今日もトレーナー室を掃除するデュランダルは幸せと思える毎日を送っていた
そんな中、トレーナー候補生のセレナという女性がトレーナーと仲良くなってる感じで!?
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第1話

 柔らかな朝日が窓から差し込み、トレーナー室を淡い光で満たしていた。

 カーテンが揺れるたびに、小鳥のさえずりが微かに聞こえてくる。

 そんな中、部屋の一角ではデュランダルが膝をつき、床を丁寧に磨いていた。

 

 

「ふんふ~ん♪ 我っが君の、ために~♪」

 

 

 小さな鼻歌を歌いながら、使い込まれた布を動かす手は軽快そのもの。

 王と慕う相手に褒められたい一心で、今日も迅速かつ的確に業務を遂行する彼女だが、時折、磨いた床にむふーとした満足げな笑顔が映り込んでいるのは内緒だ。

 いつ褒められるかと期待を込めた眼差しをチラチラと王と慕う相手に向ける。

 

 

「よし、準備完了だ」

 

 

 彼女の主であるトレーナーはまったく気づいていないが、どうやら今日の準備を終えたようで、ようやくデュランダルに目を向ける。

 

 

「お疲れ様です、我が君! 見てください、この輝き!」

「おお、凄いな、さすがだな!」

 

 

 結局、掃除の途中では褒めてもらえなかったものの、磨き上げた床を指差して誇らしげに胸を張った。

 顔を赤らめて口元を、にへら、と歪める。

 いつもはキリッと騎士のあるべき姿を見せようとする彼女だが、褒められるときだけは飼い主に愛嬌を振りまく大型犬。

 尻尾をぶんぶん振って、耳をピコピコ跳ねさせている。

 

 

「本当に助かるよ。君は最高の騎士だ」

「我が君……!」

 

 

 デュランダルの顔がさらに真っ赤に染まる。

 彼女は両手をぎゅっと胸の前で握り、恥ずかしさを隠すようにそっぽを向きながら、勢いよく立ち上がった。

 

 

「いえ、これも騎士として当然の務めです! おおっと?」

「お、おい、大丈夫か?」

 

 

 思わず足元で滑り、軽くよろける。

 慌ててトレーナーが支えようとするが、彼女は器用に体勢を立て直して、鼻息を鳴らした。

 

 

「ふふん、大丈夫です! ご安心を、我が君!」

「おおー」

 

 

 パチパチパチ。

 トレーナーが思わず拍手するが、デュランダルはそうしてもらえた嬉しさに、耳の先まで赤く染める。

 

 

(ああ、なんて幸せな毎日! こんな日が永遠に続けばいいのに……♡)

 

 

 この瞬間を噛みしめながら、朝日で後光が差しているトレーナーに目を細める。

 そんな幸せなひとときが流れる中。

 

 コンコン――と、扉を叩くノック音が、二人の静寂を破った。

 

 

「お、来たようだな。どうぞ」

 

 

 トレーナーが応じ、デュランダルが振り返る。

 誰だろう――そう思う間もなく、ドアが開き、一人の女性が現れた。

 

 

「おはようございます、トレーナーさん。先日ご挨拶させていただいたトレーナー候補生のセレナです」

 

 

 セレナというスーツ姿の女性は、スッと軽く頭を下げ、柔らかな笑顔を浮かべて室内に入る。

 肩までのさらりとした茶色い髪が揺れ、上品で落ち着いた雰囲気をまとっていた。

 ハーフの女性だろうか。目鼻立ちがウマ娘にも劣らないほど整っている。

 

 

「待っていたよ。今日はよろしく」

 

 

 トレーナーが手を差し出すと、セレナもそれをしっかりと握り返す。

 

 

(そうだったわ、今日は不埒な輩、……こほん、トレーナー候補生が研修と言う名を借りて、我が君と密着する1週間が始まる日……くっ、なんて羨ま……、あ、間違えた、なんて不幸な日なの……)

 

 

 デュランダルは当然、あまり好ましく思ってはいない。

 しかし、我が君と慕う王の仕事でもあるため、ぐっと我慢しようと心得ていた。

 

 

「はい、これから1週間。よろしくお願いしますね」

「こちらこそ、お手伝いできることがあれば何でも言ってくれ」

 

 

 二人の様子を、部屋の隅からじっと見つめる。

 さながら初めて見る来客を、警戒する犬のように。

 

 

「動きやすい服は持ってきたかな? 更衣室は1階にあるから使ってね」

「ありがとうございます。ジャージで良かったでしょうか」

 

 

(ジャージが似合う女性とアピールしているのかしら……なんて下賤な!)

 

 

 彼と笑顔で談笑するセレナに、微妙な視線を投げかけつつ、デュランダルは自分の磨いた床を見る。

 なんだか、さっきまでピカピカに輝いていたのに、急にその美しさが失われたように感じた。

 

 

「あら?」

 

 

 ふと、セレナという不埒な女は、軽やかな動きで机の周りを見回す。

 

 

「ここ、少し整理させていただいてもよろしいですか?」

「ああ、助かるよ」

 

 

 彼女は机の上に散らばっていた書類を手際よくまとめ、無造作に置かれていたペンやメモをきっちり整頓し始めた。

 あっという間に、机の上はまるでショールームの展示品のように整えられる。

 

 

「こんな感じで大丈夫でしょうか?」

 

 

 セレナが顔を上げ、満足げに微笑むと、トレーナーは感心したように頷いた。

 

 

「おお、完璧だなぁ。本当に助かった」

 

 

 その一言が、デュランダルの心に小さな波紋を広げる。

 

 

「……、我が君の机は、仕事に使うからと、勝手に触らないようにしていたのに」

 

 

 小声で呟きながら、眉をひそめる。

 身体が急に硬くなった気がした。まるで石のようにガチガチに力が入り、心の中ではモヤモヤとした何かが渦巻く。

 整頓された机の上をじっと見つめると、まるでそこに【自分の居場所】が少しだけ押しのけられたような感覚にとらわれて、気分が悪くなった。

 

 

「そもそも、机の整頓なんて私にだってできる……! この床の輝きの方がよっぽど――」

 

 

 誰にも聞こえないよう小さく言っても、やはり気持ちは晴れない。

 セレナは整理を終えた机を満足げに眺めると、もんもんとした気持ちを抱いているデュランダルに視線を向けた。

 

 

「あなたがデュランダルさんですね。初めまして。これからよろしくお願いします。」

 

 

 その柔らかい微笑みに、思わず一瞬たじろぐ。

 それでもすぐに顔を引き締め、デュランダルは胸を張って応じた。

 

 

「え、ええ、デュランダルです。我が君の忠実なる騎士――と、覚えておいてくださいね」

「ふふ、頼もしい方がいらして安心しました」

 

 

 けん制する意味も込めた言葉だったが、セレナは何も感じないのか、簡単に微笑んでみせた。

 

 

(くっ、この余裕……! 侮れないわ)

 

 

 目を座らせて睨むが、セレナはこちらを見ることなくトレーナーに向き直る。

 そのことがさらに、デュランダルの苛立ちを加速させる。

 

 

「それにしても、セレナさんの整理整頓、すごいね。まるで魔法みたいだ」

 

 

 トレーナーが感心したように言うと、セレナは頭を下げる。

 

 

「そんなことはありません。これも仕事の一部ですから。」

「ふん、私だって、普段からちゃんと――!」

 

 

 デュランダルが言いかけたところで、トレーナーが慌てて口を挟む。

 

 

「もちろん、デュランダルも毎日助かってるよ! 君の頑張りを忘れるわけないだろう?」

 

 

 その言葉を聞いて、デュランダルは一瞬表情を緩めた。

 

 

(ああ、やっぱり我が君はすぐに褒めてくれる……、きっとセレナという女より、私の方が優れていることを暗に言ってくれたに違いないわ!)

 

 

 しかし、その隣でセレナが余裕の笑みを浮かべているのを見ると、また少しだけ胸がざわつくのだった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 その日の夕方、トレーナー室を後にしたデュランダルは、トレーニング場の片隅で一人静かに座っていた。

 少し冷え込んだ空気が彼女の頬を撫でるが、それ以上に心を冷やしているのは、今日の出来事だった。

 

 

「くっ……セレナさん。実力は認めないといけないわね」

 

 

 静かな声で名前を呟くと、胸の奥に小さな痛みが走る。

 

 

「私、我が君のためにずっと頑張ってきたのに……。なのに、たった一日で……あんなに褒められるなんて!」

 

 

 彼女の心に浮かぶのは、セレナが今日、トレーナーからもらった言葉だ。

 昼食の時にトレーナーが疲れた表情で食堂に向かうと、セレナがすかさず手を貸して、トレーナーが座るための椅子を引いた。

 

 

「こちら、どうぞトレーナーさん」

「ありがとう。助かるよ」

 

 

 トレーナーが微笑むと、セレナは軽く頷いて静かに席に着いた。

 また、午後のトレーニングでは、トレーナーが彼女に声をかけた。

 

 

「すごいな。今日のトレーニング、君が的確に指示してくれたおかげで、スムーズに進んだよ」

 

 

 新人トレーナー候補生の地位を利用してトレーナーに近づく不届き者は少し照れながらも、にこやかに答えていた。

 

 

「まだまだ勉強中ですが、少しでもお役に立てて嬉しいです」

 

 

 その様子を見ていたデュランダルは、胸のざわつきが抑えられずトイレに駆け込むこともあった。

 

 

「……私は、これからも我が君にいっぱい褒めてもらいたいのに」

 

 

 膝を抱えたデュランダルの瞳が少し潤む。

 彼女は小さく深呼吸をし、自分を励ますように拳を握り締める。

 

 

「でも……諦めない。私は、我が君の騎士だもの。誰にも負けるわけにはいかないんだから!」

 

 

 言葉に力を込めるものの、胸のモヤモヤはまだ晴れない。

 それでもデュランダルは立ち上がり、薄暗くなり始めたトレーニング場を見渡す。

 

 

「明日こそ、もっと頑張らなくちゃ……。私だけを見てほしいから」

 

 

 冷たい風に揺れる彼女の金色の髪が、わずかに夕陽を反射して輝いた。

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 翌日の午後、デュランダルはトレーニング場の隅に立ち、何気なくセレナとトレーナーの様子を見守っていた。

 セレナがトレーナーに話しかけ、二人の間で軽やかな笑い声が交わされている。

 何気ない会話の中に、彼女たちの距離の近さを感じて、デュランダルの胸の中のざわつきは昨日よりも激しくなっていた。

 

 

「いいえ、我が君は、きっとあの者とは単なる仕事の話をしているだけ……そうに違いないわ!」

 

 

 デュランダルは自分に言い聞かせた。

 けれどその言葉が、どこか空虚に響く。

 何度も繰り返すことで、少しでも自分の心を落ち着けようとしていたが、どうしようもない焦燥感はどうやっても抑えられなかった。

 

 

「本当に仕事よね、きっと……。あんな近い距離感なのも、仕事だから仕方ない……そう、仕方ない」

 

 

 セレナがトレーナーに向けた柔らかな微笑みを見ていると、その笑顔がデュランダルの心を刺してくるような気がした。

 じっとその光景を見つめたまま、手のひらをぎゅっと握りしめる。

 あの笑顔、あの距離感に何かが引き裂かれそうな感覚を覚えていた。

 

 ふと、デュランダルの耳にトレーナーの声が届く。

 

 

「セレナ、今日もありがとな。君のおかげで、だいぶ助かったよ」

 

 

 その言葉に、デュランダルの目が鋭くなる。

 

 

(せ、セレナと呼び捨てにした!?)

 

 

 しかもその言葉はどこか甘く、柔らかな響きが含まれているように思えて、胸の中に何かが重く沈んだ。

 

 

「ありがとうございますトレーナーさん!」

 

 

 セレナの明るい返事とともに、二人は次の仕事へと向かった。

 デュランダルはしばらくその場から動けなかった。

 心の中で繰り返されるのは、あの言葉。

 

 

「私だって……。我が君にもっと褒められたい、認められたいのに……」

 

 

 その言葉が、無意識に漏れ出ていた。自分でも驚くほどに、言葉が口をついて出る。

 デュランダルは顔を伏せ、目の前の景色をぼんやりと見つめた。

 どこかで彼女自身が感じている恐れや不安、それでも自分は騎士として、トレーナーのために尽くしているはずだと、自分に言い聞かせた。

 

 

「でも……どうしても気になる。あの二人の距離が、私には……」

 

 

 その後、デュランダルはトレーニングの合間を見つけて、トレーナーの部屋で静かに掃除をしていた。

 けれど、どこか気が乗らない。

 手元の掃除や書類整理が、ただの作業に感じられる。心の中で何度も浮かぶのは、トレーニング場での不届き者な女とのやり取りだ。

 

 

「私が頑張っても、あの二人の距離が縮まっていくばかり……」

 

 

 デュランダルはふと手を止め、机に肘をついて頭を抱える。

 深く息を吐くと、どうしてもその思いは消えなかった。

 

 

「なぜ、こんなにも胸が痛いの……」

 

 

 焦りが、どんどん大きくなっていく。

 どうしようもない気持ちが膨れ上がって、体をうねうねと左右に揺らして悶えてしまう。

 いっそのことセレナが卑しい悪の手先、それこそ魔王のような存在の手下なのであれば、清き聖剣の一太刀で叩き斬ってしまえるのに。

 そんなファンタジー世界の設定を頭に思い巡らすデュランダル。

 だがここは現実世界であることを思い出し、平べったく体を伸ばしつつ、げんなりとした顔を浮かべた。

 

 

(あら?)

 

 

 そのとき、セレナの荷物が無造作に置かれているのが目に入った。

 書類が数枚、ファイルに挟まれたまま乱雑に積まれ、隣には小さな本が何冊か重ねられている。

 さらにその隣には、細かい道具や文房具がバラバラに放り込まれた箱があり、その中には使いかけのペンやメモ帳、さらにはうっすらと汚れがついたタオルが入っていた。

 

 

「ああ、こんなに散らかって……きっとセレナさん、忙しいのね。絶対、我が君と一緒にいるのが楽しくて仕方ないんだわ……くうぅ! 私のポジションなのに!」

 

 

 デュランダルはため息を吐きつつ、ふと考えた。

 

 

「あ、そうだ! もし私がこれを整理すれば、セレナさんは頭が上がらず感謝するはず。そしたら、きっと我が君も……へへ、へへへ」

 

 

 カルストンライトオが見れば、間違いなく『気持ち悪い顔を浮かべて何を考えている』と鋭い言葉の刃が飛んできそうな顔をしたデュランダルは、勢いよくセレナの荷物に手を伸ばした。

 しかし、絶妙なバランスで保たれていた荷物の重心が力の入り方によってズレてしまい、落ちた箱から細かな道具がいくつも転がり出てきた。

 

 

「えっ……!?」

 

 

 一つが床に落ちたのをきっかけに、他の物もバラバラと音を立てて散らばり、ひとしきりの混乱を引き起こした。

 その中には、壊れやすいものも含まれていて、デュランダルの心はさらに焦り始める。セレナのために整理しようと思ったその気持ちが、逆に不安を増大させてしまう。

 

 

「や、やっちゃった……!?」

 

 

 デュランダルは震える手でその物を拾おうとするが、どうにも上手くいかない。早く直さないといけないのにと心の中で焦れば焦るほど、視界が歪んできて、どんどん自己嫌悪が膨らんでいった。

 

 

「また、私……」

 

 

 涙がこぼれそうになるのを必死で堪えながら、なんとか片付けようと必死になっていた。

 

 

「私、もっとちゃんとしないと……」

 

 

 そう呟き、壊れたものがないか確認していると、背中からトレーナーの声が聞こえた。

 

 

「デュランダル……何をしてるんだ?」

 

 

 その声には、いつもの優しさはなかった。

 デュランダルは瞬時に体を硬直させ、目を伏せる。

 あまりにも急な事態に、言い訳がすぐに思いつかない。

 口をパクパクと動かしながらも、どうしても言葉が出てこなかった。

 

 

「い、いや……その……私は……」

 

 

 言葉がうまくつながらず、ますます焦りが募る。

 その間に、トレーナーは散らばった道具の一つを手に取って呟いた。

 

 

「これは、セレナのじゃないか……」

 

 

 デュランダルは縮み上がり、なんとか答えようとするが、どうしても言い訳はうまく言葉にならなかった。

 

 

「あ、あぁ、私は、ただ……我が君に、褒めてほしくて……」

 

 

 その声は、震えていた。

 トレーナーはしばらく黙って道具を片付け、そしてデュランダルを見下ろすように一歩近づく。

 その瞬間、デュランダルは自分がこれから叱られるんだという予感に、身体が震えるのを感じた。

 

 

「デュランダル……」

「……っ!」

 

 

 だがトレーナーの言葉は、彼女が予想していたものと違った。

 

 

「大丈夫か? どこも怪我してないか?」

「………………………………、え?」

 

 

 その言葉に、デュランダルは戸惑った。

 トレーナーの目は真剣そのものだったが、怒りの色はなく、むしろ心配の色が浮かんでいるように見えたのだ。

 デュランダルはその問いをすぐに理解できず、慌てて否定した。

 

 

「私は、大丈夫です! 何も……怪我は、していません!」

「それなら良かった。ここ最近様子がおかしかったから、心配していたんだ」

 

 

 トレーナーはわずかに肩の力を抜き、深く息を吐いた。

 

 

「君のことだ。きっと無理して掃除をする傍ら、崩してしまったんだろう?」

 

 

 デュランダルは、トレーナーの言葉に驚き、しばらく黙っていた。

 心配していた――その言葉が、まるで夢のように感じられた。

 

 

「君が無理していること、気づいていたんだ。いつもより頑張りすぎてるって。この前だって、掃除の後によろけていたじゃないか。あまり無理をしないでほしいなと思っていたところだったんだよ」

 

 

 その言葉を聞いて、デュランダルは胸が熱くなるのを感じた。

 自分の頑張りを見てくれていた。必死でやっていたことに気づいてくれていた。

 その優しさに、心が震える。

 

 

「わ、私、我が君に褒めてもらいたくて……! こんなことしてしまって、本当に申し訳なくて……!」

 

 

 デュランダルは両手をぎゅっと握りしめ、顔をうつむかせた。

 その目には、感謝と同時に、涙がにじみ始めていた。

 

 

「我が君のために、もっともっと頑張りたくて……」

 

 

 トレーナーは少し間を置き、そして静かに言った。

 

 

「君はすでに、十分すぎるくらい頑張っているよ。それだけで、オレは嬉しいし、十分に誇りに思っている」

 

 

 その言葉に、デュランダルは心が温かくなるのを感じ、胸がいっぱいになった。

 

 

(そうだ、私はなぜ我が君を信じることができなかったの……我が君は、こんなにも私を見てくれていたのに!)

 

 

 目を閉じて、幸せを感じるままに自らの王に向かって、ゆっくりと頭を下げた。

 

 

「……ありがとうございます、我が君」

 

 

 トレーナーは、デュランダルの頭をやさしく撫でながら言う。

 

 

「セレナにはオレから謝っておくよ」

「いえ、我が君。これは私のミスです。私が責任を取らねば示しがつか――」

 

 

 そこまで言ったところで、トレーナーはデュランダルの涙を、人差し指でスッと拭った。

 

 

「それじゃあ一緒に謝ろう。我が騎士のミスは、王の責任さ」

 

 

 その言葉に、デュランダルはまた涙が溢れそうになった。

 

 

「ありがとうございます、我が君。私は果報者です……!」

 

 

 デュランダルは胸の奥に膨らんだ幸せをぎゅっと抱きしめ、この暖かさと言葉を絶対に忘れまいと誓うのだった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 その後、トレーナーはセレナに事情を説明し、デュランダルも誠心誠意謝罪した。

 セレナもその謝罪を受け入れ、逆にデュランダルに謝罪した。

 その時の言葉はこうだった。

 

 

「トレーナーさんとの時間を取っちゃって、ごめんなさいね……」

「い、いえ、こちらこそ……!」

 

 

 デュランダルはセレナに抱いていた邪な心を反省し、少しずつ彼女との距離も縮めていった。

 1週間後、セレナは研修を終えて元の学校に戻った。

 

 返ってきたトレーナーとの二人きりの部屋、その時間

 それ以来、デュランダルは今日も彼の聖剣として、傍に居続けるのだった。

 

 

「もう離しませんよ、我が君……♡ 王の帯剣として、一生あなたのお傍にいますから……♡」

「いや、あの、1日中腰に引っ付くのは、やめてくれる……?」


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