テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。
おまたせしました。
なんとか今週は行けました。

というわけでどうぞ!!


『stage21:最終鬼畜少女全部俺』

 

 

 

「天の鎖よ」

 

 ギルガメッシュが、静かにそう告げた。

 

 周りを囲うのは、黄金の鎖。

 この光景を見るのも2度目となる。

 獣化しているのもあり広がった視界では、逃げる隙間が無い程に天の鎖(エルキドゥ)が自身を覆っているのがよくわかる。

 絶望的、そう言うべき有り様だ。

 もう少し慢心してくれるかと思ったのだが、思っていた以上に俺を狩りに来てくれているらしい。

 これはこれで喜ぶべきなのだろう。 

 自身が英雄王に、全力かはさておきここまで警戒されているわけなのだから。

 そう思ってしまえば、不思議と笑みも零れる。

  

 でもまぁ、こう来る可能性は考えていた。

 むしろ考えざるを得なかった。

 なにせ、俺にとって対ギルガメッシュ戦で最も注意しなければいけないのがこの“天の鎖”だ。

 神性が高ければ高い程に強度が高まるというこの鎖は俺からすれば天敵以外の何ものでもない。

 神性を持っていたとしても類い稀なる技術が有れば避けることも可能なのだそうだが、お生憎様、俺はバーサーカーであり、大層な技術なんてものは無い。

 俺は基本直感頼りで、身体の動くままに力の限り振るっているだけだ。

 だから、戦闘経験をある程度積んでいるとはいえ、神性が上がっている上に死ぬことも出来ない現状では、本来なら(・・・・)一度捕まれば即終了だ。

 

「ウロボロス!」

 

 加速補正を掛ける神杖ウズメを消し、刃に触れたもの全てを飲み込む邪鞭ウロボロスを代わりに出す。 

 俗に言う蛇腹剣であり、永劫回帰や無限を意味する名を冠するそれは、名に相応しい長大な射程と威力を秘めている。

 この剣ならば、剣撃の結界とまでは言わなくとも、その広い射程で自身を覆うことでかなりの範囲をカバーできる。

 そして何よりも、この剣ならば当てるだけで天の鎖を消し飛ばせる。

 

「っるぅアああアぁ!!!!!」

 

 手の中に新たな感触が産まれると同時、我武者羅に振り回す。

 ジャララっと音を立てながら伸びた剣閃は差し迫る天の鎖に触れては喰らっていく。

 

「貴様ぁっ、我が友を!!」

 

 その様を見て、ギルガメッシュが激高する。

 彼の唯一無二の友であるエルキドゥの名を持つ鎖は、彼が信頼する宝具の中でも1、2を争うものだ。 

 それを目の前で消し飛ばされれば怒るのも当然。

 ギルガメッシュはヴィマーナの玉座から立ち上がり、俺を睨みつける。 

 そう、それで良い!!

 

 俺は迫りくる天の鎖へとウロボロスを叩き付けながら、一歩を踏み出す。

 ギルガメッシュまでの距離は10メートルほど。

 いつもの俺ならば一歩もあれば余裕で辿り着ける距離だ。

 しかし、今はその一歩が遠い。

 今の姿ならば一歩も増えている上に脚力も上がっているから防がせる暇も与えずに肉薄できるはずなのに。

 

「ぜぁああああ!!!!」

 

 左に持つ杖の効果で、冷静に迫る鎖を見ながら処理していく。

 当てればいいとは言うが、それは向こうも同じだ。

 この鎖に掠りでもすれば、俺の動きは封じられる。

 だからその前に、少しでも近づかなければならない。

 

「・・・・・・小賢しい」

 

 しかしそんな俺をあざ笑うかのように、鎖の動きに変化が生まれる。

 ギルガメッシュが手腕を用いて鎖を誘導しだしたのだ。

 どこぞの千本桜さんじゃないが、やはり腕を使っての操作をすれば尚のこと精密な動きを生み出せるのだろうか。

 先程よりも鎖の速度、動きにキレが増す。

 

 再び、生きた蛇の如く幾本もの鎖が俺へと迫る。

 先程までと違いただ俺を囲う様にしているのではなく、カクカクと急角度で軌道を修正しながら宙を走る。 

 

「・・・・・・っ」

 

 ただ振り回すだけでは対処が追い付かなくなり始めた。

 偏差射撃の如く、鎖の軌道をある程度予測しながらでなければ処理ができない。

 そして何よりも、徐々に鎖の数が増えている。

 飛んで避けることが出来ないのもまた辛い。

 ヴィマーナという足場があるからこそ、まだ真下からというギルガメッシュの選択肢は消すことが出来ている。

 

 この距離は、あちらさんにとっても射程圏内だ。

 ギルガメッシュの天の鎖は、奴自身から離れた場所でも射出できてしまう。

 それは数ある登場作品でもそうなのだが、実際に体験してみればこれほど厄介な物も無い。

 

 また一歩、進む。

 

 ああ、やっぱ凄いな英雄ってのは。

 これだけのチートを使っていても、そう易々とは届かない。

 

 確かに、こうして面と向かって挑まなければ勝てるだろう。

 遠距離からの狙撃や砲撃、弓やら剣やら槍やら、手段としては幾らでもある。

 だけどそれじゃぁ意味が無い。

 まぁほとんどの方法が地形ごとぶっ飛ばすから選べないというのもあるが、場所を選べば出来ないことも無い。

 だけど、それでも駄目なんだ。

 

 今回の世界での目標は、主軸はイリヤの両親含めたZeroとしての過去を変えるための物だ。

 その為に策を弄し、似合わないと自覚しながらも作戦を練りに練った。

 だから正直に言えば、このギルガメッシュとの戦いは俺の我が儘だ。

 一度でも良いから勝ちたいんだ。

 前は、勝てなかった。

 いや、勝とうとしなかった。

 勝てるイメージが出来ないからと、他の皆に助けてもらった。

 最初の聖杯戦争は、色んな人に助けてもらって、やっと思うように終わらせることが出来た。

 勿論それ自体に後悔は無い。

 もっと上手くできた可能性は大いにあるが、あの結果は自分なりに満足している。

 ただ、ギルガメッシュ・・・・・・あの英雄王にだけは、自ら不戦敗を選んだようなものだと、奇妙なしこりがあったんだ。

 イリヤには考え過ぎだと、気負い過ぎだと苦笑されたさ。

 でもさ、相性が悪いから仕方ないだとか、やっぱり五次のバーサーカーは英雄王に負けるだとか思われたくないじゃんか。

 イリヤの英雄になるって決めたのに、負けっぱなしは嫌じゃんか。

 面と向かって言われたわけじゃないけど、自意識過剰なだけだろうけど、でも、自信を持って胸を張りたいんだ。

 イリヤのサーヴァントは最強だってさ。

 

 また、一歩――――

 

 

「そこまでだ、雑種」

 

「っ!?」

 

 理性を保つための杖が弾かれる。

 俺は慌てて、獣化―――正確には龍獣化か―――を解く。

 暴走をしては意味が無い。

 止めて貰うだけの戦力も無ければ、令呪による停止も今は期待できない。

 

 

「うっあぁああああああああああ!!!!!」

 

 

 一気に処理が追いつかない様になり、包囲が狭まる。

 だから少しでも前へと進める様に、最後の力を振り絞ってウロボロスを前へと振り、ギルガメッシュまでの道を切り開く。

 その小さな隙間を縫う様に、今だけはこの小さな体躯に感謝して、そこへと身体を滑り込ませる。

 

 だが―――、

 

 

「無駄だと言った筈だ」

 

「ぐ、ぎっ・・・・・・」

 

 気付けば腕に天の鎖は絡まり、次の瞬間には全身を縛り付けられる。

 飛び込むために手を伸ばした姿勢のまま、俺は宙に浮いた状態で繋ぎ止められる。

 

 あと一歩、そこまで行けば使える(・・・)のに、あと一歩が届かなかった。

 

「肝を冷やしたぞ」

 

 そうギルガメッシュは口にするが、その顔には余裕の笑みしか浮かんでいない。

 

「所詮はケダモノよな。狂戦士(バーサーカー)のクラスに恥じぬ獣ぶりよ」

 

 言いながら、ギルガメッシュは再び玉座へと座る。

 再び距離が開く。 

 

「ふん、少しはやりがいがあるかと思ったが、少し力を出せばこんなものか」

 

 何だよ、それ。

 

「結局のところ、聖杯は我を選ぶというわけだ」

 

 これで終わりだってか? 結局届かないってことか?

 ギルガメッシュは既にこの聖杯戦争を終えたつもりで話し始めている。

 俺はまだ生きている。

 イリヤだってまだ頑張ってる。

 なのに、何を終わったつもりで話してるんだよ。

 

「ぐ・・・・・・るぅっ・・・・・!」

 

「止めておけ。それほどの神性を持っているのだ。身動き一つ取るだけでも相応の負荷が掛かっているだろう。確かに貴様は馬鹿力を持つようだが、先程とは違い今のその身では鎖よりも先にその体躯が引き千切れるであろうよ」

 

 無理矢理に身体を前に動かそうと鎖を引っ張るが、鎖の前に自身の身体からブチリブチリと嫌な音が聞こえる。

 言葉一つ出そうとするだけでも、馬鹿みたいな労力が要る。

 前は死ぬこと前提でこの鎖を受けたから抵抗する必要は無かったが、いざ抵抗しようとするとこんなにも儘ならないのか。

 

「うぅ、ううううううううううううううううう!!!!!!!!!!!!」

 

「これ以上の無様を曝すな。仮にもこの我へと挑んだ者が、挑戦者と認めた貴様がソレでは我の沽券に係る!!」

 

「うぅ!?」

 

 鎖の締め付けが強くなる。

 先程以上に身動きが取れなくなる。

 呼吸一つとっても、思う様にいかなくなる。

 

 ぶっちゃけて言えば、ここで負けようとも大丈夫なようにはしてある。

 当然だ。

 幾らバーサーカーで脳筋だと言っても、流石に学習する。

 保険はある。

 だけど、また負ける? 

 ここまでしても?

 

 だから、それじゃぁ、意味が無いんだってば!!!!!!!!!!

 

 

 

「ぐ、るうううううううううううううううううううううううううううううう!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 ブチリ、ブチリと音がする。

 皮膚組織が、筋肉が、神経が、骨が、千切れる音がする。

 致命傷。故にすぐさま回復が始まる。

 回復薬(メイト系)を使っての回復とは違い、治るスピードは遅い。 

 だから、千切れては治り、千切れては治り、今にも意識を失いそうになるほどの痛みが俺を支配する。

 だけど、その痛み故に飛びそうになる意識が回復する。

 

「・・・・・・狂戦士が。そこまで意志は変わらんか」

 

 俺に向かってギルガメッシュが何かを言うが、それどころではない。

 泣きそう。

 マジ泣きそう。

 いやもうなんか目元から汗が出てる気もしているが、もうそんな物にすら感覚を回す余裕がない。

 それは勝つことに意識を向けるため。

 涙が出ようが腕が引き千切れようが死んでしまおうが、それでも勝つ。

 だって俺はバーサーカーだ。

 イリヤのバーサーカーだ。

 ここで折れちまえば、2度も負けてしまえば、絶対にもう俺の意識は英雄王に勝てない。

 俺の力は思いが力になる。

 だけどその思いが負けていたら、力もその程度になってしまう。 

 しょうもない意地だと笑うならば笑え。

 でも、英雄として狂戦士であるしかない、意地を通すことしかできない俺が逃げてしまえば、もう俺はイリヤの英雄(オレ)で居ることが出来ない気がするんだ。

 

 だから!!!

 

 

「あああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」

 

 

 右前腕から断裂、左股関節から先は無い、左腕は繋がっているも脱臼の上に神経系が千切れた。

 でも片足が有れば届く!!

 

 

「死を厭わず前へ進むか。その意地汚さには敬意を表しよう」

 

 

 そう静かに口にするギルガメッシュはもう目の前だ。

 これで―――、

 

 

「が、甘いわたわけ」

 

 

 ギチリ、と再び俺を縛る天の鎖。

 今度は猿轡の如く、口まで押さえつけられる。

 首にも黄金の鎖は掛かっており、これでは抜け出そうとしても死ぬだけだ。

 死んでしまえば意識がどうとかという話ではなく、その一瞬で俺は今度こそ無力化されてしまうだろう。

 これ以上は動くことはできない。

 

「はっ、獣にはやはり首輪が必要なようだ。貴様ほどであればこの我が飼ってやらんことも無い」

 

 目の前で縛られる俺を見て、愉快そうにそう言うギルガメッシュ。

 見た目はともかく、中身が男な俺を飼うだなんて趣味が悪いぜ。

 当然お断りだ。

 それに、

 

 

 

 

 ――――俺の勝ちだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『獣の軍勢』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 ギルガメッシュは、目の前で捕えた獣を冠する神を睥睨しながら抑えきれぬ愉悦を露わにしていた。

 愉快、痛快、世界に存在する全ての享楽を知っているとされるギルガメッシュをしても、これほどまでの愉悦は久方ぶりであった。

 神だ。

 人間の支配者だと勘違いしてやまない、あの神だ。

 

 太古の昔、ギルガメッシュはウルクという都市国家を納める王であった。

 同時に、あらゆる英雄たちの王でもあると言われている。 

 それは、諸説あるが彼が数ある伝承・神話の元となったとも言われているからだ。 

 故に、人類最古の英雄王。

 それほどまで言われる彼には、数多くの逸話があった。

 そしてその中でも、神との間に起こる諍いは彼を語る上で切っても切り離せぬ物であろう。

 

 彼にとって“神”は、自らの有り様を歪めるまでに憎い相手であった。

 彼自身半神半人(正確には3分の2が神、3分の1が人間)であるが、その憎しみ故に本来A+である筈の神性はBランクにまで低下している。

 それほどまでに、憎しみを向ける相手であった。

 神によって生み出された。

 神によって使命を与えられた。

 神によって王とされた。

 神によって友を与えられた。

 神によって、友を殺された。

 神によって―――、

 人間を愛する彼にとって、神とは斯くも不快な存在であった。

 

 彼自身、総てにおいて善良で在った訳ではない。横暴な性格も持ち合わせていた。

 神から諫める意味での介入も数多くあった。

 だが、彼は神とは相容れなかった。

 神によって生み出され神に愛されながらも、彼は人に寄り添い、“神”を毛嫌いしていた。

 

 そんな来歴を持つ彼だが、今回参加した聖杯戦争に於いては、珍しく興味が湧く神が居た。

 ソレ(・・)は見目も良く、神らしい神気を放っていた。

 本人は隠そうとしていたようだが、ギルガメッシュからすれば拙いものだ。

 ヒトという枠に入り込み、不器用にも一人の“英雄”として聖杯戦争に参加していた。

 そうして少しずつ、いつもならば唾棄している所の神を()た。

 益々興味が湧いた。

 そしてその有り様にも気づいた。

 どこまでも不器用で、何処までも神らしくない、何処までも“神”としての資質はある獣だ。

 ああ、アレを飼うのはどれ程の愉悦だろうか。

 アレを染めたならばどうなるだろうか。

 そんな、彼としても珍しい興味が湧いた。

 

 そして実際に捕まえた。

 

 捕まえた、筈であった。

 

 

 

「何だ、これは・・・・・・」

 

 

 

 ギルガメッシュが見渡すとそこは、宇宙と言い表すしかない場所であった。

 しかし、明らかに天体が違う。

 天体どころか、明らかに人工物である天体程の大きさを誇る何かもそこにはあった。

 足元は魔法陣の様なものへと変化している。

 先程まであったヴィマーナすらそこには無い。

 そして、宇宙であるように思えるが当然の様に空気は存在する。

 

 ギルガメッシュの脳裏に浮かぶのは、“固有結界”という単語。

 だがそうではないとすぐさまその思考を破棄する。

 

 固有結界はそもそも、術者の心象風景を現実世界へと捻じ込む所業だ。 

 常に世界からの修正を受けるため不安定であり、一部の例外を除いてではあるが、世界として成り立つ物ではない。

 だというのに、ギルガメッシュの感覚からしてここは世界として成り立っていた。

 言うならば、先程までの場所とは世界が変わったという感覚で在った。

 

 

「何だこれは?」

 

 先程の漏れ出た言葉とは違い、疑問を持って出した言葉。

 それを向けられるのは、当然ながらコウジュであった。

 彼女は未だ、ギルガメッシュの傍で鎖で縛られていた。

 そちらへと目線をやるギルガメッシュ。

 そのままでは話せないため、彼は口元の鎖だけを解いた。

 コウジュは、口が解放されてほっとした表情をした後にギルガメッシュへ向き直った。

 

「ようこそ、俺の世界へ」

 

 縛られながらも、先程までと違いどこか余裕のある表情でそう返したコウジュ。

 そんな彼女に、ギルガメッシュは訝し気な顔をする。

 天の鎖で縛られている。

 四肢も満足に機能していない。

 しかしそれを感じさせない。

 笑みすら浮かべる程であった。

 

「貴様の世界だと?」

 

「応とも。ここは俺の心象世界・・・ではなく、内包世界。漸く、形に出来たんだが、あんたが初のお客様だ」

 

 そう、何でもないかのように言うコウジュに、ギルガメッシュは珍しく驚きにわずかであるが眼を見開く。

 それは在り得ないことであった。

 自らの領域を持つ神は居る。

 だが、自分の中に世界を持つ神は存在するはずがないのだ。

 近い存在として、世界を生み出す神は居よう。

 創造の権能を持つのであれば、世界を生み出すことは可能ではある。

 だが、内側に世界があるなど、その様な意味も無く、そして神としての在り方と反する存在は聞いたことが無かった。

 

 神族という存在は、世界を運営し信仰を持たれることで存在を保つ。

 逆に言えば、信仰を向けられなければ世界がそれを否定してしまう。

 故に、神は人と自身達を結び付け続けようと幾つもの策を弄した。

 それが成功したかどうかは、現代を鑑みれば察すことは容易いが・・・・・・。

 

 それはともかくとして、だからこそ、世界を内包するというのは神にとって意味の無い事だ。

 神にとって、世界と共にあって初めて運営を行える。

 だというのに、見るべき器を自分の中に入れ込んでしまっては意味が無い。

 そして神とは、無意味を嫌う傾向にある。

 どれだけ小さな規模であれど、世界を内包するというのはそう容易いものではない筈だ。 

 そんな無駄な労力を、良くも悪くも気分屋である神が行うはずがないのだ。

 

「どこまでも、貴様は矛盾しているな」

 

「え、まぁ、確かにそうだけど」

 

 分かっているのか分かっていないのか、ギルガメッシュの言葉に是と答えるコウジュ。

 そんなコウジュの姿に、思わずギルガメッシュも笑みを浮かべた。

 

「はっ、当の存在が無知と来たか」

 

「ううん? なんかディスられてる?」

 

 ギルガメッシュが笑うのを見て首を傾げるコウジュ。  

 なぜ自分が笑われているのか見当も付かないようで、そのことにまたギルガメッシュは笑いを隠せずに居た。

 

 そして少しの後、漸く笑いが収まったギルガメッシュは、再び口を開いた。

 

「さて、貴様はどうやってこの盤面を覆す? 内包世界か、良いではないか。しかし当の貴様がその状態ではな」

 

 ギルガメッシュの言葉はもっともだ。

 

 文字通り世界は変わった。

 コウジュの世界に連れ込まれたのだ。

 しかし、当の本人はギルガメッシュの前で縛られたままだ。

 神性に比例して拘束力を高める天の鎖は身体だけではなく首にまで掛かり、先程の様に無理に脱出しようものなら首が千切れ飛ぶことは必至だ。

 そもそもが、手足が足りていない。

 元々具わっている回復能力ゆえであろうか、少しずつ回復しているようだが、いつか見たような劇的な回復速度ではない。

 未だ以て、コウジュがギルガメッシュに届きうるようには見えなかった。

 

 だがそれでも、コウジュは笑う。

 

「どうやって? そんな物は簡単さ。よっと・・・・・・」

 

「何っ!?」

 

 軽い言葉と共に、自身に巻き付いていた鎖の呪縛を引き千切ったコウジュ。

 それを見て、今度こそギルガメッシュは驚きの声を上げた。

 そしてその隙を突き、コウジュは予め仕込んでおいた回復薬のカードを唱えて、器用に口だけでラッパ飲みして見る間に姿を元の物へと戻した。

 

 その姿を見ながら、ギルガメッシュは気づいた。

 先程まで無駄にあった神性が全く感じられなくなっている。

 それはもう、別人と言えるほどに。

 

「ふふーん、気付いたかな。神性は抜き出した。だから今の俺は、ただのヒトなのさ」

 

「・・・・・・馬鹿か貴様」

 

「なんでさ!」

 

 ギルガメッシュの言い様に声を上げるコウジュ。

 だが、コウジュは理解していない。

 神は、神性がある故に自身を保てる。

 そんな自身を形成する核を捨てるなど、自殺でしかない。

 自信が自身である為の要素を捨てるなど、意味消失の未来しかそこには無いのだ。

 

 だがそこでふと、ギルガメッシュの思考に引っかかるものがあった。

 目の前の神がどんな存在であったか。

 この数日の間だけでも、どれだけの側面を見せていたか。

 それが、一つ思い起こされれば、芋蔓式に思い出すことが出来た。

 

「・・・・・・そうか。そうか! 貴様、自らの因子を切り分けたな!?」

 

 その言葉に、コウジュは浮かべていた笑みを消した。

 そして、溜息を一つ吐く。

 

「ちょっとネタバレが早すぎませんかねぇ。まぁ正確には違うんだけど」

 

 ゾワリ、とギルガメッシュの直感に警鐘が鳴った。

 その直感に従い、コウジュへと王の財宝から宝具を射出する。

 近距離からの射出であった為か、コウジュは避けること敵わず、撃ちだされた宝具と共に後方へと吹き飛んでいく。

 

「やっほー」

 

「っ!?」

 

 ギルガメッシュの後ろからコウジュの声が聞こえた。

 その声が聞こえるまで、背後に気配など無かった。

 むしろ、今まさに飛んで行った方に気配が未だ(・・・・・)残っている(・・・・・)

 しかしこの声の主もまた、コウジュの気配であった。

 

 ギルガメッシュは声が聞こえると同時、いや気配を感じたと同時に王の財宝から宝剣を抜き出し後方へ振り向きざまに振るう。

 

「おわっと」

 

「切り分け・・・・・・ではないな。希薄になっている訳ではない。同質だ。アレも貴様も、まさしく同質。一体何をした」

 

 斬り掛かった剣を、コウジュはルゥカで防ぐ。

 流石に筋力ステータスではコウジュの方が上である為、ギルガメッシュの剣はそれ以上動くことは無かった。

 無駄と悟ったギルガメッシュは、剣を引いてそのまま宝物庫へと戻した。

 対するコウジュは、突如引かれたためにたたらを踏むが、持ち直し、ギルガメッシュの出方を窺う様に見た。

 

 そんな彼女を見てギルガメッシュが思い浮かべたのは何時しかのアサシンであった。

 時臣の言葉に従い綺礼が扱っていたサーヴァント。

 そのアサシンは、多重人格である自身を切り分け、その分だけ数を増やすことが出来た。

 しかしそれは文字通りに自分を切り分けることに他ならず、別れた分だけ希薄になっていた。

 

 だが、コウジュは違った。

 形は変わったように感じるが、その質量に変わりは見えない。

 いや、正確に言えば同じ質量の物の別側面を見ているような感覚であった。

 

 そうこうする内に、先程飛ばしたはずのコウジュが戻って来た。

 それどころか、まだ増える。

 気づけば、ギルガメッシュは囲まれていた。

 

 とはいえ、ギルガメッシュに焦りは無い。

 彼からして見れば、雑種がいくら増えようとも変わりはないからだ。

 纏めて吹き飛ばすことなど、造作もない。

 だから彼は、まず物理的に足りぬ手を補うために自動防御を行う為の宝具を出そうとして・・・・・・動きを止めてしまった。

 何故なら、囲んでいるコウジュが皆、所謂ファイティングポーズを取っていたからだ。

 

「・・・・・・貴様、何のつもりだ」

 

 ギルガメッシュの言葉に、コウジュ達は一様にファイティングポーズを取ったままキョトンした表情をする。

 そして、全員がそれぞれに答えた。

 

「いやだってここ俺の中だよ?」

「こんな所でブッパしようものなら痛くて仕方ないじゃん」

「だから」

「ずばりステゴロだよ!」

 

「・・・・・・」

 

 ステゴロ・・・・・・つまりは武器無しの殴り合いだ。

 そんなものは英雄王たる彼からしてみれば望む所ではない。

 しかしコウジュ達は既にやる気満々だ。

 折角用意した対英雄王用の能力がちゃんと通じるかどうか、試したくて仕方が無いといった様子だ。

 

 そんなコウジュ達が、続けた。

 

 

「ちなみに」

「この状態なら幾らでも俺の補充は効くから」

「がんばってくだしあ」

「あ、この分けて話してるのもワザとで共有体とかではないよ。つまり一瞬でこの世界ごと俺を消さないとそっちの勝ちは無いので宜しく」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 タラリと、ギルガメッシュは背中に汗が流れて行くのを感じた。

 

 

 




いかがだったでしょうか?

スランプ気味というか、どうしようか悩んでいたのもあって、今回も中々筆が進まず・・・。
そして気づけばアレだけ盛り上げておいた英雄王戦が、最後は噛ませ犬チックになってしまいました。
ただ、お伝えしたいのは英雄王アンチとかそういうわけではなく、対英雄王を考え、勝つための要素を色々準備し、今までの集大成ということで彼に挑んだ結果がこうなったんです。
確かに最初はシリアスのガチ戦闘も考えていたんです。
でも、イリヤの方でやったし、もういいかなって(え
構想としては、英雄王の『天地乖離す開闢の星』に対して、コウジュの『星絶ちの剣(エリュシオーヌ』で対抗するとか、色々考えていたんですが、ごめんなさい、ネタに走りたい衝動に負けました。
まぁここまでお付き合いいただいた皆様はご存知でしょうが、このSSなのでお許し下さい。

さて、それでは次回に関してですが、実はまだやることが残っております。
それもあって今回の話の構成を練り直したというのもあるですが、それを越えてZero編終了となりそうです。
あと少し、頑張らないと。

ではでは皆さま、また次話でお会いしましょう!
次は来週に出せるかと、思います。
改めて、最近お待たせしている現状、申し訳ないです。
こんな私でも良ければ、もう少しお付き合いください。
それでは!


P.S.
FGOイベントいつの間にか始まっていますね。
よく耳にするのが、限定イベントでする内容じゃねぇ!ということですが、本当にそう思います。
ほぼ無いGWの時間が!!
しかし個人的にもかなり嬉しいコラボなので、嬉しい悲鳴というやつでしょうか。
幾ら注ぎこんだかで消費者庁とアレコレあるみたいですが、用法容量を守って、お迎えしないとですねw


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