テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編 作:onekou
活動報告に書きましたが、遅れて申し分けないです。
最近こんなのばかりですが、お待ちしていただけていたと期待しつつ、投稿いたします。
あ、今回R15な表現が少しばかり入ってます。
こんなのまだまだと仰る方もいるかもしれませんが念の為・・・。
「・・・・・・どうしてこうなった」
「どうしたの?」
俺の背後、いや耳元から返事が聞こえてきた。
それは優しく耳たぶへと吐息を感じさせ、ゾクリと身体が震えてしまう。
「はむ」
「ひあっ!?」
自慢のケモ耳に柔らかくて温かい感覚が走り、思わず変な声が出てしまう。
すぐさま下手人へと振り向くと、目の前には微笑む美しい顔があった。
「フフ、随分と可愛らしい声が出たわね」
「耳を噛むからだろっ」
文字通り吠える様に返すが、下手人――イリヤは微笑むだけだ。
ぐるると喉を鳴らすも、イリヤはどこ吹く風と言わんばかり。
「ホントに抱き心地が良いわねコウジュは」
「うれしくないっての」
不貞腐れる様に言い捨てると、フフとまた笑う。
そのままジッとしていると、後ろから手が出てきて揉んできやがったのでペシリと叩き落とす。
「
「それこそ嬉しくねぇよ・・・・・・」
そう、俺は今イリヤに後ろから抱き付かれていた。
それも浴場でだ。
つまり、二人とも素っ裸である。
風呂に居るのだから当然と言えば当然だが、この広い浴場でどうしてこうなったのか。
それは俺がライダーとの戦闘を終えて帰ってきた時に遡る。
俺は、ライダー戦を終えてすぐにイリヤへと報告に来ていた。
場所は当然、拠点としている間桐邸だ。
そのリビングへ、俺の帰還を待っていたイリヤの元へと俺は戻った。
事前に念話していたこともあり、イリヤは優雅に紅茶を飲んでいた。
とはいえやはり心配してくれていたようで、その紅茶ももう何度も注ぎ足したものらしい。
それを教えてくれたのは雁夜おじさん少年(?)だ。
まぁ、それを言った瞬間にイリヤから銀糸で雁字搦めにされていたが些細なことだろう。
そして、そこからが問題だった。
イリヤは俺に近づいて、汚いと言い出したのだ。
ライダーの固有結界の中は砂漠なわけで、砂埃は山ほど浴びていた。
固有結界の一部なわけだから砂自体は消えるとはいえ、大規模戦闘を行ったのだから色々なものが付着している。
それ以前にも爆炎やら何やらも潜りぬけたし、今回に限っては服の再構成とかも行ったわけではないので、確かに汚れていた。
なので、俺はそのまま風呂に向かったわけだ。
風呂へと向かう俺は何気にルンルン気分と言って良い程に上機嫌だった。
ウェイバー君の言葉もあって気持ちよく戦闘を終えることができたし、何より間桐家の風呂はなんと檜風呂なのだ。
洋館なのに何故と思ったが、よく考えたら蟲爺さんは和服着てたし、あいつの趣味なのかなと納得しておいた。
しかも、浴槽のサイズもちょっとしたものだ。
流石は古くから続く名家。お金持ちである。
そして俺はケモだけどそれ以前に根幹である精神性が日本人であるため、檜風呂とか超テンションアゲアゲなのである。言葉遣いがおかしくなる程度には。
というわけで、勝利の風呂を味わうために浴場へと向かった。
ちなみに今更自身の身体に思う事などない。
既にアラフィフにもなるくらいには付き合って来た身体なのだ。とうに慣れもした。
なのでいつも通りに髪も身体も洗い、湯船へと繰りだした。
しかしその時、入って来る姿があった。
それがイリヤだ。
イリヤも今となってはアイリさんに似たモデル体型な美人さんだ。
そんな彼女が、タオルで前を隠してはいるが普通に入って来た。
そしてすったもんだがあり、気付けば俺は抱きかかえられていた訳だ。
今ここ。
いややっぱりどうしてこうなった・・・・・・?
「こんだけ広いのに、どうしてこうなるかね」
「嫌だったかしら?」
その言葉に俺がどう答えるかなどとうに知っているくせに、あえて聞いてくるイリヤ。
ああでも、イリヤはそう言ったものもあえて言葉にしてもらうのを好んでいるのは知っている。
「嫌ではないけど、ほら、年頃の娘さんなんだから慎みをだな」
「何それ、まるでおか・・・・・・おばあちゃんみたい」
とはいえ、素直に肯定するのも気恥ずかしいものだ。
肯定しつつもつい誤魔化しにかかるが、イリヤは仕返しにかそんなことを言いだした。
俺は再び振り向き、イリヤの頬へと指を当てる。
「おい待て何で言い直した? 言ってみ? ほれ言ってみ?」
「あ、こら、やめなさ、あんっ・・・・・・もう」
「んくっ・・・・・・えっと、なんかすまん」
イリヤの頬を突いていたら、何処とは言わんが互いに擦れてイリヤから妙に艶めかしい声が出てしまった。
幾ら女性の身体に慣れたとはいえ、今のは不意打ちであった。
数十年もこの身体で居れば、風呂やら何やらで自分以外の女性の身体を見る機会もそこそこにあった。
しかし、ソレとコレとは話が別というものだ。
ぶっちゃけて言えば生前も今も未使用なわけですので、そう言った刺激には未だに慣れる訳がないのでございます。
ただ触れるくらいなら、まぁ、慣れたというか擦れた気がする。
だけどさぁ今のはちょっと生々しすぎやしませんかねぇ・・・・・・?
あ、俺のは違います。
なんというかピリリとした感覚を我慢しただけですので、別に変な声は上げてません。
上げてないったら上げてない!
「・・・・・・」
「溺れるわよ?」
「ばびぼぶぶ」
何とも気まずい空気が流れたので、俺はいつもの様に帽子で顔を隠そうとするもここは風呂。被っている訳が無かった。
なので代案として姿勢を低くして湯船の中に顔を落す。
そう、顔が熱いのはお風呂の湯の所為であって、他意は無いのだ。
そう自分に言い聞かせながら沈む。
不思議そうにイリヤが声を掛けて来るも、そんな場合ではない。
一応、ビーストだからといって発情期というものではないと思う。
何十年もこの身体で過ごしている訳だが、どの時期が来たから身体がというようなことは無かった。
だが、戦闘後である故か、イリヤの今までに無い程のダイレクトアタック故か、身体が熱を持ち始めているのが分かる。
・・・・・・あ、そうか。戦闘後に高揚しているのってこれが初めてなのか。
だから、熱を持ち始めているのではなく、昂ぶりが冷え切らぬままだったという訳か。
ならば尚更今はまずい。
生物にとって発情期とは自然の摂理に沿って存在するもの。
しかし人間は自然から一歩離れたところで、自らの手で環境へ適応する能力を得たが故に普段はそれを抑え込んでいる。
だが、結局は抑え込んでいるだけなのだ。
人間の脳には本能を抑制する部分があり、それが獣と人間との差だ。
ならヒトは? ビーストという種はどうなのだろうか?
そう考えると、ビーストもまたヒトとなったことで本能を抑制する部分の脳は発達したと考えられる。
だが、それでも獣としての性質を残しているのがビーストなのだとしたら・・・・・・。
つまり何が言いたいかというと、理由があれば箍を外すのが人間ならば、つまり理由さえあれば発情期が来てしまうのが人でありビースト種。更に言えば、獣であるが故に一度火がついてしまえば抑制が効き辛いのがビースト種なのではないか?
そう、
「~~~~~~っ!!!!」
「こ、コウジュ?」
身体が更に昂ぶる、火照る、熱を持つ。
両手だけを大狼に変えて、自身の顔を思い切り挟み込んで押さえつける。
今までは刺激されてこなかった生存本能というものが、今更ながらに刺激されたのだろう。
今の俺は縛りプレイの様なものをしている状態なのだ。
そして、その状態で戦闘したが故に、思っていた以上に身体そのものが興奮していた状態だったようだ。
よくよく考えれば、此処の風呂にはもう何度も入っているのに、檜風呂とはいえあそこまでテンションが上がるのがおかしかったのだ。
そこへ来てのイリヤだ。
今の俺は精神は女を求め、身体は男を求めている。
つまり、対象が居ればそちらへと向いてしまう。
これは、ぶっちゃけマズい。
何がまずいかと聞かれてもよくは言えんが、かなりまずい。
「・・・・・・ふーん」
イリヤが、今の状態の俺を見て何を思ったのかそう口にした。
「えいっ♪」
「んあぅっ・・・・・・、な、何をするのかな?」
背筋をツゥっとなぞられる感触が走る。
その刺激に自分でも驚くほどの高い声が出てしまい、慌てて抑える。
そして少しばかり精神を落ち着かせてから振り向いた。
すると、ニヤニヤというかニマニマというか、とにかく面白い物を見つけたような表情をイリヤがしていた。
「これは据え膳よね」
これ、あかんやつや。
俺はすかさず跳ね起きる。
そしてその勢いのままに飛びあがり、天井を蹴って出口へと―――、
「
「ぬお!?」
イリヤの指から伸びるいくつもの鋼糸が、鎖の様に編み上げられ俺を縛り上げる。
両手が上で縛られ、足は足で下に纏められる。
お蔭で前も顔も隠すことができない。
すぐにググッと力を込めて引っ張るが、鋼糸は切れず、むしろ基点となっている壁や天井が軋みだす。
慌てて力を緩めてイリヤを睨むが、彼女は何も言わずに妖艶に微笑むだけである。
イリヤの鋼糸は当然ただの鋼糸ではない。
魔力を通すことで強化・操作を行えるアーティファクトだ。
しかも、場合によってはそれを剣の形に編むことで“剣”にしてアーチャーの能力でそれを強化することが可能だ。
それどころか鋼糸そのものに“剣”としての概念を付与して切断なんてことも可能である。
「あなたが操糸術を教えてくれたお蔭でこんな事ができるようになったわ」
「俺相手でなければ喜ばしいんだがね・・・・・・」
吊られている俺を怪しい雰囲気を漂わせながら見るイリヤに、ジト目で返す。
しかし、そんな事をしている最中も俺の身体は熱く火照ったままだ。
何せ、俺の目の前には絶世の美女が肌を一つも隠さずに居るのだ。
しかも妖艶な色気を漂わせていると来た。
「それにしても、どうして逃げるのかしら?」
「の、のぼせちゃったからだ。あー、暑いなー倒れちゃいそうだなー」
「嘘ね。貴方の耳が揺れているもの」
「嘘!?」
「勿論嘘なのだけれども」
「は、嵌めやがったな!」
「・・・・・・フフ」
何とか逃げ出そうとするも、逆に手玉に取られる始末。
今のなんてよくある引っかけなのに、こんなのにも思い至らない位に思考が平常ではない。
それにイリヤも確実に気付いている。
普段からイリヤはイジメっ子なS要素を見せることがあったが、今はいつも以上だ。
そんな彼女は宙ぶらりんな俺の臍へとゆっくり指を入れる。
「――っ!? な、何を、ひぁっ!?」
イリヤはそこから更に、ゆっくりゆっくりと指を下へずらしていく。
そして下腹部で止まった。
「ふーん」
「・・・・・・何だよ」
イリヤは、指を当てたまま興味深げにその場所を見る。
そんな彼女へと、身体を走る甘く鋭い感覚を我慢しながら言葉を吐くが、イリヤは聞いてもくれずに、何かを思案している。
それから少しの間、双方ともに無言となる。
とてつもなく、気まずい。
何せ、俺の感覚の全てがイリヤの指先へと集中していくのだ。
正確には、その指先の向こう側に在る器官。
そう、俺にも
生前の俺には無い器官が、子を育む為のモノがそこにはある。
そこがピリピリと、痒みにも痺れにも似た刺激を繰り返し産みだす。
そこへと意識がドンドン集中して行ってしまっている途中で、イリヤが唐突にトンとその場所を叩いた。
「っ!? ・・・・・・ああ、あれ? 楽になった?」
「治療魔術の一種よ。たった今組んだものだけれど」
そう言ってイリヤは鋼糸も解き、それに合わせて俺は床面へと降り立った。
俺は首を傾げながら自身の下腹部を触る。
しかし先ほどのような甘い熱は全く起きない。
そう、それはまるで賢者タイムの様な―――、
「あまり使うべきではないのでしょうけど、沈静化させるための物よ。今の貴方が相手だと二人ともに後悔しちゃいそうだし」
後悔?
その言い回しの意図が分からずイリヤへと目を向けるが、イリヤは気にするなと頭を振った。
「こちらの話よ。それにしても、やっぱり精神の昂ぶりを抑えきれていなかったのね。それも制限の所為?」
イリヤの言葉に、俺は静かに頷いた。
「だと、思う。よくよく考えれば、今までは昂ぶってもすぐに他の事へと意識が行くか、そもそも戦闘内で発散しきれていたから」
今更ではあるが、今の俺は性能の一部が制限された状態だ。
それが
第5次聖杯戦争の時の俺は、あらゆるものが足りず、神としても不完全で、チートを持っただけの一般人と言っても過言ではない。
だから、“バーサーカー”というクラスに当て嵌まることが出来たのだと思う。
だけど今は違う。
英霊用の召喚システムに、神そのものを内包しうるだけの性能は無い。
その為には、その枠に収まるようにある程度を削ぎ落すか、システムそのものを改造するかだ。
正直に言えば後者も可能ではあった。
だがそうしてしまうと、そもそもの
それではいけないのだ。
あくまでも俺は“バーサーカー”という枠に入る必要があった。
故に、削ぎ落した。
正確には
さておき、その結果が先程の俺だ。
冷静になった状態で考えれば、先にイリヤに言ったように貯めこんだとしても発散することが出来ていた。
もしくは、狂化に至るまではいかなくても、獣化などによって振り切れていた。
だが、今の俺は精神的にもある程度成熟し、能力の暴走を抑えることが出来ている。
その結果、ぶっちゃけて言えば溜まっていたのだろう。
そこに、やはりライダーとの気持ちの良い戦闘による昂ぶりが積み重なり、更にイリヤによる刺激が加わったことで思考が一気にそっちへ行ってしまったのだろう。
身体的興奮と性的興奮は厳密には違うのだが、身体の神経系が活発になっているのには変わらない。
いやぁ、助かった。
ひょっとしてこのままイリヤに喰われるのではないかと思ってしまった。
喰うのは俺の専売特許なわけだが、先程のイリヤからは言い知れぬ圧を感じた。
基本的に俺が宿す獣性は肉食系のものだが、まるで草食系の動物にでもなった気持ちであった。
狼に対する羊の様な・・・・・・。
ま、まぁ、それはさておきだ。
何はともあれイリヤのお蔭で思考も戻って来た。
なら、焦って出る必要は無いか。
変な汗をかいた所為で、もう一っ風呂浴びたくなったところだ。
「まったく、イリヤのいじめっこ体質には困ったものだぜぃ。初体験が女の子同士になるかと思った」
そう口にしながら、俺は再び浴槽へと身を沈めた。
はぁ、気持ちいい。
それは先程の様な暴力的な快感ではなく、何処までも気が休まる気持ちよさだ。
風呂は心の洗濯とは良くいったものだ。
まるで身体が溶けていくような気さえしてくる。
先程までの妙な緊張感も無い為尚更だ。
ほんと、先程の異常はマジで焦った。
こんな弊害があるとは思ってもみなかった。
いや、思ってなかったからこそ起こったこと、だろうか?
ああまったく、ままならない。
早く残る二人を倒して、次に
そして早く制限を外さないと。
下手をすれば第5次の時以上の暴走を起こす可能性も出てきた。
また今回みたいなことになって、それこそイリヤと致してしま
「まぁ私は一向に構わないけれどね」
・・・・・・え?
◆◆◆
「切嗣、話って何かしら?」
「ああ、アイリ。まずはここへ座ってくれ」
冬木におけるアインツベルン城、その一室にて、切嗣は呼んでいたアイリをとある席へと招く。
その席には一台のノートPCが置いてあり、画面には幾つかの映像が映し出されていた。
「これは・・・・・・バーサーカー?」
「そうだ。これも、これも、全てだ」
都合4つの映像、その全てにコウジュが映っていた。
勿論それは全てが違う場所であり、場面も違う。
だが、それはおかしなことであった。
「でも切嗣、これ変よ。だって全て同時刻ですもの」
「そう、
画面の一つ、丁度切嗣がバーサーカーと話している用の映像が中にはあった。
それは事前に切嗣が用心に用心を重ね、配置していたものの一つであった。
配置とは言っても固定式のものではなく、魔術による使い魔に機械式のカメラを埋め込んだものを使い撮影したものだ。
そしてそれを、切嗣の助手である久宇舞弥の元にも配置してあり、他の映像に関しても似たような状況で撮影したものだ。
だからこそ、おかしかった。
その全てに同一人物が映っているのに、その全てが離れた場所なのだから。
そして問題は、切嗣が相対した相手が偽物には思えなかった事、舞弥が襲って来た言峰綺礼から助けてもらったコウジュも本物にしか思えなかった事、ホテル内でランサーたちと相対しているコウジュも偽物にしては大それた力を使っている事、そして最後の一つも、ただ街中を歩いているだけであるが、だからこそそんなことをする意味が分からない。
「恐らく、この程度は難しくないということなのだろう」
「そんなことって、在り得るの?」
「・・・・・・分からない。不死の伝説を持つ英雄や多様性を持つ英雄、空間を移動する英雄は居ない訳ではない。だけどその全てを合わせ持つとなると、見当も付かないよ」
バーサーカーから齎された情報には、ご丁寧に自身の陣営の情報は無かった。
そこで書いたらかいたで切嗣は内容を疑うか、頭を疑うしかなかった。
故に未だ以てバーサーカーの正体に切嗣は至っていない。
ただ分かっているのは、間桐家を拠点としている事。
そして、あの二人が互いをマスターでありサーヴァントとする契約を結んでいる事。
だから片方を落せば、どうにかなるとまでは分かった。
とはいえ、それによる利点も確かにある。
見る限りでも規格外であり、その正体も分からないとなれば難しいものが有った。
「そんな存在を、イリヤは召喚したのね」
切嗣の言葉に、アイリスフィールは悲し気に呟いた。
しかし切嗣は、その言葉に何も返すことが出来なかった。
切嗣は、チラリとこの部屋に居るもう一人の存在へとばれない程度に目線を向けた。
彼女が彼のサーヴァントだ。
だが切嗣は、彼女をあえて無視していた。
その在り方に対して拒否感があったのもそうだが、あくまでも魔術使いとして彼女すら道具と割り切る為、冷徹にその存在を切り捨てた。
セイバー――――その真名をアルトリア・ペンドラゴンという。
彼の名高き騎士王、アーサー王その人だ。
伝承では男として言い伝えられたが、実際には男装をしていた少女であった。
しかし、少女と言って侮れはしない。
その伝承に相応しい力を内包した存在だ。
人の身には余る奇跡の存在とも言える。
そして、自身の娘もまたそんな存在になり、更には使役する存在もまた奇跡の塊だ。
はっきりといって分が悪かった。
単純計算でも、英霊の数で言えば2対1となる。
切嗣もそれなりに戦いの心得は持っているが、対英霊となるとそうも行かない。
そこには隔絶した差があるのだ。
更に言えば、イリヤとバーサーカーの間には、切嗣が必死に無視し続けた絆があった。
それは眩しくも、切り捨てなくてはならなかったモノだ。
それが今、娘と共に自身の前に立ちはだかっていた。
戦力も破格の物だろう。
バーサーカーから齎された情報でアーチャーの正体は分かった。
その宝具についても理解した。
アレもまた、規格外の存在だ。
そんな存在と、イリヤは一時的にとはいえ渡り合うことが出来ていた。
その様な可能性が、確かに存在するということだ。
だがその可能性を、イリヤは不幸に思っているようには見えなかった。
むしろ、バーサーカーとの出会いを幸福に思っている節さえ見られた。
切嗣が否定したがっていた未来の筈なのにだ。
これでは切嗣が目指すモノの意味が分からない。
争いを無くし、更にイリヤに血塗られた世界から抜け出せるように、その為に自身だけでなく妻も舞弥も、それ以外の全てを必要な犠牲と切り捨てて来たはずだったのに、それが今更になって立ちはだかった。
だが、いやだからこそ、ここで立ち止まれはしない。
少なくとも、その未来は作れる。
そして、その未来を知った上で願いを叶えることができると分かったのだ。
聖杯が汚れている?
ならばそれを見越して使えば良い。
バーサーカーから齎された情報が確かなら、未だ以て
在ると分かってしまえば、どうとでもできる。
その程度で、衛宮切嗣は諦めはしない。
「
いかがだったでしょうか?
サブタイの元ネタが分かる方は一緒に「まじやばくね?」と言いながらカンナを愛でましょう。
それはさておき、序盤は少しばかり悪ふざけが過ぎた感もあります。
しかし書き始めたら筆が進む進む。
そして、最終戦に向けた伏線もしきつつ、ちょっとTS要素?百合要素?が混ざってしまいました。
「こんなん求めない!」と言われるか「良いぞもっとやれ!」と言われるか、戦々恐々としておりますが、出来れば後者だと嬉しいな、なんて・・・・・・w
後半・・・というか最後方では切嗣陣営について少しばかり描写しましたが、自分ながら切嗣の心理描写をもう少し入れるべきだったかなと後悔中・・・。
一応最終戦でもう少し書くつもりではありますが、やはりまだまだ群像劇を書くには構成力のレベルが足りないようです。
しかしその辺りも昔よりはマシになっている筈だと思いつつ、もう少し続けていきますね。
それでは、また次回もよろしくお願いします!!
P.S.
いつも誤字修正してくださる皆さま本当に助かっております。
もっと余裕をもって書けばいいとは思うのですが、甘えてばかりの私をお許しください。
前回は少なかったぜ!等と一人自画自賛していたのですが、後になって考えればそもそも出すなよという話なので、今後も精進していきます。
でもホントに素で見逃している時もあるので助かっております。
足を向けて寝れません;;