テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。

さぁFate/Zero定番のあのシーン、やっていきたいと思います!
どうぞ!


『stage3: Fateの 法則が 乱れる!』

 

 

 

 とある倉庫街にて、金属同士がぶつかる甲高い音が幾度も響き渡っていた。

 ガン、ギン、ガンと音は続く。

 それらは二人のサーヴァントが奏でるものだ。

 片や剣、片や双槍。

 セイバーとランサーのサーヴァントだ。

 そして剣を担うは少女と言っても良い背丈であり、対するは鍛え上げられた肉体に軽鎧を付けた美丈夫。

 何も知らぬものが見れば、一方的な展開になると予想するだろう。

 しかし、サーヴァント戦においては見た目など戦力には関係しない。

 

 セイバーが剣を振るう。

 それにランサーは右に持つ長槍で突きを放つ。

 間合いが圧倒的に剣に勝る槍での突きだ。

 セイバーは慌てることなく身を下げながら長槍を下から掬い上げる様に弾く。

 そのままセイバーは一歩前へ、長槍の間合いの内側へと入り込む。

 しかしそれをランサーは許さない。

 左の短槍を目前で横に振るい、セイバーの接近を防ぐ。

 セイバーは慌てず身を横にずらして短槍の間合いから退く。

 そこへ今度はランサーから、引き戻した長槍ですぐさま突きを放つ。

 槍の長さが2m近く、そして鍛え上げられたランサーの腕の長さも合わさり、その長槍の突きは驚くほどの射程を誇る。

 片腕だからと、その長槍に込められた力が弱いと侮れはしない。

 セイバーは自身の魔力を纏わせた剣で、上から叩き落すように振るう。

 ランサーはそれを見て、長槍に込めた力を緩めた。

 そこへ振り下ろされたセイバーの剣、しかし槍は予想を超えて軽く、込めた力が故に自身の剣が長槍ごと地に落ち地面を割る。

 長槍が地に着くと同時に手を放していたランサー。

 彼は右に持った短槍を必殺と一撃として最速の起動でセイバーへと放った。

 

 だが―――、

 

 

「見えない剣というのは予想以上にやり辛い物だな、セイバー」

 

「こちらも、最速と名高いランサーの真髄を見せて頂きました」

 

「この程度で俺を計ったとは言わせんぞ」

 

「どちらにしろ、勝利はこちらのものです」

 

 短槍が放たれた瞬間、剣に纏っていたモノを一部開放し、爆発的な風を生み出したセイバー。

 それは剣を押し上げ、間に合わぬはずの短槍への迎撃を可能にし、心の臓を貫くはずだった短槍は軌道を反らされセイバーの鎧を削るに終わった。 

 二人は同時に後ろへと下がり、仕切り直しを計る。

 そして、今の攻防ですら互いが互いを様子見していただけだと分かっている二人は、改めて打ち合う為に戦意をぶつけ合う。

 

 

「名乗りも無いままの戦いに名誉も糞もあるまいが、一先ずの賞賛を受け取れセイバー」

 

「そちらも、貴殿の名を知らぬとはいえその槍さばき、さぞ名のある英霊とお見受けする」

 

「全く以て名乗れぬ戦いというのは歯がゆいな」

 

「確かに、しかし―――」

 

「ああ、やることに変わりはあるまい!!」

 

 

 言い終わるや否や、二人は共に強く地を蹴り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 セイバーとランサーの決闘を、離れた場所にある鉄橋の上から見ている者が居た。

 2mを越える長身に、それに見合った筋肉が付いた大男―――ライダー。

 そしてその(マスター)であるウェイバー・ベルベットだ。

 

「うーむ、いかんのう」

 

「な、何がだよぉ!?」

 

 顎に手を当てながら難しい表情をするライダーに、鉄橋の上という状況に戦々恐々とするウェイバーが顔を引き攣らせながら問うた。

 

「ランサーの奴め、決めに掛かっておる。このままセイバーを打倒する腹積もりなのであろう」

 

「なら良いじゃないか。敵が一人減るだろう? 好都合じゃないか」

 

 ウェイバーのその言葉に、ライダーは溜息を吐く。

 

「馬鹿者。それでは意味がないのだ」

 

「な、何でだよ! ランサーとセイバーが潰し合うのを見てから残りを仕留めに行くんじゃなかったのか!?」

 

「確かに余はあのランサーの誘いにもう何人かが出てこない物かと期待しては居った。一人ずつ探し出すよりは纏めて相手する方が手っ取り早いからな」

 

「纏めて・・・・・・?」

 

 そのウェイバーの問いに、ライダーは笑みを浮かべる。

 

「応とも。異なる時代、異なる国より現れし英雄に豪傑達、その者らと矛を交えることができるのだぞ? これが昂ぶらずに居られようか! それも、余を含めて六人が集うのだ。あのランサーとセイバーを見よ。あの益荒男ぶりを。心が躍るわい」

 

 既に脱落したと宣告されているアサシンを除き、残るは6騎。

 聖杯戦争を取りまとめる聖堂教会より告げられた通りならば、今ここに居るライダーを除いてまだ5騎も残っているのだ。

 キャスターに関しては、一時その存在に揺らぎを見せたが未だ存在しているとも通達があった。

 その内2騎は、今まさにライダーの眼下で戦っている。

 つまりはあと3騎、未だ姿を見せぬサーヴァントが存在するのだ。

 

「けどどうするんだよ。あんなの相手に勝つ算段でもあるのか?」

 

「負ける気はない。しかしあの戦いぶり、ふむ、やはり死なせるにはあまりに惜しい」

 

「死なせないでどうするんだよ! 聖杯戦争は命を奪うのが目的なんだぞ!!」

 

 ライダーの言葉に、ウェイバーはそう返した。

 

 実際にウェイバーの言葉は間違いではない。

 文字通り聖杯戦争は“戦争”なのだから。

 7騎のサーヴァントとそのマスター、7つの陣営が命を奪い合い、その果てに生き残った者が聖杯を得る。

 願いを叶えると言う願望器に至れるのはたった1人だけ。

 それなのにライダーは死なせるには惜しいという。

 それに対して噛みついたウェイバーであったが、そんな彼は近づいてきたライダーに額を指で弾かれ、後ろへと倒れ込んだ。

 俗に言う“デコピン”だが、ライダーの強靭な肉体から放たれたソレは手加減されているとはいえ、ライダーに対してモヤシとしか言いようがない体格のウェイバーには耐えられ用も無かった。

 

「分かっておらんな坊主。勝利して滅ぼさぬ。制覇して尚辱めぬ。それこそが真の征服である。ただ勝利するだけの戦争に意味など無いわ」

 

 ライダーはそう言いながら、腰に差した剣を抜いた。

 何をするのかと見るウェイバーを傍目に、ライダーはその剣を何もない虚空に一閃する。

 放たれた剣閃、それはそれほど鋭いと言えるものではない。

 それは当然であり、攻撃を目標にしたものではないからだ。

 しかしてその剣閃は宙を裂く。

 虚空に刻み込まれた刃の痕。 

 そこから、雄々しい鳴き声が雷音と共に響き渡る。

 

「見物もここまでだ。我々も参じるぞ!」

 

 ライダーの言葉に反応したかのように、空に刻まれた一条の裂け目から何かが飛び出した。

 それは二匹の神獣が引く戦車型宝具『神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)』だ。

 しかもその神獣は『飛蹄雷牛(ゴッド・ブル)』という蹄から轟雷を発生させる事が出来、あらゆる地形を往くことができる。

 当然、空すらもだ。

 

 二匹の牡牛は神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)を主であるライダーの前で止める。

 そこは空中だ。

 しかし危なげなく止まった神獣達は、誇らしげに主の乗車を待つ。

 

「さて、坊主はどうする? 気に喰わぬならこの場所で待つか?」

 

「・・・・・・行きます。行かせてくださいばかぁ!!」

 

「よし、それでこそ我がマスターよ。ぬはははははっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

『我が名は征服王イスカンダル。此度の聖杯戦争においてはライダーのクラスを得て現界した!!』

 

 港近くの倉庫街。

 そこへ、爆雷を伴いながら空を駆ける牡牛が戦車(チャリオット)を引き、寸前まで戦っていたセイバーとランサーの間に着地、いや降臨し、そう告げた。

 

 

 

「アレが第4次のライダーイスカンダル、か。やっぱり本で見るよりも暑苦しいわね」

 

「えーそうかねぇ? 俺的には漢!って感じで結構好きだけど。寧ろああなりたい位」

 

「・・・・・・」

 

「何ですかその顔は。あそこまでガチムチじゃなくても、細マッチョイケメンになりたいという俺の願望を否定する気ですかそうですかこの野郎!」

 

「まぁ男になるのは別に構わないのだけれど、出来ればそのままの姿でなってほしいかなぁ・・・・・・なんて」

 

「男の娘になれと!?」

 

「そうそれ! それが良いと思うわ!」

 

 そんな戯言を言い合う俺とイリヤは、ライダーが向かった場所から遠く離れたビルの上で待機しながら見ていた。

 ちなみに、どうやって見ているかは簡単。文明の利器。

 来る場所が分かっているのならばカメラの設置は容易いというわけだ。

 マイクも設置してあるため音声もばっちり。

 それをイリヤと二人して並んで見ている訳だ。

 あと、ついでに録画もしているのだが、これはもしも伊丹先輩が居た世界に戻ることがあれば型月さんたちへの手土産にしようと思ったからだ。

 あの人たちなら飛び跳ねて喜んで、その上で新作創造に向かって走ってくれると思うから。

 

 

『うぬらとは聖杯を相争う巡りあわせだが、まずは問うておくことがある。一つ我が軍門に下り、聖杯を余に譲る気は無いか?』

 

 

 イリヤと話をしながら見ていると、ライダーは続けてそんなことを言った。

 ぶっちゃけて言えば、型破りも甚だしい。

 初っ端から真名を告げたこともそうだ。

 真名とは、己の生き様全てを知られることになるのと同義だ。

 俺の様なイレギュラーなら兎も角、過去に何かしらを成し遂げて称えられた“英雄”である以上、その成し遂げるために使った方法や武器、能力、そして弱点といったものもこの世に語られている。

 だから真名を知られるということは、相手に自身の攻略法を教えるに等しい。 

 だが、ライダーはそんなもの知ったことかと自身の名を言い放った。

 そこへ更に他サーヴァントの勧誘と来た。 

 仮にも第5次聖杯戦争に参加した身としては腹がよじれるほどだ。

 だが、嫌いじゃない。

 むしろそう言った型破りは大好きだ。

 というか、俺自身しょっちゅう滅茶苦茶やってるし、そもそも流儀とかよく分からんので、ライダー位突き抜けてると気持ちよく感じるほどだ。

 

 そんなことを考えていると、隣からフフっと笑い声が聞こえた。

 そちらの方へ顔をやれば、イリヤが楽しそうに笑っている。

 

「・・・・・・なにさ」

 

「いいえ、何でもないわ。ただ、楽しそうだなって」

 

 思わず俺はイリヤから目を反らす。

 何とも見透かされているようで恥ずかしく、頬に若干の熱を持つのを感じたからだ。

 

「私も嫌いじゃないわ。どこかの誰かさんみたいに全てをぶち壊してくれそうなあの破天荒さは」

 

「イッタイダレデショウネー」

 

「あら、自覚が無いのかしら。これはまた令呪の出番かもしれないわ」

 

「ごめんなさい」

 

「よろしい」

 

 思い出されるは令呪で悪戯された思い出。

 幾ら作戦上必要無くなったからってすかさずあんなことに使うなんてひどいと思う。

 しかし、この見た目で一人称が“俺”というのも変なのは確かだ。

 まぁ、変える気はないがな!!

 だってこれ以上俺のアイデンティティを壊したくないし。

 ネットのTS小説じゃ、容姿に合わせて一人称を私とか僕にするなんてのもテンプレだが、そんな風に意識すれば自身の根幹が女性寄りになりそうで嫌なのだ。

 まぁ、この状態で既に前世合わせて50年近く生きてるし、今更変えることも出来んけどね。

 ギリギリ許容出来るとしたら俗に言う爺言葉位だろうか。

 外からはロリBBAの言葉に聞こえて、俺自身は普通に御爺さん気分ってのは中々に良いように思える。

 ・・・・・・とはいえこれもあと20年は生きてから考えるか。

 

 さておき、そんなことを考えている間にも場は動く。

 

 流れとしては、ライダーの勧誘にセイバーランサー双方が当然ながら拒否を示し、なおも食い下がるライダーだがくどいと一蹴される。

 そこへ、ライダーのマスターであるウェイバーへ、何処からか攻め立てる言葉が届く。

 言葉を発する者の正体、それはランサーのマスターであるケイネス・エルメロイ・アーチボルト(推定年齢実は20代後半)さんだ。

 何故ケイネスがウェイバーに絡むのかというと、二人は魔術学校『時計塔』において教師と生徒という関係にあるからだ。

 しかも、ウェイバーが提出した論文をぼろくそに公開処刑したケイネスに彼はキレて紆余曲折の果てにケイネスが聖杯戦争に参加することを知り媒体も奪い取って代わりに召喚したのがウェイバーなのだ。

 つまり、今ケイネスが従者(サーヴァント)としているランサーは慌てて取り寄せた媒体で召喚した存在であるのだ。

 当然、自身が使うはずだった媒体をウェイバーが盗んだのだと知った彼は激おこである。殺す気満々だ。

 それをライダーがお前よりこっちの方が良いしとか言うもんだからケイネス先生もうムカ着火インフェルノォォゥしてる。

 

 まぁそれを笑いながらイリヤと見てるんですがね。

 

「私ああいう魔術師らしい魔術師って嫌いだから、いい気味だわ」

 

「まぁねぇ。原作知ってる身としては可哀そうな人にしか思えないんだけど、ドヤ顔してるところに冷や水浴びせるのは何処の世界でも面白いってのはあるあるだ。あ、これ某スカットする番組に送れるんじゃないか!?」

 

「魔術協会が泣くからやめて上げて。いやあそこが泣くなら良いのかしら?」

 

 士郎が魔術協会から封印指定されたり、イリヤ自身もされたり、俺もされたり、それを叩きつぶしたりしてるから、イリヤは魔術協会が嫌いだ。仲良くなった人も多くいるんだけどね。

 とはいえ魔術協会が色々と大変なことになるのは今の時代からすれば30年近くは先だから、今の協会にアレコレしても微妙に違うんだけど。

 まぁ在り方はそれほど変わってないだろうけどさ。

 

「そういえば、コウジュはあのお誘いに乗らなくて良いの? 憧れてるんでしょう?」

 

 思い出したかのようにイリヤがそんなことを言い出した。

 その顔はいつもの悪戯っ子なものに変わっている。

 ふむ、どうやら俺を弄る気らしい。

 よし。偶にはこちらから仕掛けてやろう。

 

「それは面白そうだけどさ。今の俺の主はイリヤだろう? 死んでもそれは変えないよ」

 

「・・・・・・ふん、前の世界ではイタミをマスターにしていたくせに」

 

「それは前だろうに。今の主はイリヤ。それを俺は変える気はないよ。そしてイリヤの主も今や俺だ。あ、これって比翼連理ってやつじゃないか? 二人は引き離せない運命にあるとかロマンチックだよな」

 

 俺は言いながら、イリヤを真っすぐ見つめて手を繋ぐ。

 するとイリヤはスッと顔を若干赤くしながら目を反らす。

 ふっふっふ、やられてばかりではないのだよ俺は。

 

 あ、そういえば何でイリヤと俺が互いを主にしているかというと、雁夜おじさんだと戦力にならないからだ。とどめ刺したのは俺だけど。

 けどその雁夜おじさんから令呪をキャスターとして召喚されたイリヤへと受け渡すことで、俺の主はイリヤで、イリヤの主は俺という図式が出来上がった。

 そうすれば雁夜おじさんは戦闘に参加しなくていいし、家で桜ちゃんの相手を出来るって寸法だ。

 だから、どちらかがもしも死ぬと、もう片方も死んでしまう状態だ。スケドあるから関係ないけど。

 前に士郎たちに負けたのは持っている数を調整しただけだしね。

 だからぶっちゃけ何回殺されても死ぬことは無い。

 生存チートと言われようが知ったこっちゃない。

 とある人・・・・・・人?も言っていた。勝てばよかろうなのだ。

 まぁそもそも、そう易々と死んでやる義理は無いけどさ。

 

 

「比翼連理・・・・・・、うん悪くは無いわね」

 

「あの、イリヤさん?」

 

 いつの間にか再起動したイリヤは、俺が掴んでいた手を逆に強く握り、放そうとしてくれない。

 

「そうよね、私はコウジュの人生のパートナー(・・・・・・・・)だもの。二人を繋ぐ見えない絆。しかも前の2重掛けだなんて幸せだわ。うん、悪くない」

 

 そんなことを喜色満面の笑みで言うイリヤ。

 ・・・・・・なんか思ってた反応と違う気がする。

 ま、まぁ、気にしない方向で行こう。

 なんか墓穴掘った気がしないでもないが、うん、大丈夫だ問題ない。

 

 気づけば、モニターの中ではライダーが、他にも覗き見している者が居るだろうと言っている。

 実際にそうだ。

 原作知識がなくとも、ライダーたちが居る場所の近くに他の気配らしきものを感じている。

 そして俺たち自身が、その覗き見している者の一部。

 これでもまだ出てこないならば征服王の侮蔑を免れぬものと知れ、なんてライダーは言ってるし、流石に出て行こうか。

 元々、この時には出ていくつもりだったのだ。

 

 とりあえず、一人で何やら人生設計始めたポンコツ状態なマスターの手を引いて気付かせる。

 

「さて、イリヤさんそろそろ行きませう」

 

「っと、そうだったわね。作戦通りで良いのよね?」

 

「ういうい。ド派手に行こうじゃねーですか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 セイバーとその主アイリス、ランサー、ライダーとその主たるウェイバーを見下ろす形で、街灯の上に現界したアーチャー。

 彼もまた、ライダーの挑発に答えてこの場へと参上した者の一人だ。

 いや、正確にはライダーの言い様に不満を持ったが為の現界というべきか。

 黄金を纏いし唯我独尊を形にしたようなそのアーチャーは、皆に蔑むような目を向けながら告げる。

 

「我を差し置いて『王』を称する不埒者が、一夜のうちに二匹も湧くとはな」

 

 傲岸不遜にそう言い放つギルガメッシュに、その場に居る者達は眉を(ひそ)める。

 いや一人だけ、ライダーはその言葉に頬をひと掻きして答えた。

 

「難癖付けられたところでなぁ、イスカンダルたる余は世に知れ渡る征服王に他ならぬのだがなぁ」

 

 ギルガメッシュはその答えが気に入らなかったのか、目を細めた後に更に言う。

 

「戯け。真の王たる英雄は、天上天下に(おれ)ただ一人」

 

 ギルガメッシュは言う、王を名乗って良いのは自分だけだと。

 それにライダーは問う、それほどに名のある王ならば名を聞かせろと。

 

 しかし、ギルガメッシュは鼻を鳴らすと、気分を害したとでも言うように言い放った。

 

「我が拝謁の栄に浴して尚この面貌を見知らぬと申すなら、そんな蒙昧は生かしておく価値すらない!!」

 

 言いきると同時に、その背後の空間から数多くの武器…宝具を現出させる。

 それらはライダーの方を向いており、今まさに打ち出そうと魔力を纏わせている。

 

 ライダーがそれに対して応戦しようと、腰の剣へ手を伸ばした瞬間―――、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■―――――――――!!!!!』

 

 

 

 

 

 爆雷の様な声が辺りへと響いた。

 そして続けて、鈴を転がすような、それでいてどこか蠱惑的な声がその場へと響いた。

 

 

「ほんと無粋よね。堪え性が無いにも程があるわ」

 

 

 ズドンと、皆より少し離れた場所へ何かが上空から降ってきた。

 それは着地と同時に地を割る巨体を持つ、大きな白い獣であった。

 各所に黒や黄金の装飾品を持つその獣は、成体の虎程の大きさを誇っていた。

 そしてその上には、銀の髪に紅い瞳を持つ女性が腰かけていた。

 女性は手に不可思議な杖を持ち、身には黒い軽鎧の上から紅い外套を羽織っている。

 

「ライダー・・・・・・?」

 

「馬鹿者が、坊主が呼んだ余がライダーであろうが」

 

「え、じゃあ誰だ!?」

 

 その降り立った獣と女性を見て、ウェイバーがボソリと零すが、すかさず横に居たライダーによって(はた)かれる。

 

「お主とてマスターの端くれであろうに。ほれ、色々と見えるのであろう?」

 

「そ、そうだった!」

 

 ライダーの言葉に慌ててサーヴァントのステータスを見るウェイバー。

 しかし、見て尚ウェイバーは首を傾げた。

 

「片方は・・・・・・キャスターだ。でも、アレは何なんだよ!? でもあの獣も間違いなくサーヴァントだ!!」

 

「何っ?」

 

 ウェイバーの言葉に、目を見開き驚きを露わにするライダー。

 獣にしか見えない筈のソレが、確かにサーヴァント・・・・・・“英霊”であるとウェイバーは言うのだ。

 その声が聞こえた他のマスター達も同じようにして、その獣を見る。

 しかし、確かにそれはサーヴァントとしての反応を示している。

 ただし、それ以外の全てが見えずにいるおかしな状況だ。

 

「クラスすら見えんとは、むぅ、摩訶不思議な英霊も居ったものよ」

 

「アレには声を掛けんのか? ライダーよ」

 

「掛けようも何もそもそもあれに言葉は通じるのか?」

 

 ライダーの呟きにランサーが言うが、流石のライダーもその獣に言葉が通じるのかすらわからず言い淀む。

 そんなやり取りを見て、獣の上に座っていた女性が地へと降り立った。

 

 その所作一つとっても麗しく、貴族としての教育を受けている事が見て取れた。

 ウェイバーなどはその様に見惚れてしまうが、慌てて首を振り、なけなしの威厳を保つためにその存在を睨みつける様に目をやる。

 

「始めまして皆さま。私の名はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。この度はキャスターの位を得て参上致しましたわ。以後お見知りおきを」

 

 言いながらカーテシー、貴族の所作で挨拶を行う女性(キャスター)・・・・・・イリヤ。

 その言葉を聞き、この場に居るものを含めて状況を見ていた数人が驚きに包まれる。

 一部は、登場の時点から目を疑っていた者も居たが、そんな訳がないと否定していたのだ。

 しかし、今まさにその当人が名乗った。

 

「そんな、こんな事って・・・・・・。それに、あの子はまだまだ小さな子どもなのよ。それが何で・・・・・・、でもこの感覚は――――」

 

 驚きに包まれて居た者の一人、アイリスフィール・フォン・アインツベルンが動揺を隠せずにそう口にする。

 それを聞きイリヤは少しだけ悲し気に、首を振った。

 

「間違いないわお母様。ただし、未来の私だけれど。ふふ、お母様より今の私は年上なのよこれでも」

 

「どうしてそんな事に」

 

 時代を越えて会うことが叶った母親に、イリヤは今度は優しげに微笑みながら告げた。

 

 

 

「私達は第5次聖杯戦争において聖杯を得し者。この子はその時からのパートナーであるバーサーカー。この第4次聖杯戦争でも聖杯を得るために未来からやって来たわ」

 

 

 そしてそれを聞き――――、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、嘘だ。こんな事があってたまるか・・・・・・」

 

 

 ――――そんな言葉が、倉庫街の片隅から聞こえてきた。

 

 




いかがだったでしょうか?

Fate/Zero定番、最初の邂逅でございました。
今回はまだ邂逅に至るだけですのでネタは少なめでございますが、さーて白いわんわんおっぽいものの正体は何でしょうね!
いやまぁバーサーカーとは言ってるんですがね・・・・・・。
しかしながら、この姿で行こうとするのも一応は意味があります。
吹いたら飛ぶようなレベルですが。
その辺りはまた次回ですね。


そういえば、ふと小説情報のある部分を見て驚きました。
このSS、ラノベ換算で大雑把にですが気づけば9巻分位の文字数。
一体誰がここまで書いたんだと自分ながら不思議な最近ですw
やっぱり継続は力なりですね。
文章力的なのも、これだけ書けば上がっていると良いのですが・・・・・・。


あと最近思うのですが、評価を頂く時の話なのですが、テンまじの評価って結構極端なものを頂くんですよ、まぁ上の方か下の方かなわけですが。
それでその時に下の方の評価を頂く時ってやっぱり神様転生のテンプレ部分の話当たりでの評価を頂くのですが、あれが結構なフィルターになってるんですかね?
どういうフィルターかはさておき、評価は評価でしかないので合う合わないでしかないとは思うのですが、微妙に知りたい今日この頃・・・。
うわ!神転だ! 逃げろ! 的な・・・?w
まぁでもあのポンコツ神様にもこれからも活躍してもらう以上、あの話を飛ばせないので無くすこともできないしどうしたものか・・・。
・・・・・・とはいえ、こんなこと言いながら結局好き勝手書いてるんでしょうけどねw


さて、それでは戯言はさておき、次回ですね。

次回、コウジュ死す。デュエルスタンバイ!

ってネタはもうした気がしますが、まぁハチャメチャな感じになると思います。
一部シリアルしてる人が居ますが、シカタナイネ。
ではではまた次回!!
お楽しみに!!





P.S.
FGOの今回のイベ、良い話でしたね。
そしてロリわk・・・・・・ランサー枠が一つ増えました。
無事に80まで上げて、シャンシャンシャーン♪してます。可愛い。
ただ、礼装が落ちない。
靴下がスクラッチもう終わるのに来ない。
あと一枚欲しいんだよ!! こんちくしょう!!
毎日お参りしてたらくれますかね・・・・・・(死んだ目



P.S.2
そういや、最近はFGOネタちょくちょく使ってますが、このSS見てる方でFGOしてる方ってどれくらいなんでしょうかね。
まぁ元々無節操なくらいにあちこちネタを使ってますし、自身の知らないネタも多いとは思いますが、そういったネタから原作が気になって手を出すなんて流れになっていれば幸いです。
あ、もちろんPSO2もですよ!
PSO要素ほとんど無いやんってツッコミ話の方向で・・・(目反らし



P.S.3
来週はひょっとすると投稿が少しズレるかもしれません。
リアル事情ですが、年末なのもあって色々忙しくて・・・。
遅くなった場合は申し訳ないです。

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