たちは『どうやって安全無事に迎撃する』んだ? そして今回の件、『本当に悪いのは誰だ?』。結果的にはガジェットは全機撃墜。深琴撃墜とロストロギア強奪が痛かったが、客に怪我は無かったからよしとしよう。別に功を焦っても良いじゃないか。人間だもの」

 

 言って、零は微笑んだ。涼やかで、どこか冷酷な笑みを浮かべる。

 

「大事なのはさ、なのはとティアナが『お互いに話し合う』ことじゃないのか? 誤解の無いようにお互い面と向き合って、他の奴らは邪魔しないで、な」

 

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