テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。

予想どおり触手に反応してくださった紳士が何名も居て下さってなによりw
さて、今回その続きです。どうぞ!


『stage49:名状しがたき生物? い、いや、違うよね……?』

 

 

 

「後輩!!」

 

 伊丹が叫ぶ。

 しかしその時にはコウジュの身体が浮いていた。

 触手に引っ張られる形で、力はあっても所詮は子どもの体重しかないコウジュは引き上げられてしまう。

 そして、刹那の間にコウジュの腕は触手ごと波紋の中へと消え――

 

「っるぁああああ!!!!!」

 

 ――る前にコウジュは絡みついている触手を自身の腕ごと切り裂いた。

 

 触手の体液とコウジュの血液が舞い散る。

 

 慣性のままに空中を滑っていたコウジュが、腕を斬ると同時に空中に魔力を固めていつもの様に着地し、腕と共に飛んだ剣を一旦消してネギウォンドを取り出し詠唱する。

 

「レスタ!」

 

 回復する腕。

 腕を斬り飛ばした際に一緒に飛んだ袖口までも何事も無かったかのように元の形へと戻る。

 

 コウジュはそれを視界の端で確認し、再び杖を消して両手にツミキリ・ヒョウリを取り出した。

 そして宙に浮かぶ波紋を睨みつける。

 再び現れる触手。

 それどころか、波紋の中から次々と似たような触手が現れ、感覚器が有るのか無いのか、少なくとも獲物らしきものが居るであろう場所、つまりはコウジュの元へと殺到する。

 

「食うのは俺の専売特許だ!!」

 

 先端にはテラテラと体液を滴らせた口が付いている触手。

 それが何本も来るのを見て吠えるように言ったコウジュは、見据えながら地に降り立ち、地面を強く踏みつけた。

 

「触手と戯れる趣味はねぇっての!!」

 

 ゴボゴボとコウジュの影が泡立つように立ち上がる。

 そして瞬時に枝分かれし、何本もの泥で出来た触腕へと変化する。

 

 殺到する触手に向かう触腕。見る間にそれらは絡み合った。

 ただ、コウジュが産みだした泥の触腕の先は手の様になっていた。

 コウジュが産みだした触腕は、触手を絡み取るように捩じ上げる。

 

 ふん、と鼻息荒く息を吐くコウジュ。

 しかしすぐに顔を引き攣らせる。

 

「うわ、まだ来るのかよ」

 

 コウジュがそう口にしたが速いか、後続の触手が穴を広げるように殺到する。

 

 どうするか、と彼女は刹那の間に思考する。

 チラリと周りを見れば、波紋を囲うようにして銃を構えた者が数名居り、コウジュがその場を避けるか打つ手なしと判断すれば即座に掃射を始めるだろう。

 しかしコウジュの防御を抜いてダメージを与えることが出来る触手は見た目以上の精強さを持っている。

 ただの銃が効くとは思えない。

 更に言えば、その後ろには先程まで実験を施行していた面々や伊丹を始めとしたいつものメンバーが居る。

 迷っている暇はなかった。

 

「おかえりはあちらだ!」

 

 言うに合わせて、コウジュはもう一度地面を強く踏む。

 それ自体にさほどの意味はないが、要は気合の入れようだった。

 

 コウジュの影が大きく広がり、枝分かれして伸びていたものごと飲み込むように、濁流の如く触手を押しやる。

 それはそのまま後続の触手も飲み込み、波紋の中へと押し流した。

 

「斬り取れ! ツミキリ・ヒョウリぃっ!!!」

 

 触手を押し流す濁流を生み出すに合わせて走り出していたコウジュが、対象全てが波紋の向こうへと消えたのを確認次第、手に持っていた双剣を振るう。

 泥も触手も、物理理的なものは全てのみ込んでいた波紋。

 しかしその双剣に関しては刃を飲み込まず、剣の軌跡に合わせて波紋に切れ目が入った。

 波紋は空間に溶けるようにその姿を薄くしていき、最後には消えた。

 泥で押し込むようにしながら斬ったため、勢い余った分が空間的に何もなくなった向こうへ行きそうになったため、それを収める。

 見ればそこには何もない。

 何も無いが、コウジュは念の為にと残心。双剣を構えたままの姿勢で、波紋が有った場所を睨み続ける。

 暫くしても波紋のあった場所から何かが湧き出ることは無い。

 それを確認して、漸くコウジュはふぅと息を吐き、双剣を消した。

 

「後輩無事か?」

 

 コウジュから出ていた闘気とも殺気とも取れる刺々しさが形を潜めたのを見て、伊丹が後ろから駆け寄り声を掛ける。

 

「……ベトベトするっす」

 

「あー、うん、大丈夫そうだな」

 

 しかし返ってきた言葉に伊丹は気が抜けた。

 触手や自分を斬った際に飛び散ったものの所為で身体が濡れており、それが嫌なコウジュは言いながら伊丹の方も見ず顔を拭っている。

 その姿からは今の戦闘に関して何の感慨も感じられず、心配した伊丹的には少し損をした気分になった。

 まぁでも同じようなことになればその度に心配するのだろうな、と伊丹は内心で嘆息する。

 コウジュの戦闘能力に関しては知っているものの、やはり知り合いが目の前で命のやり取りをするというのを見るのはヒヤヒヤするものだ。

 

 そんなことを思いながら居ると、コウジュは一先ず顔は拭い終わったようで伊丹の方を向いた。

 しかし伊丹はすぐさま目を背けた。

 

「ん? どうしたッすか先輩」

 

「いや、あれだ、光線級が出張ってきそうなことになってる。もしくはダークネス的な」

 

「一体何の話をして……」

 

 言いながらコウジュが自身の状態を見るために視線を下ろし、固まる。

 

 今、コウジュが着ている服はレスタと共に回復(・・)している。

 スケープドールで復活した際もそうだが、コウジュは理屈で分かっている訳ではないがPSPo2由来の服は何故か回復と共に元に戻るのだと知って(・・・)いる。

 だから……と言って良いかは微妙だが、服も文字通り元に戻っている訳だから、伊丹が言ったような状況に何故なるのか理解ができなかった。

 光線級やダークネスと言うのは、ぶっちゃけて言えばアニメで入る規制の事だ。

 入浴シーンで入る不自然に多い湯気もそれに該当するだろう。

 それが何故今関係するのか?

 その答えは簡単だった。

 

「あ、あのエロ触手っ!!!!」

 

 コウジュが慌ててアイテムボックスからタオルを出して身体を拭く。

 というのも、コウジュには腕諸共に触手を斬った際に飛散した触手の体液をその身に浴びていた。

 一番気持ち悪かった顔部分を拭ったので一安心していたが、よく見れば黒い服にデコレーションがされていたのだ。

 そしてその色は白だった。

 ついでに言えば、ちょっとドロっとしていた。

 あと生臭かった。

 

「これってぇやっぱりぃ――」

 

「いいえケフィアですぅ!!!! っていやいや普通に考えたら血だろコレ!! 白いけど血だ!! あー、くそ取れない!」

 

 ロゥリィがボソリと何か言いそうになるがコウジュは遮り、そのまま上着を脱いだ。

 

 片方の袖は切ってから復活させたものだから何もかかっていないが、それ以外の場所ではあちこちに飛散していた。

 斬った際の触手の切り口はコウジュ側を向いていたのだからそれも当然と言えば当然だ。

 そしてそれらは妙な粘性を持っていた為に布の繊維へと絡みつく様に浸み込み、拭うだけでは中々取れなかった。

 その為コウジュは上着をいっそのことと脱いだのだ。

 そしてアイテムボックスへと放り込み、色違いの物を取りだして着込んだ。

 幸いにもインナーはゴムの様な水分を弾く材質で出来ていた為に綺麗に粘液を取ることが出来たため、そのまま上に着ることが出来た。

 

「あーくそ、酷い目に遭ったぜ……」

 

 少し目を潤ませながらそう言うコウジュ。

 しかしコウジュの不幸はそこで終わらなかった。

 

「コウジュさん! 申し訳ないがあなたを検査させて頂きます!!」

 

 いつの間にかコウジュを囲んでいた防護服を着た男たち。

 シュコーと換気用のマスクから出る音が妙に怪しく響く。

 その男たちが、コウジュを優しくも強く誘導し、ストレッチャーへと乗せ、そのまま運び始めた。

 

「え? ええっ!? ちょ、ま、待って!!?」

 

 そのあまりにも無駄に洗練された一連の流れに、待ったを掛けながらもどう反応していいか分からずコウジュはそのままドナドナと運ばれていく。

 そして気づけば、施設内の一角に拵えられた隔離空間へと連れ込まれた。

 

 そんなコウジュを見ながら、伊丹は隣に居た嘉納へと質問する。

 

「大丈夫ですか? あれ……」

 

「まぁ仕方ねぇだろうな。未知の生命体に触れちまったんだから検疫やらなんやらで調べねぇと」

 

 嘉納の答えに伊丹は苦笑いするしかなかった。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

「不幸だ……」

 

「でも良かったじゃないか。すぐに解放されて」

 

「まぁ注射針とか通らないっすからね。この身体」

 

 後輩が防護服集団にドナドナされてから数時間後、俺は娑婆の空気を味わう後輩と施設の外で森を眺めながら話をしていた。

 つい先ほど解放された後輩は、何とも疲れた表情をしている。

 気分転換に外の空気を吸えるようにと連れ出したのだが、長時間部屋に閉じ込められていたのだからしかたないか。

 

 その後輩は、肌をペチペチと叩きながら丈夫さを証明しようとしていたが、見るからにその肌はモチ肌だ。

 説得力は皆無であろう。

 しかし実際に後輩には注射器の針どころか、X線すら通らなかったらしい。

 その為後輩に対する検査はすぐに終わり、最終的に後輩に付着していた粘液や、後輩が斬り飛ばした触手自体を検査する方向に移行し、後輩は消毒液などで念のため洗浄されて解放された。

 そのことに、俺としては少しの安堵を覚えていたりする。

 何せこの後輩は御人好しにも程がある。

 だが、注射器などを拒絶したという事はそれを攻撃かもしれないと少なからず認識しているという証左に他ならない。

 後輩自身が、自身の自動防御とやらについて『俺が攻撃だと認識していたらそれを勝手に弾くんですよ』と言っていたから、そういうことなのだ。

 ……注射器の先端が怖くてつい力が入ったとかでなければ、だが。

 まぁでも、その検査に嫌々ながらも付き合う辺り、御人好しなのは変わらないか。

 

 そんなことを頭の中で考えていると、気を持ちなおした後輩がこちらを見た。

 

「それで、あの後実験はどうなったんですか?」

 

「一応成功だ。レレイも感覚が掴めたらしいし、後は起点となる物さえ用意できれば大丈夫だろうって」

 

「起点?」

 

「ああ起点って言うのは―――」

 

 後輩の疑問に俺は説明する。

 

 そもそも、レレイが手にした次元操作技術と言うのは万能なものではない。

 レレイが出来るのは、3次元上では繋がっていないが他次元において接触している世界との間に穴を開けることだ。

 つまり、知っている世界だからと言ってもおいそれと移動できないし、当然ながら創作の世界に飛び込むなんてことも出来ない。

 要は橋渡しをする能力でしかないのだ。

 そしてその橋渡しは、向こう岸に印が無いと時間軸上でズレが出てしまうらしい。

 最悪の場合、どこまでも同じだけど、最後の最後でほんの少し違う平行世界に繋がる可能性すらあるらしいのだ。

 当然、それでは意味がない。

 多少の時間のスレはともかく、数年単位でズレたり、まして平行世界に繋げても意味は無い。

 

「それで、その起点には目途が立っているんですか?」

 

「それが無くてな……」

 

「まぁ、そう上手くいくわけないっすよねぇ……」

 

 レレイが起点に用いるために必要なものとして最初に提示したものは、両方の世界に置くことのできる特地で産出された超高純度の結晶物質だった。

 しかしそんなものに伊丹を始めとして誰も思い当たる事は無かった。

 門自体は今あるものを使用すれば良いので、橋自体は心配しなくても良い。

 しかし、橋を架けた先がどこに繋がるか分からないのでは、まだ確立した技術とは言い難いのだ。

 ただ、幸いにもその起点となる物質は同じものを二つ用意できれば良いらしい。

 そしてレレイの姉であるアルペジオの成果によって、特地における宝石等の採掘場所にはある程度目星が付け終わっている。

 

「じゃああの霧(アポクリフ)の被害が限界に達するか、採掘が先かって感じですか」

 

「そうなるな。こっちの宝石とかでも一応試してみたんだが、後輩の言う所のマナの保有量がどうとかって話だ」

 

「あー、こっちは確かにマナが薄いっすからねぇ」

 

 しみじみと、当たり前の様にファンタジ―なことを言う後輩に、改めて異世界の存在だという認識が強くなる。

 いや、改めて考えるまでもなく、見た目からしてファンタジーなやつなのだが、なんというか長年近くに居たものだから家族というか兄弟というか、そういった物を飛び越えて身近な存在になってしまっていた。

 そのことを認識して、思わず苦笑する。

 

 そういえば、門が開いた時に俺があの言葉を口にしなければ俺と後輩との間にサーヴァント契約は成立してなかったかもしれないと後輩から聞いたことがある。なんでも、マナが一気に流入してるところだったからとか。

 もしその時にあの契約の言葉がなかったら今はどうなっていたのだろうか?

 後輩はこちらの世界に来ず、向こうの世界で過ごし続けただろうか。それとも、結局は同じようになっていただろうか……。

 まぁ後者だろうな。

 そんな確信が、考えている途中には既に不思議とあった。

 

 思考を反らして考えていると、そういえばと後輩が再び口を開いた。

 

「レレイが開閉する専属になる問題も大丈夫そうですか?」

 

「おう、どうもあの髪束を鍵に設定できるらしい。それからロゥリィ曰く、それをベルナーゴ神殿に渡せばいけるんじゃないかってさ」

 

「あー、あそこ欲しがってましたもんね」

 

 現状では次元操作に関しての技術を持っているのがレレイだけになるので、定期的に門の開閉をするとなってもレレイがそれに掛かりきりになる可能性があった。

 しかしそれもロゥリィの機転で解消されそうだった。

 

「ん、という事はここでの任務は終了ですか?」

 

「念のため、もう何度か実験はするそうだ。だから、数日は頼んだぞ後輩」

 

「マジですかぁ……」

 

「とはいえもう少し規模は小さくして、更に繋ぐのは一瞬だけとかにするそうだ。それに、繋ぐのは同一空間だけに出来るだけ絞るらしいから、あの触手が出てくることはないだろうってさ」

 

「……まぁそれなら大丈夫か」

 

 うんざりとした表情でそう言う後輩。

 今はもういつもの色に服を戻しているが、余程粘液まみれになったのが懲りたのだろう。その時の事を思い出しているのか、洗った服をもう一度確認し始めた。

 粘液の色以前に触手の粘液まみれになるって時点でぞっとしないが、後輩的にはアレに触れたのも気持ち悪かったらしいしな。妙に生暖かくて脈動もしていたから余計に生々しかったとか。

 そんなことを言いながら、あの触手を泥で再現するのだから後輩も性質が悪い。

 仲間が欲しいのは分かるけどもさ。

 それを俺に絡めようとしてどうしたいんだよって話だ。

 男が触手に絡まっても誰得だよほんと。

 

「あ、それで触手に関しては何かわかりました?」

 

「ああ。少しらしいけどな」

 

 斬り落とされた触手とそこから出た粘液、それらはやはり地球上のどの生物とも一致しないDNA構造をしてたらしい。

 感染等に関しても現状では確認されていないとのことだった。

 そんな検査の中で、興味を引いた事柄が有った。

 それを後輩へと話す。

 

「え、虫? 虫に似てるっていうんですか? あれが?」

 

「おう、一番構造が似ているのがそれらしい」

 

「いやいやいや、あのサイズですよ? 触手ですよ? SAN値削りそうな邪神系列って言われた方がまだ分かるフォルムでしたよ?」

 

「それはそれで嫌だが、でも今の所では虫が近いらしいんだよ」

 

「なんですかそのエロゲ―に出てきそうな組み合わせ。触手持ちの巨大な虫とか、巣穴に連れ込まれたらどうされるか分かったもんじゃないっすよ」

 

「うん、だからお前連れ込まれなくてよかったなぁとしみじみ思ってだな」

 

「ぎゃああああああああああああああ!!!!? 止めろ思い出させないで寒気がする!!!!!」

 

 俺が心配していたことを告げると同時に自身の肩を抱いて摩る後輩。

 剥き出しの肩部分には鳥肌が立っているのが見えた。

 

「ったく、本人にそれ言うとか最悪っすよ先輩」

 

「悪い。でも、ほんとそう思ったからな。後輩なら大丈夫だろうとはいえさ」

 

「……返し辛い言葉言わないでくださいっす。……とりまありがとっすよ」

 

「……おう」

 

 何となくそのまま無言になる俺達。

 それから暫く、何も言わずに二人で景色を眺める。

 何とも青春臭い空気だ。

 それもこれも恥ずかし気に感謝を告げる後輩が悪い。

 

 無言になってどれほど経っただろうか。

 いやな空気ではないが、なんとも言葉を出し辛く思っていると、そこに森から近寄る影が有った。

 それに気づき、二人してこの空気を霧散させようと少し慌てる。

 しかしそれよりも早く件の影はこちらへと声を掛けてきた。

 

「二人とも何をしているの?」

 

「ちょっとした話さ。他愛も無いものだよ」

 

 話しかけてきたのはテュカだった。

 その後ろには何人かの隊員と、ロゥリィが居る。

 そういえばコウジュの検査中に、周囲の警戒に出る隊員に、テュカがこの場所との繋がりを強くしておくためにと着いていったのだった。ロゥリィはその護衛。

 

 そんなテュカは、俺の答えが不満だったのか頬を膨らませる。

 

「むぅ、何だか仲間外れな気分だわ。二人だけでズルい」

 

「いやホント他愛もない話だったんだってば」

 

 俺と後輩に、私怒ってますと言わんばかりに言うテュカは正直可愛いだけであった。

 後輩も同じことを思ったのか、同時に見合う形になり、苦笑する。

 それを見てテュカは一層不機嫌を露わにするが、そこに更にロゥリィまで来た。

 隊員たちは、くわばらくわばらと言わんばかりに退散していく。

 

「相変わらず仲の良いお二人さんだことぉ。私は混ぜてくれないのぉ?」

 

「別に仲間外れにしたつもりはないってば。ほい、お疲れさま」

 

 機転を利かせた後輩が、アイテムボックスから飲み物を取り出して二人に渡す。

 あからさまな話題反らしだが、二人は不承不承ながらもそれに乗ってくれた。

 

「まぁ良いわ。一応問題なく作業は終わったわよ。ここの木々たちも、問題なく力を貸してくれそうだし」

 

「おお、エルフっぽい」

 

「勿論エルフですもの」

 

 コウジュが感嘆の声を上げるに合わせてテュカがフフンとドヤ顔をする。

 そして二人はそのまま話始める。

 

 そんな微笑ましい光景を見ていると、ロゥリィがこちらへと声を掛けてきた。

 

「周囲には一応人の気配は無かったわぁ。コウジュから預かっていた物も設置してきたしぃ、一先ずは安心かしらぁ」

 

「そっか、ありがとうな」

 

 コウジュから渡されていたミニ一条祭りとやらをロゥリィに設置するようお願いしていたのだが、それも特に問題なく終わったようだ。

 検査担当伝いに渡された物で、検査が長引きそうだからとコウジュがお願いしてきたものだった。

 

 それに関して素直に感謝を告げると、ロゥリィは俺の耳元に口を近づけて、やけに艶めかしく言葉を告げる。

 

「私的にはぁ、ご褒美が欲しい所だけどぉ?」

 

 その言葉にゾクゾクするものを感じてすぐさま身を離してロゥリィを見れば、彼女はクスクスと笑うだけであった。

 どうやらちょっとした意地悪をされたらしい。

 それに嘆息した後、もう一度ロゥリィにありがとうと告げると、彼女は満足したようで微笑んだ。

 

 それにもう一度溜息を吐いていると、ロゥリィは施設の方を向いた後、指をさしてクスクスとまた笑う。

 ロゥリィが指し示す方へと向く。

 そこには壁に半身を隠した状態でじーっとこちらを見るレレイの姿があった。

 見ていると、口がパクパクと動く。

 おそらく、ずるいと言っているのだろう。

 思わず頬が引きつる。

 

「先輩はモテモテっすなぁ」

 

 そんな俺へと後輩がおかしそうにそう言うのが聞こえた。

 俺はその気軽に言う後輩へと何か言ってやろうと振り向くと、後輩は白狐になってテュカに抱えられていた。

 いやどうしてそうなった……。

 

「ふふ、今日はコウジュと一緒に寝るわ。これは罰なの。あ、ヨウジも一緒に寝る?」

 

「え、遠慮しておくよ……」

 

「先輩の裏切り者!!」

 

 俺が断ると後輩が非難するように声を上げる。

 だが俺はレレイの機嫌を取るという任務があるのだ。

 許せ。

 そう言い訳しながら、俺はレレイの方へと歩き始めた。

 

 

 3人娘が俺を好いてくれているというのは何となく理解している。

 でも、それに答えるには色々と葛藤があるし、(しがらみ)があるのだ。

 だけど、今の仲間内が楽しいのを否定はできない。

 30越えた俺が何を贅沢言っているのだと思われるかもしれないが、今ある楽しさを俺は否定できないのだ。

 それが彼女たちに対して不誠実だというのは分かってはいる。

 分かってはいるが、それを行動に移せるかというのはまた別問題だろう。

 

 それに俺には――――

 

 

 ―――いや、それも一先ず全部片付けてからだな。

 

 そう思い直し、考えようとしていたことをカットする。

 門の開閉に関して一段落すれば、特地との問題もとりあえず落ち着くだろう。

 そうすれば考える時間もできる。

 それで良いじゃないか。

 無理に今すぐ答えを出さなければいけないわけじゃない。

 そのはずだ。

 だが、一条が言っていた言葉。

 それがある以上、油断はできない。

 一条の言葉ぶりから考えれば、それを後輩に解決させるのが彼女の目的の筈だ。

 一条も、宿主である後輩を慈しむような姿を見せる以上、後輩の望まない展開にはしない筈だ。

 

 

 

 ―――筈なのに、どうにも嫌な予感が胸の内から遠ざかってくれなかった。

 

 




いかがだったでしょうか?

ウ=ス異本は出ません(断言
さておき、それに関する、しかもコアなジャンルに関する単語が出てきましたが、大丈夫ですよねこのくらい…(震え声
あくまでもこのSSはKENZENなので、読む皆さんもKENZENなSHINSHIだと思います。
なので、意味が分からなくても検索とかしてはいけません(目反らし


そういえば、最後に伊丹がフラグっぽいものを残しましたが、キニシナイデクダサイ。キットダイジョウブデス。

それでは、また次回もよろしくお願いします!!



P.S.
前回の酒呑童子に関しての後書きで明言しなかった為混乱させてしまったようで皆様にはお詫び申し上げます。
い、一応、出てくれました酒呑童子さん
・・・(小声
掛かったお金は……思い出したくないです。
いつもの自分から考えれば、奮発した方……とだけw
ま、まぁ、ボーナス月前ですしね!!

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