テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。

色々やってたら遅くなりましたが、どうぞ!


『stage53:コウジュを敵に回す為の最速TA』

 

 

 

「大丈夫なのか後輩?」

 

「だからだーいじょうぶっすよ。俺は死んでも死なないっすから」

 

 そんなやり取りをするのは、日本へと戻ってきた伊丹とコウジュだ。

 しかし、このやり取りも既に何度目だろうか。

 この後二人は別れて行動しなければならない為、伊丹としてはコウジュに何か起きないかが心配でたまらないのだ。

 

 話の始まりは、盗まれた筈の宝石剣を見つけたと中国が日本へと言ってきたからだ。

 レレイの姉であるアルペジオに渡していた宝石剣が行方不明だと判明したのだが、レレイの発言から犯人の元へと辿り着く方法は分かっていた。

 あとはそれを実行に移すだけ。

 そこまで来ていた。

 しかし犯人を見つける前に、中国が宝石剣を見つけたと言ってきたのだ。

 そしてその宝石剣を返還したいとまで言ってきた。

 

 当初、中国は我が国に来てもらえば渡すと言ってきていた。

 それはあからさまな“招待”だ。

 勿論、日本にとってそれは受け入れられるものではない。コウジュを通すまでも無く拒否(実質的には遠回しにだが)された。

 しかし、それを伝えると手のひらを返したように日本で受け渡しを行いたいと返事が来た。

 ただ、ある意味当然とも言えるがそこには幾つか条件が付けられていた。

 

 1、受け渡し時は大々的に生放送下にて行うこと。

 2、通訳は中国が用意した人員一人のみ。

 3、受け渡し時はコウジュ、董国家主席、通訳の3名のみにて行うこと。

 4、警備に関しては日本の人員を使用しても良いが、受け渡しを行う場所より距離を取って警備を行うこと。

 5、受け渡しは、銀座ゲート前にて行うこと。

 

 —————この5つである。

 

 そして日本は、この条件を飲んだ。

 コウジュもまた、事後承諾という形ではあったがこれに了承した。

 

 事後承諾という形になったのは、日本が中国側の条件を早めに飲むためだ。

 コウジュから宝石剣がゲートの基点となることを聞かされた日本、特に森田首相が、宝石剣の確保を優先したというのが理由である。

 現状中国側から言い渡されている条件は、らしくないと言えるほどに安いものだ。

 確かに、特地から警備を掻い潜って宝石剣を盗み出されたという醜聞はまとわりつく。

 しかしその後に約束されているゲートの恩恵とを比較すれば、どうということも無いという判断だ。

 その為、宝石剣の重要性を知られて追加条件が出る前に、弱みとなる前に回収することにした。

 加えて言えば、機関銃程度なら弾くことができるというコウジュのスペックも知らされていた為、森田首相は条件を飲んだのだ。

 

 勿論コウジュもまた、その程度の条件ならばと容易く飲んだ。

 むしろ、中国まで行かなくて済むので安堵したほどだ。

 コウジュ的には、親しみの無い言語圏に行くことは、いかなチートを持ってしても不安でしかなかった。

 

 

 そういった経緯もあり、今日この日、中国から董徳愁国家主席が日本へと来日し、宝石剣の返還が行われる運びとなった。

 場所は銀座ゲート前広場。献花台が置かれ、都心部であり車通りも多かったが事件以降は周囲の建物含めて国の監視下に置かれている場所だ。

 今では自衛隊が常に警備についており、ゲートを囲うように壁やドームで覆っている。

 その前には今日限りの舞台が設置され、多くの報道や観衆が成り行きを見守っている。

 

 コウジュと伊丹は、それらを上から見下ろせる位置にあるすぐ近くのビル群の中に居た。

 

「後輩よ、お前さんがちょっとやそっとじゃやられないのは分かったけど、注意は怠らないでくれよ?」

 

「心配性っすねぇ先輩は」

 

 伊丹の言葉に返すコウジュはげんなりとしたものになっている。

 先程からヤケに伊丹がコウジュへと注意を喚起してくるからだ。

 まるで子どもを心配する親の様に、やけに同じことを繰り返す。

 コウジュとしては、心配してくれるのは嬉しいが、流石にうんざりするほどの繰り返しであった。

 

「俺のチートの中でも群を抜いてチートなのが生存チートっすよ? 防御力も上がったし、銃撃戦の中を散歩位は出来るのに何が心配なんですかまったく。そりゃぁ対物ライフルとか持って来られたら困りますけど・・・・・・」

 

「いや、そうじゃなくてだな。なんというか、とりあえず何か嫌な予感がするんだよ」

 

 自身のチートについて、改めて言うコウジュ。

 しかしそれに対して、心配する理由が勘なのだと伊丹は言った。

 いつもは論理的に動く伊丹に、思わずコウジュはどうしたものかと悩み始める。

 

 そんなコウジュを見ながら、伊丹はもどかしい気持ちになる。

 伊丹の頭の中で浮かび上がるのは一条の言葉だ。

 アポクリフに呑まれた後のコウジュの身体で一条は、コウジュが覚悟を得るための舞台が出来上がると言っていた。

 しかし、それを伝えることは難しい。

 何かが起こること自体を伝えてはいけないとは言われてはいない。内容を知ることで伊丹が余計な介入をしないようにしたいという部分に関して言うなと一条は言っただけだ。

 とはいえ何かが起こると伝えれば、必然的に『誰が?』という疑問に辿り着くのは当然だ。

 妥協点としては一条の存在を言わずに、第三者が言っていたと言う体だが、それでは説得力に欠ける。

 そういった話に説得力を持たせることが出来、かつコウジュに助言を出来る存在といえば、パッと思いつく中では狭間陸将だ。

 だが狭間陸将はそういった危機について話す場合には根拠と共に話す為、何かが起こると分かっていても何が起こるかは分からない現状ではやはり説得力に欠けてしまう。

 ならばどう説明するべきか。

 そう悩みながら咄嗟に出たのが勘だと言うのだから伊丹は自分で自分が嫌になった。

 まぁ、嫌な予感がするのは嘘では無かった。

 一条の言葉があったが故かもしれないが、伊丹の中には燻るように嫌な予感が産まれていた。

 気のせいだと振り切ることは出来る。

 しかしそれをしては後で悔いる気がすると囁く自分も居た。

 

 そうして伊丹が悩んでいる間に、コウジュは何かを諦めたようにはぁと溜息を吐いた。

 

「分かったっすよ。いつも以上に気を付けるっすよ。念のため、何かあればすぐに行動できるようにしておきます。こちらだけ武器を持つってのはあれですが、レールガンならパッと見では分からないし、周囲への警戒もいつも以上にしておくっすよ。それが限界です、おーけー?」

 

 今度はコウジュが言い聞かせるように、腰に手を当て指を立てそう言った。

 

 中国側が日本に来る以上、向こうは武器を持たない。そのことを中国は了承していた。

 当然日本としてはその辺りでモメるかと思った。

 何せ、コウジュが何処からともなく武器を取り出すのは世界中に知られている。

 公の説明でも、上限はあるが最初の世界に在った技術だとしている。

 それを知っていながらあえて武器を持たないと言ってきた中国を相手に、コウジュが武器を所持するのは問題どころではない。

 故に、目に見えない様に、いつでも使えるようにだけはしておく。

 それがコウジュの限界であった。

 正直に言えば、大した意味は無い。

 既に戦闘経験がそれなりになったコウジュからすれば、常に待機させておかなくてもすぐにアイテムボックスから使い慣れた武器であれば取り出せる。

 そもそもが、繰り返すようだがコウジュの今の装甲を貫くにはそれなりに用意が必要だ。

 それでも、非殺傷武器として使ってきたモノを装備するのは伊丹の為だ。

 コウジュが言うように、伊丹には心配性の嫌いがある。

 それはある意味美徳とも言えるだろう。

 伊丹は縁を持った相手を大事にする。優先する。

 基本的には自ら行動を起こすという事はしないが、起こさなければならないとなれば、他を切り捨てる覚悟が伊丹にはある。

 それをコウジュは知っている。

 その伊丹が今までに無い程に言う以上、コウジュとしても無碍には出来なかった。

 故の妥協点。

 

「・・・・・・すまん。どうにもこの感覚を振り切ることが出来なくてな」

 

 全てではないが、コウジュが妥協点として示したそれを伊丹も理解できたため、素直に頭を下げる。

 伊丹とて、フル装備でコウジュが臨めないのは分かっている。

 式典に武器を構えて行く馬鹿がどこに居ると言うのだ。

 しかしどうしようもないそのもどかしさを、伊丹は御しきれなかった。

 

 そんな伊丹に、コウジュは苦笑する。

 

「まぁ、ここまで先輩が言うのも珍しいし、先輩のゴーストが囁いてるのかもしれないので気を付けるっすよ」

 

「なんだそれ?」

 

「あ、そういやこっちには無かったか。前の世界で在ったアニメの名セリフっす。残念だ」

 

 都合3つ目の世界になる為、どの世界でどれを見たのかが若干あやふやになってしまっていたコウジュ。

 その事に内心で少しの寂しさを感じつつ、今度タチコマでも泥で作ってみるかなと自分で慰めるようにそう考えた。

 そんな事を考えつつ、チラリと時計に目をやる。

 予定の時間まであと少しだ。

 

「さってと、そろそろ時間っすよ。向こうも準備できてるみたいだし、流れの確認も終わってるのであとは無事に終わるのを願うだけ。俺のマスターってので特例としてここに居るとはいえ、そろそろ先輩も配置につかないとでしょ?」

 

「お、おう。流石にドヤされるか」

 

 改めて言い聞かせる様に言うコウジュに、伊丹もタジタジとなる。

 これではどちらが心配する側か分かったものではない。

 年上なのはコウジュであるのは間違いないが・・・・・・。

 

 さておき、そんな伊丹をコウジュはほれほれと言いながら扉の外へと追い出す。

 コウジュとの関係上、伊丹は通常の警備には混ざることが出来ない。

 自衛隊員ではあるが、“令呪”を持つ伊丹だけがコウジュを制御できるため、その他大勢と一括りには出来ない面倒な立場となっていた。

 しかも、残る令呪は後一画。

 一つはしょうもない事で消えてしまったし、令呪が無くなったからといってコウジュが消えるわけではないのは分かっている。

 しかし、令呪の本質は絶対命令権ではなく、小規模な奇跡を起こせる魔力の塊である。

 そんなものを持つ伊丹をコウジュから離した状態で、通常の警備に入れることが出来る訳が無かった。

 その為、伊丹は今からコウジュを常に見れる位置に移動し、俯瞰的にコウジュの周囲を見ることになっている。

 最悪の事態には令呪を使うことも視野に入れられている。

 

「じゃ、頑張りましょう! ほらほら!」

 

「お、押すなって分かったから! じゃあ後でな!」

 

 パタンと閉じられる扉。

 その向こうでは、タッタっと駆ける音がする。

 実は時間的に結構危なかったのだろう。

 それが分かり、コウジュは一人笑う。

 そしてひとしきり笑った後、閉じた扉をコウジュは眺める。

 

 

 

「ホント心配性っすねぇ。今更何回死のうが怖くは無いってのに」

 

 

 そう口にするコウジュの表情は、どこか寂しげだった。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

「始めまして、コウジュさん」

 

「ええ、こちらこそ。董徳愁主席」

 

「おや、こちらの言葉を御存じで?」

 

「軽い会話程度ですがね。むかーしに、相方と旅したことがあるもので」

 

「ほほう、それは是非聞いてみたいものですな」

 

 握手と共に、俺は董主席とそんな会話をする。

 言葉にしたように、互いにかわす言葉は中国語だ。

 Fate世界でイリヤに叩き込まれたため、簡単なものだけだが分かるのだ。

 

 それはさておき、俺達は並んでゲート前に作られた舞台上の席へと着く。

 そこには幾つものマイクが並べられており、今から始めるのは事の経緯の説明だ。

 

 一応、この式典が開かれるにあたって事前にある程度の情報は流されている。

 情報としては、重要な物品が特地から盗み出されたこと、それを盗んだ犯人が中国で捕まったこと、そしてそれを持ち主である俺に返すことがマスコミ経由で伝えられている。

 その為、ゲート周辺には多くの人間がごった返している。

 マスコミを始め、ニュースを見た野次馬も相当な数だ。

 それに合わせて警備も、数多く配置されている。

 まぁ、舞台からは少しの距離がありはするが、人の熱気が見えそうなほどの人数に、ちょっと怖くなる。

 その中心で、俺達は経緯を今から聞くのだ。

 ってか、経緯についての説明は別の人がしてくれるので俺は聞くだけで良いのはありがたいが、この人数の中心で座ってるだけってのは止めていただきたかったよ。

 

 チラリと横を見る。

 俺が見たのに気付いたのか、董主席もこちらを見た。

 それに俺は愛想笑いを思わずすると、ニコリと返してくる。

 

 こうして見れば、確かに腹に何か抱えてそうではあるが、特段脅威になるとは思えない。

 いやまぁ地球側で俺の脅威になるような存在が居るなら、もっと目立ってるだろうけどね。

 でも、自惚れじゃなくこの人に俺をどうにか出来るようには到底思えないのだ。

 そもそも、一回死んだ程度では俺を倒すことはできない。

 二重での『不死』は、チートと言って過言でない程の効果を及ぼすのは身に染みて理解している。

 Fate世界では何かしらある度に死んでいた気がするが、こちらに来てからはほんの数度だ。・・・・・・この感覚もおかしいけどさ。

 

 そんなことを考えていると、経緯の説明は終わったようで次の段階に入った。

 次は何を受け渡すかだ。

 

 ぶっちゃけ、返還式にこれほどの規模の式典をするのは異常だ。

 国宝だとかのレベルなら分からんでもないが、その返還するものを隠してその上で式典を開催してしまうというのはおかしな話だ。

 だが逆に、それが話題性を呼んだ部分もある。

 その開示を今からするのだ。

 

 進行役の人が、近くのビルに埋め込まれている大型ディスプレイへと視線を誘導する。

 それと同時、宝石剣が映し出された。

 マスコミや野次馬の大体はそれを見て頭を傾げる。

 パッと見ただけでは確かに水晶か何かを削りだした物にしか見えないだろう。

 だが一部では、アレの形を公式資料で知っている者は、まさかと思わず口にするのが聞こえる。

 そして始まる説明と、解析結果。

 あれが宝石の塊であると、そして魔術礼装であるという説明が入る。

 それに対して今度こそ、見ていた人たち皆が驚愕に包まれる。

 本来であれば平行世界の運営を行えるだとかの説明もされるが、まぁそこはレプリカのレプリカである為出来ないと締めくくられる。

 とはいえ、本物の宝石で出来た剣であるのは変わらない。

 しかもあのサイズだ。

 もしあのサイズの宝石が手に入れば左手団扇で一生を過ごせるのは確定的だ。

 

 そんな説明がされている為か、皆の視線はディスプレイから外れない。

 そんな中、隣から声が掛けられた。

 

「そういえば、お聞きしたいことがあったんですよ」

 

「えっと、今すぐの方が良いのでしょうか?」

 

「その方が有り難いですね」

 

 慣れない言語に分かりやすくゆっくりと話してくれる董主席。

 正直有り難い。

 すぐ後ろに通訳の人が居てくれるとはいえ、通訳越しというのはもどかしいのだ。

 

「聞きたいというのは、宝具に関してなのです」

 

「は、はぁ・・・・・・」

 

 宝具って、なんでまた? しかもこのタイミングで?

 そう俺が思うのも当然で、俺がサーヴァントだと公開してからすぐに宝具に関しての説明もされている。

 公式資料なども、中古であろうと高値で売れる程に一時は品薄状態が続いたほどで、俺が原因ではあるというのもアレだが、各国上層部は型月関係に結構詳しくなっていたりする。

 型月さん達は未だに一条祭の中に引き籠っている状態だが、どういう訳か仕事は出来ているようなので、型月さん公認の追加資料と俺という存在とのすり合わせもある程度は出来ている筈だ。

 その為、態々このタイミングでまでするというのが分からない。

 

 そう思い待っていると、結構込み入った話なのか通訳の人が近くに来た。

 3人で内緒話状態だ。

 

「以前に宝具に関して日本へ情報を求めた際に、現物としてコウジュさんにお借りできないかとお聞きしたことがあるのですよ」

 

「あ、確かににそんな話も来ていましたね」

 

「しかしそれは出来ないとのことでした」

 

「えっと、まぁ、色々と危険もありますしね」

 

 董主席の言葉に、俺は苦笑する。

 

 俺としては、別にレプリカの方なら渡してもいいかと思っていた。

 渡したところで、俺が能力を込めなければ唯の壊れない武器でしかない。

 検査もそれほどの物は出来ないだろう。

 しかし、森田総理から待ったが掛かったのだ。

 なんでも、それを媒介に召喚できると踏んで、生贄を捧げるまでしてことに及ぶ可能性があるとかなんとか。

 その為、俺は森田総理の言うように宝具を渡すのはやめておいた。

 事情説明とかも上手いことしておくとも言われたので、任せたのだ。

 

 そう思って苦笑していたのだが、対して董主席は首を傾げる仕草をした。

 

「おや、おかしいですねぇ・・・・・・」

 

「何が、でしょうか?」

 

 俺の言葉が間違っていたのだろうか。

 いやでもそれほど難しい言葉は使っていなかったはずだ。

 念のため、通訳さんに確認する。

 ふむ、間違っていないようだ。あ、続きもお願いします。

 さておき、それでは何がおかしいのだろうか?

 

 そう思っていると、董主席は話し始めた。

 

「我々が受けた説明では、あなたが持つ宝具というのはあなたから離されると効果を発揮しなくなってしまうと聞いていたのですよ」

 

「え・・・・・・?」

 

 俺から離されると効果が無くなる?

 いやそんな訳は無い。

 実際、今回返還される宝石剣はアルペジオさんの元で活躍していたと聞く。盗まれるまでは。

 なので、設定していた物が距離が離れた程度で効果を無くすことも、世界を越えたからと意味の無いものに変わる訳がない。

 それならば、宝石剣自体がどうにかなっている筈だ。元は同じ能力なのだから。

 

「そこが疑問点なのです。実際に、これを盗んだ犯人から聞き出したのですが、件の宝石剣は貴方が渡した方の元で立派に使われれていたとのこと。その辺りを聞き出せたことで本来の持ち主であるあなたに辿り着いたのですが、それだと日本の説明と矛盾してしまうと思いましてな? それであなたに直接お聞きすることにしたのですよ」

 

 え、これって何気にマズい状況じゃないですかね?

 一応通訳さんに内容の齟齬が無いか聞いてみる。

 うん、笑顔で俺の聞き間違いじゃないことを肯定してくれたよ。

 

 思わず俺は固まってしまう。

 そんな俺に、董主席は続ける。

 

「そういえば、これもとある筋から聞いたのですが、あなたは魔法の回復薬も御持ちだとか。切断した手足も瞬時に治るほどの物を」

 

 その言葉に、この状況がまずいレベルなんてものじゃないことに今更ながら気づく。

 回復薬(メイト系)に関しては、各国に伝わっていない筈の情報だ。

 それを何故この人は知っている?

 

 公式に発表しなかったのは、それによって齎される情報による混乱が起きないようにだ。

 回復薬なんて言うが、当然ながらメイト系はそれほど万能なものじゃない。

 切断なども、損傷してすぐでなければ効果は無いし、当然ながら病気関連には効果は無い。

 その辺りの実験をしてからでなければ、回復薬という希望にどれほどの混乱が起こるか分かったものじゃなかった。

 故に、公式発表はまだ先の筈だった。

 それに、俺自身がずっとこの世界に居る訳じゃない。

 その為にも、俺の薬が慢性化しない様にそれぞれの国にしっかりと管理してもらえる体制を作り、対象となる重傷者に優先的に配られる様にするのはどうかという話が出来上がっていた。

 それらに関しては未だ話し合っている途中だ。

 途中なのに、この人は知っている。

 何故・・・・・・なんて自分で自分を誤魔化すのは止そう。

 

 つまり、事前に調べた(・・・)情報を元に、仕掛けられている最中って訳だ。

 

兎も角、その情報をリークでもされると不味い。

何とか反らさないと。

 

「確かにありますが、アレは未だ実験途中なので、どこまで効果があるか調べてから発表する手筈になっているのですよ。それにしても、その話は何処で?」

 

「いやいや、どこで聞いたかは重要じゃないのですよ。それにしても実験ですか。良ければわが国でもお手伝いさせてくださいませんか? 世界有数の実験施設が当国にはありますので」

 

「えー、その辺りは私一人では決めかねますので、追って連絡を—————」

 

 そう言いながら誤魔化そうとするも、どうやら向こうは逃がす気はないようだった。

 

 

 

「話を反らそうとするなよ亡霊が」

 

 

 

 笑顔のまま、しかし目は笑っていない状態で董主席はそんな言葉を吐いた。

 

「えっと、聞き間違いかな?」

 

 そう思って口にしたが、通訳もまた変わらぬ笑みで否と答える。

 そういやあんたも中国側の人でしたね。

 

 苦々しくそう思うも、直接何かできる訳は無い。 

 その為、念話で先輩に連絡しようとしたところで、董主席が牽制してきた。 

 

「ああ、余計なことはするなよ? ここで何かしようとしても、カメラがお前を見ている。幾つかのカメラは常にこちらを撮るように指示してある。それに、私の指示次第で野次馬の中に居る手の者が動くようになっている。それは警備の連中も同じだ」

 

「脅し・・・ですか・・・・・・」

 

「ああそうだよ。お前に直接何かしようとしてもそうそう出来るものじゃない。だったらその周りを攻撃すれば良い」

 

「見も知らぬ人達ですよ? そこにどれほどの効果が———」

 

「無いと言えるのか? 英雄様よ。お前は目の前の人間を見捨てられない。それは既に知っている。我が国の人間より、お前が親しみのある国なのだから余計の筈だ」

 

 その言葉に、俺の感情は一気に冷え切る。

 いや、熱を持つの方が正しいか。

 腸が煮えくり返るとはよく言うが、今すぐにでもぶち殺したいところだ。

 

「・・・・・・最悪だな。お前」

 

「化け物に言われたところ痛くも痒くもない」

 

 だが確かに、これは効果的だ。

 俺は、可能性がある以上見捨てられない。見捨てたくない。 

 それが見知らぬ人であろうと、目の前の人間を見捨てる理由にはならない。

 

「人質ってのを取ろうとするやつが俺は一番許せない。お前は俺に今喧嘩を売っている訳だ。当然分かってやっているんだよな?」

 

「ああ当然だとも。資料を見た上で、サーヴァントとしても規格外なお前を敵に回すだけの価値を我々は見つけたのだよ」

 

「価値、だと?」

 

「おっと、映像が終わったな。ほら、表情を戻せ亡霊。皆の視線がこちらを向くぞ」

 

 そう言われ、俺は渋々牙を剥きそうになるのを笑顔で隠す。

 

 ああ、まずい。

 この状況はまずい。

 席で隠れている部分、そこでは俺の髪が黒くなり始めている。

 何とか理性で押さえつけているが、これ以上燃料を投下されたら狂化してしまいそうだ。

 どうにかこの状況を打破しなければ・・・・・・。

 

「ああ、言っておくがここでは無い場所にも手は回っている。こちらの言い方で言うと、イリヤスフィールの中の人というやつだったか?」

 

「っ・・・・・・」

 

 この場を切り抜ける方法として一つも思いついたのだが、今の言葉でそれも潰された。

 広範囲のメギバースで、一般人諸共になってしまうが無力化するという方法だったのだが、この場に居ないのなら防ぎようがない。

 イリヤの中の人、つまりは声優さんだ。

 この世界では創作物な以上、声役の人が居るのは当然だ。

 しかし、警備対象として日本が密かに警護している筈だ。

 とは言えこういうからには何か対策をされているのだろう。

 一条祭を置こうにも、知り合いではない以上は持ち歩いてもらうわけにもいかないので、自宅外は日本からFateに関わる人には警護が付いている筈なのだが・・・・・・、くそったれめ。

 一応、俺にセットされている隠しマイク経由で音を拾ってくれているとは思うが、先手を打たれているのか周囲に動きは見えない。

 

「そう怖い顔をするな。私の願い事を少し聞いてくれれば何も起こりはしない」

 

「願い、ごと?」

 

 拳を握りながら、何とかそう聞き返す。

 すると、俺の問いに董主席は笑みを深めた。

 

 

 

 

「照魔鏡って知ってるか? まずはそれにお前のマナとやらを注ぎ込んでもらおうか。この後にその場は作ってある」

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?

董主席の悪役感を出そうと色々していたらこんな時間に・・・・・・。
ともあれ、しっかりと表現できているでしょうか?
出来ていれば幸いです。
ただ、話の区切り的にちょっともどかし気持ちを残してしまっていると思うのでその辺りは申しわけないです。
ちなみに、次回もまだ続いたりします。御免なさい。

さておき、最後に出てきたワードで展開を読みそうな方が居そうで怖いなぁw
まぁでもそれもひとつの楽しみですので、答えあわせはまた次回!

ではでは!!


P.S.
PSO2についにオーディンが!!
回復阻害が厭らしすぎますってww
でも、やはりアークスは優秀ですね。
コレクトシート埋めるためにバンバンオーディンさんが生贄にwww


P.S.2
感想はその内に纏めてお返しいたします・・・・・・。
申し訳ない<(_ _)>
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