魔法少女リリカルなのはStrikerS もう一人のストライカー   作:藤月沙月

41 / 71
27 05:青空

 休暇最終日。私・秋月深琴はミッドチルダ海上隔離施設を訪れていた。収監されている皆への差し入れと、フェアとの面会のため。

 

「あれからね、あの騎士に言われたよ」

 

 ガラス越しに向かい合って、フェアが微笑む。「あの騎士」というのは言うまでも無く渡辺零さんのことだ。事件後彼の保護責任者として名乗り上げた零さんは、頻繁に面会を行っているらしい。テンション高いし鬱陶しいし――そう言いながらも、フェアは笑っていた。

 

「ここを出たら、聖王教会に来ないかって」

「そっか……あ、確かセインやオットー、ディードも聖王教会組だよね?」

「うん。残りはえっと……ナカジマ三佐、だっけ? その人が保護責任者になるって。ただセインもだけどチンクとディエチは稼動歴が長いから、ここを出るのはその分遅くなるかもって……」

「そう……」

 

 そしてルーテシアは、目を覚ました母・メガーヌと共に八年間の隔離処分を受けることになっている。これに関しては賛否両論があったが――ベルカ式をベースにした召喚魔法を使い、そして母子共々実験体扱いされていたことや、そもそもルーテシア本人を捕らえたのは最高評議会で、調整したのはスカリエッティなわけであり、根底部分は洗脳されていたということになる。まあそれでもテロ幇助や公務執行妨害をしたという事実は変えられないらしい。ただ八年間という数字はこれからの再教育次第で短縮されることは確実だし、誰にも邪魔されずにずっと求めていた母親との時間を過ごすことに重点を置いて、この判決が出された――らしい。裁判には士官学校の同期が関わっていたから、又聞きだ。ちなみにその同期(男)はルーテシアの事情を聞いて「こんな幼い子供を利用するとかマジで許せないよな! 俺に出来ることなら何でもするぜ!」と妙にやる気を出していたことを、私は忘れないだろう。

 

「ってことは……ノーヴェとウェンディも、二人が出るまではここに残るって?」

「うん。やっぱり、姉妹だからって」

「そっか」

 

 それからの会話は、この間面会に来たスバルをノーヴェが拒否したけど実は仲良くなりたがっているとか、ウェンディがティアナをライバル認定したとか、ゆりかごでなのはさんと交戦したディエチがなのはさんの砲撃の威力を体感して「ほんとに人間か……?」と漏らしたとか、セインがお姉ちゃん扱いされないと愚痴ってたとかそんな暴露話。その一つ一つをフェアは身振り手振りと満面の笑顔で話してくれた。

 そして面会時間はあっという間に終わりを告げる。

 

「……ありがとう。あの時、僕を助けてくれて」

 

 最後にそう締めくくったフェアの表情は、とても穏やかなものだった。

 

 

 ◇

 

 

 そして休暇も終わり、訓練再開初日。私は隊長室に呼び出されていた。六課運用期間後の話だそうで――その最終確認だ。ちなみになのはさんも同席している。

 

「じゃあ深琴は……予定通りって言うのはあれやけど、アーウィング執務官の正式な補佐官として本局に転属やね」

「何か問題はありますか?」

「いえ、ありません」

 

 八神部隊長とリイン曹長の確認に、私はそう答えた。

 

「じゃあ今日の訓練は、深琴は補助魔法を中心に新しいの覚えていこうか。リイン、手伝ってくれる?」

「はいです、なのはさん」

「『桜華』の新しいバリエーションも考えてるから、エクセリオンモードの練習も忘れないでね」

「はい!」

 

 なのはさんの言葉に頷いて、私は先に退室する。寮に戻って訓練用ジャージに着替え、フォワード達を追いかけた。気づいた四人は「お帰り」と私を迎えてくれる。

 

「それじゃあ、今日も頑張っていこー!」

「おー!」

 

 スバルの号令に声を揃えて、エリオとキャロ、ティアナ、そして私は拳を突き上げた。

 

 

 ◇

 

 

 

 そして4月。機動六課が解散になって、私たちはそれぞれ新たな配属先で日々忙しく過ごしている。

 そのメールが届いたのはちょうど休憩時間中。フェイトさんが送ったその内容は、ちょうど皆の進路が決まり始めたあの頃のものだった。

 

『そしてそれから、機動六課卒業までの静かな日々と、卒業からしばらくのいろんなことがあった日々は今も本当によく思い出します。卒業の日の模擬戦の、本当に熱かった24分間とか、ね』

 

 その文面の目にした瞬間、アーウィング執務官は唇をへの字に曲げた。いきなり不機嫌になる。

 

「……執務官、一番に落とされましたもんね」

「落とした張本人が言うか?」

 

 だって執務官厄介だもん。典型的な射撃型のセンターガードである彼は、その周囲に味方がいれば文字通り最強の指揮官となる。しかもその時彼らにはエースオブエースだっていたわけで。戦闘スタイルの相性的にも私が彼の相手をする方が非常に有利なわけである。

 

「でも楽しかったですよね」

「二次会は悲惨だったがな」

「模擬戦で体力、魔力共に使い切りましたしねー」

 

 なのに全員三次会まで出席したのだからわけがわからない。っていうか三次会まで用意していたシャーリーが鬼だった。いや、彼女に悪気はこれっぽちもないのだろうけど。ノリが良すぎるのもどうかと思う。同窓会会長にシャーリーを選んだのは正解だ。……ちなみに次回の幹事はスバルとフェイトさん、そして私が入っている。いいのかな。

 参加者全員がぼろぼろになりながらも笑顔で映る写真データ。それを表示させ、執務官はそこに映る私と、彼の隣に座る私とを見比べる。

 

「どうかされました?」

「いや……髪、伸びてきたな」

 

 あれから――六課を卒業してから、私は髪を切るのを止めている(毛先を整えるくらいはするけど)。本格的に切る時間の余裕もないし――というのは実際のところ建前である。大学進学のため渡航した兄が言うに、小柄な上に童顔、かつ胸がない、というか全体的に未成熟な幼児体型である私がショートヘアの状態だと三割増しで幼く見えるとのこと。

 ようやく肩甲骨辺りまで伸びてきた黒髪を、執務官はその指で弄る。

 

「数年もしたらなのはやフェイトより長くなるだろうな」

「一応目標にしてますもん。色が黒なんで、重く見えそうですけど」

 

 でもいつか、なのはさんみたいなサイドポニーにしてみたいな。

 

「でも、そろそろバリアジャケットも更新しないとですね。戦闘中は纏めないと邪魔になりそうですし」

「なりそう、じゃなくてなるだろう。確実に」

「あはは。でも正直な話、私そこらへん苦手なんですよねー……」

 

 一応、何でもそつなくこなせることが自慢であり、そして唯一の特技でもある。なんだけどそう言ったプログラミングは苦手な部類だ。決められた形があって、その通りに構築していくのなら得意なんだけど……専用の防護服プログラムの様に「さあどうぞ好きにやってください」と丸投げされるとお手上げ状態だ。

 となると開発者のシャーリーや改造者の楓さん、咲夜さん、マリーさんに頼むのが妥当だろう。

 

『機動六課メンバーは、今は別々の場所で過ごしてるけど……この青空の下、それぞれの場所できっとみんな、あの日の事を忘れずに暮らしてるよね――って、よく思います』

 

 画面をスクロールして、メールを最後まで表示させた。

 

『今日はお休みで、これからなのはとヴィヴィオと、ちょっとお出かけしてきます。お姉ちゃんも来れたらなー、ってヴィヴィオが言ってたけど……また休みが合えば、一緒に出かけようねって』

 

 その一言につい笑みが零れる。ヴィヴィオも学生だから、ちゃんと曜日とか考えないとな……。

 

『同窓会の企画、みんな忙しくて難しいけど、きっと実現させようね。実行委員会会長のシャーリーが頑張ってくれてるから。同窓会の幹事として一緒に頑張ろうね。それじゃあまた。――フェイト・T・ハラオウンより。秋月深琴様』

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。