テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編 作:onekou
今回もシリアス風味で、コウジュの最後の葛藤に関しても入れてあるので飽き飽きな部分もあるとは思いますが、どうぞ!
「っ・・・・・・」
手に残る感覚が、気持ち悪くて仕方ない。
手に持つルゥカの刃を見る。
そこからは、ポタリポタリと紅い液体を滴らせている。
ギリッと、ルゥカを持つ手から音が鳴る。
驚異的な握力で握られたルゥカは、しかし壊れることも無く、逆に握り込んだ俺の手から血が染み出す。
初めて、だった。
人を殺そうと思って殺したのは。
今までにも人をこの手に掛けたことは何度もあった。
命を奪った数も一つや二つじゃないだろう。
でもそれは、すべて言い訳が出来た。
どうせ生き返る。記憶を奪っただけだ。運悪く命に関わる人も居るかもしれないけれど、大丈夫だろう。
全部言い訳だ。
醜い醜い、俺の本性だ。
誰かの命を奪うこと自体を後悔している訳じゃない。
それをしなければ、俺の味方である誰かが傷ついていた。
それをせずに済むに越したことはないが、せぬままに放置して自身の周りが傷付いてしまうなんてのは本末転倒だ。其れこそ後悔するだろう。
だから、出来る限り命を奪わずにいられるようにはしてきた。
その上で、力を振るってきた。
だけど今は、確かに周りに居る人を殺される前にというのはあったが、確実に俺の手が彼女の命を奪った。
「くそったれ、最悪の気分だ」
今の心情を素直に現した言葉がつい出てしまう。
俺は今まで誰かを
それ以外にも他者を害するような考えを浮かべない様にしてきた。
口にしない様にすらしてきた。
だって、俺の能力だとそれすらも“現実”にしそうだったから。
これはいつの間にか決まっていた、仕様も無い“自分ルール”だ。
人を殺すための覚悟だとか誰かを害する覚悟だとか、未だにそんなものはないけれど、誰かを守るために力を行使する覚悟なら出来た。
でもそうするしかなかったんだ。
他者に理由を求めなければ、自分から誰かを害そうとすれば、誰かに“死ね”と言ってしまっただけでその誰かが死んでしまいそうで嫌だった。
今を思えば、俺は今まで能力を使う上で全てに“言い訳”して来たのかもしれない。
けどここへ来て、俺は妲己を
やはりこの能力は厄介だ。
貰ってすぐは
そうなれば自分の中で出来ることが、やり方が分かり、能力は発展していく。
今の所は俺の中にある生前の“常識”があるから、概念的な部分まではまだあまり触れていない。触れることが出来ていない。
でもそれに近い事は何度もしてきた。
この分なら、時間を止めるのも空間を自由自在に操るのもそれこそ時間の問題だろう。
そんな力がもし、人を害する方向で成長してしまったら?
この想像をしてからはもうどうすることもできなかった。
それ以来、物理的な方向でばかり力を使ってきたのは仕方のない事だろう。
確かに、たったの一回だ。
だが、一度タガが外れてしまえば、抑えが効かなくなってしまうのはよくある話だ。
だからこそ一度も無いように気を付けてきたのだが・・・・・・。
とはいえ、いつまでもこうしている訳にも行くまい。
そう思い直し、ルゥカを仕舞って、今もなお紅い液体を垂れ流す妲己の身体へと近づく。
首を絶ったことにより、そこから漏れ出ている血は尋常ではない量に達している。
流れ出た血潮は彼女が着ていた衣を赤黒く染めてしまっており、所々にあしらわれていた蒼は見る影も無かった。
「さすがに、このままって訳にはいかないか」
死んでしまえば善も悪も無い・・・・・・なんて殊勝な心掛けではなく、自身が奪った命とは言えそのままにするのは忍びなかった。
「しかしこの血はどうするか・・・・・・」
ただ、死体に関してはともかく血は道路にすら染み出している。
それをどうしたものかと悩んでいると、ある事を思い出した。
炎龍の死体を処理した時の事だ。
あの方法ならば、と、影を動かそうとして違和感に気付く。
「待て、なんで周りが静かなままなんだ・・・・・・?」
妲己の死体から目線を外し、周囲へと目をやる。
しかしそこには、先程までと同じように人々が生まれたままの姿で立ち呆けている。
持続性のある能力だったのか?
もしくは呪いの類いだったか?
そう思考していくも、考えている間に行動できるかと思い直す。
チラリと再び妲己の死体を見るが、生放送の中で全裸を曝されている彼ら彼女らを先ずはどうにかしてあげた方が良いかと思い直す。
「来い、神杖アマテラス」
手に呼び出した祭祀用と思わせる荘厳な杖へ、かなりの
「レジェネっ!!!!」
盛大に込めた魔力を基に、
効果は、ゲーム内で言えばあらゆる身体異常状態の回復。
その能力を宿した俺が使っても、効果自体はさほど変わらない。
ただ、ゲーム内と違って込めた魔力次第でその範囲や威力を拡大できる。
それを用いてここら一帯の状態異常を回復させる。
勢い余って治り過ぎるかもしれないが、洗脳状態で居させるわけにもいかない。
ちなみに、ネギウォンドではなくアマテラスを呼び出したのは単純に威力の問題だ。
当然ながらネギウォンドとはレアリティが大きくかけ離れており、その効果も圧倒的な差がある。
アマテラスは光属性威力上昇効果を持つ武器の中でも際立つ物だ。
概念に関してはまた別のモノがあるが、今はそれではなく、回復効果を強化するのが目的だ。
言葉と共に軽く振るった杖から光が溢れ出て、一気に周囲一帯を包む。
走り抜けた光はすぐに消え去ったが、効果は絶大で、人々は崩れ落ちるように地面へと倒れた。
その際に怪我をしていてはいけないので、追加で
もうこうなってしまっては、回復魔法がどうとか言ってられないだろう。
そもそもが日本で、それどころか生放送内で、人を殺めたのだ。
どのような状況であれ、俺を巡っての諸々の状況は今以上にややこしくなるのは目に見えているだろう。
少なくとも、『コウジュ』という存在が日本に居続けるのは難しくなる。
なら、今やれるだけのことはやって置こう。
「とりあえずはこれで周りの人は大丈夫かな―――」
—――ふわり、そんな風に優しく鼻をかすめる匂い。
「嘘だ、なんで・・・・・・」
鼻を擽る匂いは、桃華。
それは先程まで撒き散らされていたものと同じで、寧ろ、先程より濃くなっている。
濃いからといって臭くは無い。
寧ろ、濃厚で濃密で、脳から身体から蕩けて行きそうな感覚は先程までよりも―――、
「―――まずぃっ!?」
慌てて俺は息を止める。
これ以上吸っていれば、俺でもレジスト出来なかったかもしれない。
それぐらいに濃い匂い。
息を止めたまま、辺りを見る。
するとたった今回復させたはずの人達が、無表情なまま再び立ち上がり始めている所だった。
その様は、血の気のある肉体でなければゾンビと判断してしまいそうなほどに、人間らしからぬ動きであった。
ひょっとしてこれは・・・・・・?
いやな予感がして、俺は妲己へと身体を向けた。
しかし――—、
「んっ!?」
唇に柔らかな感触。
自身の胸にも押し付けるように柔らかなものが当てられ、背中に向かって手も回されている。
思わず見開いた眼に映るのは、面前全てを埋める妲己の顔だった。
艶やかな色を感じさせる表情で、妲己は俺へとキスをしてるのだ。
しかもそれだけでは無い。
口腔を割るように、艶めかしい動きで異物が俺の中へと入ってきた。
舌だ。
俺は何かを考えるよりも早く、反射的に自身の舌でそれを押し出そうとするが、妲己は巧みにそれを避け、絡ませ、尚も俺の口内を蹂躙する。
今度は力づくで妲己を剥がそうとする。
だがそれよりも早く、口内にやけに生暖かい液体が入り込んできた。
その味に、嫌悪感と同時に火照る感覚が走る。
血だ。血を流し込まれている。
今まで当然ながら飲んだことは無かったが、今となっては禁止された生肉を食べた時の様な独特な味を俺に感じさせていく。
それと同時に、不思議と力が抜けていく。
その味に身を任せて行きたいような、ただその味を享受するだけの存在になりたいような、思考という行為すらも煩わしく感じさせるものだ。
「ぷはっ、これでお主も妾の虜じゃ」
唇に触れていた柔らかい感触も、口内に有った異物も取り除かれる。
だが、未だに脳には霞が掛かったかの様な重たさが在った。
「おや、これでも支配しきれんのか。これじゃから肉体派は嫌になるのぅ」
「な・・・にを・・・・・・」
「くふふ、いかんなぁ。首を刎ねた程度で妾が死ぬなら封印なんぞされんだろうに、油断したのぅ。回復魔術まで使う大盤振る舞いとは、とんだ聖人君子というものじゃの」
未だに俺へと抱き付いたままの妲己は、すぐにでもまたキスが出来そうな位置でニヤニヤと笑みを浮かべている。
「命のストック・・・か・・・・・・」
「厳密には違うがのぅ。じゃが、伝承にあるじゃろう? 正体を暴かれた九尾は、狐の姿となり空の彼方へと逃げたと。しかし違う。太公望は封じるしかなかった。逃がすしかなかった。ただ切り刻まれるだけでは、妾は死ねぬ」
霞む思考の中で思い出すのは、九尾伝説に連なる色々。
狐は尾の数だけ魂があるという伝承や、逃げる際に斬られた九尾は斬られたままの姿でそれぞれが逃げたという話。妲己と同一視されることもある日本の玉藻前に至っては、死んで尚も殺生石となって周囲一帯に災いをもたらしたとされる。
確かに俺は首を刎ねただけだった。
だが、よく考えなくともそれだけでは死なない存在は他にも居るじゃないか。
俺自身が死んだだけでは消え去らない存在だと言うのに、他者にそれが無いとどうして言えようか。
そんなことを考えつつも、俺は身体を動かそうとする。
しかし、金縛りにあっているかのように、動かそうとしても体は動かない。
ピクリピクリと指先は震えるが、行動足り得ない。
「意志までは縛れぬか。だが十分じゃの。周囲を縛る分の力をお主に回せば何とかなるじゃろうしのぅ」
そう言いながら妲己は俺から離れ、片手を上へと掲げた。
すると、紅い霞が徐々にそこへと集まり、ついには球体へとなる。
それは照魔鏡と同じように、妲己を中心とした衛星の様に宙に浮かぶ。
「そう、か・・・・・・。血の・・・臭い・・・・・・」
「御明察じゃ。妾の匂いは何かに乗せれば効果が強くなる。それが体液ともなれば言わずもがな。お主がアレらを妾の呪縛から解放した術が浄化の類いかと思い散布したが、杞憂だった様じゃからのぅ。回収したんじゃよ」
どうやら濃くなった匂いの原因は彼女から飛び出た血霞だったようだ。
それらの所為で、周囲の人々は再び彼女の手の中というわけか。
そして俺に至っては、血そのものを身体に入れられた。
ただ匂いを嗅ぐのとは違い、濃縮したものを液体で入れられた状態なのだろう。
そのことに、歯をギシリと噛み締める。
やられた、ただその言葉が思い浮かぶ。
「くくく、目線だけで妾を殺しそうな表情をしよるのぅ。愉快愉快。どんな気分じゃ? 妾の首は柔らかかったか? 後悔したか? ああそれとも、安心したか?」
「何、を!?」
抵抗する俺を見て悦ぶ妲己。
その姿はどこぞの神父を思い浮かばせる。
愉悦。
そんな感情がありありと表情に浮かんでいる。
「お主のような奴らはいつもそうでのう。さっさと殺せばいいのに殺すのにはためらい、殺した後にも悔いよる。阿呆な話じゃ。殺したければ殺せばいいじゃろうに。それで結局油断して自身が殺される。まったく理解できんよ」
「それ、の・・・何ガ悪イっ!!」
「おっと」
妲己の言葉を許容できず、俺は感情を爆発させる。
暴走までは行かない。
だが、理性があるとは言い切れないレベル。
そんな状態でも妲己の呪縛から俺の身体は逃げ出せない様で、指一本動かせなかった。
しかし俺にはまだ動かせるものがある。
影だ。
それが俺の感情を代弁するかのように膨れ上がり、妲己へと襲い掛かる。
「危ういのぅ。まだそんな隠し玉が在ったのか」
しかしそれは避けられてしまった。
完全にとはいかなかったようで、妲己が着ている服の一部や体には裂傷が走った。
だが身体に関しては、瞬く間に癒えてしまった。
「とはいえ身体自体は動かせぬか。そうじゃ、良い事を思いついたぞ」
何かを思いついたらしい妲己は、俺から一定の距離を保ちつつ再び手に出した扇を軽く振るった。
今度は何をする気だ、と動かない身体で睨みつけると、周りに居たカメラマンが皆、俺へと手元にあるカメラを向けてきた。
これに何の意味が・・・・・・と思う隙も無く、妲己はニヤリとした笑みのまま口を開いた。
「脱げ」
「何を・・・・・・っ!?」
思わず俺は聞き返す、しかし、俺の身体はその命令を受理しようと勝手に動き出し、上着に手を掛け始めた。
それを俺は残る理性の全てで咄嗟に止める。
「ほうほう頑張るのぅ! ならこうじゃ!!」
妲己はそう言うと扇をこちらへと振るい、それに合わせて彼女の周囲を漂っていた血塊がこちらへと飛んできた。
簡単に避けられる速度だ。
しかしそれは通常時ならであれば、だ。
俺は影を操り、それを防ごうとする。
「それは許さぬ」
妲己が口にすると同時、影の動きがぴたりと止まってしまう。
形を持って血塊へと襲い掛かろうとしていた影は、その形のまま動かなくなる。
すると当然、血塊は俺へとそのまま襲い掛かる。
「ぐぅっ」
「たぁんと飲むんじゃよ」
言いながら近づいてくる妲己。
何とか息を止めるも、バシャリと身体に浴びせられた血はただ掛かるだけでなく、ウネウネと蠢き出し身体をはいずる回り出す。
気持ち悪い。気持ち悪い気持ち悪い。
しかし、手を止め息を止めで必死の俺はどうすることも出来ず、ついには顔面近くまで来た紅い蛇を見るしかなかった。
そしてそれは、俺の口腔を割って入ろうと唇にぶつかり、身を捻らせながら侵入しようと試みる。
「っっっっ!!!!???」
だが、それもすぐに破られ、俺の中を彼女の血が蹂躙する。
気持ち悪いのに、身体が熱に浮かされたように火照っていく。
熱い。熱い暑いアツイぃ!!!
「今度こそじゃ!」
意識が奪われそうになる中で、身体が自身の意志とは反して服を脱ぎ始める。
俺は動かせない身体の代わりに、ほぼ無意識で影を操ろうとする。
だがやはり、その度に妲己が扇を振るいその動きを阻害する。
とは言え妲己もそれなりに消耗するのか、俺の影を止める度に難しい表情をしている。
それならば、と、残った理性を総動員して、一旦身体に向けていた意識も外して、影に全ての意志を注ぎ足元から爆発させるように膨れ上がらせる。
これには妲己も堪ったものじゃなかったようで、忌々しいといった表情をしながら再び俺から離れた。
一瞬のブラックアウト。
そして光る視界の中で再び浮かび上がった理性。
見れば、驚愕の表情で妲己はこちらを見ていた。
俺はすかさず妲己から距離を取り、再び手にアマテラスを呼び出す。
「レジェネ!!!!」
「ち、これが先の回復の類いか。身体にのみ作用する類いの様だが、厄介じゃのぅ」
先程までとは違い、忌々しそうに俺を見る妲己。
だが実際、妲己が言うようにレジェネは
今もなお漂う、桃華の匂い自体を無効化出来た訳ではない。
「それにしても命のストックとはなぁ。それを使ってまで脱ぐのを阻止するとは、身持ちが固いのぅ」
「やかましい! あんな意味のねぇ事をしてどういうつもりだよ!!」
「だから言ったではないか。楽しいじゃろう、と。楽しむ以外に何を理由にするのじゃ」
妲己は、先程聞いた時と同じように何を当然なことをとでも言わんばかりの表情でそう告げた。
その様子は、狂っているとしか言いようがない。
俺には、その理由は到底理解できるものではないようだ。
「そんなのが、本当に理由なのか・・・・・・」
俺の口から零れた言葉に、妲己は首を傾げる。
「
妲己の言葉に、怒りが湧きだす。
「悪いに決まっているだろう?! それではただの獣だ! いや、獣ですらただ楽しむために周りを害しはしない!!」
先程妲己は周囲の人々を操って服を脱がせた。殺そうとした。
しかしその間も彼女はただ笑みを浮かべていた。
笑っていたのだ。
「そもそもそれは何故いけない?」
「他者を害するからに決まってるだろうが」
「それが理解できぬな。妾は他者を害しても良い立場にあった。誰も何も言わぬ。寧ろ妾と共に興じるものまで居った始末よ」
「それはどうせお前が操って・・・・・・」
「いいや操っておらぬ。匂いを使ったことも当然あるが、使わなくともともに居る者は多かった。それにじゃ――」
言いながら、妲己は両手を大きく広げ、惚れ惚れする様な笑みを浮かべる。
「――妾が居なくとも世界は他者を害する者ばかりではないか。妾を召喚した男もそうじゃ。鏡の中から見えただけでも人の命をどう効率よく奪うかを目的とした兵器開発に勤しんでおった。あやつの命令で死んだ者も多い。お主の周りでもそうじゃろう? 自身の利益のためにどれだけお主の周囲へ害が在った?」
「で、でも、それが害意を肯定する理由にはならないっ」
確かに、あの銀座事件以降、色んな国からの害意に晒されてきた。
それはこの日本でだって例外じゃない。
俺の力は異質だ。
それを利用しようとしたくなるのは分からなくもない。
そしてその全てを確かに俺は跳ね返してきた。
しかしそれが害意であるのは違いない。
銀座事件よりも前でも、この容姿もあってか命に関わらないレベルながらも幾つもの害意に晒されることはあった。
でもだからって、ただ仕返しする訳にはいかない。
よくある問答だが、それでは負の連鎖でしかない。
何もしないわけではない。
ただ、自身まで害意を持ちたくないだけなのだ。
「何故じゃ? どうして? どういう理屈で? 妾達には力がある。何故それを行使してはいけない? 我慢する必要がある?」
「力があるからって好き勝手使っても周囲が不幸になるだけだ」
「薄っぺらいのぅ。ならば何故犯罪は無くならぬ? 殺人強盗強姦、その他諸々の全てが太古から決してなくなりはせぬなぁ。それはつまり、人間には己の持つ力を己の思うがままに使いたい欲望があるからではないのか?」
「でも人間には理性がある。欲望を押さえて他者を思いやれるだけの思いがあるんだ。確かに欲望のままに人を害する人も居るさ。だけど、人の為に力を付ける人だってたくさん居る」
「じゃがな、結局それは自身の思うままに力を行使しているだけに過ぎぬ。その方向性が違うだけで、本質は何も変わらぬ。誰かに感謝されたいから。よく見られたいから。どれだけ言いつくろっても、欲望でしかないんじゃよ。いつの世も、善意と悪意は紙一重じゃ」
その言葉を、俺はすぐに否定できなかった。
否定する言葉は脳裏に浮かぶ。
だが、それが口に出ることは無かった。
自身の行為が偽善だと罵られたこともある。
それでも俺は突っ走ってきた。
それが押し付けであろうとも、少しでも幸せになれる人が居てほしくて。
でも、妲己の言葉に考えてしまったのだ。
欲望を解放したいのが
それを考えるも瞬時にその思考を消し去る。
それでも
そうしたいから、そうするんだ。
そう、幾度めかになるかの決意を思い出し、改めて妲己を見やる。
「人が人を害さぬのはな、それが自身に返ってくると思っているからじゃ。しかし、害そうとも縛るものが無ければ人は野に放たれた獣の様に理性など関係なく人を害する。自分の為に。自分を守るために。人が人を守れるのは、自身が守られているからに他ならぬ。人はな、所詮自身を守るためには何でもできる生き物なんじゃよ。故に――、」
妲己は、言いながら扇を上へと掲げた。
「――妾は自身を守るために、自身の為に力を行使する。敵対する者が居なければ妾を害する者は居らぬ。全てを支配し、全てを味方にする。妾は妾の欲望のままに生きる。欲望こそが生きる糧。欲望こそが人故に!!」
そう妲己が言うと同時、バキンと甲高い音が辺りへと響いた。
俺はそちらへと目線をやる。
それは門のある方向だった。
ギチギチと、空間そのものが歪んでいるかのような異音が辺りを埋め尽くす。
それと同時に、何も無い筈なのに身体を圧迫してくるような圧力を感じ始める。
「お主の玉を固めた剣、宝石剣と言ったかの。アレは確か、次元へと干渉するものじゃったよな?」
「まさか!?」
即座に、台座の上にあったはずの宝石剣を見やるが、そこに宝石剣は影も形も無かった。
「酒池肉林の由来は知っての通り酒を以て池と為し、肉を縣けて林と為すが故。しかし、こういった伝承もある筈じゃ。林に追い立てた人間を虎に襲わせる拷問でもあったと」
「何が言いたい!!」
「いや何、虎に変わる獣が欲しくてのぅ。すると丁度良いのが次元の壁の向こうに居ると言うではないか。それが欲しくてのぅ」
言いながら、妲己は再び自身の血を周りに集めて固めだした。
そしてそれを、
奇妙な程の静寂が、一瞬産まれる。
しかしそれも直ぐに無くなり、爆発音が響いた。
見れば、ゲートを囲っていたドームが吹き飛んでいる。
同時に、地面が置きく揺れ出す。
いやこれは爆発の所為だけじゃない。
いつしかのイタリカの地揺れの様に、目に映るすべてが揺れていた。
そして、爆炎に包まれるドームの残骸から、
『GURYUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
「情報はほとんど出てこなかったそうじゃが、確か、蟲獣と言ったかのぅ?」
いかがだったでしょうか?
蟲獣出すか最後まで悩んだのですが、やっぱり出しちゃいました。
でもこれで、相手方は出揃った形です。
妲己操る蟲獣、これがゲート編のラスボスですね。
しかも周囲には自我の無い素っ裸一般ピーポーがずらりと立ち尽くしているのでさぁ大変。
コウジュには頑張って貰わなければいけませんね!!
しかしまぁ、盛大にゲート前のやり取りで引っ張ってしまいましたが、後は処理するだけですね(目反らし
とりあえずいえることは、コウジュが神になる為の最後のステップを踏んで貰うためのここまでですので、次回をお楽しみにです!
→コウジュ、神になるってよ。
ではではまた来週!!!
P.S.
アンメア3枚。でも玉ランサマーが来てくれない・・・。
PSO2でもスクラッチ引きたいし、これ以上の課金は・・・(ウゴゴ
あと、とりあえず這い寄ってくれるキヨヒーちゃん。かわいい。
というか、今回の限定鯖の力の入りようがやばいですよねw
なんだあの宝具www
P.S.2
最近色々忙しくてアニメが見れていない・・・。漫画とかは積まれていくばかり・・・。
PSO2もサボり気味だし、そろそろゆっくりとした休みが欲しいです。