テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。

今回は短いですが、最終章へ第一歩を踏み出したいと思います。


『stage47:交戦規定 はただ一つ、“生き残れ”』

 

 

 

「ねぇねぇ聞いた?」

 

「これ、マジなのかなー」

 

「聞いたか? 世界滅びるってよ」

 

 そんな言葉があちらこちらから聞こえてくるのは、都内某所の交差点だ。

 巨大なディスプレイがいくつか設置され、道行く車が止まるのを待ちながら、それぞれ流されるニュースを見ては近しい者へと声を掛ける。

 

 今この瞬間にも交差点には千人近い規模の人間が集っている。

 世界でも有名な観光スポットにすらなってしまっているスクランブル交差点だ。

 よく見れば、日本人ではない者も数多く居る。

 そんな彼らも、先程まで行き交う人々を撮影していたカメラを、思わず街頭テレビへと向けていた。

 

 ただ、日本人に観光客、放送されるニュースを見ての温度差はあれど、その放送を見た全員がソレ(・・)を認識した。

 

 

『アポクリフ、と仰られたそれは、結局のところ何なのですか?』

 

『現時点では余剰次元からの陰……と言っても分からんじゃろうが、まぁ原因から端的に言えば、世界と世界の間の歪みという事じゃな』

 

『つまり、その歪みは徐々に広がっているとのことですが、それが原因で世界は滅びると?』

 

『ま、このまま放置すればそうなるじゃろう。だが、それを防ぐ手段は既に分かっておる』

 

『手段とは一体なんでしょうか?』

 

『門を閉めるんじゃよ。証明できていないことを自慢げに話すのは趣味に合わんが、世界と世界を無理やり結び付けている結果があのアポクリフじゃ。なら、閉めてしまえば良い』

 

『それは……、しかしそれは多くの影響が出ませんか? 例えば、今では多くの企業が特地開発に名乗りを上げています。それが頓挫するとなると、数億では済まない規模の損失が……』

 

『そんなもん儂の知ったこっちゃ無いわい。ただ、そうならんように動いておるんじゃよ。閉じたのであればまた開くだけじゃ』

 

『ゲートを自由にする技術を手に入れたという事ですか!?』

 

『どうもそう簡単な話ではない様じゃ。技術で言えば別口のアプローチになるらしいのう。何せ、ただ門を開いて閉じるだけならいつでもできる。それをしないのは、一度閉じてしまうとあちらとこちらの時間軸がずれてしまうかららしいのじゃよ。その辺の調整をする技術だと言っておった筈じゃ』

 

『えっと……、その情報は記憶が間違っていなければ今まで出たことの無い情報のような……』

 

『そらそうじゃろうよ。普通なら国家機密レベルの微妙な話じゃろうしな』

 

『これ、生放送なんですが……』

 

『知っておるとも。だから来たのじゃよ』

 

 

 徐々に顔が引きつりつつも必死で笑顔を崩さない女子アナウンサーと相対するゲストとして呼ばれた男。

 その二人の会話はこんな風に続いた。

 

 ただ、ゲストとして呼ばれた男はアポクリフを調査しに行った際に居た漆畑教授であった。話の途中には、実際に現場で撮ってきた写真が何枚も出されていく。

 そしてその漆畑が告げた内容が、それを見ていたすべての人間に衝撃を与えた。

 それの意味を正しく理解できた者は少ないだろう。

 しかし、これだけは誰もが分かった。

 人間が古来より何度も挑み敗れてきた“空間”と“時間”に対するアプローチを行う為の技術が手に入ったかもしれない。

 

 そんなことを街行く人々が、アポクリフなんてものは既に二の次にして思い始めた。

 そこを聞くだけならば、夢のある話だ。

 小説や映画の様なフィクションが――特地の時点でもフィクションのような本物ではあるが――身近になるのだから。

 

 そんな中、放送された内容をそのままの意味ではない捉え方が出来た各企業や諸外国は慌てた。

 台本と違うからだ。

 こんなことを言うように組まれてはいなかった。

 しかし、既にこの放送を止めることが出来る段階は過ぎてしまっている。

 

 この放送は事前に日本の上層部を通して組み込まれたものだ。

 特地に関する問題を今まで定期的に放送してきたこともあり、時々国からの公式発表の場としても使われてきたこの番組。日本人のみならず、多くの人間が注目する番組となっていた。

 どこぞの怪しげな幼女が時々映るのもあって一部の人間にも大好評だ。

 それだけ今のこの番組の影響力というのは大きい。

 そんな番組で、流れてはならない情報が流れてしまった。 

 “日本がゲートを自由にできるかもしれない技術を手に入れた”

 やられた、そう全ての国がこの放送で思った。

 

 これが例えば常の日本であったのならば、鴨が葱を持ってアピールしているようなものだ。

 だが、今の日本には守護者とも言える存在が居る。

 見た目は唯の少女だ。幼女と言ってもいいかもしれない。

 しかしその内側にある技術、能力、その全てが現代科学を凌駕する。

 実際に、その存在を確保しようとしたどの国もが失敗している。

 

 そんな状態の日本が、あろうことか世界を変える技術について臭わせてきた。

 挑発とも言っていい振る舞いだ。実際に幾つかの国では憤慨するトップが見られたことだろう。

 しかし、あらかじめ提出されていた台本にはない行いをしてまでそれを発表した真意が何なのかが分からない。

 ただ、各企業諸外国は、その日本の行動に様々な感情を持つと同時に、会社の、国の運営者として冷静な部分で考えていた。

 

 つまり、乗るか反るかだ。

 

 乗れば、莫大な利益を手に入れられる。

 今までに特地から齎された情報を加味するだけでも大いなる恩恵がある。

 希少金属が希少ではなくなる。資源問題が解決する。超常の技術があれば様々な躍進が期待できる。

 対して反れば、それらの恩恵から置いて行かれるかもしれない。

 だが、もしも成功すれば? 敵対した上で勝ち取ることが出来れば?

 そうすれば全てを独占できる。

 前者を選ぶべきだと、運営する者は冷静に判断する。判断したい。

 だが、それとは別に、“独占”という甘い誘惑が心の端から消えない。

 つまりは頂点に立てるという欲。

 王になれるのだ。

 それも一国の王ではない。

 二つの世界を統べる王となれる可能性。

 

 そこまで考えて、運営者たるほとんどが馬鹿馬鹿しいとその考えを理性で放棄した。

 欲望は大事だ。それが原動力となる。

 だが、身を滅ぼすほどのそれはただの大罪でしかない。

 それでは運営する者としては二流もいい所だ。

 今の位置を維持したうえで向上させる。

 その為には牙を研ぎながら隙が出来るのを待つべき。

 そう、冷静に判断する者が殆どだった。

 所詮は可能性の問題だ。

 勝てる可能性、見込み。

 それが今は無いだけの事。

 だから待つことを、殆どの者が選んだのだ。選んだはず、だった。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「どうも始めまして、私は(とう) 徳愁(とくしゅう)です」

 

「会談の場を設けていただきありがたい。私はディアボ。帝国の第二皇子だ」

 

 

 そんな言葉ともに開始されたのは、某国の首席(トップ)と特地における帝国の第二皇子における会談だった。

 場所は日本国内のとあるホテル。

 そんな場所に、居るはずの無い二人が居た。

 

 その場所には、それなりに広い一室ではあるが多くの人間が居た。

 護衛や側近、通訳。メイドも用意されていた。

 だが、通訳はともかく正面切って話すのは董徳愁とディアボのみだ。

 

「事前に、あなたからの要望は聞いています。御変わりは無いですか?」

 

 董主席がディアボへと目を向けながらそう切り出す。

 それを通訳が伝え、ディアボは頷く。

 

「変わらない。貴国には力を貸してもらいたい」

 

 それをまた通訳が伝え、董主席は笑みを浮かべる。

 

「ええ、ええ、構いませんとも。貴方の(・・・)帝国の事情は聞いておりますとも。私どもとしてはその助力を惜しみません」

 

 目を細めて笑みをつくる董主席。

 見る者を安心させるような笑みだ。

 だがその笑みを見て、ディアボは警戒した。

 彼とてぬるま湯に浸かっていた訳ではない。

 傀儡にされそうであった長兄とは違い、自身の有用性を訴えるために様々なことを成してきたのだ。

 でもだからこそ、ここで警戒したままでいるのも悪手であるとは認識していた。

 ここでは力を借りる側なのだ。

 そしてここは敵国のど真ん中と言っても良い。

 自身がここに居ない筈の人間であることを加味しても、下手な手には出れない。

 その程度の考えにはすぐに至っていた。

 

「勿論、タダとは言わぬ。欲しいのは土地か、資源か。こちらも終わった暁には相応の物を差し出すつもりだ」

 

「相応のもの、ですか……」

 

 言葉を理解できずとも、董主席が言い淀んだことには気づいた。

 そしてそれが本心からなのか、ただのアピールなのかは分からない。

 しかし、続く言葉には覚悟が必要だろうとディアボは考えた。

 

「私どもの要望は食料を含めての資源……と言いたいところですが、今はそれよりも欲しているものがあります」

 

「欲しているもの、だと?」

 

「彼女ですよ」

 

「この者は……」

 

 そう言いながら董主席が取り出したのは一枚の写真だった。

 それを見て、ディアボは顔を歪めた。

 

 写っているのは整った顔の少女だ。将来が楽しみと言えるだろう。

 しかし、その者はディアボにとって決して見ていたい者では無い忌々しい存在だ。今すぐに死んで貰いたいとも思っている程でもある。

 それほどに憎らしい存在がそこには写っていた。

 

「私としては構わぬ。寧ろ引き取ってくれるのならば今すぐにでも渡したいくらいだ。だが―――」

 

「易々と行かないのは我々も承知しております。しかし、邪魔でしょう? 彼女が」

 

「うむ……」

 

 変わらずの笑みを浮かべながら言う董主席。

 それに対してディアボは顔を渋くするしかできなかった。

 何せ、董主席が言うように写真の少女を殺すのは容易い事ではない。

 実際にディアボも、写真の少女を殺そうとした。

 だが、失敗した。

 笛吹男(バイパー)と呼ばれる凄腕の暗殺者も、結局失敗してしまったのだ。

 今では直接的に殺すのを諦め、だからこそディアボはこの場に居ると言っても過言ではない。

 

「実際、容易ではないぞ? 我々も何度も排除しようとした。だがその尽くが失敗した。それにこの少女だけではなく、その周りも厄介だ。ジエータイとやらも目を光らせている」

 

「よく知っていますとも。しかし自衛隊に関してはどうとでもなる。実際貴方はこの国に来ることが出来た」

 

「確かに」

 

 当然ながら、ディアボはこの国に本来なら来ることが出来ない。

 許可が下りていないのもそうだが、下りたとしても常に日本の関係者がすぐ傍に居なくてはならないようになる。

 しかし今この場にそんな者は居ない。

 つまりは密入国だ。

 そしてその先導をしたのが董主席であった。

 

 最初は特地におけるアルヌスで、ディアボの手先と董主席の使いが偶々出会ったのが切っ掛けだ。

 あえて言うならば、そのどちらもがアルヌスで粗を探していたという事か。

 その過程で見つけたのがその互いにあと一歩を欲している相手だった。

 そこからは幾度かに分けて行われた特地訪問に紛れて会合を重ねた。

 そして、実際に会って話すために、董主席が色々と手を回し、少女には被害が出ない程度に工作を行い成功させるに至った。

 実際厄介なのは件の少女に対するモノが防がれる事であって、それ以外に関してはどうとでもなる。

 

 だが、そこまでだ。

 そこから先の展望が確実ではない。

 

「しかし一体どうする? 国を攻撃する算段は付いた。しかしその少女は、炎龍すらも凌駕するというまさに化け物だぞ?」

 

「これを」

 

 そう言って董主席が出したのは、一つの纏められた資料だった。

 それを通訳が読み、ディアボへと伝えた。

 

「聖杯戦争……。物騒な名前だが、これが何なのだ?」

 

 ディアボにはその文字が読めない。主題にされている“聖杯戦争”という言葉にも聞き覚えが無い。

 だからこそ問うた。

 それに、董主席はいっそう笑みを深めた。

 

「それにはね、彼女の弱点が書いているのですよ。貴方が事前に教えてくれたように、彼女には生半なものは通用しないようだ。だが、全く通用しないわけではない」

 

 言いながら、董主席は冊子のとあるページを開いた。

 そこには、英霊の特性と書かれていた。

 そう、これは“Fate/stay night”と呼ばれるゲームに関する資料。それを纏めたものだ。

 普通ならば、このようなものをここに持って来たところで何の意味も出ない。

 しかし、写真の少女はそれに関わる存在だと自ら発した。

 そしてそれを証明するものが幾つか見られた。そしてその情報がいくつも流れてきていた。

 

「彼女の様な存在を英霊(サーヴァント)と言うようです。そしてその超常の存在である英霊にも、弱点がある」

 

「……弱点だと?」

 

 言いながら、ディアボは通訳にそのページを翻訳させていく。

 専門的な言葉も多い為に曖昧な部分も出るが、それでも読めないわけではない。

 同時に、ディアボも読まれていく文字を頭の中で反芻し、自分なりに噛み砕いていく。

 

 暫くの時間が経った。

 書かれていたものをすべて読み終え、更にディアボなりの解釈をしていく。

 ブツブツと呟きながら、英霊というものに対しての情報を自分の物にしていく。

 

「そうか、だから全てが弾かれるのか。自身に起因するものは弾かれていないのに、それで……。そしてやつのクラスはバーサーカー。つまりそれに起因するだけの何かがまだある。いや、それがゾルザル兄上がああなった際のやつか……?」

 

「何やら、色々思い当たる節があるようですな?」

 

「ああ、これならば勝てる可能性が出てきた。すごいぞ、これは!」

 

「喜んでいただけたようで何よりですよ」

 

 そう言い微笑む董主席。

 内心では、無駄足を踏まずに済みそうだとくつくつと笑っていた。

 そしてそのまま、ディアボが色々と頭の中で構築していくに任せることにした。

 ディアボは、董主席が思っていた以上に頭の回転が速い。

 そして、考え方が甘い部分はあるが、使えないわけではない。

 むしろ、使い方次第では思うように踊ってくれるだろうと、改めて評価していた。

 

 そう思いながら、再びディアボが落ち着くまで待つことにした。

 だが、それはすぐに終わる事となった。

 

 ディアボが、何かを思い出したかのように資料をめくる。

 そして、とあるページを開き、それを董主席へと見るように促した。

 

 董主席がそこを見れば、一つの剣が描かれているページだった。

 

 

 

「この剣だ。私はこれを見たことがある。この()()()()()()()をっ」

 

 

 

 

「……キシュアゼルレッチ、ですか。それは、また喜ばしい事ですね」

 

 董主席は、一段と笑みを浮かべた。

 

 




いかがだったでしょうか?

どっかの誰かさん達が破滅への第一歩を踏み出したような気がしないでもないですが、キノセイデス。

そういえば、董主席がFate資料を持っていましたが、そこにある宝石で出来た剣と聞いてすぐにキシュアゼルレッチと出てくるくらいには読み込んでる設定です。やってるかどうかはさておき。イギリス辺りはやってるかもしれませんね。怒るか馴染むかはさておいてですがw

さて、それはさておきまたしてもイラストを頂きましたよ!
鹿尾菜 様からの頂き物です!


【挿絵表示】


十二単コウジュだそうです。
なんだか気の抜けた表情をしていますが、まぁ平時は大体こんな感じですw だからってうっかりはしませんよ? 本当ですよ?
それにしても十二単ですか、似たコスがゲーム内に実際あるのですが、それがまた可愛いんですよね。
是非、SS内でも十二単コスさせないとですねw

改めて鹿尾菜 様、イラストありがとうございます!!


それでは、今回はこの辺で!!
次回もよろしくお願いします!!



P.S.
予想通り「出撃」のロビアクが高い……。
スクラッチ回したいけど、先月多めに回したし今回は我慢しないと……、ぐぬぬ…。
おっと手が滑ってクラクレヘアーを手にイレチャッタゾー。
でも可愛いんだから仕方ない(真理


P.S.2
前話での初邂逅の話で、少々わざとらしすぎる部分があるとコメントを頂いておりまして、私も気になる部分がありましたので少し変更を後々にしようかと思います。
変更後は再びご連絡いたしますね。

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