テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。

ついにGATE編最終話です。
いやぁ、色々盛り込んだけど、これで大丈夫ですかね・・・。


『stage62:バニッシュメント・ディス・ワールド?』

 

 

 

 某国某所にある銀行、その場にて今まさに事件が起きていた。

 

「イヤぁぁぁぁぁっ!!!?」

 

 よくある話だ。

 この銀行は今まさに銀行強盗の魔の手に晒されている。

 そして、悲鳴を上げた女性銀行員の目の前で、血を腹から流して倒れる同僚が居た。

 

 彼は、彼女の事が好きだった。

 だから目の前で銀行強盗に連れ去られそうになるのを見て、つい体が動いてしまった。

 何の変哲も無い銀行員だ。体を鍛えている訳でもない。

 だが理屈では無かった。

 気づけば彼の身体は動き、銀行強盗へと掴みかかっていた。

 

 銀行強盗は、そんな彼に驚きながらもその鍛えられた身体で押し返し、そして銃を撃った。

 

 その銀行強盗は元々軍に所属していたが、度重なる軍機違反や犯罪行為により何度も捕まっていた。

 そして今回も、出所して暫く経ちはしたが賭博や薬にまた手を出して金に困り、同類を集めて銀行強盗を行う事にした。

 そんな銀行強盗も別に殺すつもりはなかった。

 ただ、彼にとっては銀行員一人が死んだところでそれは仕方のない事だった。

 大人しくして無かったやつが悪い、そう考える程度には彼の性根は腐っていた。

 

「馬鹿が。出てくるお前が悪いんだ。あの世で後悔するんだな」

 

 銀行強盗はそう言い捨て今まさに撃った銀行員を一瞥した後、踵を返した。

 男性銀行員が前に出たことで気分を害した銀行強盗はその場を去ったのだ。

 彼がしたことで、彼女は助かった。

 だが、彼の命は確実に助からない。

 今はまだ死んではいない。

 ただ、それだけ。

 刻一刻と腹部に空いた穴からは命の雫が漏れ出し、傷口を必死に抑える彼女の周りを紅く染めていく。

 近くに居る他の人間にも分かる。

 彼はもう、助からない。

 

「あ・・・あぁ・・・・・・、どうして、どうして前に出たのよ・・・・・・」

 

「いやぁ・・・、気づいたら、ね・・・・・・」

 

 涙を流しながら傷口を押さえる彼女に、彼は既に朧げにしか見えない目を向け微笑む。

 彼が手を伸ばす。

 元々から文系の彼は貧弱とも言える体躯だ。

 それが更に、見ていられないほどの力の無さで彼女へと伸びる。

 それを彼女は握りしめる。

 

「告白、してくれるんじゃなかったの・・・・・・?」

 

「あ、はは、バレてたんだ」

 

「皆知ってる事よ・・・・・・。なのに、これじゃあ・・・・・・」

 

 既に彼の焦点が合っていないのは彼女に見て取れた。

 別に彼の事が好きでは無かった。

 でも、必死に好意を得ようと頑張る彼の事が気になり始めた。

 気づけば、彼の事が気になっていた。

 そんな風に心が変わり始めてのこれだ。

 神を呪わずにはいられない。

 

「これ、を・・・・・・」

 

「これは、カード?」

 

「ああ、僕はこれに君を(・・・・・)託すよ」

 

 その言い回しに、彼女は少し疑問が浮かぶ。

 彼女にカードを、ではなく、カードに彼女をと彼は言った。

 それはおかしな話だ。

 こんな何の変哲も無いカード(・・・・・・・・・・)に何ができると言うのだろうか。

 死に瀕して言い間違っただけだろう。

 彼女はそう帰結して、彼の想いを受け取るために、そのカードを受け取った。

 

「どうか彼女を、救ってほしい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――おk、把握―――

 

 

 

 

 

 何処からともなく、そんな声がその場に響いた。

 そして、彼女を中心に光が溢れた。

 

 

 

 

 

 

「もう大丈夫だ。安心したまえ。私が来た」

 

 

 

 

 

 眩い閃光が晴れると、そこには人が立っていた。

 彼と彼女を守るように、背中を向けて立っていた。

 

 その人物が振り向く。

 

 黒い革鎧の上に黒い外套を着ており、黒い肌をしている。

 そして、スキンヘッドの頭に黒いサングラス。

 2m近い身体は筋肉が隆々で、鋼のようだった。

 

 映画にでも出てきそうな程に濃い男、否、漢はその視線を血まみれの男性銀行員へと向けた。

 

「怪我人か、すぐに治そう」

 

 その漢がそう言うと、肩の辺りに狐のぬいぐるみの様な物が突如浮き上がった。

 浮き上がった狐が身を震わせる。

 すると、死の淵に居た銀行員の彼が優しく温かい光に包まれ、驚くことに傷が瞬く間に治ってしまった。

 

「ふむ、こんな所だろう」

 

「あ、あなたは・・・・・・」

 

 先程までとは違い、疲労感は見られるも状態が安定した彼を見て呟く漢に、彼女は問いかける。

 そんな彼女に、黒い漢が答え―――、

 

 

「誰だ、お前は!! どこから入ってきやがった!!!」

 

 

 ――――ようとしたが、それよりも先に銀行強盗の一味が異変に気付いて戻ってきてしまった。

 

 漢は、銃を向けられながらも冷静に判断する。

 

「・・・・・・先に制圧した方がよさそうだな」

 

 そう言うと同時、彼の姿が突然消えた。

 いや、消えたのではない。

 漢の姿は銀行強盗の前に居た。

 

「ひぃっ!?」

 

「ふんっ!!!」

 

「がぺっ!?」

 

 銀行強盗は慌てて銃を撃ったが、胴に撃たれたというのにものともせず、漢は拳を振り抜いた。

 銀行強盗が宙を横へ滑り、壁にめり込んで止まる。

 それを見て満足そうに一つ頷いた漢は、改めて彼女の方へ向き、自己紹介をした。

 

「リトルウィング所属、キャスター部隊隊長、ボブだ。回復と補助しか能が無いが、制圧は得意な方だ」

 

 そう言うと彼は身を翻し、再び驚くべき速さでその場を移動した。

 そして、数秒とせず建物のあちこちから悲鳴と銃声が響き始めた。

 

「そっか、さっきのカード・・・・・・」

 

 いつの間にか眠っていた彼の手を握りながら、彼女がそう呟く。

 

 色々と疑問はあるが、それはさておき、彼女はある事を思い出した。

 

 最近、とある噂が流れていた。

 どこからともなく現れ、何処へとも知れずいつの間にか消える正義の味方。

 正確には、その存在については全世界で公のものとなっていた。

 ただ、それ以外の全てが明かされてはいなかった。

 そんな彼らを『ガーディアンズ』と言う。

 そして彼らに共通するのが――――、

 

 

 

 

「――――あれが、KAGOMOCHI(加護持ち)なのね」

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「処理は終わったのかしら?」

 

「ういうい、隊長さんを送っといたから大丈夫でしょう」 

 

 俺は、炬燵に入りながら対面に居るイリヤへとそう返す。

 というのも、先程カードを経由した願い(・・)が届いたために対応していたからだ。

 いつしかイタリカのミュイ嬢へと渡したカードを覚えているだろうか。

 実はアレ、子どもに持たせたりする防犯ブザーみたいなものだったりするのだ。

 厳密には俺に直通で声が届くというものだな。

 アレはまぁ試作品だったわけだけど、その完成品から声が届いたため対応していたというわけだ。

 

 ただ、見ての通りというのか何なのか、何故かその試作品はイリヤを呼んじゃったようだ。

 

 そもそも、試作品に関しては文字通りに俺にだけ聞こえる防犯ブザーの様な物を目指して作ったものだった。

 原理は簡単で、ほんの少しの穴を空間に開けて声が届くようにするというもの。少しでも声が届けば俺の耳は拾えるからと、試しに作ったものだ。

 思いついたのは、特地で『どこでもドア』越しに連絡を取るようになってから。

 あの場合はどうしても無線機の機能上で距離的な問題が在ったから行っていた訳だが、なら俺もカード越しに声が聞こえるようになれば後はそこへ向かうだけで良い。

 まぁあの時はまだ地球と特地間の壁を越えられなかったから、せめて同一世界に居る場合は助けに入れるかなと思ってそう思って作ったものだった。

 しかしそれが何故かイリヤをこうして呼んでしまったわけだ。解せぬ。

 いや、原因は分かってる。一条祭りだ。

 というか、あのカードの材料って一条祭りなんだよ・・・・・・。

 そして聞けばあのカードに一条祭りが何かした結果、色が変わった上にイリヤを召喚したと言うではないか。

 一条祭りに一条祭りが加わって、何故かイリヤが召喚されたというわけだな。やっぱ意味わかんない。

 

 一応、予想は付いている。

 試作品のカードは、“自分で自分をその場に召喚できるように”と考えて作ったものだ。

 “召喚される”のでは契約してしまうことになるのでそういった形にしたわけだが、その接続先を一条祭りは変えてしまったのだろう。

 なにせ、聖杯が俺の中にあるという事は、『イリヤ人形』も俺の中にあるのだから。

 なら、妲己の場合と同じで器がそこに在るのだから、後はそこに中身を注げば良い。

 実際イリヤに聞いてみたが、彼女の今の身体はイリヤ人形――とはいうがキャスターが造った中身が無いだけで身体を構成するものはほぼ同一ではある――を基に再構築されたモノらしい。何故か育ったが。

 そしてあの妲己に堕とされかけていた時に、一条祭り・・・・・・アンジュ自身も言っていた。『色々と手を回して疲れた』と。

 つまり、そういう事なのだろう。

 一条祭り(アンジュ)がイリヤを召喚する為にカードを弄り、俺の中にあったイリヤ人形因子を混ぜてイリヤを召喚した。

 それが事の顛末。

 今だに彼女の正体は掴めていないが、こうしてイリヤとも再会できたし、そして俺自身も助けてもらった。特地での被害が抑えられたのも、イリヤを召喚してくれたからというのが大きい。

 彼女の事を知りたいとは思うが、問い詰めるのは違う気がするので追々していこうと思う。

 

 

 あ、そうそう、お気づきだとは思うが、あの妲己事件からは既に1年以上が経過している。

 いやぁ、ほんと色々ありましたよ。

 

 まず最初に問題となったのがイリヤだ。

 妲己とその後の蟲獣との戦いが終わったから、改めてゲートを作るためにレレイに相談しに行こうとしたらイリヤが居てさ、出会うなり剣の雨降らせて来るんだもんな・・・・・・。

 しかも先輩を運ぶ為に抱えていたんだけど、それを見て『浮気者!』とか言いながら鋼糸と鋼糸剣でソードビット+ワイヤー斬をお見舞いしてくるものだから困った困った。

 まぁ俺は神化したままだったし、全部防ぐのは容易かったんだけど、涙目で迫られたもんだから罪悪感がぱないなんてものじゃない。

 落ち着いた後もイリヤが先輩に食って掛かるし、先輩は先輩で原作イリヤが好きなもんだから好きな人(キャラ的な意味だけど)に面と向かって敵対心剥き出しにされて涙目になるし、収拾が中々つかなかった。

 今でもイリヤは先輩に対してはトゲがあるので先輩は苦笑ものだ。

 加えて言えば、イリヤの存在は世界中に公になった。

 いや、特地側で自衛隊員に女神の如く慕われてるのに隠しきるなんて無理でしょう。

 そんなわけでイリヤ日本に召喚と相成った訳だが、まぁ各地で問題が起こる起こる。

 まず、この日本には『Fate/Zero』が存在する。

 その存在をイリヤが知る。

 そこからがさぁ大変だ。

 まず、イリヤは自身の記憶とその物語とで過去の齟齬を埋め、結末を知った。

 そしてこの世界ではそれには『作者』が居るわけだ。

 うんまぁイリヤももう大人だから、知ることが出来て良かったと感謝していたくらいなんだが、見ていられなかったのは確かだ。

 それよりも大変だったものがある訳ですよ。

 そう、『薄い本(ソリッドブック)』だ。

 え、どうなったかって?

 イリヤの“お願い”だから叶えましたよ。サカラエルワケナイジャナイデスカ。

 あ、俺のやつも断じて許さないよ。

 ファンブックならまだしも、あの蟲獣と掛け算するような奴は・・・・・・、うん、まぁいっか。

 

 

 次に問題となったのが俺の処遇だな。 

 

 俺は今、当初の目的であった“神”に至った。

 それもまぁ各所で問題が起こるよな。

 日本の様な八百万の神を祀る国もあれば、唯一絶対神を崇める国もある。

 今まででも様々な宗教的な軋轢はあったというのに、実際存在する俺が出てきてしまったものだから各地で荒れる荒れる。

 そもそもが特地の神ですらアウトだったのに、普通に日本に居たら暴動どころの騒ぎじゃない。

 それに、願いを叶える存在が実際に居るわけだから、“願い”は俺に向く訳だ。

 まぁ今の俺は叶えたい願いだけ叶えることもできるわけだが、叶えなかったら叶えなかったで色々文句が出るわ出るわ。

 

 例えば、某国立大学に受かりたいとかいう願いがあった。

 けどそんなもん専門外だ。願うのは良いけど願うだけで合格しちゃったら駄目だよ。

 なので却下したら恨まれた。

 意味が解らん。

 けどまぁ折角だからその彼に恋ドラ人形経由で家庭教師に行ってあげた。

 これでも謎スペックと、長い人生を歩んでいるので頭はそこそこの自信がある。

 だけど集中できないと言われた。

 解せぬ。

 

 あとはあの事件より前から考えていた事件や事故、病気だな。 

 

 事件・事故に関しては、先のお守り(カード)経由で、ある特定の条件をクリアすると俺に届くように設定したからある程度収まった。

 例えばボブ隊長だが、彼は例の一条祭り在住軍人さんだ。

 彼ら、何時の間にか俺の加護を得ている状態になってたんだよ。

 いやぁ、あの事件の時に加護を与えた観衆の人達なんだけど、彼らを誘拐しようとする国が出たわけですよ。

 ぶっちゃけて言えばあの時渡してた加護ってその場限りのものだから、身体は健康になってたりはするかもだけど、別に超人になった訳でもないし、調べても何も出てこない。

 けど、そんなのその国には関係ないみたいで、とりあえず見たいな感じで攫おうとしたんだ。

 抗うしかないじゃないか・・・・・・(震え声

 って訳で、当初は自衛隊さんやらの手を借りてたんだが、ある時一条祭りから手紙が届きましてね。準備が出来ているってさ。

 そしたら皆PSPo2iの初期装備とかだけど、何故かPSPo2iにおけるハンターやらブレイバーやらになっていた。

 意味が分からんとです。

 しかも、ただのハンターとかではなく、俺の加護もあるからか銃弾程度なら軽く弾きます。

 なぁにこれぇ。

 話を聞くと、改心して改宗して鍛えたらこうなったらしいが、おかしいよその理論。

 まぁでも助かってるのは事実なので、そのまま力を借りることにした。 

 今ではゲームに準えてリトルウィングって組織を作って、そこから全世界に送り出して人助けをしてもらってる。

 あと、無意識に加護を与えてたっぽい人、例えばゾルザル皇子に誘拐されていた紀子さんとかもこっちで手伝ってもらっている。情報とかだが。

 何せ彼女、ワーウルフの戦士に腕相撲で勝っちゃう位に強くなっちゃってるからそのままにしておけなくて・・・・・・。

 それというのも、俺は彼女を気に掛け、彼女は俺に感謝やらなんやらの感情をくれていた訳で、それがどうなったのか加護を与えていたようなのだ。

 だから彼女にはリトルウィングで元々の得意分野を活かしてもらうために情報やらを触ってもらっている。

 まぁ、素手で鉱石砕けるくらい強くなってるんですけどね彼女・・・・・・。

 ちなみに紅音と碧依もだ。

 あの二人はリトルウィングの中でも最強格なので、日夜色んな所で遊んでいる(・・・・・)

 

 さておき、病気に関してだが、これに関しては俺にできることは少ない。

 特に寿命や老化に伴ったものは、そもそもの気質的な問題だ。

 例えば、脳卒中なんかは喫煙や飲酒、食生活などによって起こりやすくなる。

 だから、実際に脳卒中になった際に出てくる症状なんかは治すことができる。

 だけどそうなった原因そのものを治せるわけではない。

 他にも悪性腫瘍、いわゆる癌だが、あれも遺伝子変異が主な原因だ。

 治すと言うにも、その部分を斬り取るしかない為、おいそれとできるわけではない。

 他にも手足の切断なのだが、手の切断に関しては事故によるものが多い為、何とかリトルウィング所属の回復要員で対処できるが、足の切断に関しては、ここ数年の原因として挙げられるものが循環器不全によるものなのだ。

 簡単に言えば糖尿病とかだな。

 そういったものが原因で体内の循環が上手くできず、足から壊死していくために、まだ細胞が生きている部分まで被害が伸びない様に切断せざるを得ない場合、そういった時も難しい。

 

 俺が“願う”ことで出来なくはない。

 だけどそうしてしまうと、誰もが死ななくなる。

 そして、それだけはしてはいけないと、ロゥリィに言われた。

 何故してはいけないのかと、当然俺は問うた。

 するとロゥリィは教えてくれた。

 『人間は永遠を生きると魂は腐っていき、そして最後には死を願う』と。

 当然例外も居るらしい。

 それが使徒なのだそうだ。

 そんな使徒に成れる可能性を持つ者でも、一つ間違えれば堕ちる所までも堕ちてしまうそうだ。

 それほど、『永遠』というものは誰もが望み、得てはいけないモノなのだそうだ。

 俺も、言われたからというだけじゃないが、それには納得できた。

 だから今は、外傷や事故、寿命を守りながら、リトルウィングの皆に治してもらうことが殆どだ。

 もどかしくはあるけれど、俺も『人間』っていうめんどくさい存在だったから、そんな人間を腐らせたくはない。

 偉そうな意見かもしれないけれど、そう思った。

 

 とはいえ、だ。

 それ以外で出来ることは色々やっている。

 そもそも、『リトルウィング』開設に関してもかなり問題が起きた。 

 どの国の所属にするのか、だとか、元々うちの人間だから返せ、とかだ。

 日本も、森田総理が色々言ってきた。そのまま色々あって辞めることになって、いまではあの閣下が総理やってるけどね。

 そんなわけで、色々めんどくさくなったので、国どころか地球飛び出すことにした。

 いやいや、何を言っているんだお前はと思うだろう。

 だが思い出してほしい、俺にはあれがある。

 そう、リゾートコロニー型宇宙航空艦『クラッド6』が!

 いや、アレってば俺の中のどこかにあるんでしょう?

 なら外に出したって良いじゃない。

 なので、現住所は月近郊のクラッド6なわけです。

 その中のマイルームにイリヤと一緒になって炬燵にInなわけだ。

 まぁそれはそれで色々問題が起きたが、お金くれたらノーリスクで誰でも何時でも宇宙に来れるよ何て囁けばチョロいもんですよ。

 だって、俺からすればどこでもドアか一条祭り潜ればそこは『クラッド6』だしね。

 御陰で大儲けですよ。

 まぁ、元々大金は持ってたけどさ。そのお金と俺のチートを駆使すれば色々出来るわけですよ。

 え? 今の総理との癒着?

 ソンナモノナイデスヨー。

 それに、誰も不幸になってないから大丈夫ダイジョウブ。

 主席? 

 ソンナヒトモイタナー。

 あ、大丈夫大丈夫。ちょっと宇宙進出遅れちゃったり色々してるけど(目反らし

 

 

 あとの問題は、そうそう、アレが在った。

 “ゲート”だ。

 アレ、実は今、日本に二つあるんだよ。

 何処と何処かっていうと、当然、『特地』と『蟲獣の世界』に繋がってるゲートだ。

 何で蟲獣の世界に繋がっているゲートを残したかって思うだろう。

 でもほら、世界各国で日本ばかりゲートを独占してズルいみたいな空気あるじゃん?

 だから、よかったら片方上げますよ。どこに繋がるか知りませんが的な感じで牽制してるんだよ。

 ・・・・・・というのは3割方冗談で、実際には蟲獣の世界にも結構な資源があるようなので、そのままにしてある。

 だから新しくもう一個近くに門を作って、そっちを特地に繋げた。

 ちなみに材料は泥だ。

 いや、神化している状態なら、泥も願い通りの物になるので割と簡単に作れたんだよ・・・・・・(目反らし

 とはいえ、元々在ったものをそのまま改めて作っただけだ。

 なので管理とかに関しては、予定通りに管理自体は特地のエムロイ教に開閉の管理を任せてしまった。

 レレイも、門の管理だけに掛かりきりの人生を送るなんてのは嫌だということでそうなったのだ。今では楽しそうにアルヌス駐屯地で教鞭を振るっている。

 ついでといってはなんだが、テュカはリトルウィングで仕事をしつつ、最近何やらお父さんが生きているかもしれないとのことで先輩とロゥリィとレレイも一時教職を辞して皆で特地を探索している。

 あ、俺が付いて行かないのは、色々しないといけないことがあるのと、神化した時に先輩との契約が耐えられなかったのか消し飛んだので最近は別行動しているからだ。他の理由としては、特地3人娘が先輩にアプローチしたいから4人で旅をする機会が欲しいと言われてしまったからだ。

 梨紗さんとも仲が良い俺は即答できなかったが、当の梨紗さんが許可を出してしまえば俺は何も言えない。

 何でか逆に俺へとそれで良いのかとか言われたが、何故俺にそれを聞くんさ。だから俺は違うって。

 

 

 

 さておき、そんな感じに色々終息へと向かっている。

 そして、いつだったか俺にはメールが届いていた。

 Fateの時と一緒だ。

 俺がこの世界に居るのは後、9年。

 その内の1年と幾らかはもう過ぎてしまったわけだ。

 どうやら、妲己との戦いを経て、俺がしなければならないことは終わったらしい。

 当初言われていた『似た存在に会う』というのも、結局誰の事だったのやら。

 メールも妲己を倒してすぐだったわけじゃないし、よく分からん。

 

 まあでも、結局俺のやることは変わらない。

 

「はぁ、平和だなぁ・・・・・・」

 

 ズズッと、湯呑のお茶を飲みながらテレビを見る。

 今日は12月24日。

 世に言うクリスマスイヴだ。

 

「平和なのは良いけど、あの教団どうするのよ。コウジュサンタがどうとか言っているらしいけれど」

 

「いや、俺ってばサンタさんじゃないからね? ってか、ミニスカサンタの服を送ってくるのどうにかしてほしい」

 

「着て上げればいいじゃない」

 

「じゃぁイリヤが着れば?」

 

「嫌よ」

 

「でしょうね」

 

 あ、そうそう、他にも頭を悩ませる問題が在った。

 獣神(ケモカミ)教団だ。

 いつしか出来上がってて、俺があえて作った組織は『リトルウィング』だけなのだが、今では何是かリトルウィングのメンバーを中心に、各地に信者が居る。

 というか、何で読みが“ケモカミ”なんですかねぇ・・・・・・?

 “けものがみ”で良いじゃないか。

 でもみんな揃って駄目って言う。

 何で祀られてる神の意見却下されるんだよ。

 まぁでも、特にルールを押し付けてるわけではないし、“皆で幸せに生きようぜ”ってのが基本的な信念としているだけみたいだから、俺も強くは言わないんだけどね。

 ただ、たまに行事のコスプレしてくれだとか、モフらせて欲しいとか願いは何なんだ。

 あ、ちなみに教団で一番権力を持っているのは何故か目の前のイリヤ様です。

 モフるのは私の特権とか言って良い憚りません。

 俺の身体は俺のですからね?

 

「そういえばコウジュはこっちのコミケにも行くの?」

 

「当然でしょうよ。イリヤは行かないの?」

 

「祭りは好きよ。でもあの男と行くのでしょう?」

 

「まぁ恒例行事ですしね。ってかまだ先輩敵視してるのか・・・・・・」

 

「だって、浮気よ浮気。許されないわ」

 

「だから浮気って何でさ・・・・・・。サーヴァント契約しちゃっただけじゃないか。それも偶然。言ってるだろうに」

 

「それでも浮気なのよ。貴方は私のモノだもの。貴方は私のバーサーカーなの」

 

「うん、何処へ・・・・・・って、あ、こら何するんさ!!」

 

 対面に居たイリヤが炬燵を出て、何処へ行くのかと思いきや俺の背後に回って抱き付いてきた。

 背中に感じる柔らかいものが・・・・・・。

 まぁ、この身体になってかなり経つので今ではこれくらいじゃ興奮もしないんですけどね・・・・・・(遠い目

 

 さておき、再会してからのイリヤはこんな感じに抱き付いてくることが多い。

 イリヤを置いて行った俺は何も言えないので強く抗うことはないが、それでもスキンシップ増し増しなもんだから一部でキマシタワー立てようとか言うやつが居る。滅したい。

 

「神になったのなら、帰ってきなさいよ」

 

 後ろから抱き付くイリヤが、そんなことを言う。

 これを言って来るのはもう何度目だろうか。

 そしてその度に俺の答えは同じものを返す。

 

「駄目だよ。まだやることがある」

 

「コウジュは意地悪だわ」

 

「悪いね。でも、我が儘になるって決めたから」

 

 あと9年も無い期間で、色々して、色々思い出を作って、それから俺はこの世界を去る。

 そして、俺にはまだ旅が残っている。

 

 イリヤがこんなことを言うのは、イリヤの身体が仮初だからだ。

 どうあってもこのイリヤはコピーでしかない。

 本物に近くはあるが、俺がこの世界を旅経つと同時にイリヤは元のイリヤの元へ戻る。

 これはアンジュちゃんからの手紙に書いてあった。

 そういう契約で、なんとか繋ぎ止めているだけで、終われば元の身体に統合しないといけないらしい。

 

「俺が願えればいいんだけどね・・・・・・」

 

「それはまだ、無理なんでしょう?」

 

「だな」

 

 俺の願いを叶える力、『幻想を現実に変える程度の能力』。

 そしてそれを全面に押し出した獣神状態。

 アレを俺はまだいつでも出せる状態じゃなかったりする。

 というのも、あの時俺は“自身の願い”と“他者の願い”を使って、あの形になった。

 しかし、今の俺に集まる願いってのは真に迫った願いばかりではない。

 加えて言えば、そんな願いも、その願いを叶えるために使ってしまっている。

 簡単に言えば燃料不足だ。

 いや、今はそう設定したというのが正しいのかな。

 どうもあの状態は願った全てが反映されるようにしてあるから俺の気に入らない全てが消し飛んでしまう。

 そんな俺が嫌だ(・・・・・・・)

 まぁあの力そのものが嫌なわけじゃないんだよ。

 でもさ、あのままゲームとかしても感情のままに色々変わっちゃうから何も楽しくなくてさ、気づけば元の状態に戻ってたんだよ。

 んで、自分なりに調べた結果、そういうことに(・・・・・・・)なっていた。

 

 だから、やっぱりFate世界に好きなように戻るにはそういう力を得なければならない訳だ。 

 

「けど、出来るなら俺は―――」

 

 そんな中でも、俺がしたとある決意。それをイリヤに伝えようと口を開いたのが、そこで俺のケモ耳は人が近づく音を拾った。

 今では俺のマイル―ムは通常空間にあるために俺の部屋(マイルーム)へも容易く訪れることができるのだ。

 そして、近づく存在が誰と誰かもすぐに分かった。

 

「お帰り、ウカノにアル」

 

「ただいまじゃ」

 

「ン」

 

 丁度入り口が背後に在る為、イリヤに抱き付かれているとみることは出来ない。

 だけど、誰かは分かる。

 

「ふむふむ、相変わらず仲が良いのぅ。砂糖を吐きたくなると言うんじゃったか」

 

「羨ましいなら来ればいいじゃない」

 

「おい」

 

 そんな入ってきた片方が言うのに対してイリヤが返す。

 俺の許可を取るのが普通じゃありませんかねぇ?

 

「それもそうじゃのう」

 

「おいってば」

 

「ワタシモ」

 

「おいこら」

 

 だが俺の意見は聞き入れてもらえないようだった。

 気づけば背中にイリヤが居て、両隣にはウカノとアルが抱き付いていた。

 

 そんな二人に目をやる。

 

 ウカノは銀色の髪に狐耳と尻尾を生やした美少女で、アルは薄紫の長い髪を赤いリボンでくくった美少女だ。

 うん、これハーレムだ。

 何故今の俺は男じゃないんだ・・・・・・。

 でもまぁ、愛でるのは男女関係なくできるからいいけどさ。良いけどさ・・・・・・。

 

 さて、そんな二人の美少女。

 その正体だが、まぁ片方に関しては予想が付くだろう。

 そう、元妲己だ。

 あの時俺は彼女を喰らった。

 そして、要らない因子を消化して、彼女を転生させた。

 その為に俺はあの時、皆の前で“妲己は死んだ”と印象付けた上で助ける方法として喰らったのだ。

 これなら妲己の願いを叶えつつ、俺の願いもかなえられるから。

 まぁその際になんでか俺の眷属化して髪色が銀になったがそのままの髪色だと色々問題になるし、丁度良かった。

 名前に関しては宇迦之御魂大神という穀物や豊穣を司る女神で稲荷神として崇められている神様から頂戴した。

 同じ狐でも、崇められる存在は居ると知ってほしかったからだ。

 そして、今度こそ人助けをもう用に出来るようにしてほしかったからだ。

 転生してすぐは自殺しようとしたこともあったが、俺の気持ちを伝えて今は大事な仲間として日夜活動してくれている。

 

 そしてもう一人、名前はアル・アジフ。

 いやなんでその名前でその姿なのかはほんと偶然だ。

 彼女を転生させようとしたとき、ふと思いついたのがデモベの彼女だったのだ。

 何故かというと、彼女の元の姿がクトゥルフに出てくる旧神っぽかったからだ。

 そんな彼女の正体は、そう、あの時の巨大な触手百足さん。

 だから、白いワンピースの下から触手とか彼女出せます。

 いや、なんでそもそも彼女を転生させたかというと、あの場所で俺は触手百足さんを瞬殺したんだが、それは身体だけで、事が済んだ後もその魂はそこに漂ってたんだよ。

 しかもそれは、人間のそれ以上に大きいもので、しかも驚くほど純粋なものだったんだ。

 他の蟲獣の魂は普通に虫っぽかったのにね。

 んで、そんな彼女は魂状態でぽつんとしてた。

 あの図体だから異様な光景だったけど、獣神状態だとそんな半透明な彼女の姿がよく見えた。

 肉体のくびきから解放されたこともあって食欲のままに暴れようともしてなかったし、何でかジーッと俺の方を見てるだけだったから連れ帰ることにしたのだ。

 そこには打算もあった。

 そういえばまだ言ってなかったけど、そもそも何で蟲獣の世界を残すことにしたかというと、アルが蟲獣達を制御できるならあの世界も有りじゃないかと思ったからだ。

 そんな打算もあって彼女を転生させた。

 Fate世界の時と違って、今の俺は泥っていう魔力の塊もあるし転生させる感覚はもう覚えたから獣神化してなくてももうできるからね。やっちまいましたよ。

 ただ、元が基だけにその見た目をどうしようかと考えて居た時に連想して出てきたのがそれだったのだ。

 後悔は無い。

 まぁこの世界にデモベ無いし良いよね。

 他の問題と言えば、蟲獣達は人を使って増えることができるみたいなのでその辺りくらいかな・・・・・・。

 増え方?

 そんなの言えるわけないでしょうよ。

 

 とりまそんなわけで、この二人は今では俺の眷属兼仲間として、世界平和の為に活躍してくれている。

 妲己も元々は制御できない異能だった魅了も、今はスキルに昇華してあるし、アルは元が元なので素で強い。

 そして二人は、言ってみれば同期なので、大体二人セットで仕事をしてくれている。

 

「そういえば二人とも、もうすぐお祭りがあるって言ったことあると思うけど、大丈夫そう?」

 

「う、うむ、未だに妾が行って良いのか気になる部分もあるが、あれだけ言って貰えたのに行かぬのも不義理であろうしな」

 

「マツリ、オイシイモノ、イッパイ」

 

「オッケーオッケ―。じゃぁみんなで楽しもうか。そろそろ先輩達も一旦切り上げて帰ってくるだろうし、皆で楽しもうか」

 

 そう言って、俺は二人の頭にポンと手を置く。

 すると二人は擽ったそうにしながらも、笑みを浮かべながらさらに体重を乗せてきた。

 ちょっと背後でイリヤが拗ねている感じがするが、まぁ、大丈夫だろう。

 

 

 うん、やっぱりこういうのが良いよな。

 皆が笑ってて、のんびりできて、やることはまだまだあるけど、それでも笑顔を増やすことが出来ている。

 なら、これはハッピーエンドだろう。

 まだ続くけど、幸せへと向かっていけている筈だ。

 

 

 

 

 

 

 願わくば――――、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        ―――――世に平穏のあらんことを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 え、これ駄目なの?

 いやいや、大丈夫だってきっと。

 あいうぃっしゅ、ってね!

 




いかがだったでしょうか?
 
ちなみに、最終話とは前書きに書きましたが、短編で少し足すかもしれません。
ウサミミ王女とか、感想でも色々頂いていますし。

さておき、妲己さん生きてました!
皆さんびっくりしたことでしょう・・・・・・(目反らし
いや、うん、驚いて頂けていると、ウレシイナァ・・・。
でもまぁ、アルちゃんの方は驚いて頂けたと思います。 
原作では当然閉じて、というか門ごと閉鎖したわけですが、こっちでは残しました。
だって、桃色の光チラつかせてれば本能的に襲ってこないでしょうし、アルちゃん居れば蟲獣怖くないし、ウカノちゃんも居るから労働力も手に入りましたよ!
人を使って増えることもできるらしいけど、ドウヤルンデショウネ?

とまぁそんなわけで、ツッコミどころや回収を無理やりしたのもあって色々詰め込みましたが、とりあえず一旦の節目と相成りました。

いやぁ、ほぼ週一で更新してきましたが、GATE編だけでも結構使っちゃいましたね。お付き合いいただきホント感謝です。

先にも書きましたが、次話は短編なんかを少し入れて、また次の世界へと行きたいと思います。
何処に行くかはもう候補を考えてあるのですが、そちらはまた書き溜めてある程度になったらまた出そうかと思っています。

改めまして、拙作ではありますがお付き合い頂きありがとうございました。
妄想と勢いだけのSSではありますが、皆様の応援や評価、いつも励みとなっております。
あと、誤字修正、大変助かっております<(_ _)>

とりあえず、来週更新できるかは分かりませんが、また更新している際には暇つぶしにでも読んでいただければと思います。


それでは皆さま、またお会いできる日を!!!





P.S.
感想返信送れていますが、後程少しずつでも書かせて頂きたいと思います。
ですのでもう少しだけお待ちいただきたく・・・。

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