テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouです。

今回は神回(物理的に です。
内容はお察し、ということで。



『stage59:俺がちつじょ(ルール)だ!! 異論は認めない』

 

 

 

「何じゃ、その剣は・・・・・・」

 

 目を見開き後退りながら妲己は俺を見てそう口にする。

 先程まで飄々としていた妲己が、俺を見て警戒しているのだ。

 それだけ、俺の両手にある剣に圧倒されているという事だろう。

 

「ワールドオブガーディアン、2つで1つでもある(・・・・・・・・・)剣さ。まぁ、俺の奥の手ってやつかな」

 

「・・・・・・それが貴様の本気と言う訳か」

 

 妲己が口元を扇で隠しながら目線を俺の両の手へと向けてくる。

 

 そこにあるのは1対の剣。

 左手に『聖剣エルシディオン』、右手には『魔剣レーヴァテイン』。

 エルシディオンは黄金の柄と光で形成されているかのような透き通った輝きを放つ刃を持っている剣。レーヴァテインは紅黒い柄と真っ黒な刃を持つ剣だ。

 それぞれアインツベルンの結界を直した時、協会の地下でギルガメッシュと相対した時に使ったことがある。

 だが、こいつらはそれだけじゃない。

 聖剣同士、魔剣同士、はたまた聖剣と魔剣といった風な組み合わせで違った顔を見せる特異な剣でもある。

 そして、特に聖剣と魔剣の組み合わせは、数ある武器の中でも最強の部類に入る。

 

「本気も本気、俺が考えた最強の剣ってやつだよ。でもまだ終わりじゃない。だから――――」

 

 今まで俺はあえて使ってこなかった。

 ゲーム内ではよく使っていたのに、だ。

 双剣といえばこれをよく使っていた。

 でも、初めは意図的に、気づけば無意識に、こいつの存在を意識から外していた。

 

 確かに、作中内でこれより強い武器は確かに存在する。

 だけど幾多もの武器群の中で、こいつが一番理不尽な能力(テキスト)を持っていた。

 だからこそ、選択肢から外していた。

 

 しかしそれもここまでだ。

 

 今から俺はそれを使う。

 理不尽(チート)な能力の中でも一番とも言える理不尽(チート)を行使する。

 

 ただ、まだ足りない。

 まだ俺はいける。

 更にもう一歩、神らしく行こうじゃないか!!

 

  

 

 

 ――――100%中の120%ってやつだ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■―――――――――!!!!!』

 

 

 

 

 

「何を!?」

 

 妲己が驚きの言葉を上げるのが聞こえた。

 しかしそんなことに構っている余裕はない。 

 

 自身から生み出す泥ではなく、願いを吸い力にまで昇華された激情の全てを取り込んでいく。

 そしてその全てを、喰らう。

 消化し、取り込み、自身の糧とする。

 一方的な搾取と言えるだろう。

 だけど、願われたものを叶えなければならない訳じゃない。

 叶えたい物を叶えれば良いだけだったんだ。

 その為の力へと、創りかえる。

 

 それが獣でありながら神である本質!!

 狂化ではない、そのさらに先へ!!!

 

 妲己に操られながらも、その内心で恐怖や絶望に憤怒といった激情を渦巻かせている人達。

 中継を通して、今起こっていることへの理不尽さを嘆く世界中の人々。

 彼ら彼女らが、願ってくれている。

 ああ、成程、これは確かにすごい力だ。

 その殆どが負の感情である為か、そちらへと引っ張られそうになる。

 だけど、それだけじゃない!!

 勝ってほしいと、打倒せよと、救ってほしいと願ってくれている!!!

 俺はそれを叶えよう。

 それは俺の願いでもある。

 

 願望器でもある存在が同じことを願うんだ。

 出来ないことなんてある訳がない!!

 

 

「―――――――っはぁ、ふぅ、これが完了形ってところかね・・・・・・」

 

 

 高くなった目線で、妲己へと目をやる。

 

「くふ、くふふふふ、良い、良いではないか」

 

 妲己は俺を見て笑みを浮かべていた。

 新しい玩具を見つけた様な、ただ純粋に喜ばしい事を表現しているような笑みだ。

 

「それがお主の、本当の姿・・・・・・というわけかの?」

 

「・・・・・・どうかな。でも、全力を出したいと願った姿ではあるよ」

 

 そう返しながら、俺は自身の姿を改めて見る。

 

 身長は160cm程までに成長している。

 それに倣って手足は伸び、銀髪も腰よりも尚下へと流れている。

 着ている服は、ゲーム内コスのカグヤヒラリというものに近い。

 12単衣を現代風ミニにアレンジしたようなやつだ。

 だが、よく見れば違う。

 白を基調に、黒と黄金で各部をあしらっており、本来ある筈の足部分の装飾と靴はない。

 まぁそれも仕方が無いか。

 俺の手足は人のそれではなく、肉食獣を思わせるしなやかな獣の手足となっている。

 そしてその手首足首には、小さな黒い仮面が飾られている。

 黒い仮面は、紅い角を生やした狐にも狼にも見える獣を彷彿とさせるものだ。

 

 ・・・・・・うん、これヤオロズ様だ。

 

 ああでも、よくよく考えれば、俺にとって“神”と“獣”から連想できるものといえば『神獣ヤオロズ』だよな。

 成程、神に成ることを願った結果、それをイメージの中心としてしまったわけか。

 あ、でも少し違うな。

 尾は3本の狐尻尾ではなく龍の尾だ。

 纏う炎そのものの様であった羽衣は、闇を溶かしたような艶のある黒一色となっている。

 視線を上へ向ければ、額には白い一本角。

 頭上へと手をやれば、狐なのか狼なのかは分からないが大きなケモミミ。

 なんか全部ぶち込んだ感じになってるな、これ。

 五重塔だけが行方不明なくらいか。

 

 だけど、これこそが俺の神としての姿だ。

 神として力を振るおうと決めたから、その為の姿に成ろうと願った結果がこれだ。

 選んでなった姿じゃないけれど、でも、やけにしっくりくる。

 言うなれば最終決戦verだ。

 

 

「今の一瞬で何が在ったかは分からぬが、どうやら信仰を取り込む気になったようじゃのぅ」

 

「ああ、ある意味あんたのおかげだよ。やっと決心がついた」

 

 そう、決心がついた。

 言い訳をせずに、願いを叶える決心が。

 

 考えてみれば、最近の俺は殆ど成長していなかった。

 Fate世界では色々作っていたってのに、この世界に来てからは俺自身の成長が無かった。

 確かに出来ることは増えた。

 でもそれは外部から因子を取り込んだりして出来るようになったに過ぎない。

 それは何故か?

 そんなもの簡単だ。俺自身が抑制(ブレーキ)をしていたから。

 はぁ、俺ってホントヘタレだ。

 中身が一般人だから仕方ない―――っていうそんな言葉、それこそが俺自身を邪魔していたんだ。

 中身が一般人な俺が色々能力を貰った状態で皆を助ける。

 それじゃぁ駄目だったんだ。

 自分自身で分かっていた事じゃないか。自身をそう思うことこそが自身をそう足らしめているってことは。

 でも、やっと気づけた。

 いち・・・・・・アンジュちゃんに誘導してもらってやっとってのは情けない限りだが、それでも、これで前へと進める。

 

 だからここからは、“能力を貰った一般人”じゃなく、“願いを叶え()俺”として立つ。

 

 

「くふふ、良いぞ良いぞ。嬲るのも嫌いではないが飽いていたところよ。競うのも、悪くは無い」

 

 競う、か。

 だけど、これを使う以上は申し訳ないけどそんなことは出来ないよ。

 今まではこれ(・・)を使えるとは到底思わなかったけど、“神”であるなら、使えない訳がない。

 そして使える以上、強い弱いは関係ない。

 

「先ずは小手調べじゃ!! 小蟲共!! 全て喰らい尽くせ!!!!!」

 

 妲己が閉じた扇を振るう。

 それに合わせて、大人しくしていた小蟲獣達が一斉に身近な人へと襲い掛かる。

 蜘蛛のような姿を持つもの、蜂や蚊が混ざったようなもの、他にも地球上には存在しないような奴らが一斉に地を、空中を進みだす。

 小蟲獣とは言ったが、それでもこの星の昆虫から考えれば馬鹿みたいな大きさを誇る。

 犬猫ほどの大きさもある虫なんぞ気持ち悪くて仕方が無い。

 そんなやつらが、何百匹もの軍勢で人々を命令のままに襲おうと飛び掛かる。

 

 それを見て俺は――――、

 

 

 

 

 

 

 

「ゼロシフト、レディ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・は?」

 

 妲己は思わず、間の抜けた声を上げてしまった。

 それもそのはずで、コウジュが何かを呟いたと思った次の瞬間には人を襲おうとしていた小蟲獣の全てが消し飛んでいたのだ。

 跡形もなく、陽炎の様に、本当に今そこに居たのかすら怪しくなるほどにあっけなく消えてなくなった。

 

 妲己はゆっくりと辺りへ目を向ける。

 しかし、何度見ても小蟲獣は一匹も居ない。

 正確には、人を襲おうとしていた小蟲獣だけが消しゴムで消したかのように消え去った。

 周囲の人々も無傷なままだ。

 

「・・・・・・っ、お主何をした?」

 

 思考の空白を経て、何とかそれだけを口にした妲己。

 そんな妲己にあっけらかんとした表情でコウジュは口にする。 

 

「何って、斬っただけだよ? あれ、壊したってのが正解?」

 

 自分で言いながら首を傾げるコウジュ。

 そんなコウジュに、妲己は頬を引きつらせる。

 斬った? 壊した?

 その場を動かずにどうやって数百にも及ぶ小蟲獣を同時に、一瞬で、消し飛ばせるというのか。

 斬る・・・というよりは、コウジュ本人が言うように存在そのものを壊したというのが正しいのだろうと妲己は予測する。

 なら、すべて同時に消し去るに至った方法は?

 

「まさか、知覚できない程の超高速移動だとでも言うのか・・・・・・? いや、だがこれだけの数を一瞬でというならばそれはもはや時間を止めるに等しい。もしや、それがお主の権能か?」

 

 権能。

 神や、それに等しい存在が行使する力であり権限。

 理屈を持ってそれを成すのではなく、出来るからできてしまうといった理不尽ともいえる力。

 

 妲己は、コウジュが神としての力を行使するために、その権能を解放したのだと思った。

 次元や時間へと干渉するのはFate世界で言うならば魔法の領域。神代の領域だ。

 妲己の中に流れ込んだ知識の中には、そういったものへ干渉する能力を得るに至った存在に関してもあった。

 しかしそれも、厳密にはルールがあり、究極的には技術でしかない。

 だが今妲己の目の前で起こったのは事象の書き換えにも似た現象だ。

 それも、コウジュには疲労等の痕跡が無い。

 

 そんな予測を立てた妲己だが、コウジュは静かに首を振った。

 

「違うよ。俺は欲張りだし器用でもないからさ。そういった特化した力を選べなかった」

 

 そのコウジュの言葉を、今度は妲己が否定する。

 

「選ぶ? 権能とは神たる者が、神になった者がその軌跡や存在を定義づけた結果得るものじゃ。妾の様な成り上がりでは権能に昇華すらしていない能力でしかないが、それでもその程度は知っておる。そうでなければ神は信仰を得られぬ。神として存在できぬ。だからこそ神々は――――」

 

 しかしコウジュはそんな妲己の言葉を遮った。

 

「それはあんたたちのルールだ」

 

「――――何?」

 

「俺は受肉している神じゃない。今まで俺自身もそう思ってたんだけど、そうじゃなかったんだ」

 

「ならばなんだと言うのじゃ」

 

「人でもあり、獣でもあり、神でもある。三分の一がとかじゃなく、全部混ざり合って俺なんだよ」

 

「だからそれが―――」

 

「つまりだ、あんたの言葉を借りれば、俺は自身を定義づけるために他人の信仰は必要ないんだよ。俺が何をしたいか、それだけで良いんだ。そして後は実行するだけだったんだ」

 

 そう言いながら、コウジュは苦笑する。

 

 今までのコウジュも、確かに物事全てに対処してきた。

 けどそれは、すべて物理的なものだ。

 脳筋・・・・・・と言われてしまえばそれまでだが、確実に現象として自分に制御できる範囲の全力だった。

 だけど今は違う。

 自分のルールで世界を書き換える、如何にも厨二チックで、理不尽な力の行使だ。

 似たようなことをしたのはたった一度。 

 言峰神父の在り方を書き換えた時だ。

 その時のコウジュは、死ぬよりはと自身に言い訳をして力を使った。

 だがそれは結局言峰神父を殺すことと同義な気がして、その後あの銃を使うことは無かった。

 それからのコウジュは、自身や守りたい者の前に出来た障害を力づくで、文字通り物理的に突破してきた。

 それでは間に合わなくなった。

 そんな我が儘を通している場合ではなくなった。

 

 だから、自身の願いを叶えることで誰かの願いを侵食することになっても、自身の目指す物の為に力を行使する。

 まぁ、その願いが他人にとっても喜ばしいものであることを願ってしまうヘタレな部分は代わりはしないが・・・・・・。

 

 

「ならば、ならばお主の権能は何だと言うのじゃ。願望器であると自覚し、神であると自覚し、そして何を行使したのじゃ・・・・・・?」

 

 コウジュが自身のヘタレ具合を改めて自覚して思わず苦笑していると、訝しむように妲己はそう口にした。

 そんな妲己を見て、コウジュはニィっと笑みを浮かべる。

 

「俺が司る因子は色々ある。人、獣、神、願望器、転生者、不死。だけどさっきも言ったように、神としての力を行使する上で、どれかを選ぶなんてことは出来なかった。だってさ、全部俺だ。途中で拾ってきたモノもあるけど。全部が全部俺だ。

 

 ・・・・・・だから、選ばなかった(・・・・・・)!」

 

 

 コウジュは、そう言いながら左に持つ聖剣を掲げた。

 そして、振るう。

 

 

 

「俺の権能は、“願いを叶える”権能だ! 人の想いが積み重なって出来た願いを、俺自身が望む願いを叶え続ける!!」

 

 振るわれた聖剣から、光が一気に溢れ出し、周囲一帯を埋め尽くした。

 しかしそれも一瞬で、気づけば消え去っている。

 ただ、そんな極光とも言える眩しさが消え去った後には、驚くべき光景が存在した。

 

『あれ、俺は一体・・・・・・』

『嘘、死んだはずじゃ!?』

『何してたんだっけ?』

『ってなんで裸なんだ俺!?』

 

 

 その様な言葉があちこちから聞こえ始めた。

 周囲を囲う人々が正気を取り戻したのだ。

 その様子を見て、妲己は驚愕する。

 ただ周囲の人間が自身の能力から解放されたのならばそこまで驚かない。

 どこまで行っても、妲己は神性を持つだけで、格としては劣っている。

 故に、能力の上書き程度ならばそれほど驚きはしない。

 問題は、先程蟲獣によって死んだ人間や建物まで(・・・・・・・・・・)元に戻っている(・・・・・・・)こと。 

 それこそ今までの全てが夢か幻であったかのように、全てが元通りとなっていた。

 

「・・・・・・はは、何じゃその馬鹿げた権能は。今のは元の状態を願ったとでも言うのか」

 

 妲己は知らず知らずのうちに乾いた笑みをこぼしていた。

 そんな妲己を見据えながら、コウジュは口を開いた。 

 

「まぁ、そういうことさ。そしてこの双剣が俺の能力の象徴として選んだ武器。左の聖剣は未来を創造し、右の魔剣は全てを破壊する。その二つの剣が揃ってワールドオブガーディアンと成る。WOG(ウォグ)なんて略したりもするこいつが司るのは、世界の秩序(ルール)。だから俺は、自分の思ったように秩序(ルール)を行使する」

 

 コウジュは、今度は右の魔剣を振るった。

 それだけで、妲己を守護するように背後に佇んでいた巨大な蟲獣が消し飛んだ。

 

「こっから先は俺がルールだ。選手も俺。審判も俺。そんな見る価値も無いような理不尽(チート)だけど、付き合ってもらうぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何なんだよこの化け物は!!」

 

「撃てぇ!! 撃てぇええええええええええ!!!!!!!」

 

 飛び交う悲鳴、絶叫、それらを塗りつぶすような轟音を響かせる銃声。

 それらが飛び交うこの場所の名は、アルヌス駐屯地。

 つい先程まで、警戒態勢にはあったが敵なぞ影も形も無かった場所だ。

 しかし今では、戦場となっている。

 

「数が多すぎる!! いつからここは映画の中に成っちまったんだ!!!」

 

「しゃべってる暇があるなら撃ちやがれ!! 近づかれたらこっちがお陀仏だ!!!」

 

 基地のあちこちで、そんな声が上がっていた。

 そしてその誰もが、目の前の現実が認められるずに居ながらも、生き残るために銃を撃ち続けていた。

 

「一体どこから来やがったんだこいつらは!!」

 

「ゲートの中からだよ!!! 何がどうなってか、別の所に繋がっちまったらしい!!!」

 

「別の所からの使者がこれだってのか!? 滅んじまえそんなクソ世界は!!」

 

「だったらお前が滅ぼして来い!! 勇者に成れるぞ!!!」

 

「蟲殺しの勇者なんて勘弁だね!!! ああ、くそ、安田がやられた!! 後退するぞ!!!! 手榴弾!!!」

 

 一人の隊員がそう言いながら手榴弾を取り出し、ピンを抜いて投げる。

 すぐさま隊員は物陰に隠れ、轟音。

 そして隊員は近くに居る他の隊員たちと共に走り出した。

 

 そう、今まさにアルヌス基地を襲撃している者達の正体は蟲獣だった。

 ただ、このアルヌス駐屯地はゲートを中心として建設された為、突如中心部から敵が湧いて出た状態だ。

 

 現在、全隊員が駆除に当たっている。

 しかし、その出てくる数が膨大だ。

 そして基地内であるため、高火力の武装を使うわけにもいかず小銃などの比較的小規模な武装で事に当たっている。

 とは言え、たった今一人の隊員が手榴弾を使ったように、幾つかの場所で同じような爆発音が聞こえていることから戦況は芳しくない様であった。

 

 唯一の救いと言えば、イタリカで起きた事件を警戒しての出撃準備は終えていた為、全隊員が戦闘態勢にあったことだろう。

 緊急警報の後、各員がそれぞれ対応に当たる事となった。

 また、敵が蟲である為に放送を用いた情報共有をすぐさま行えたのが助かった。

 

 それに対して問題は、その圧倒的な数だ。

 次から次へと文字通りに湧いて出てくる蟲獣達。

 大きさは精々が大型犬程度までだが、その数と、そして酸性に毒性を持つその性質が厄介なことこの上なかった。

 ジリ貧、そんな言葉が浮かぶ。

 地球側へと連絡を取ろうにも、ゲートから蟲獣が湧き出始めて以降それは叶っていない。

 それもそのはずで、妲己が宝石剣という空間に作用する宝具をゲートを維持する門自体へと使った為、チャンネルが切り替わるようにゲートは次に空間的近距離にある蟲獣の世界へと繋げてしまったのだ。

 そして、特地と地球が隣り合わせであったように、地球と蟲獣の世界が近い以上当然の事ながら特地と蟲獣の世界も近い。

 蟲獣の世界に出来た二つの穴、その一つが特地へと繋がってしまっている状態なのだ。

 更に言えば、空間的に近い位置にある二つの世界への穴も、比較的近い位置にあった。

 だから、妲己が命じた悪意を行使するために、特地側へも襲い掛かってきたのだ。

 近くに居る人間を喰らう為に・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 ゲートより少し離れた陸将室。

 そこの主である狭間は、モニターの一つに映る幾つかの基地内映像を見ながら各部署へと命令を出していた。

 

 そこへ、緊急時の為ノック無しに飛び込んでくる人影が在った。

 

「狭間陸将! 弾数が持ちません!! どうにかゲートを閉じないと!!!」

 

 隊長格でもある男が入って来るなりアルヌスの最高責任者である狭間へとそう口にした。

 

 狭間は、言われずともそれは理解していた。

 だが、ゲートを閉じるという選択肢を取るのは難しい。

 何せ、ゲートから蟲獣が湧きだしている以上はそこへ向かえば向かうほど蟲獣は増える。

 武器を持っていようと物量差とその性質で以て襲い掛かる蟲獣の群れへ突き進むのは当然ながら自殺行為だ。

 だから、取るべき選択肢は――――、

 

 

「―――ゲートを、破壊する」

 

「陸将!? しかしそれでは!!!」

 

「・・・・・・人命が最優先だ。犠牲込みで築かれた作戦など了承できんよ」

 

「地球への道を絶つと同義ですよ!?」

 

「分かっている!! しかし死ねば帰る以前の問題だろうが!!!」

 

「で、ですが・・・・・・」

 

「心配するな。こちらには優秀な魔導士殿が味方してくれている。それに彼女も・・・・・・」

 

 言いながらモニターに映る(・・・・・・・)少女に内心で頼りすぎている事に詫びる。

 蟲獣が湧き始めてから見る暇も無かったが、モニターの中ではコウジュが今まさに人々へ襲い掛かろうとする小蟲獣を消し飛ばしたところであった。

 つい数分前まで危ない状況であったが、今では場の支配者はコウジュへと移り変わっているようだ。

 コウジュの表情もまた憑き物が取れたようにすっきりとした物へと変わっている。

 いつの間にか見た目も大きく変わってしまっているが、そこへ至るために何かしらの葛藤を克服できたのだろうと狭間は考えた。

 果たしてそれは正解で、その今のコウジュが居れば日本側はもう大丈夫なように狭間は感じていた。

 

 だから狭間は、先ず生き残ることを優先するべきだと考えた。

 コウジュに縋ってしまうのは情けなくも感じるが、特地へと共に赴いた隊員を守る為に決断しなければならないと狭間は判断したのだ。

 件の少女ならば、特地に取り残された隊員たちを見殺しにするはずがない、そういった判断だ。

 そして少女を利用する以上、その責任は事が終わった後にすべて自身が取る。

 そう、考えた。

 

 改めて狭間はモニターを見て、そこに映るいつもより大きくなっているコウジュへと内心で謝りながら――――

 

 

 

 

 ――――ふと、狭間の頭に引っかかるものが在った。

 

「陸将?」

 

「・・・・・・待て。現在地球との交信は途絶えている筈だな?」

 

「え、ええ。恐らくですが向こう側のゲートで何かあったのでしょう。蟲が湧き始めて以降、剥こうとの連絡は途絶えています」

 

「そうだ、その筈だ。ならば何故このモニターは・・・・・・」

 

 そう、地球との連絡をゲートを通して行っていた為、空間的連続性が途絶えた今では地球とをつなぐ電気配線も千切れてしまっていた。

 だから、日本側がそのモニターに映っているのはおかしいのだ。

 ならば何故?

 そう疑問に持った狭間は、何気なくモニターへと出力しているPC本体から伸びる配線をゆっくりと引っ張り始めた。

 スルスルと、引っ張れば引っ張るほど配線は手前へと手繰る事が出来た。

 そして暫くすると、少しの負荷が手に加わる。

 それを感じると同時位に、狭間は引っ張る手を速めた。

 

 そして、その先端が配線されていた物陰の向こうから出てきた。

 

「陸将、段ボールが釣れていますが・・・・・・」

 

「そうだな・・・・・・」

 

 配線を引っ張った先は、何故か段ボール箱へと消えていた。

 それは言われた通りに、餌に喰いついた魚の如く配線を咥えて離さない。

 その段ボールの表面に書かれている、一条祭の文字。 

 それが、やけに存在感を放っている。

 

「まさかコウジュ君が? しかしいつの間に?」

 

 確かに狭間はコウジュから聞かされていた。

 一条祭りを通してなら、ゲートを通さなくとも地球との連絡を取れるようだと。

 しかしそれは条件付きであり、ごく少数しか通り抜けることは出来ないとも聞いていた。

 嘘? いや、そんな性質ではないことは分かっている。ならば何故? 物ならば可能なのか? しかし出来たとして、それを言わずに配線を勝手に弄るだろうか?

 そんなことを考える狭間。

 

 しかしそんな狭間をあざ笑うかのように、一条祭りは身を震わせ始める。

 そのことに気付き、狭間は思考を止めて中止した。

 もう一人の男は、一条祭りの存在を知らない様で、少し距離を取って様子を見ている。

 

 そして、一条祭りの蓋が開いた。

 

 

 

「きゃ!?」

 

「ん」

 

「もぅ、乱暴ねぇ!!」

 

「っと、危ない危ない」

 

 

 

 飛び出るように出てきたのは見知った人物達だった。一人多いが。

 そのことに驚愕する。

 4人の内、見知った3人に関してはここに居るはずの無い存在だ。

 何せ、少しばかり離れた場所に居るはずの少女(・・)たちなのだから。 

 

 そんな彼女たちへ、狭間は驚きに目を見開きながら声を掛ける

 

「君たちはイタリカに居た筈では・・・・・・?」

 

「・・・・・・狭間陸将? なら、ここはアルヌス?」

 

「ああ、アルヌスの私の部屋だ」

 

 出てきたうちの一人、レレイ(・・・)が狭間に気付いて答える。

 

 そう、一条祭りから出てきたのは、テュカ、レレイ、ロゥリィを含む少女たちだったのだ。

 

「やった! 無事に辿り着けたのね!」

 

「そのよう」

 

「でもぉ、もう少し丁寧にしてほしいものだわぁ。便利ではあるけれどぉ」

 

「ふふ、それは贅沢というものよ」

 

 いつもの3人娘へと自然に溶け込んでいる女性(・・)

 そのことに疑問を浮かべつつも、狭間は今が非常時だと思いだし、彼女たちへ告げることにした。

 

「無事に帰ってきたことを祝いたいところだが、申し訳ない、今は非常事態となっている。だから君たちは避難を―――」

 

 しかし、狭間が続きを言い切ることは出来なかった。

 狭間の背後にある窓ガラス、それを突き破って蜘蛛の様な蟲獣が何匹も飛び込んできたのだ。

 

 狭間は咄嗟に、装備していた拳銃を蟲獣へと向ける。

 しかしその時には、蟲獣は狭間たちへと飛びかかってきていた。

 その時点で狭間は自身の生存を諦めた。

 そして、自身より後方に居る少女たちの生存を計ろうと自身の身体を盾とするために前へ踏み出そうとした。

 

 だが――――、

 

 

「――何これ気持ち悪い。あ、別に殺しても良かったのよね? って、うわ、あの蟲の体液酸性なのね・・・・・・」

 

 

 狭間が踏み出すよりも早く、狭間の横を通り過ぎた存在が在った。

 剣だ。

 幾つもの剣が狭間よりも先に蟲獣へと辿り着き、その身を貫きながら壁に標本の如く貼り付けた。

 

 それを行ったのは、今まさに言葉にしながら気色悪げに蟲獣を見る女性だった。

 3人娘と一緒に出てきた、狭間の知らない女性だ。

 

「ひょっとして、こいつらが非常事態の原因?」

 

 蟲獣を事も無げに不思議な技を以て退けた女性がそう狭間へと質問する。

 女性の周囲には、幾つもの短剣が女性を守るように浮いている。

 その光景に少しの既視感を覚えながら、狭間は女性に答えた。

 

「あ、ああ、そうだが。君は一体・・・・・・」

 

「私? 私は――――」

 

 質問しながら、狭間は既視感の正体に気付いた。 

 狭間が知る光景は、紅い外套を着た浅黒い肌の男が剣を従える姿。

 それは、コウジュの背景を知る際に見たとある資料に描かれていた“イラスト”だ。

 

 無限の剣製(アンリミテドブレイドワークス)

 それを用いた英霊エミヤのもの。

 

 

「――――サーヴァントアーチャー。名前はイリヤよ。よろしくね」

 

 

 そう、紅い外套を羽織った女性が告げた。

 

 




いかがだったでしょうか?

なんというか、ツッコミどころ満載になってますが、チートを最大限に利用した姿を書こうと思っていたのですが、気づけばこんな感じに。
まぁ色んな言葉並べ立ててますが、簡潔に言えば、コウジュが思いついたさいきょうのちーと()は、ルールを思ったように設定するって状態です。
小説で表現すると、要らない部分を切り取って、それから好きな文章書きこむ感じですね。自分で考えておいて酷いなぁこれw 
でも、コウジュが使いたがらなかった理由は理解できて頂けたかなと思います。
ぶっちゃけて言えば、物語に無理矢理ハッピーエンドって書きこむような状態ですからね。
そんな事をするくらいなら、昔からの夢であった登場人物を陰日向で支える様な存在となって横から助けたいって思ってたわけです。
しかしながら今回を以て自粛を止めて、助けるために全力疾走を決めたコウジュ。
妲己の戦いはこれからだ!! ってわけですねw


そういえば、ゼロシフト(ANUBIS Z.O.E)をネタとして取り入れていますが、原作のこれは亜光速による空間転移にも似た瞬時移動です。
なので、コウジュが使ったものは厳密には違いますが、まぁあれです。言いたかっただけです。なので許してください<(_ _)>


あと、最後に出てきたアチャ子さん。
正体も言っちゃいましたが、実は召喚されたのはアチャ子さんだったんです。
何で彼女が出て来ることが出来たかは、後々に語りたいと思います。



さて、それでは今回はこの辺りで!
あとは終局に向かってどう料r・・・ゲフンゲフン・・・詰み将g・・・・・・ゲフンゲフン・・・纏めていくだけになって行く気もしますが、あと数話お付き合いいただけると幸いです。

ではでは!!



P.S.
アチャトリアさんのNP回収が頭おかしいレベr【スイミングの時間です!!】


P.S.2
ADA可愛い。
あんなAIが一緒に居てくれるなら、どんな存在にも勝てる気がします。


P.S.3
ヤオロズ様の存在を作中で書きましたが、知らない方は画像を調べると良いかもしれません。そしてその次に“ヤオロズ”というワードの横に“擬人化”というワードを入れて調べてみてください。
どのイラストとは言いませんが、幸せになれr・・・・・・ゲフンゲフン・・・イメージしやすくなると思います。

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