テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。

今回は前回言っていた通り、キリが良いのでちょっと番外編的なのを入れてみました。
中身は、タイトル通りです。
言ってた選択肢には無かったですが、タイミング的に丁度良さそうだったのでこれにしてみました。

ではどうぞ!


『stage0.5:俺と先輩と初邂逅』

 

 

 

 

 

 

 

「熱い熱い熱い熱い……」

 

 コンクリートジャングルが夏の所為で電子レンジになっているそんな日。

 俺は東京の街中を歩いていた。

 土曜日の昼下がり、土日なぞ関係無いと言わんばかりに仕事に精を出す外回りの会社員の間を抜けて、呪詛の様に熱いと言いながら、俺は目的地へと足を向ける。

 

 こんな日中に出歩くのは、本当に久しぶりのことだ。

 

 Fate世界の次に来たこの世界、生前に俺が住んでいた日本にどこまでも似ていて、最後の最後で別であると分かる世界。“俺”が居ない日本。

 そんな場所に来た俺は、正直に言って腐っていた。

 初めは何をすればいいのか分からないながらも、送られてきたメールにある“近しいモノ”とやらを探すためにあちこちを回ったが何の成果も得られず、軍資金と住処だけはあったため、特に何かから追い込まれることも無く日々を過ごしていた。

 

 そして気づけば1年、2年と過ぎ去り、いつの間にか3年目。

 目標らしい目標も無く、ネットサーフィンやネトゲや某掲示板に赴くのが殆どになっていた。

 ……外に出ないのはアレだ。補導されるからだ。

 暇つぶしに取った免許証とかで年齢が成人していると証明は出来る。出来るが、それをぶら下げて歩いている訳でも無いから、日本の司法機関が平日の真昼間から俺が歩いているのを見ると声を掛けざるを得ない。勿論それが仕事だから。

 現在俺が住んでいるのは東京の銀座近く。

 日中にそんな所を歩こうものなら親切に通報(保護的な意味で)してくれる人も居るからすぐにでも御用となる。悪いこともしてないのに。

 しかし先にも言ったが成人していることを証明するものを首から引っ提げて歩く訳にもいかないので、その結果、家から出なければ良いじゃんという結論に達したわけだ。

 

 一応、認識阻害の術式は持っている。

 しかしそれは不完全なものだ。

 俺の姿を、人間から外れた容姿を認識できなくはする。だけど、俺がそこに居るのは変わらないし、幼い少女がそこに居るのは変わらないのだ。

 多少、俺の容姿が目を引くことは少なくなる。

 しかし能動的に動けばそれも意味を成さない。

 家の外に出て何かをするのならば確実にどこかで人との接触がある。

 

 そんなわけで、今まで俺は何処かに行くのも細心の注意が必要だった。

 そう何度も保護されそうになってたまるかっての。

 平日で気にせず動けるのは夕方と人気の少ない深夜くらいだなんて窮屈な生活面倒にもほどがある。

 だから俺は外に出るのをほとんどしなくなった。

 家の中なら、ネットの中なら、俺の見た目は関係ない。年齢も関係ない。それなりのマナーは必要だが、マナーが必要なのはどこでも一緒だろう。

 そこに俺は没頭した。

 あ、流石に部屋に籠りっ放しはしなかった。

 お風呂好きだし、料理は出来立て熱々が良い。……猫舌だけど。

 というか、家に住んでいるのが俺だけだしね。

 それ以前に、流石にネット販売だけだとままならない部分が多くあったしね。

 あと、ちょこちょことバイトはしていた。

 家の近くのコンビニだ。

 

 最初は人手が足りないとそこで知り合った店長さんが零していたのをきっかけに、短期間でバイトしたのが始まりだった。

 何でも、場所が場所なのでバイトをしにくる子が少ないとか。あと、都心部の加減かコンビニが多い為慢性的な人手不足なのだとか。

 夜になると静かな場所だし、高級そうなマンションばかりが並んでるからバイトに駆られる必要性が無い人が多いってのも人手不足に拍車を掛けているんだろう。

 ちなみに俺が入るのは基本的に深夜帯だ。

 それなら人に会うことも少ないし、その時間にそのコンビニへと買い物に来る人も限られる。ぶっちゃけ知り合いが殆どだ。

 元々俺も、そのバイトを始める前は深夜帯にそのコンビニへと赴いていた。

 だから自然と、同じような時間に活動する人と顔見知りになったのだ。

 そんなこんなで、気づけば週に数回だけど入るようになってましたよ。ええ。

 

 とりまバイトの話は置いておいて、そんな俺がどうしてこんな時間から外を歩いているかだ。

 ちなみにちょっとお粧しもしている。

 といっても化粧などはしていない。よく分からんし。

 ただ、服装に気を付けただけだ。

 何せ今から人に会いに行くのだから。

 ちなみに、いつもの服装はジャージだ。ジャージの多様性は無限大だからな(確信

 しかし今の服装は、白いマキシ丈ワンピースに白いカンカン帽、アクセントに黒いリボンなんかが付いている。靴も白のブーツサンダル。おまけに白系のカゴバック。ほぼ真っ白です。

 いや、今日の日の為に一応ジャージで人に会いに行くのもなんだと思ってバイトの休憩中に雑誌を眺めてたんだけど、バイト仲間のお姉さん(年下)がこれが似合うんじゃないかっていうので揃えてみただけなのだ。

 そして実際に着てみて良さそうだったので、こうなった。

 うん、まぁ、可愛いとは思うよこの服。あくまでも男視点で見てだけど!!

 今の俺は肌から髪から白っぽいから、黙っていればどこぞのお嬢さんに見えなくもないだろう。これなら人に会うにも十分な筈だ。

 それに、あんまり肌が露出しているのは好きくないので丁度良かった。身体のラインも隠れるし。

 

 そんな格好で俺が歩くのは銀座のとあるライオンさん(定番の待ち合わせ場所)の所に向かう為だ。

 今日はそこで待ち合わせなのだ。

 そして、一番大事な誰に会いに行くかなのだが、実は俺もよく知らない。

 知らない人に会いに行くのは危険だってのは誰でも当然思うことだと思うが、危険の部分に関してはどうとでもなるので省く。

 しかしどうしてそんな人に会いに行くのかというと、ちょっと話がしてみたくなったからだ。

 というのも、実は俺、大学に行こうかと思うのだ。勿論ただ行くわけじゃなく、入学だ。

 何故大学に行こうと思ったかは、ちょっとしたホームシックになって、その途中でそういえば大学生の途中で死んだな等と思い出したのが原因だ。ぶっちゃけ学生時代が懐かしくなった。

 とはいえ、思いついたからといって一流大学に入れるとは思えない――身体のスペックを考えたら出来そうで怖いが――ので、どこか適当な所にでも入ろうと思っていたところ、今から会う人がうちの大学に来ないかと誘ってくれたのだ。

 

 最初は、とあるゲーム関連の掲示板で話す程度だった。

 そこからゲーム内でフレンドになるまでにそれほどの時間は要さなかった。

 そしていつの間にか、他のゲームでも一緒にするようになり、気づけばSNSで話をするようになった。

 だから実際に会ったことは無い。

 だけど話が合う具合は、昔なじみの友達の様に感じるほどだ。

 そんな彼に、今から会う。

 

 そう改めて考えると緊張してきた。

 

 今までの事を反芻する内に、いつの間にか待ち合わせ場所に辿り着いた。

 見れば、休日なこともあって待ち合わせ目的の人が何人か居る。

 ただ、時間が昼下がりなのもあって、人数はまだマシな方だろう。

 その中に、俺も紛れ込む。

 

 ふと、ガラスに映り込む自身が目に入る。

 変な所は無いだろうかと、家を出る前にも確認した自身の姿をもう一度確認する。

 ほむ、紛う事なきお嬢さんだ。見た目だけで言えば。

 その外見に反して中身が残念であると自分で自覚はしているので、その見た目も残念な物に思えてしまうのは仕方ないかね。

 そう思いながら角度を変えつつ自身の最終チェックをしていると、クスクスと声が聞こえた。それがいくつか。

 そちらへ目をやると、俺と同じように待ち合わせ中なのであろうお姉さん達(年齢で言えば同じか下位)が微笑ましいものを見るように俺へと目をやっていた。というか俺を見て優しく微笑んでいた。

 それに気付き、俺は頬に熱が行くのを感じる。

 

 乙女か俺は!!!!!!

 

 すかさずいつもの癖で帽子を下げようとし―――いつもの大きい帽子とは違って今被っている物はツバが小さめのためできずに終わり、仕方なく持っていた鞄で顔を隠す。そして余計に微笑ましい声が出る。

 

 やーめーてー!!

 

 暫くの間、俺は不自然に鞄で顔を隠しながら壁とにらめっこする。

 そしてそのままで居ると、待ち合わせしていた人達は相手が来て姿を消した。

 通りがかる人は居るが、ほとんどそのまま通り過ぎて行く。

 交通量だけならかなり多い。駅前交差点でもあるし、当然か。

 だけど、気づけば待っているのは、後は20歳くらいの青年だけだ。

 

 俺はなんだか気が抜けて、壁際で座り込む。

 マナー違反だとは思うが、許してほしい。

 予定が始まってすらいないのに、何だか疲れたのだ。

 

 なんとか気を落ち着かせて、立ち上がる。

 そこでふと青年と目が合う。

 青年って言うには少しばかり老成しているようにも見えるし、奥さん待ちとかかな。

 そんな感じの人と目が合って少し固まった。

 

「「あはは……」」

 

 お互いに苦笑いする。そして顔を反らす。

 気まずいったらありゃしない。

 俺が顔を背ける前にも居たはずだから、きっと見られていた。

 待ち人早く来て連れて行ってくれよ!! 居た堪れないんだよ!!

 

 そうしてさらに時間が経つ。

 そろそろ待ち合わせの時間だ。

 

 昼も過ぎておやつな時間の方が近い時間になり始める。

 どうしてこの時間かは、相手側が現役大学生なので仕方ない。

 ついでに言えば、いつだったか俺がフリーターだって話を相手にしたことがあるんだが、その辺の話をした時に平日は外へ出たくないって愚痴ってた(理由までは言ってないけど)のを覚えててくれてたから、講義が終わってからで良ければってこの時間になった。

 色々と気を使ってくれてるのを感じて、思わず人の触れ合いってやっぱ良いなぁと思ったものだ。まだ会う前だけど。

 

「……来ない」

 

「来ねぇなぁ……」

 

 呟きが重なり、思わずそちらへと目をやる。

 また目が合った。

 

「「あはは……」」

 

 お互いにまた苦笑いしながら目を反らし、再び待ち人を待つ。

 

 携帯電話を取り出し、時計を見る。

 時間だ。

 

「そこのお嬢ーさん」

 

「はい!」

 

 あまりにも時間ピッタリで、見ていた携帯を慌てて直しながら返事をする。

 今この場で人を待っているのは俺と青年だけ。

 なら必然的にこの声は俺を呼んでいるってことになる。

 

 携帯電話を直し終えた俺は顔を上げた。

 

「えっと、誰待ってるのかな?」

 

「し、知りあいですけど……」

 

 なんか爽やかチャラ男がそこに居た。いや、正確にはチャラ男達が居た。5人だ。

 この人が待ち人?

 いや俺が待ってるのは一人だけなんですが……。

 

「彼氏とか? というか日本語上手だね。ドイツ当たりの子かな?」

 

「違いますけど……」

 

 あ、これ絶対違うわ。

 

 会う時は最初にハンドルネームを言って確認し合おうってことにしてるから、普通に知らない人だなこれ。

 

 ってか、何用かね?

 

「何か御用ですか?」

 

「見てたら何だか暇そうだったからさ。良い店知ってるしどうかなって思って」

 

「そうそう、いろいろ遊べるもの置いてるし、美味しい物も沢山だよ!」

 

「美味しいモノ……」

 

 最初に声を掛けてきた爽やかチャラ男に続いて、ちょっと体育会系チャラ男も身を乗り出して言って来る。

 遊びものには興味が無いけど、美味しいモノか……。

 そういえばそろそろおやつの時間だっけ。

 

 そう考えた瞬間、お腹がくーっと鳴る。

 俺はそのまま頬が熱くなる。

 

「っあはは、丁度良いじゃん! 飯行こうぜ飯!」

 

「あ、いやでも俺は待ち合わせが……」

 

「一人称俺なんだー。ギャップって言うの? 可愛いねぇー」

 

「ちょ、ちょっと」

 

 お腹が鳴り、恥ずかしく思っていると体育会系チャラ男が何を思ったか俺の手を引っ張った。

 流石に力負けはしないが、変に引っ張ると怪我をさせてしまうので、ゆっくりと着いていく形になる。

 

 いやそもそも何でこの人達は俺を連れて行こうとするんだ。

 って、あ……。

 

「ひょっとして、これ、ナンパですか?」

 

「え、今更気付いたの? 天然とか言われる系?」

 

 マジでナンパだったのか……。

 でも、そうなると―――、

 

「お兄さんたちロリコンってやつですか?」

 

「はぁっ!?」

 

 何でか驚くチャラ男集団。

 いやだって、俺の見た目から考えたらそうでしょうよ。

 自分で言うのもなんだけど、確かに容姿は整っている方だと思う。一部分はそれなりに育ってるし。

 けど、ぶっちゃけ幼女って言っても良い少女だよ?

 事案ですよこれ。

 

「お兄さん達ぐらいになればもっと丁度良いお姉さんたちを引っかけられるだろうに、何でこっち来ちゃうかな……」

 

「っ!? どういう意味だおい!?」

 

「静かにしろ馬鹿がっ」

 

 体育会系チャラ男が何故か怒り出した。

 すまん、褒めたつもりだったんだが伝わらんかったようだ。

 しかしそんな体育会系チャラ男を爽やかチャラ男が窘める。

 

「ちっ。……何だよ、何こっち見てんだよ」

 

「いや、そういうのは良くないかなぁ……なんて……」

 

 窘められた体育会系チャラ男が、今度は少し離れて見ていた青年を睨みつける。

 えぇ、沸点低すぎだろこの体育会系チャラ男。 

 けどそんな体育会系チャラ男に、青年は口元を引くつかせながらも言い返した。

 おお、凄いなこの人。姿勢は弱気なのに。

 

「あーもう、良いからこっち来いよお嬢ちゃん! 良い所連れて行ってやるからよ!!」

 

「おわっとっと……」

 

 そんな風に青年さんについて内心で感心していると、残りのチャラ男達が俺を囲って引っ張り始めた。

 そっちの何人かは完全に意識から反らしていた。

 その為、力はともかく身体が小さい俺は引っ張られてしまう。

 そしてそのままもう片方の手も引っ張られる。

 

 ほむ、こうなったら人気が無くなったところで、ちょっと痛い目を見てもらおうか。

 俺みたいなのに声を態々掛ける上にこうやて無理矢理も辞さないってのはちょーっとどころではない犯罪臭がするしね。

 OHANASHIしないとだ。

 

 だが、そんな風に思っていた俺に予想外の声が聞こえた。

 

「おいやめろ! 警察呼ぶぞ!!」

 

 その声は、青年のモノだった。

 

「あぁ? 何言ってんだ。一緒に遊ぶだけだろうがっ。お前に何か関係あんのか? ああっ?」

 

「か、関係は無いけど、だな。この近距離で見て見ぬふりは出来ないだろうが!」

 

 引っ張られながら目にしたのは、携帯電話を手に何とか俺を助けようとする青年だ。

 周りに居る人は遠巻きに見るか、慌ててその場を離れて行くのに、青年は懸命に突っかかっていく。

 

「あーもううざってぇ!!」

 

「っ!?」

 

 そんな青年に、体育会系チャラ男が殴りかかった。

 青年は、それを見て手で顔を隠して防ごうとする。

 爽やかチャラ男はそれを見て目元を押さえてやれやれといった感じに嘆息するだけだ。

 止める様子は無い。

 俺を捕まえている男たちに関しては、殴ろうとするのを応援している。

 

 ほむ―――――

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――予定変更だ。

 

 

 

「ちょっと我慢してねー」

 

「なん、ぎゃっ!?」

「あ、おいなにしてぐへっ!?」

 

 両手を掴んでいた二人のチャラ男を腕を同時に引っ張ってぶつける。

 蛙が潰れた様な、とでも表現すべき声が二人から出るが仕方ない。犠牲はつきものだ(目反らし

 次は持っていた鞄を殴る寸前の体育会系チャラ男に向かって投げつける。

 狙いは軸足になっている足。

 

「うらっっとぉっ!!?」

 

「うわっ!?」

 

 殴る為に身体を回旋させしている所にバランスが崩れて、勢いのままに倒れ込む体育会系チャラ男。

 ……と、巻き込まれるように倒れる青年。

 あ、済まぬ。

 

「てめぇ!!」

 

「何してんだおらぁっ!!」

 

「下手に出てれば調子に乗りやがって!!」

 

 いや別に下手に出てなかったですよね?

 そう思いながら、背後から近づく気配へと振り向く。 

 振り向けば、怒りに我を忘れている男たち。

 そしてそれぞれが俺へと殴りかかって来る。

 

 街中で今時よくやるねぇ……。

 

 とりあえず俺は、一番近くに居る男に敢えて近づき、拳を掻い潜ってその胸元へと入る。

 そしてそのまま胸の辺りに手のひらを当て、瞬間的に力を入れる。

 

「かぺっ!?」

 

「あっちゃん!!!?」

 

 掌底による浸透勁や発勁なんて呼ばれるやつだ。形だけだけど。

 それを一番近い男――あっちゃんらしい――の鳩尾に叩き込む。

 ただ、少し力加減を間違えたのか、やばい声が漏れてる気がする。

 だ、大丈夫だよね! 男の子だもんね!

 

 ただ、そこで止まる訳にもいかない。

 人数は後2人。

 

 俺は地面を少しだけ強く蹴り、前へと飛び上る。

 そしてその勢いのまま、二人の顎を掠るように蹴る。

 

「くぽっ?!」

 

「あへっ?」

 

 顎を掠らせただけなのに、ちょいと顎の関節が外れたっぽい。

 わ、ワザとじゃないんだ……。

 ってかこれ、何か手加減する為の技考えとかないといざって時やばいな。いやもう今やばいんだけど……。

 

 そう思案しながら、俺は改めて青年たちの方へと向き直す。

 だが、体育会系チャラ男はこけた時に頭でも打ったのか気を失っていた。

 詰まり残りは一人―――なんだけど、 

 

「ひ、ひぃっ」

 

 爽やかチャラ男に目をやると、何か怯えて座り込んでいた。

 イケメンが台無しなんだけど、まぁ自業自得ってことで。

 

 俺はゆっくりと、そちらへと近づく。

 そして腰が抜けている爽やかチャラ男にベシッと軽くチョップを放つ。

 結構手加減したのだがそれでも痛かったようで、泣き始めた。

 

「まったく……。撃っていいのは……じゃないや。殴っていいのは殴られる覚悟のある奴だけだってとある人が言ってたよ」

 

「わ、悪かった! もう声を掛けない!」

 

「いや、そう言われても、もう遅いと思うよ?」

 

「へ?」

 

 言いながら、近づいてくる気配への方へと目をやる。

 そこには警備員が来ていた。

 それを見て、俺は爽やかチャラ男から離れて、鞄を取りに行く。

 チラリと目をやっれば、爽やかチャラ男は逃げる気力も無いのか、泣き笑いしながらその場に倒れ込んだ。

 俺は目線を前に戻し、いつの間にか起き上がっていた青年の所まで近づく。

 

「えっと、大丈夫? 変なのに巻き込んじゃったけど……」

 

「いやこっちこそ上手いこと出来なくて悪かったよお嬢ちゃん」

 

「あ、言っておきますけど、これでも成人してますよ? 俺」

 

「マジで!?」

 

 その驚きようが面白くて、つい笑ってしまう。

 これはいつもの事なのだが、この瞬間だけは誰が相手でも面白い。

 

 そんな俺に、バツが悪そうな青年は、頸を掻きながら顔を背ける。

 だが、すぐにこちらへと目を向け―――、

 

「そういえば、さっきのってルルーシュのパロかい?」

 

「そうですけど……、知ってるんですか?」

 

「ああ、好きな声優さんが出てるからつい見ちゃって」

 

「あ、俺もっす。ヒロインの子が可愛すぎて……」

 

「そうそう、あの最初のツンに比べて後半の……、ってなんかこの話デジャヴな気がする」

 

「不思議ですね。俺もです」

 

 そこまで言って、俺達はある事に思い至り顔を見合った。

 

「ば、バーサーカー!?」

 

「アヴェンジャー!?」

 

「マジか!? 男じゃなかったの!?」

 

「え、まじで!? 大学生って聞いてたからもう少し……」

 

「老け顔で悪かったなぁ!!!」

 

「いや、ちが、しっかりしてるなぁと思っただけで!!」

 

 どうやら互いにずっと横に居たのに、自分の中の相手像が邪魔をして気づけていなかったようだ。

 なのでそこからは互いの認識を埋めるように、話し始める。

 気づけばいつもSNSでするような話に変わっていた。

 画面越しでも感じたが、やっぱりこの人とは相性が良いのだろう。

 

 そう思い直し、思わず俺は笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

「えっと、そこのお二人さん? 仲が良いのは結構なんだけど、そろそろ一緒に来てくれるかね?」

 

「「はい……」」

 

 

 でも、ゆっくり目的の話をするのはもう少し後になりそうだ。

 

 

 




いかがだったでしょうか?

あ、念のためですが、実在の場所を使用していますが、当然ながらあくまで設定なので、リアルの事件やらなんやらには一切関係ありません。
“銀座”でちょこちょこと検索したものとかを繋ぎ合わせて、それっぽい話にしただけなので、そんなのが出る場所では決してないと思いますよ!w

それはさておき、結局二人の邂逅とか昔の話とかはあまり触れてないような気もしますが、こんなので大丈夫でしょうか?
リクエストで前に頂いていたので、色々と節目という事でこっちにしちゃいました。ウサミミ王女はまたいつかですw

大学での話とか梨紗さんとの邂逅とかも考えたのですが、それだけで別のシリーズ出来ちゃいそうなので、サラッとこんな感じです。
そういえばちょいと乙女もどきなコウジュが出てましたけど、文章力があればTSもの特有のモヤモヤ感をもっと上手に書けたんでしょうかね……。
その辺も合せて、要練習ですね。

それでは皆様、次回から最終章?になります。よろしくお願いします!


P.S.
PSO2、しまむらとコラボだそうでw
店内にルーサーとマトイのボイスが流れるそうですよww

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