テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

12 / 162
どうもonekouでございます。

連休最終日が台風の所為で…って方が多いと思いますがいかがお過ごしでしょうか?
わたしはまぁこれを書いたり、レポート書いたり、息抜きしたりでした。
あとはFateアニメ版を見たりですね。

セ、セイバーさんに活躍シーンが! やったねセイバー!見せ場が増え(ry

2014.10.14
盛大な矛盾をご指摘により発見したため修正。イリヤに伝えた原作知識に関してです。


『stage10:月下の邂逅』

 みなさんこんばんは。現場のコウジュです。

 俺は今、主人公の通う穂群原学園に来ております。

 

 現在の時間は夜になったところといった感じでしょうか。

 生徒だけでなく、先生方も帰り、辺りは静寂に包まれています。

 

 いえ、包まれていたと言うべきでしょう。

 

 私が今居るのは敷地内の樹の上なのですが、眼前にある校庭では今まさに蒼タイツで赤い槍を持った男と黒白の双剣を持った赤い男が闘い、静寂を掻き乱しております。

 

 一体彼らに何があったのか。そしてこれから何が起こるのか。

 

 実況中継していきたいと思います―――

 

 

 

 

 

 ――うん、飽きた。

 

 なんかノリでキャスターさん(ニュースの)をやってみたけど、面白くなかった。

 聞くやつも居ないしね〜。まあ、声に出してたわけではないけどさ。見つかる訳にはいかないし。

 今だって結構ギリギリに居るんだよね。

 

 まあそんなこんなで、実は昨日士郎に会ってから丸一日経過している。

 時間が飛ぶのはいつもの話だよ?

 原作ではバーサーカーはここに来る必要はないんだけど、俺はちょっと気になる事があるんでここでのぞき中。

 あとでイリヤに合流する予定だ。

 

 ふむ、なんで見つからないか疑問って感じだな?

 

 ふっふっふっ、ならば教えてやろう―――ああ、待って、ごめん調子に乗りました、お願いだから聞いて。

 

 俺が見つかってない理由はこれ。夢幻召喚『アサシン改』。スペル名はプリヤから頂きました。

 

 昨日【獣の本能】で気配を消せるっぽいことが分かってからしばらくして完成させたんだが、ノリで出来ちゃった。

 なんと気配遮断と背景同化までついた優れもの。

 一度見つかると効果が薄くなるが、隠れる能力として考えれば破格だろう。

 実際、割と近くにいるんだけど蒼いのも紅の主従も気づかんしな。

 

 しかし、しかしだ。これには1つ多大な欠陥がある。

 

 

 

 それは服装だ!!!!!

 

 

 

 いや、ハッ?( ゚Д゚)みたいな顔しないでください。

 Fateのアサシンをちゃんと…ちゃんと? やってるのってハサン先生くらいじゃん?

 んで、例の理由付けによってアサシンとしての能力を完成させようと思ったんだけど、そのやり方として思いついたのが形から入るって方法だったんだ。

 用意するものは革ベルト、黒い布、髑髏仮面(別にカキタレ探すアレではない)、そして革ベルトだ。とりあえずそれらで体を纏えばアサシンっぽくなれる。

 一先ず見た目だけはアサシンになったんで次に何をして完成に近づけるか悩んでたんだが、その瞬間に頭の中で何かが解放されたような…、ロックが外れたような感じがしたんだ。

 それというのがスペルカードの完成した証らしくて、気づけば手の中には一枚のカード。

 確認の為に改めてカードを使用する。合言葉はもちろんインストール!! 

 まぁ結果はご存知、銀髪獣耳ロリ巨乳にベルト服だったわけですが…(´・ω・`)

 いやまぁ、大半は初期設定なんだけどもさ…。

 

 なんにしてもこの服は色んな意味で危な過ぎるんだ。

 

 唯一の救いは能力を発動しちまえば、背景同化によって誰にも見られないことだ。

 とはいえ気を抜いたり、何かしらの攻撃的行動を行ってしまうと能力は解除され、いろんな意味で危ない幼女の姿が解放されるんですがね。

 

 勿論この本番までにも試しに何回か使ったが、見えないとはいえ通報物の格好をしながら人前を歩くのは無茶苦茶ドキドキする。

 あれですよ? ドキドキと言っても興奮的なドキドキじゃないですよ? 露出狂じゃないですよ?

 今もドキがムネムネしすぎて死にそうっす…。

 どうして俺の能力は服装関係で欠陥があるんだ? 補正か? 神の意思か?

 

 待て待て、もしそうだったとして一体誰が望むんだ…(震え声

 

 

 

 カットカットカットカットカットカットカット!!

 これ以上の思考はアカン気がするのでやめておこう。

 

 

 

 

 それにしても、すげぇな。これがサーヴァント同士の戦いか。

 

 思考を本来の目的である、原作における第五次聖杯戦争の初戦へと向ける。

 

 恥ずかしさを我慢しながらも校庭で行われてる戦闘をずっと見てるんだが、何がすごいって一瞬一瞬の駆け引きが半端ないです。

 

 問題は、今の身体になってから格段に動体視力もよくなり、ヤ○チャ視点じゃなくて見えている。見えてはいるがただそれだけなのだ。

 

 蒼い方、ランサーが繰り出す高速の槍による連撃。

 ただ突くだけではなく、斬り、払いといった多種多様な連撃で、息もつかせない。

 対する紅い男、アーチャーも負けていない。

 手にする黒と白の双剣を使い、ランサーの多彩な技を全て受け流している。

 

 俺は原作知識あるから赤い方がアーチャー(弓兵)のクラスでも普通に受け入れているが、ランサーの方からしたら奇怪だろうな。

 自分の槍を受け流す技量を弓兵が持ってるんだから。

 しかも、相手の剣を弾き飛ばすことができても、いつの間にか手に戻っているという不思議。

 それでもランサーは隙をつくらず攻撃をしているわけですよ。

 見ていてテンション上がるしカッコいいんだけど、俺、あの方たちと戦うんすか?

 膝がガクブルしてきちまうぜ…。

 

 でもこれが本来のサーヴァントの戦闘というわけだ。

 当然、俺の場合こうはいかないんだよ。あまりにも経験が足りない。

 

 本国のアインツベルン城に居た戦闘部隊メイドさん達と何度か模擬戦したんだが、勝負にならなかった。

 いや、実力がどうのって話じゃないぜ?

 このチートボディとチートパワーはただの木刀なのにアーツ技を使うと切り裂いてしまう。

 要は上手く力加減が出来ないから模擬戦としてなりたたなかったわけだ。

 こっち木刀、向こう斧。斧折れる。What's!?

 目の前の戦闘の様にキンコンカンコン金属音を鳴らしながら鍔迫り合い、受け流しとかやってみたかったけど無駄なバカ力であわや大惨事だったからなぁ。風圧で服破くなんてマジで出来るんだね…。

 

 まぁそんなわけで、眼前の2人の様にいかないのだ。あの2人が行っているのは技と技の応酬だからね。

 

 俺は、確かにバ火力はある訳だがフェイントとかされると避けられる自信が無い。

 幸いにも下手なフェイント程度なら見て避けることも力付くでまるごとたたきつぶすこともできるほどのスペックがこの身体にはある訳だが、正真正銘の英霊たちを前にそれだけで勝ちを見るのは無謀ってもんだろう。

 

 やばいなぁ…。確かこれってまだ二人とも手加減中なんでしょ?

 青い兄貴はマスターから令呪使ってまで偵察に徹しろって言われてるから全力戦闘できなくて、紅い兄貴も宝具とか全然使っていない。

 

 やっぱり見に来ておいて正解だったな。これを知っているのと知らないのでは大きな差があるだろう。 

 

 一応ラーニングって別チートもあるって言ってたけど、携帯に送られてきた能力表には無かったから色々試してみたけど、結局全容はわかってない。

 

 現状分かっているのは、大なり小なりダメージもしくはその効果を受けることでその時に使用されたものをスキルとして覚えること。スペルカード作成時と同じように、覚えた際は頭の中でロックが外れるような感覚があるだけで、スキルとして覚えたとしてもそれ其の物を理解している訳ではないことくらいか。

 

 書いてあった能力のどれにラーニングが当たるのか分からんけど、せめて見稽古クラスの能力だったならどこぞの主人公よろしく戦闘中に才能が開花していくんだろうけどなぁ…。

 けどさすがにそこまでは求めすぎであろう。

 今は大人しく様子見様子見っと。

 

 

 おっと、そうこうする内に士郎君が出てきたぜい。

 

 って近い近い。俺から5メートルも離れてないんですけど。

 しかもフェンス越しとはいえ普通に突っ立てるんじゃないよ。見つかっちゃうよ?

 俺の様に偽装工作しているならまだしも、さ。

 

「誰だ!!!!」

 

 ほら言わんこっちゃない。

 

 今まさにアーチャ―に向かって宝具を解放しようとしていたランサーが、踵を返そうと士郎君が踏み直した音に気付き、こちらへと言葉と共に視線を放った。

 それに対し士郎君が慌てて校舎へ向かって走り出す。

 魔術というものは基本的に秘匿するものであり、この聖杯戦争も例外ではない。

 故にランサーは目撃者を消すため、士郎の後を追う。

 そしてそれを体育座りしながらやり過ごす俺。

 少し遅れて紅の主従が士郎君を助けるために追いかけていき、グラウンドには誰も居なくなった。

 

 そこでやっと俺は一息つく。

 

 ふはぁ、びっくりした。

 知識として見つかるのが士郎君だって知っていたはずなのに、一瞬俺が見つかったかと思った。

 何あの目、視線で殺されそうだったんですが…。あれが目力ってやつなんですね。

 

 よし、ここでずっと座っている訳にはいかないから俺も追いかけないと。

 細心の注意を払いながら俺は、士郎が来るであろう校舎の外側まで来て様子をうかがう。

 

 ここから運命が始まる訳だ。

 

 衛宮士郎は今から心臓を貫かれる。普通ならそこで死んでゲームオーバー。 

 だが、衛宮士郎にここで死ぬ運命は待ち受けていない。

 

 それどころかここから物語は加速していく。

 

「お、来た来た」

 

 士郎が廊下を走って来ているのが見えた。

 しかし同時に、後ろにはランサーの姿が見えている。

 

 志村後ろ後ろ!

 

 なんて思っている間にもランサーの凶刃は士郎の胸へと吸い込まれる。簡単に、容易に、何の抵抗も見せず刃は心臓へと突き立った。

 心臓を貫かれ崩れ落ちる士郎を一瞥し、つまらなそうにランサーは去って行った。

 

 すまない士郎。

 俺はこの場面を知っていても回避する方法を思いつかなかった。

 いや、回避するだけなら簡単だろう。でも俺にはその選択肢を選べなかった。

 これは士郎に必要な儀式の一つだと思ったから。

 

 ……言い訳だな。

 ただ単に、原作をこの時点で歪めることが後にどれほどの影響を及ぼすのかを予測できず、最終的に死にはしないのだからと受け入れただけだ。

 

 罪悪感が俺の胸を締め付ける。

 くそ、パンピーにはきつ過ぎるって。

 予防線を張ったとはいえ、許してくれとは言えねぇな…。

 

 兎も角カウント開始しないとだ。

 

   59、58、57――

 

 昨日俺はあるアイテムをカード化して士郎に渡していた。

 

 それは士郎がここで一度殺されるのを見なかったことにすると決め、それでも何か策は無いかと考えた結果生まれたもの。

 よく転生ものの小説に使われるバタフライエフェクトというものを恐れ、もしもの為に用意したものだ。

 

 そのアイテムの名はスケープドール。

 略してスケドなんて呼ばれているこれの効果は、持っている状態で戦闘不能状態、つまり死亡すると同時に回復してくれるという復活アイテムだ。

 

 ただ、俺はこれをそのままカード化して士郎に渡したわけではない。

 瞬時に回復なんてしてしまえばランサーにその場でもう一度殺し直されるだけだ。

 だからこそ、士郎が刺されてもランサーが立ち去ってから復活させるというタイムラグが必要だった。

 

 それを考えている際に思いついたのが例に倣って強欲島に出てくるカードの効果、宣言せずに1分経つと勝手に具現化してしまうというもの。

 

 これを応用した。

 

 面倒だったのは、ただこれを応用しただけじゃカードを渡して1分で具現化なんてことになってしまうから、スケープドール自体の概念も上手く利用した。

 

 スケープド―ルって言うのは、持ち主が瀕死の状態にならないと発動しない。

 ここから条件を満たすまで発動しないという概念を抽出。

 そこに、某ハンター漫画のカードからカードの発動には宣言、もしくは1分間放置するという概念をお借りして合体させる。

 

 そうやって作られたのが士郎に渡したあれだ。

 

 自分でもめちゃくちゃな設定だとは思うけど、これはこれで今後のための実験になる。

 もちろん士郎には悪いと思ってる。

 そのために何か失敗したときのためにここで待機しているんだし…。

 

 うあ~…、考えたら改めて罪悪感で胃のあたりが痛くなってくる。

 士郎だと仕方ないって許してくれるだろうことが余計に心をえぐる。

 

 今度またお詫びに行かないとだ…。

 

 

 

 っと、そろそろだな。

 

  ―――3、2、1、0!! 

 

 カウント終了と同時に士郎の身体が光に包まれたのが見えた。

 

「よし! 回復してる!!」

 

 怪しい俺の言葉を素直に聞いてくれていたのか、ポケットに入っていたのであろうカードが光り輝く。

 光は士郎を包み込み、光に覆われた彼は時間を巻き戻すかのように胸部の傷が塞がれていく。

 

 が、それもすぐに止まってしまった。

 

 ちっ失敗か、いや、無茶な設定したからエラーが出たのか?

 一応心臓の穴自体は塞がったみたいだけど…。

 

 詳しく確認するために近づこうとするも、誰かが駆けてきた。続けてもう一人分

 げ、紅いのが来た。

 

 慌てて、窓の所にぶら下りながらできる気配を消せるように静かにする。

 自分は背景の一部。自分は背景の一部…。

 

『ねぇ、アーチャー今の見た?』

 

『あぁ、一瞬だったがカードのようなものが光ったのも見えた。魔術の媒体か何かだろうが…』

 

『だったら、衛宮君…彼は魔術師だってこと?』

 

『今ほどの瞬間回復を行える力を持つものが同じ学校内に居たら凛が気づくだろう。よっぽどの実力者で無い限りな。しかし実力があるならいくらサーヴァントが相手とはいえ、もう少し抵抗するはずだがそれも無い。

だったら考えつくのは第3者が、小僧に媒体を渡したんだろうということだ』

 

『そう…よね…。それが一番妥当か…』

 

 み、見られてたー!? 

 しかもあの程度のことから色々推察されてるし。

 なにこのバーローみたいな推理力。

 こ、このタイミングここに居ると、確実にその第三者の疑いが掛けられる。

 逃げないと!

 

『誰だ!?』

 

 やべ、見つかった。

 これだけ近くなのに集中を乱したせいで隠形に乱れが生じた。 

 

 こうなったら後ろに向かって前進あるのみ!! 色んな意味で見つかるわけにはいかない!!

 もし見つかった場合、俺は羞恥心で死ぬ自身がある。

 

 とりあえずふっ付いていた壁を踏み台に、壁を壊さないように全力で飛ぶ。

 

 こんな所に居られるか! 俺は帰らせてもらう!!

 

 

 

『まだランサーが居たの!? アーチャー追って!!』

 

『承知!!』

 

 

 後ろからそんなやり取りが聞こえた。

 

 追いかけてこないでぇえええ!!!??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やばかった。マジでヤバかった……」

 

 大分離れてたのに追ってくる追ってくる。

 チートパワーにモノを言わせて何とか撒けたけど、途中から恥も外聞もなく走ってたから足場にしたいくつかのビルにヒビ入ったかも…。

 

 っていうか、士郎を回復させずに置いてきてしまった。

 

「まあ、紅いのが居たし後は原作のように回復してくれるか」

 

 そんな風に一人納得しながら道をトボトボと歩く。

 

 ちょっと遠くまで来すぎたぜぃ…。

 早く戻らないとイリヤに怒られてしまう。

 

 携帯の時刻を見ると合流予定時刻まであと10分程か。

 けどまぁ疲れたしちょっと位休憩してもいいよね?

 丁度そこに自販機あるし、炭酸でも飲んでスカッとしたい。

 最悪走ればいいんだし、一休み一休み。

 

 

 

『コウジュ聞こえる?』

 

 イリヤからの念話だ。

 一気に心臓がバクバクと脈打ち始める。

 お財布から取り出し自販機に入れようとしていた100円玉を静かに戻す。

 

『ハ、ハイ。コウジュデス』

 

『何焦ってるのよ?』

 

『何でも無いっすよ?』

 

『怪しい』

 

『怪しくない』

 

『また無駄遣いしてるんじゃないでしょうね?』

 

『…シテナイヨ?』

 

『ふーん…、まぁあなたがそう言うならそうなんでしょうね。あなたの中ではね』

 

 あのあの、イリヤさんが辛辣すぎる件について。なんでこうなったし…。

 おかしいな。いとおかし…は意味が違うか。

 ふむ、俺が召喚されてすぐの時はもっと天真爛漫が多かった筈なのに今は何故かツッコミ体質のサドっ気増し増しな気がする。

 

 まったく何が原因だろうね(´_ゝ`)

 

『ともかく、早く合流地点に来てね。あと7分よ』

 

『うぃ』

 

 プツンと繋がっていたものが切れる。念話を切ったようだ。

 とりあえず行くとしますかね。御姫さんを怒らすと後が怖い。

 あんなに可愛いに、何かしたらご飯抜きなんて悪魔の所業を普通にしてくるオニチクな部分もあるのだ。

 

 ふと手の中にあった財布に目をやる。続けて自販機へ。

 

 ……うむ。

 そんなに喉も乾いてないし、買わなくていいかな!! 

 

 一先ずアサシンモードを解除し、元の姿に戻る。

 

 実はこんなカードを作っているなんてのはイリヤに教えてない。

 だって仕返しとか言いながら俺を弄るのが最近の趣味だってこの間言ってたし。

 アサシン状態の姿を見せた日には写真に撮られて何をさせられるかわかったもんではない。

 きっと写真を口実に色々サセラレルンダ…。

 

 少し憂鬱になりながら、俺は地面を蹴りイリヤのもとを目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなでイリヤと合流後、住宅街にて待ち人を待っている。

 もちろんその相手は主人公たる士郎。

 一緒に他にも居るんだろうが、用がある相手は士郎なんだよ。

 イリヤにとって浅からぬ因縁がある相手だからな。

 

 何故イリヤと士郎が関わりがあるとかというと、色々とあるんだが……、端的に言うと家族の問題になる。

 

 第4次聖杯戦に置いて、衛宮切嗣は妻アイリスフィールと参戦した。子であるイリヤスフィールをアインツベルン城に置いて。

 当然それは死地に子供を連れ行くわけにはいかないための措置だ。

 その後なんやかんやあって第4次聖杯戦争は終わったが、アイリスフィールは死亡。衛宮切嗣は生存するもアインツベルン城へ戻ることはなかった。

 衛宮士郎とは、第4次最終戦にて起こった大火災の生き残りで、アインツベルン城に戻らず冬木の地に留まった切嗣が養子にした子どもだ。

 養子と本来の子ども。嫌な表現だろうが事実上はそうなる。

 イリヤに思うところがあるのは当然という訳だ。

 しかも、イリヤ自身も切嗣達と別れて以降にアハト翁から切嗣がアインツベルンを裏切った等と聞かされている。詳しく聞けば当の本人は冬木の地で養子を取って生活をしているとまでいう。

 そして現在、切嗣がこの世を去り、再び会うことも叶わず居たイリヤは血の繋がりが無いも“衛宮”を継ぐ士郎に会うことにした。

 

 俺の横に居るイリヤが何を思っているのかは俺もわからない。

 パスで繋がっているとはいえ、心が覗ける訳ではない。

 

 イリヤの瞳をちらりと覗き見る。

 悲しそうで、寂しそうで、悔しくて、やり切れない。そんな感情が見て取れる。

 

 どうしたものかねぇ。

 イリヤと切嗣が会えなかったのは、アハト爺の所為なんだよね。

 切嗣にイリヤと会うことを許さず、アインツベルンの地に入ることを妨害した。

 そしてイリヤに余計なことを吹き込んだ。

 

 確かにそのことをイリヤに話していはいるが、だからと言ってそう簡単に割り切れるものではないだろう。

 10年だ。

 10年間イリヤはアハト爺に嘘を教え込まれた。

 文字にすれば簡単だが、そう簡単に済ませていい年月ではない。

 

「ねぇコウジュ。私ってどうすればいいのかな?」

 

「さぁ、な」

 

「冷たいのね」

 

「そんなことないさ。俺はサーヴァントだ。マスターの(めい)ならば、ただ従う」

 

「……」

 

 イリヤが目を見開いてこちらを見てくる。

 

「なんだよ」

 

「まるでサーヴァントみたいだったから」

 

「サーヴァントだっての…。それに、ホイホイと話すことでもないだろ? イリヤの家族のことなんだから」

 

「何故それを知っているのか、やっぱり気になるんだけど」

 

「アハハ…、それを言われると辛い…」

 

 ジト目で見てくるイリヤに、俺は目を反らしながら答えることしかできない。

 

「まぁ良いわ。ちゃんと教えてくれるんでしょう?」

 

「ああ、それは絶対だ。今言えないのは、俺の覚悟が足りてないだけだから」

 

 そう、まだ怖い。

 俺が原作知識の全てをイリヤに教えることで起こるバタフライエフェクトというものが怖い。

 そしてそれを話すことで、イリヤに俺がしようとしていることを感づかれるのが怖い。

 イリヤはきっと、それを拒否すると思う。

 ここ数日でそれが分かってしまった。

 だから、まだ言えない。

 

 そんな俺を見てイリヤの表情が陰ってしまう。

 

 そんな表情を見せられると、罪悪感が半端ないです。

 いっその事全てを話し楽になろうかとも考えてしまうが、そうなると俺の作戦は失敗する可能性があるというジレンマ。

 

「まったく…。ほんとにどこまで知っているのやら」

 

「知ってることしか知らないさ」

 

「ふふ、なによそれ」

 

 某委員長の言葉を借りたんだが、少しイリヤの表情が解れた。

 うん、やっぱりイリヤは笑ってる方がいいさね。

 

 イリヤの笑みに釣られる様に、俺も笑う。

 そのことに気付いたのか、恥ずかしがるように彼女は顔を背けた。

 

 まったく、猫が嫌いだっていうくせに猫みたいな性格しちゃってさぁ。気づいてるのかねぇ?

 

 そのことに俺は一段と笑みを深くしていると、顔を背けたままイリヤは、ねぇコウジュ…、と震える声で話しかけてきた。

 

「もしも、もしもよ? 私が、誰かを殺せと命じたら…あなたはどうする?」

 

 その問いに、俺はすぐ答えられることが出来なかった。

 けど、改めて自分がイリヤを救うと決めたことを思い出し、口を開いた。

 

「殺す…かもね」

 

「そう…」

 

 俺の言葉に、少し悲しげにイリヤが返した。

 だけど俺は、でも…、と続ける。

 

「イリヤはそんなこと命じるのか? それに、もしイリヤが命じてきても、つい手が滑って殺すことができないかもしれないなぁ…」

 

 って言うか、テンション上がってくると歯止めが利かなくなること多いけど、どこかで俺は殺すということを受け入れ切れていないんだ。

 イリヤと天秤に掛けられたらそんなことを言ってられないけど、出来る限りはやりたくない。

 

「そっか…。そうだよね。コウジュってうっかりさんだから」

 

 俺の言葉を聞き、何故か満面の笑顔になったイリヤはそんなことを言ってきた。

 

「ちょっと待て、誰がうっかりさんか。異議ありだ!」

 

「却下よ却下。ほら、来たみたいだし準備準備!」

 

「ちぇ…」

 

 俺の反論には聞く耳を持ってくれないようだ。

 仕方なく、俺もイリヤが見ている方に目を向けた。

 

 遠くに人が来るのが見える。目的の士郎達だ。

 原作通り、士郎に赤の主従、そして、黄色いカッパー……じゃなくてカッパを被ったセイバー。

 

 あちらもこちらに気付いたらしく、セイバーとアーチャーが前に出てきた。

 士郎はそんな二人の間からこちらを見、訝しんでいる。

 まぁそうだろうさ。

 幼女二人が真夜中に二人で突っ立てるなんて、ただただおかしな光景だろう。

 でも士郎、前の二人は気づいてるぞ? 

 俺たちはお前の敵対者だ。

 

 そんな彼らに、イリヤが口を開く。

 

 

「こんばんはお兄ちゃん。こうして会うのは二度目だね」

 

「よ、士郎。俺とも会うのは二度目だな」

 

 

 イリヤを背に、俺は前に出る。

 

 悪いが士郎、こっから先は一方通行ってやつだ。

 俺はイリヤの目的の為、イリヤにも言ってない俺の目的の為にも、あんた達に敵対しなければならない。

 戻れないし、戻るつもりもない。

 士郎と食べたたい焼きは美味しかったけどさ、俺はご主人様を助けると決めたんだ。

 怖いけど、やると決めた以上、突き進ませてもらう。

 

 

 だから士郎、ごめんね?

 

 




いかがだったでしょうか?

シリアスと見せかけてシリアルになるいつもの私。
まぁただ単にシリアスを書いてられない病なんですがねw

それにしても、文章表現でちょっとは成長できてますかね…。
お、ちょっと頑張ってる…位に思って頂けているといいなぁ…(´・ω・`)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。