テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。

今回は次回への布石回です。
短いですがご容赦を。


『stage52:あんまり交渉ばかりだと胃にゲート空きそう』

 

 

 

「アインツベルン君、宝石剣という単語に聞き覚えはあるかね?」

 

「え、いやまぁありますが」

 

「むしろそれを探していたところなのですが、どうかしました?」

 

 宝石剣を盗んだ犯人へどんな報復をしようかとあれこれ考えながらアルヌス駐屯地へと帰ってきた面々。

 そんな彼らの内、コウジュと伊丹は帰るなり狭間陸将に呼ばれた。

 そして言われたのが先の言葉だ。

 聞かれたコウジュは、予想外の所から宝石剣という単語が出たものだから曖昧な返事をする。

 そのコウジュをフォローする形で伊丹は狭間へと質問を返した。

 

「ふむ、聞くことが増えてしまったが、先ずはこれを見てほしい」

 

 伊丹の問いに、狭間は目の前に置いてあったPCを操作した後で伊丹達の側へと向けた。

 それは某動画投稿サイトであり、二人には見慣れたロゴが左上にあった。

 そこに投稿されていた一つの動画が再生される。

 

 それを見て、コウジュと伊丹の頬が引きつった。

 

「これ、まじですか?」

 

「嫌な所に渡っちまったなぁ・・・・・・」

 

「どうやらそのようだ。そしてこれが本物であるならば君に取りに来てほしいと中国から要請もあったよ」

 

 動画の内容はこうだ。

 中国が国内でとある犯罪者を逮捕した際にある物を()()押収した。

 それが宝石剣だ。

 その犯人はどうやらジャーナリストに扮して特地へと何度も行っていたようで、その際に手に入れたという。

 そしてそれを中国で大事に保管してあるという。

 実際に、今見た動画には中国語と共に宝石剣が映し出されていた。

 

 狭間は、動画を見終わった二人に改めて問うた。

 

「率直に聞こう、あれは本物かね?」

 

 狭間の問いに、コウジュは改めて動画を見る。

 繰り返し再生されるそれをじっくりと見て、漸く顔を上げた。

 

「おそらくは、ですけど」

 

「特地からという下りに心当たりは?」

 

「こっちのアルペジオさんって鉱物学者さんに渡してたんです。けど盗まれたと聞いたのでそれを取り返しに行こうかと戻ってきたんです」

 

「報告には聞いていたが、よりにもよってそれが宝石剣とは・・・・・・。まったく、どこで抜かれたのだ」

 

 コウジュの肯定に狭間は思わず天を仰ぎ眉間を揉む。

 何せ中国側が主張する宝石剣が本物であるということは、自衛隊の警備態勢を掻い潜ってまんまと宝石剣を地球側まで持って行ったという意味でもある。

 ゲートを潜る為には何重もの検査を越えなければならない様にしてあるというのに、それが意味を成していないとなれば大問題どころの話ではない。

 

「それにしても盗んだって言う犯人はどうなったんですか? このニュースだとそこまで書いてないですけど」

 

 繰り返し再生される動画を見て、今度は伊丹が質問を繰り出した。

 

 確かに、動画内では犯人の名前と顔、経歴まで出ているというのにその後については何も報道されていない。

 動画では逮捕したという報道だけであり、どちらかというと発見された宝石剣についての話の方が強く前面に出ている。ご丁寧なことに検証動画付きだ。

 

 そんな伊丹の質問に、難しい顔をしたまま狭間は答えた。

 

「調べた限りではその男は存在しない者だ。どう探っても途中で経歴が無くなってしまう。意図的に作り上げられた存在だろう。戸籍や流通も無い様な村で育ったならばそれもありえるがね」

 

「けどそれだと報道されている経歴とは合わないっすよねぇ」

 

 コウジュが付け足したように、犯人の経歴はそれなりに高学歴なものであった。

 

「という事は中国が主導で盗ませたという事ですか?」

 

「・・・・・・立場上断言する訳にはいかないというのもあるが、一部ではその方面で捜査もしている」

 

 伊丹の質問に答えた狭間のそれは、実質的には中国が犯人であると高く見積もっている上での言いようであった。

 そうでもなければ“立場上”等とわざわざ言わないだろう。

 それに気づいたコウジュと伊丹はそれ以上続けなかった。

 “need to know”という言葉があるがこれは最小限の者だけが知っておけばいい事という意味であり、今の言い回しもそれゆえであると感じ取ったからだ。

 ただ、機密であるとした上でそれを遠回しにでも知らせてくるという事にも意味があるとも感付いた。

 

「それで、今後はどう動けばいいですか?」

 

 狭間が齎した言外の警告文を頭の中に置きながら、コウジュは一先ず本題に入ることにした。

 コウジュの持つ物がこうして発表された以上、短絡的に宝石剣の元へと飛ぶ訳にはいかない。

 中国は報道に乗せた上で“返す”と言ってきているのだ。

 それを裏側で回収すれば要らぬ事を言われるのは目に見えている。

 

「ふむ、ならばその前に幾つか質問をさせてもらおう」

 

 コウジュの言葉に狭間は少しの間考えた後、そう口にした。

 それにコウジュは静かに頷く。

 

「先ず、あれは回収しないとまずいものなのかね? 私も“Fateシリーズ”というモノの資料を見たが、資料通りであるならば真っ先に回収しなければならない。私が見た中でアレに該当する物は二つ。宝石翁が造ったものか、遠坂凛が使用したものか、だ。そしてそれらはまさしく、フィクションの中だからこそ許される性能と言っても良いだろう。この世界にアレらが存在しているというならば技術革命どころではない兵器に成り得る。ただ、逆に言えば資料通りであるなら使える者も限られてくる筈だ。性能の方はどの様になっているのだろうか?」

 

 狭間の言葉に、コウジュは慌てて首を振る。

 

「いやいや、あれは紛い物も紛い物ですよ。一応無限の魔力を引き出すことは出来ますけど、魔力を操作出来て尚且つ宝石魔術に適性が無ければ扱えないものです。例外はありますけど」

 

 ここでいう例外は当然コウジュのことだ。

 コウジュは能力上魔力を無限に生み出すという性能を直接発揮してしまう為である。

 

「それは朗報だ。ならばあれはアインツベルン君に関連する物では無いと言ってしまうことが出来る。そうすれば様々なものを回避できる」

 

 当然ながらその中には自衛隊の失態というものもある。

 言葉にすれば自衛隊の管理下から物が盗まれたで済むが、それは国の管理問題にも関わるものだ。

 今でもアルヌスへとマスコミや外交官を招き入れることは行っているが、中国から発信されたニュースが本当であるならば自衛隊の管理責任能力の欠如となってしまう。

 俗に防諜とも言うが、簡単に言えばスパイ等を事前に防ぐという事であり、今回のこれは防諜に失敗していたという事だ。

 当然ながら最も悪いのは侵入した側である訳だが、それを防ぐ為にあるはずの態勢が機能していないというのは問題だ。 

 マスコミの恰好の的と言っても良い。

 実際に、既に各社における自衛隊への追及は始まっている。

 

「個人的に言えばこういった逃げの一手は好ましくないがそうも言ってられん。緊急事態という事でゲートを通しての流通は止めたがそれもいつまでもというわけにはいかない。警備の穴を探している所だというのに、再建など今からしてしまえば尚更付け入る隙を与えてしまう」

 

 そう説明する狭間を、コウジュは申し訳なさそうな表情で見る。

 それに気づいた狭間はコウジュへと投げかけた。

 

「どうしたのかね?」

 

「あの、それがですね——————」

 

 そうしてコウジュが話し始めたのは先日のロンデルでの一幕だ。

 

 ゲートの()となる鉱石を探しに鉱石学者であるアルペジオの元を訪ねたこと。

 そこで宝石剣を盗まれたと知ったこと。

 その後で宝石剣がゲートの要になり得ると気付いたこと。

 しかし盗まれた方の宝石剣が無ければ正常にゲートを繋ぐことが出来ないこと。

 そしてそれを回収するために地球側へと戻る必要が在る為、アルヌスへと戻ってきたこと。

 

 それらを言い終えると、狭間は再び眉間を揉み始めた。

 

「・・・・・・それで、宝石剣が要となることを知っている者は何人居るのかね?」

 

「えっと、俺に先輩にレレイ、テュカ、ロゥリィ、第3偵察隊の何人か、あとはアルペジオさんですかね」

 

「屋内での話であったため、聞かれている心配はないと思います」

 

 コウジュが答えた後に伊丹が補足する。

 その伊丹の言葉に、狭間は力を抜くように息を吐き出した。

 

「それならば最悪の展開になる可能性はまだ低いか」

 

「と、自分は思います。うちの中に内通者が居るとは思いたくないですね」

 

 狭間の言葉に伊丹が苦笑しながらそう言った。

 しかしそのやり取りにコウジュは首を傾げる。

 

 そんなコウジュを見て伊丹が口を開いた。

 

「宝石剣がゲートの要になると知られていたら、現状だと宝石剣を求めて戦争が起こるって話だよ。宝石剣がある場所にゲートを開けるのなら、是非自分の国でって各国が言うのは当然だろう?」

 

「あ、なるほどね」

 

 伊丹の言葉を聞いて漸く合点がいったコウジュ。

 

 そんなコウジュをさておき、伊丹と狭間は話を続けた。

 

「しかしそうだとしても宝石剣を回収しないといけないことは変わらんか」

 

「そうなりますね。しかし態々向こうに取りに行くとなると————」

 

「当然、アインツベルン君を出迎える準備はしていることだろう」

 

 その狭間の言葉に、コウジュはあからさまに嫌な顔をする。

 つまりは、どんなものかはさておき罠が張り巡らされている所にコウジュは行かないといけない状況になっている訳だ。

 

「やっぱり行かないとですよねぇ・・・・・・」

 

「すまないが行ってもらえるかね?」

 

「自己責任ですしね」

 

 狭間の言葉にコウジュは観念したようにそう告げた。

 そんなコウジュを見た後、伊丹は狭間へと声を掛けた。

 

「そうなると自分たち第3偵察隊はどうしましょう?」

 

 今までコウジュと第三偵察隊にテュカ達は基本的に同道してきた。

 しかし中国にそのメンバーで行くわけには当然いかない。

 3人娘は当然ながら、第三偵察隊という明らかな武力を連れてはいけないのだ。

 

「そちらの方は私で考えておこう。しかし伊丹の想像通り、君は一緒にはいけないだろうね」

 

「あー、先輩って自衛隊員ですもんね」

 

 狭間の言葉にコウジュはなるほどと頷いた。

 そんなコウジュを伊丹はジト目で見る。

 

「何その今思い出した感」

 

「いや、先輩が一番自分で自分を自衛隊らしくないって思ってるでしょうに」

 

「・・・・・・そうだけどさ」

 

 抗議したはずなのにコウジュに言い負かされた形になり伊丹は口を尖らせる。

 

 そんな伊丹を一旦放って置き、コウジュは狭間へと口を開いた。

 

「一先ず、私の事は心配しないでください。対物ライフルでもなければ弾ける様になりましたし、薬物関係も苦手なのは変わらないですけど、結構な量じゃなければ大丈夫です。まぁそこまで多い量だと味覚か嗅覚で気づきますが」

 

「そ、そうかね・・・・・・」

 

 自信満々にそう言うコウジュに、狭間は思わず言葉を一瞬詰まらせた。

 普通は対物ライフルでなくても拳銃一つで致命傷になるのだが、あまりにも当然のように世界観の違う言葉を告げられたために、狭間は現実逃避しそうになったのだ。

 

 狭間はゴホンと誤魔化すように一つ咳払いして、思考を戻す。

 

「さて、それでは君たちには数日の後、中国へと渡ってもらうことになるだろう。交渉はこちらでしておくため、決まり次第伝える様にしよう。それまではアルヌスで待機してほしい」

 

「「了解しました」」

 

 狭間の言葉に二人して答える。

 コウジュは正式な訓練を経ていない為に敬礼は出来ないが、顔を引き締めて頷く。

 そして少しの後に姿勢を戻した二人。

 その二人に要件は終わったから後は自由にと狭間が退出を促す。

 二人は言われたとおりに退出する為に出口へと向かうが、途中で伊丹は止まって狭間へと顔を向け直した。

 

「そう言えば少し気になったのでお聞きしても良いでしょうか?」

 

「ふむ、なんだろうか」

 

 何時にない真剣な表情の伊丹。

 その伊丹に狭間は頷きながら続きを促す。

 

 そして許可を得た伊丹は、意を決して口を開いた。

 

 

 

 

「先程資料で“Fateシリーズ”について見たとのことでしたが、原作ゲームもおやりになったのでしょうか?」

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・いや、やっていないが」

 

「・・・・・・そうですか」

 

 伊丹の質問にずっこけなりそうになりながらも狭間は何とか返すが、伊丹は狭間の言葉に落胆するだけであった。

 

「それが、どうかしたのかね?」

 

「いえ、おススメなので是非と」

 

「面白いですよ!」

 

 

 

 

 

「・・・・・・ソウカネ」

 

 伊丹の言葉に同調するようにコウジュも声を上げるが、狭間は抑揚の無くなった声で返すのが精いっぱいであった。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

「主席、向こうから打診がありました」

 

「ほう、予想より早かったな」

 

 入ってきた男に返したのは、中華人民共和国国家主席である董徳愁だ。

 彼は自身の執務室であるここで、革張りの椅子に身体を沈めていた。

 ディアボとの会談中に被っていた仮面も今では成りを潜め、別人かのように温和な印象を霧散させていた。

 そこへ入ってきたのがスーツの男で、彼は中華人民共和国共産党国家戦略企画局・局長で(りゅう)といった。

 劉は、自身が長を務める部署に入ってきた情報を報告する為にここへ来ていた。

 

「予想通り、受け渡しには数人の護衛を付けたいとのことです。他にもいくつか条件提示がありましたが、我が国へと招き入れることは可能なようです。その為現在は歓待の為に有効的な罠を模索しており—————」

 

「その必要は無い」

 

「———————どういうことかお聞きしても?」

 

 劉の報告を聞いていた董徳愁は、途中で切るように否と告げた。

 その董徳愁に、劉は短く疑問を伝えた。

 

「それほど難しい話ではない。単純に、今回の受け渡しで行おうとしていることは我が国である必要は無いのだ。つまりは日本でも行える。それならば盛大に貸しを作ってやろうじゃないか」

 

「なるほど」

 

 董徳愁の言葉に、劉は頷く。

 確かに、劉が事前に聞いている内容からすれば、行う場所は中国であろうと日本であろうとほとんど関係ない。

 

「しかし、貸しですか」

 

「ああ、効くか分からん毒や仕掛けに比べれば、貸しを作るほうが有用というものだ。だからお前はその間日本のマスコミ共にアプローチして来い」

 

「はっ」

 

 董徳愁の直属の部下でもある劉は、理由を聞くまでも無く了承を口にする。

 国家主席である董徳愁は国のトップであり、劉の上司にもあたる

 その上司からの命令である以上、劉に否やは無かった。

 

 それに、命じられたことはいつも通りの事でもある。

 何せ劉は工作員部隊の隊長でもあるからだ。

 彼が今まで行ってきたのはデモを煽ったり、とある会社組織の情報操作をしたりといったことだった。

 

「数は多ければ多いほど良いだろう。今は何社だ?」

 

「自由に動かせるのは3社です。条件付きで5社加わります」

 

「ち、その程度か」

 

 劉の言葉に、口汚く舌打ちする董徳愁。

 しかしすぐに思い直し、続きを話した。

 

「仕方が無い。今からでも増やせるだけ増やせ。ハニートラップでも何でも使って構わない。行け」

 

「はっ、承知いたしました」

 

 董徳愁の言葉に、劉は一礼した後部屋を去る。

 それを確認した後、董徳愁は足元に置いてあったスーツケースから宝石剣を取り出し、そして眼前へと掲げた。

 掲げたそれは、夜でも光を放っている。

 

 それをニヤリとした笑みで見た後、董徳愁は小さく呟いた。

 

 

 

 

「コウジュスフィール・フォン・アインツベルン。お前には存分に役立ってもらうぞ」

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?

どうやら宝石剣の元へと一飛びしてぶん殴って帰って来るのは出きなくなったようですよ。
全く、卑劣な・・・・・・。
感想で色々応援してくださっていたのに申し訳ないです。先手を打たれてしまいました。
この状態で行っても、回収出来るのはコウジュだけなので自然と犯人が分かってしまう為断念。
いやー、残念です。
それどころか、まだ何かを画策している様子。
一体コウジュは何をされてしまうのか(意味深

というわけで、次回もよろしくお願いします!
ではでは!!


P.S.
PSO2に斬鉄剣が来るまであと少し・・・・・・。
どこぞのせっちゃんとかが使うやつを思い出しますがそれはさておき、問答無用の即死攻撃に対応しきれるかどうか、楽しみで仕方ないですね!

それにしても、ざーんてーつけーん! たすけてぐんぐにるのやりー! みたいなノリの可愛いオーディンさんは居ないものか・・・・・・。
中身幼女な鎧武者とかみんな大好きですよね(確信
それなら即死喰らっても許せる気がする!!

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