魔法少女リリカルなのはStrikerS もう一人のストライカー 作:藤月沙月
降りしきる雨の中、誰かが呟いた。紅玉色の瞳に、炎を宿して。
「……急がないと、いけないな……」
◇
「んー! これ美味しいねえ!」
「はい!」
目の前のテーブルに、お皿が載せられていく。一枚、二枚……少なくても十枚はあるだろう。近所のテーブル席に座る客達が何事かという目でこの席に座る面々を見ていた。そんな視線を気にすることなく、渦中の二人――スバルとエリオは一枚、また一枚と皿を重ねていく。
「あ! せっかくだから、もう一皿行っとこっか?」
「行きましょう! ……すいませーん。これ大盛り、お代わりお願いしまーす!」
衰えることないそのスピードに、同席者は全力で「引いて」いた。
「いやー……相変わらずびっくりする程よく食べるねえ……」
「ねー」
アルトの呟きに頷いて、私は自分の皿の中身を片付ける。昔に比べて食べるようになったとはいえ、元から食べるスピードは遅い方だし、自分が注文したもので手一杯だ。
「たくさん食べるから、大きくなるんですかね?」
「キャロは真似しない方がいいと思うけどね……」
『……っていうか、そこの二人が異常なだけじゃないの?』
キャロの羨ましげな呟きを、アルトがやんわりと引き止める。信じられない様な声で会話に入ったのはフェアだ。ちょうど休憩時だったようで、彼も零さん特製の「おやつ」をつまんでいる。
「まあ最前衛と前衛だしね。出動時のカロリー消費もそうだけど、普段から食べとかないと体がもたないんだって」
『へえ。っていうか師匠が滅茶苦茶目を輝かせてるんだけどどうすればいい?』
「放っておけばいいと思うよ。いつものことだし」
モニターの向こうから何か奇声が聞こえる気がするが、ここは無視に限る。そんな光景に目を細めていると、女性のアナウンスが入った。
『お客様へお知らせいたします。南部海岸ライン、ベルウィードホテル上層階にて大規模な火災が発生しております。本ビル内への延焼の危険はありませんが、南部海岸ラインをご利用予定の皆様は、どうかご注意ください』
その知らせに、このテーブルについている全員が口を閉じる。同時にレストラン利用客が小声で囁き始めた。
「近くで、火事?」
「海岸ラインのホテルって、あの黒くておっきな……?」
「高級ホテルだよ。確かその上層階って、会員制じゃなかった?」
「防災設備は五つ星のはず。何でそんなところで……」
エリオ、キャロ、アルトが情報を交換する。スバルは確かめるように呟いて、マッハキャリバーを呼んだ。同時に展開されたモニターに、この火災に関する情報が表示される。
「防災はもう出動してるけど……火災レベル、4!?」
「大火災じゃん!」
そのモニターに映された映像――燃え盛る炎と防災担当の攻防――を見た私とエリオ、キャロは目を合わせて、頷いた。
「スバルさん!」
「手伝いに行きましょう!」
「うん! みんな、ごめん!」
ガタン、と席から立ち上がって、私たちは移動を始める。会計はアルトが済ませてくれるとのことなので、先に行かせてもらった。
『深琴。僕も行きたいんだけど、いいかな?』
「あー……そうだねえ……」
保護責任者である零さんの許可は既に貰っているし、法的後見人であるアーウィング執務官には移動中に、簡単に報告を入れれば大丈夫だろう。「前線での判断は無茶しない程度に任せる」って言われてるし……うん、多分大丈夫。
「すぐ来れそう?」
『ついさっき、シスター・シャッハが戻ってきたとこ。遅くても5分以内にはそっちに着ける』
「了解。それじゃあ、お願いできるかな?」
『うん』
音を立てて、モニターが閉じられた。
◇
「これはひどいなあ……」
言って、秋葉はベルウィードホテルを見上げた。上層部から上がる煙と炎。防災担当が慌しくも確実に、そして早い段階から消火活動しているにも関わらず、鎮火にはまだまだ時間がかかりそうだ。
「それじゃあ、行こうか。フリージア」
《Stand by ready. --Set up.》
蒼氷色の水晶をあしらったドッグタグが輝き、防護服とデバイスを展開する。そのまま一気に飛翔した秋葉は目を細め、送られてきた情報を確認した。眼下の地上では放水隊が突入しようとしては炎に妨害されている。
「フリージア、カートリッジロード」
《Load cartridge.》
カートリッジを一発ロードして、秋葉は自身の周辺に30発の魔力弾を生成した。素早い動きで炎に命中した魔力弾は瞬時に氷へと姿を変える。
しかしそれも一瞬のこと。凍りついたはずの炎が勢いを取り戻し、氷ごと飲み込んだ。
「……やっぱり、大本からじゃなきゃ無理かな……」
溜息と共に、秋葉は杖型のフリージアを掲げる。蒼氷色のミッドチルダ式魔方陣が輝きを増した――瞬間、上層階に広がる炎が小さく煌いた。
「っ!?」
反射的に構えた左手に、蒼氷色の盾が展開される。盾によって侵入を阻まれたその異物は徐々に勢いを失い、同時に盾を解除した左手に音もなく落下した。金色に塗装された、拳銃に使用される実弾そのもの。
「質量兵器……物騒なもの使うのね」
銃弾をポケットに仕舞い、秋葉は凍結効果を組み込んだ砲撃を撃ち込んでいく。
――質量兵器はその性質上、子供でも簡単に使えることから時空管理局で厳重に管理・使用を禁止されている。そもそもミッドチルダやその他管理世界に関しては「比較的クリーンで安全な」純粋魔力を積極的に使用し、魔法文化を発展させていた。
とはいえ、その所持や使用に関しては時空管理局が正式に認可したものは別となる。例えば非魔導師の捜査官や執務官補などが、職務の都合で事件現場に向かう時の護身用として。
もう一つ――こちらは本当に稀な例だが――魔力を有してはいるが、その性質上「その武器でなければ」魔力運用が出来ず、デバイスで代替できない又は代替が非常に困難な場合に許可されることもある。前者の例は滅多にないが、後者はたった二名に適用されていた。
――聖王教会騎士団騎士の渡辺零と、双子の弟で時空管理局本局査察官の藤月彼方。とはいえこの二人が認められたのはその魔法術式がいまやレアスキル認定の「古代ベルカ式」であること。一応二人とも最初は専用デバイスを作るという話だったが、そのためのデータ測定の際に本局技術部が所有する計測用デバイスを全て破壊したという逸話を残している。計測用を破壊してしまう魔力を誇った当時彼らは9歳……同世代のエース達と並ぶ「怪物級」だ。
(となると犯人は質量兵器を所有する違反者か……マリアージュ本人、もしくは関係があるというなら古代ベルカ時代の兵器か……)
あるいは――一番あってほしくはないが――管理局の認可を得た、内部の人間か。
「いずれにしても、この状況を何とかしないとね……」
『霜月三尉!』
秋葉が呟くと同時に、この現場を指揮する司令部から通信モニターが繋げられた。女性通信士と顔を合わせることなく、秋葉は砲撃を続けながら「状況は?」と尋ねる。
『火災レベルは4を維持。上層部は依然変わりませんが、下層部の内部温度が若干下がり始めています。放水隊が先ほどから、協力者5名と共に突入を開始しました』
「協力者?」
『はい。この方たちです』
言って、通信士は協力者5人の顔写真をモニターに映し出した。全員に見覚えのある秋葉が、砲撃の手を止める。
『特別救助隊のスバル・ナカジマ防災士長。本局法務部の秋月深琴執務官補。自然保護隊のエリオ・モンディアル保護官とキャロ・ル・ルシエ保護官。そして聖王教会のフェアクレールト・ナハト修道騎士見習い。最前衛はスバル・ナカジマ防災士長です』
「ナカジマ防災士長からは何か?」
『はい。外部の消火活動に関して、方法などは霜月三尉にお任せすると。それとこの火災が放火の場合、犯人がまだ近くに潜んでいるかもしれないから注意して欲しいと』
「了解しました。こちらは消火活動を続けます。放水隊の位置情報、送ってもらえますか?」
『了解です』
即座に返ってきた情報を確認して、秋葉はデバイスを構え直した。
(……確かに。この5人なら余程のことがない限り、犯人と問題なく渡り合える)
なら、自分は自分に出来ること……課されたことをすればいい。
「行くよ、フリージア」
《Yes,Sir.》
蒼氷色の翼を広げ、秋葉は砲撃を再開した。
◇
未だ消火活動が進まないベルウィードホテル内部に突入した私達は、スバルの指示に従って行動を開始していた。
エリオとキャロは放水隊の防護先導。私とフェア、スバルはそれぞれ別れて人命検索と救助。火災探知などのシステムは稼動しておらず、当然のことながらスプリンクラー等も止まったままだ。事前に受け取ったホテル内の地図と生命反応を確認して、逃げ遅れた人を探す。現在私がいるのはホテル26階。ここからがいわゆる「上層階」である。衰えることを知らない炎は更に勢いを増し、エレベーターと階段を吹き飛ばした。
「っ……!」
熱を孕んだ爆風をバリアで阻害するも、汗は止まらない。ちゃんと防護服の耐熱設定は更新しているんだけど、温度上昇と速度がそれを上回っている。
(階段とエレベーターの爆破に、所々で確認できる黒い燃焼液……計画的に準備していたと見る方が自然、か)
階段とエレベーターの爆破は標的を逃がさないためと、こちらの行動を阻害するため。爆破系特化の魔導師か質量兵器を持った違法者か……あるいは、マリアージュか。
と、腕輪型のモード・ツヴァイで展開していた愛機・ローゼンクランツが生命反応を感知した。
《buddy!》
「生命反応……距離は結構近いね。急ぐよ、ロゼット」
《All right.》
26階に設置されている会員専用とされるホテルラウンジ。大小様々なシャンデリアが飾られた高い天井。面する海を一望できるここから生命反応が確認された。もちろん周辺は火の海で、頭上のシャンデリアが揺れるたびに恐怖に襲われる。なんでこんなところにシャンデリアなんて使うんだか。
ひとまず息を吸って、「管理局です!」と声を出そうとしたその瞬間だった。
中央に設置された、一際大きなシャンデリアを繋いでいた鎖が音を立てて自壊する。支えを無くしたシャンデリアがそのまま下へ――小さな女の子の真上に落下を始めた。揺れ動く影に気づいた女の子は顔を上げて、虚ろな目で状況を確認する。
――ああ、死ぬんだ。幼い自分の声が蘇る。
「ロゼット!」
《Drive ignition.》
淡紅色の鎖がシャンデリアを押さえつけ、その隙に女の子を抱いて飛翔する。安全圏まで逃げたところでバインドを解除し、シャンデリアを落下させた。
「遅くなってごめんね。もう大丈夫だよ」
恐る恐る目を開けた女の子に、私は微笑みかける。無残にも床に破片をばら撒くことになったシャンデリアと私を交互に見た女の子はようやく安心したのか、くしゃりと顔を歪ませた。栗色の長い髪はぐしゃぐしゃで、上質そうなワンピースは所々が破れている。翡翠色の瞳には涙が溜まっていた。
「どこか痛いところ、ある?」
「……大丈夫、です……」
「よかった。よく頑張ったね。偉いよ」
名前と年齢を聞きだし、残るは脱出だ。にこやかに告げた私は、次の瞬間に動作を止める。……どこから脱出しようか。
来た道は既に炎で覆われているから、危険。かといって非常口まで進むのも同様の理由で困難だ。……無いなら作るしかないんですけども、と考えると同時に通信モニターが開かれた。
『秋月執務官補、ご無事ですか!?』
「はい。何かありましたか?」
『先ほど本局のランスター執務官が突入されまして……もしかしたらこの火災を起こした犯人が、執務官が追っている事件の犯人と同一人物かもしれない、と……』
「なるほど……こちらは無事です。26階中央ラウンジで女の子を一人保護しました。アイリ・クレスタ、8歳です」
モニターの向こうで安堵の溜息が聞こえる。どうやら関係者がいたらしい。こちらで発生している問題と個人的解決策を伝えると、二つ返事で了承が返ってきた。大丈夫だろうか、この組織。
「ちょっと待っててね。――ロゼット」
名を呼ぶと同時に、愛機は即座にバリア系の防御魔法で少女を覆う。次にロゼットは第二形態――二丁の拳銃型に姿を変えた。そして私は、皹一つ無い巨大な窓ガラスに向かい合う。距離にして、約100m程。このホテルの窓は全て衝撃や熱に強いタイプのガラスを幾重にも重ねる形で採用しているらしい。ここより更に上の階ではさすがに割れているという報告を受けているが、それでも並大抵の砲撃は通らない。
《A firing lock is cancelled. Load cartridge.》
左手に構えた銃のリボルバーが一発分動く。右手の銃はダガーモードに変形させ、そのまま下ろした。
足元には淡紅色のベルカ式、左の銃の銃口には同色の環状魔方陣が浮かび上がり、輝きを増していく。銃口の先に8発の魔力スフィアが形成され、その全てを一つに纏め、魔力を練り上げた。
「クロスファイア……」
カチリ、と音を立ててセーフティが解除される。
「シューーーート!」
音声トリガーと共に発射された淡紅色の砲撃が、迷うことなく直進した。窓ガラスに直撃して――溶かすように消し飛ばしてしまう。
「……あー……やり過ぎちゃったね」
《Because it is an emergency,I'll have overlook.『緊急時ですから、大目に見てもらいましょう』》
「そうだね……ともかく、これでもう安全な場所まで一直線だからね!」
しかし機動六課を卒業してから三年、計四年間の付き合いだが、この愛機も言うようになった気がした。
少女を抱き上げ、飛翔して脱出する。火の勢いはやや弱まりつつあるのか、内部のあちこちで放水隊が動いていた。最寄の救護隊に少女を預け、再びビルに戻ろうと飛行した瞬間、フェアから通信が入る。
『こちらフェアクレールト。深琴、マリアージュを見つけたよ』
「今どこ? 誰か傍にいる?」
『ホテルの屋上に続く階段。ティアナが一緒……深琴は?』
「海沿いの救護隊。要救助者を保護して、預けたところ」
答えると、フェアは『だってさ』とやや上を見て言った。恐らく、ティアがそこにいるのだろう。
『ティアナから。時間稼ぐから上がってきて、三人で挟み込むってさ』
「了解。すぐ上がる」
モニターを閉じ、私はそのまま屋上へ飛翔した。
◇
未だ炎が燃え盛るベルウィードホテルの屋上に、バイザーを着けた女性が佇んでいた。
「イクス……今、マリアージュが参ります」
その声に、答える声は無い。しかし突如響いた機械音声と共に現れた茜色の縄が、彼女を捕らえた。
「これは……捕縛魔法……」
「無駄よ。そのロープは力じゃ解けない」
銃を構えて、ティアナが言う。その半歩後方ではフェアクレールトが拳銃型に変形させた愛機・アインザッツを構えていた。
腕に力を込め、縄から抜け出そうとしながら女性は呟いた。
「どうやら、その様です」
「マリアージュ。連続放火殺人の容疑で、あなたを逮捕する。動けないとは思うけど、抵抗するなら撃ちます」
その言葉を聞きながら、マリアージュは力を抜く。
「成程……これでは、私に脱出の手段はありませんね」
「賢明な判断よ。大人しくしていれば、あなたにも弁明の機会が……」
「――ですが、マリアージュが虜囚の辱めを受けることはありません」
「っ、ティアナ!」
ティアナの言葉を遮って、マリアージュは続けた。フェアがティアナの前に出ると同時に、マリアージュの腕が破裂する。そして彼女の体は液体と化していった。
「トレディアの居場所と、イクスに向かう手掛かりは掴めました。私がここで朽ちても、僚機たちが探し当てます」
(この色、この匂い……まさか……)
ティアナは目の前の現状を見つめながら、機動六課より前に所属していた部隊で得たデータを思い出す。その条件に当てはまる液体の名称を思い出して、顔を青ざめた。
「……マリアージュは壁の兵。死したその身も、敵地を焦がす炎となる」
(――燃焼液!?)
「二人とも、逃げて!」
屋上の空に到着した深琴が叫ぶと同時に、液体となったマリアージュに炎が引火する。炎は次の瞬間には燃え盛り、轟音を立てて爆発した。
「ランスター執務官!」
聞き慣れた声と靴音が響き、ティアナは意識を取り戻す。そして自分に覆い被さるように倒れたフェアを抱き起こした。
「フェア、大丈夫!?」
「……っ……」
防護服の外装を失い、インナーから露出したフェアの肌には火傷の痕と爆発の衝撃で受けた傷が広がっている。
「ご無事で……肩を」
「私は大丈夫。それより……ルネ、聞いてくれる?」
駆け寄るルネッサを制止して、ティアナは真っ直ぐな目で彼女を見た。
「マリアージュなんだけど……捕まえたと思ったら自爆しました。死体は黒い液体となって燃えている……って言ったら、信じる?」
「ランスター執務官の仰ることでしたら、信じます」
ルネッサが頷く。迷い無く、真っ直ぐに。
「ですが、これで連続殺人は止まるのですよね?」
「……多分止まらない。もっと大きな事件になる」
ルネッサが目を丸くする。ティアナはフェアに治癒魔法をかけながら、マリアージュが残した言葉を思い出した。
「マリアージュは、自分を兵隊だと言った。それに僚機がいる、と」
「僚機……仲間か、あるいは……」
「マリアージュは、他にもいる」
そう呟いて、ティアナはもう一度ルネッサを見て、指示を飛ばす。
「ルネ、急いで調査班を呼んで。マリアージュの残骸を回収、技術局に回す」
「はい」
「それから……『トレディア』と『イクス』。聞いたことは?」
「いえ……」
ルネッサは首を横に振った。僅かに瞳を伏せ、どこか寂しそうな声が響く。その様子にティアナは僅かに目を細め、指示を続けた。
「データベースの照会。必要があれば本局データと、無限書庫のも」
「了解しました」
走り去るルネッサを見送って、ティアナは通信モニターを起動させる。相手――深琴はワンコールで出た。
『二人とも、大丈夫!?』
「私は大丈夫。フェアが庇ってくれて……」
フェアが庇って、という一言に目を丸くした深琴は『そっか……』と消え入りそうな声で呟く。
「でね……マリアージュなんだけど、提供されたデータと同一人物と言っても過言じゃないみたい。今ルネ……臨時補佐に残骸の回収を指示したわ。技術局に回す」
『うん』
「多分この後、私も108に行くことになると思う。一緒にフェアも連れて、治療を受けてもらうけど……」
『了解。治療が終わったら連絡くれると嬉しい』
いくら協力の意思があり、実際協力したとは言え、まだフェアは観察処分期間の真っ最中だ。保護責任者や後見人、もしくはそれに準ずる関係者なしの行動は許可されない。
そしてティアナは、もう一度口を開いた。
「色んな情報が判明するのは夜だと思うんだけど……深琴。あんたさえ良ければ、臨時補佐を頼みたいの。アーウィング執務官には、私から報告するから」
『……一応、許可貰ってるよ。じゃあ私も、108に行った方がいい?』
「それは明日以降でいいわ。今日は一先ず、情報整理をお願い」
『了解です、ランスター執務官。……一旦切るね。消火活動、まだ続いてるし』
「ええ。ありがと、深琴」
『どういたしまして。フェアのこと、お願いね』
音を立てて、モニターが閉じられる。それを確認して、ティアナは息を吐いた。
――深い、深い溜息を。