テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編 作:onekou
かなりお待たせしました。申し訳ありません。
また長くなってしまいましたが、一先ずどうぞ。
※注意
いつも以上に長ったらしい説明と厨二に溢れているのでお気を付けください。
世界には、自浄作用というものが存在する。
河川や海に汚濁物質が入り込んだとしてもそれ其の物に含まれる微生物や酸化などにより無害化される様に、世界もまた世界を運営する上での“汚濁”を自浄作用によって無害化してしまう。
それぞれの単一世界によって名前は違うが、それは“抑止力”であったり、“神”であったり、“とある一族”であったり、様々な場合があるだろう。
まぁそれはさておき、重要なのはその自浄作用には限界があるということだ。
当然、限界とはいうが単一とはいえ単位は世界規模だ。少々の事では破綻するはずもない。
ならば破綻する場合の境界線はどこにあるのか?
それは、世界の破滅が確定したときだ。
これを聞けば疑問に思う者も居るだろう。普通は逆ではないか? 自浄作用が崩壊するから世界の破滅へと繋がるのではないかと。
しかしそうではないのだ。
世界が世界として終わった時、揺りかごとしての役目を果たせないことが確定した時、世界は世界ではなくなる。
本来から在るはずの自浄作用だけでは補うことができない様になり、天秤が破滅へと傾いた時に世界は終わる。
例えば世界を救うはずの主人公が居ない世界はどうだろうか? すべての生物を死に追いやるようなウイルスのワクチンを開発するはずの人物が事前に死んでしまえばどうなるだろうか?
今この瞬間も些細なことで世界は終わりを迎えてしまう可能性を秘めているが、それはただ運がいいだけで、世界の誰かが偶々世界を救っているだけで、ふと何かがずれれば世界が終わる可能性なんてものは幾らでもある。
それらを補助するのがそれぞれの世界に在る自浄作用だ。
だが、先にも言ったがそれにも限界はある。
誰が言ったか、世界は可能性の数だけ存在するといった者がいた。
可能性、つまりは1か0か。
それは、言ってしまえば“救われない”と確定してしまった世界も可能性の数だけ存在するというわけだ。
生まれた時点で破綻が約束された世界。
途中で歯車が狂い、終わりを迎えた世界。
自浄作用そのものが狂ってしまい滅ぶ世界と言うのもある。
そして、終わりを迎える世界は、唯終息するだけではなく周囲の世界も蝕んでいく癌細胞に成り代わる。
・
・
・
「―――その為に世界には本来自浄作用が存在する。だけど、それも万能ではないの」
『兄を喰べた』と、そう告げた彼女が続けて話し始めたのが先の事であった。
世界の自浄作用というものを聞けば、この世界に居れば必ず気にしなければならない“抑止力”や“守護者”と言った存在達。
それが、他の世界にも何らかの形であるということだろう。
しかし気になったのはやはり、自浄作用が崩壊することで世界が崩壊するのではなく、許容量を越えると言う部分だ。
それを聞いて思ったのは、人間における免疫機能だ。
人間は元々体内外に常在菌が存在し、更に言えば生活をして行く中で良くも悪くも様々なものを取り入れている。
だが、人間は常日頃から発病している訳ではない。
その理由が人間が持つ免疫系と呼ばれる細胞、組織、器官といったものが相互的に産みだす防御機能があるからだ。
その免疫系に、世界の自浄作用というものが似ているように思えた。
菌やウイルス、寄生虫など、様々な物から免疫系は身体を守ってくれるが、それが許容量を超えると人間は容易く病に罹る。
そして、免疫系がしっかりと機能しているからといっても人間が死なない訳ではない。
むしろ、その免疫系が牙を剥く場合もある。
「世界がそうなっているのは分かったよ。でも、それがどうして・・・・・・えっと、アンジュちゃんがそうした理由になったんだ?」
流石に直接表現するのは憚れたので濁して言うと、彼女は流していた涙をふき取り静かに笑った。
「ふふ、言葉を濁してくれてありがとう。でも、そこにこそ理由があるのよ」
そこ・・・・・・というのは世界の自浄作用のことだろう。
しかし元々考えることはちょっと苦手なので中々つながらない。
そうして考えていると、アンジュちゃんは苦笑し、続けてくれた。
「世界の崩壊が確定した場合、そのまま放置しておけば周囲の世界まで消えてしまうのよ? それが分かっているということは少なくとも今までにそう言った事象が有ったということでしょう?」
「おお」
「・・・・・・バーサーカーのクラスに当て嵌まったからってポンコツ化する理由は無かった筈なのだけれど」
否定できないので辛いです。
「まぁいいわ。とりあえず覚えてほしいのは、世界が崩壊を迎えた時に初めて作動する機能もまた有るということ」
「それは神様がすることじゃないの?」
「いいえ、神にそれはできないのよ。それをしてしまえば神は神ではなくなる」
「神ではなくなる?」
益々分からなくなってきた。
しかしここが大事な話なのであろう。
アンジュちゃんは少し考えた後、ゆっくりと話し始めた。
「世界を・・・・・・いえ、単一世界を1つのアプリと仮定しましょう」
あ、何か分かりやすそう。
「そのアプリの隣にはたくさんの似た名前のアプリが存在するとするでしょう? それらを一つのフォルダーの中に入れ込んでしまえばその中の全てがそれぞれ平行世界となる」
「ほうほう」
「そうすると、フォルダーの隣にもフォルダーがあるとすれば、その隣り合ったフォルダー同士が異世界と言う形になるわ」
平行世界論や多元宇宙論、立体交差世界論、二次元三次元問わず様々な理論を聞いたが、結局俺の知る限りでは実証されていないものだ。
いや、前の世界では隣り合う世界について触れることは出来た。
だけど世界の構造そのものについて分かった訳ではないし、“世界”に関しては様々な疑問が残ったままだった。
それが、何となくだけど漸く分かってきた。
「ちょっと分かってきた。そういうフォルダーがあるってことは、そういったアプリを監視するアプリってのも当然存在する訳だよね。それが神様?」
「そういうことよ。そしてウイルス対策ソフトというものは、協力し合う物も在れば、弾くものもあるでしょう? 神族同士にも相性があるのは一緒よ」
あ、うん、なんかよくわかる。
新しいウイルス対策ソフトを入れようと思ったら、一回削除してからなんてザラだもんな。
「ただ、更に言えばそれらを一纏めにしたノートパソコンを一つの世界として認識する存在も居るのよ」
「・・・・・・ん、んん? またよく分からなくなってきた」
デスクトップじゃ駄目なのとか色々・・・・・・。
「人間が観測できる範囲には居ないのだから仕方ないわ。でもそうね、アウターゴッド、デウスエクスマキナなんて呼ばれる場合もあるかしら」
あかんやつやん・・・・・・。
「ついでに聞きたそうだから言うけれど、デスクトップだと別出力が居るし画面が別でしょう? だからイメージしにくいと思っただけよ」
あ、どうもです。
まるで先生のように色々教えてくれるアンジュちゃん。
先程までの猛攻が嘘のようだ。
だけど、この説明は有り難かった。
これでまた少し納得がいった。
例えば世界間の移動についてだ。
俺が今まで、前の世界から隣り合う世界ならば比較的移動を行えたけど、Fateの世界に移動できるようになったかと言えばそうでは無かった。
つまり、フォルダー内の移動位は出来るようになったけど、フォルダーを越えて、もしくはパソコンそのものを越えての移動は未だ俺には出来ないということなのだろう。
いや待て、なら何故アンジュちゃんは不完全とはいえ
俺の仮定が正しいのなら、アンジュちゃんはそれを越えることが出来るということになる。
「そうよ、わたしには今の例えでいう世界間の壁は無いも同じ」
そうサラッと言ってのけるアンジュちゃん。
思わず口が引きつる。
俺が相対しているのがそんな規格外な存在だって?
そんな俺を見て、アンジュちゃんは微笑む。
「ふふふ、私はそんな良いものじゃないわよ」
その微笑みは、どこか自嘲も混ざっていた。
「さっきの話に戻るけど、例えばウイルス対策ソフトが他のノートパソコンにまで手を伸ばそうとしたらどうなるかしら?」
「それは・・・・・・」
恐らく互いが互いに危険因子として判断するのではないだろうか?
場合によっては協力し、さらに強力になる場合もあるだろう。
だが、殆どの場合が互いに削除する方向で動くだろう。
「神というのはそういうものよ。基本的に自分の根幹たる世界を抜けだせば、他の世界の根幹によって排除される。もしくはその世界に溶けてしまう」
その例外が
そう一人納得したところで、アンジュちゃんはニヤリと笑みを浮かべた。
「さて問題よ。もし、そのノートパソコンの滅びが確定し、しかも破滅が確定した時点で周囲ごと巻き込んで爆発するとしましょう。その場合どうすれば良いと思う?」
「それこそ
もう爆発寸前だってのならともかく、壊れたのなら廃品回収に出すかそのまま廃棄するしかないような気がする。
その回収業者がアウターゴッドというわけなのじゃなかろうか。
だがアンジュちゃんは首を横に振った。
「残念だけれど、
外なる神は外なる神で制限があるのか。
でも、くっとぅるーな外なる神は割かし介入しているような・・・・・・。
いや、よく考えればうろ覚えではあるが伝承の中でも裏で暗躍したり、分体であったりと直接的な関与は無かった筈だ。
そもそもが伝承通りならば今頃世界はもっと混沌としていてもおかしくないし。
しかしそうなると、益々彼女の言いたいことが分からない。
少なくとも俺の知る限りではこれ以上の超常的存在は居ない。
神の存在証明の如く、知らないだけで実際には・・・・・・というだけなのだろうが、むぅ、思いつかない。
それこそ、俺が認識しているような単一世界やらとかだけではなく、平行世界や他次元世界、一緒に入っている神様なんてのもまるごと飲み込むような何かが必要なわけでしょ?
そんなバグとでも表現しなければならないような存在は―――、
―――待て、飲み込む?
いやまさか、そんな事ってあるのか?
ふと脳裏に浮かんだ想像を気のせいだと雲散霧消させようと努力する。
しかし思い浮かんだその想像は全く消えそうにない。
表現が難しいのだが、そう、やけに
しかしそれを、アンジュちゃんの表情が肯定してしまう。
何も言わず、ただ悠然と笑みを浮かべるのみ。
しかし、目は口程に物を言うというがまさしくソレであった。
「・・・・・・はは、チートだチートだとは思っていたけど、マジかよ」
思わず乾いた声が出てしまう。
そんな俺を見ながら、アンジュちゃんが口を開いた。
「単一世界、その平行世界や他次元世界、更には異世界を含めて、崩壊が確定した世界は他の世界や神にとって毒でしかない。負の感情どころではなく“負”そのものと化した世界は容赦なく触れたモノを飲み込もうとする。それをどうにかする存在が私を含めた3人の役目。存在意義。
一人はあらゆるモノを繋ぎ止め、時には切断する力を。
二人目は欠けたモノを補填するためあらゆるものを“在る”状態にする力を。
そして三人目―――、
――――崩壊が確定した世界を飲み込み、記録し、消化する。それが私」
◆◆◆
「――――崩壊が確定した世界を飲み込み、記録し、消化する。それが私」
そう告げるアンジュに、コウジュは口元が引きつるのを自覚する。
自身について色々なものに決着をつけるつもりだったのだが、コウジュとてまさかここまで話が大きくなるとは思ってもみなかったのだ。
元々、コウジュは自身の能力に関して疑問を抱いていた。
戦闘能力を重視した構成の能力かと思いきや生存能力を重視したものであったり、そもそもがチート能力を分ける意味が分からなかった。
俺が貰った力は『獣の本能』、『幻想を現実に変える程度の能力』、そして宝具として『
最初はこれを見ても特に何も思わなかった。
だけどいつからか、というか、次第に疑問に思うことがあった。
何故『獣の本能』が『ポケットの中の幻想』から独立してスキルとなっているのか、だ。
最初は戦闘や生存能力、それからラーニングに関するものをPSPo2の
だがそれは、考えてみればやけに遠回しだ。
別に不老不死やラーニングといった能力をそのまま渡せばいい筈なのだ。
しかしそうではない現状、一度考え始めるとコウジュは良くも悪くもそれが気になって仕方がなかった。
そしてコウジュは気づいてしまった。
よくよく考えてみれば、彼女はそのスキル構成をどうやって知ったかという所だ。
そう、
自身のステータスに関しては
そしてそれを知ってからは、態々コウジュもイリヤ経由で自身のステータスに関して聞きはしなかった。
サーヴァントのマスターとして見える性能自体を書き換えられていたら其れまでだが、思い込みというものは怖いもので、そもそも改めてそれを確認しようとは思わなかったのだ。
だが、コウジュは今聞いた説明で納得がいった。
取って付けられた能力は『獣の本能』の方ではなかったのだ。
追加されたのは『ポケットの中の幻想』だったのだ。
つまり、コウジュが持つ能力はそもそも、『獣の本能』とされていたアンジュの能力と、『幻想を現実に変える程度の能力』とされていたアンジュの兄の力の二つ。
そこへ第三者、アンジュの言葉通りならば彼女の姉が足した『ポケットの中の幻想』という名のアイテム。
それこそがコウジュの力の正体。
そして、アンジュの逃れえない罪の形。
「私は、言ってみれば
アンジュはコウジュの方へと目を向けたまま、静かに語る。
しかしその瞳は何処までも濁り、コウジュの方へと視線は向いていてもまるで違うものを見ているかのように遠い目をしていた。
しかし、コウジュは何を言えばいいのかが分からなかった。
アンジュの独白に、コウジュはグルグルと頭の中で様々な言葉が浮いては沈み、結局は何も出てこない。
そんなコウジュに構わず、アンジュは続ける。
「私が何かをする時は、どこかの世界が終わった時。私が近くに現れた時は、そいつが食われる時。だから、蛇蝎の如く
でも、とアンジュは続ける。
「ある時思ってしまったの。壊れる前に記録してしまえば良い。破滅を迎える前に保管してしまえば良いって。だって悲しいじゃない。幾ら破滅が確定してしまったとしても、その世界の終末が哀しみで終わるだなんて。
皆、終わりを前に足掻くの。誰もが居なくなって破滅を迎えてしまう世界もあるけれど、中には全てが死に絶える前に世界の終わりが確定してしまうような世界もあるわ。当然そんな世界の住人は足掻く。戦争ばかりしていても最後の最後には手を取り合い破滅を回避しようとする。でも既に遅かった、そんな悲劇はごまんとあるのよ。ただ終息するように終わる世界もあるにはある。そんな幸せな世界も存在する。けれどその反面、全てを巻き込むモノへと堕ちる世界も存在してしまう。私はそれを唯々
何かを思い出すように話すアンジュを、コウジュはとても見ていられなかった。
それはつまり、バッドエンドばかりをただ見せつけられ続けるということに他ならないだろう。
しかもそれを身に取り込み続けるという。
映画などの創作として見るならばコウジュとてそういうものだろうと終わることができる。
しかし実際に生きている人々が世界ごと破滅へと向かう姿を自身は見ていられるだろうかとコウジュは自問する。
そしてその答えは当然、否だ。
そんなものをコウジュは許容できない。
許容できないからこそ、世界に喧嘩を売ってまで今まさに世界の上書きなんてものをやらかそうとしているのだから。
そんな感情がコウジュの表情に出ていたのか、アンジュは慈しむように微笑む。
まるで尊いものを見るかのように、
「ふふ、そんな貴方だからこそ私は好きよ。でも、私の力は削るしか能の無い力。世界そのものが悪性の物となってしまっては、結局全てを喰らうしかない」
ならばと、コウジュは先程アンジュが告げた二人目―――アンジュの兄の力でどうにか出来なかったのだろうかと考える。
先程アンジュは“欠けたモノを補填する力”だと言っていた。
そして無いものを“在る”状態にする力だと。
つまりは創造の力だ。
それで穴を埋めればいい。
ただ、それも出来なかったのだろうとコウジュはアンジュの表情を見て悟った。
コウジュでも思いつくことが出来ていない訳が無かった。
「アイツの力は私と対を成す“足す”しか能の無い力。減った部分を足したところでその“枠”は変わらない。要らない部分を削り、アイツに足してもらったこともある。だけど結局滅びに向かってしまう。削って、足して、削って足して、そしてまた削って足して・・・・・・、最後には全く別の
アンジュは、自身に対してであろう嘲笑を浮かべた。
「でも私は・・・・・・、それでも私は、諦めきれなかった。だからいつまでも削って、削って削って、気付けば、破滅を迎えない世界を、本来保管する必要が無いような世界まで食べようとした。そういう性質だったのよ、私は。無いものを得るために食べることしかできなかった。だから――――」
アンジュは言葉を続けられず、一度口を閉じてしまう。
そして何度か口を開こうとするも言葉が出ないのか、また閉じてしまう。
そんな繰り返しを幾度かした後、絞り出すように続けた。
「―――私達は世界に組み込まれたシステムでしかなかった。だから、有るモノを変えてしまうような方法が分からなかった。
皮肉よね。私たちはそういうシステムだからこそ、矛盾してまで未来を見る方法が分からなかった。ルールの中でしか動くことができなかった。だから私は減らすことしかできず、アイツは足すことしかできなかった。そしてあの人は繋いだり切ったりすることは出来ても、その中に入ることは出来なかった。私達はそういう
だから、だからいつまでも削ろうとする私の前にあいつは立ちふさがって、そして自身を私に喰わせた。足すことしか知らないアイツは、私に自分を足すことで新たな何かを生み出せるかもしれないって。対である私に足りないものを埋められるかもしれないって。そして私は其れを受け入れてしまった。食べてしまった。そういう性質だったというのは結局言い訳よ。最終的には私がアイツを食べてしまったことには変わりないもの」
だからアンジュは“兄を食べた”と言ったのかと、コウジュは納得がいってしまった。
そしてそれをアンジュが後悔しているというのもコウジュには見ていて痛い程に分かった。
「確かに、私はアイツを食べたことで無いものを得ることができたわ。矛盾が生じることで、別の視点を得ることも出来た。でも同時に、矛盾する自分をどうすれば良いのかが分からなくなった。端的に言えば怖くなったのよ。知識として新たに生み出す方法を得ることは出来たけれど、未だに
あらゆるものを産みだすアイツの能力だけれど、じゃあどうすればハッピーエンドを迎えられるの? 創造することができるの? 私は負を喰らうことしか知らない。幸福なんて知らない。識ってはいても、知らないの。
世界そのものの成長は、そこに住む人々や神が運営し、場合によっては外なる神が調整することもある。けれど、
支離滅裂とも取れる言葉に、コウジュは目を伏せてしまう。
アンジュの慟哭にはコウジュからは想像もできないような絶望が垣間見えた。
コウジュには彼女の後悔を理解しきることは出来ない。
どこまで行ってもその感情は彼女のもので、実際に体験したわけではないコウジュには共感は出来ても共有は出来ない。
「だから私は、いっその事何もしないことにしたの。少なくとも
だがそれを聞き、コウジュは伏せていた目を上げた。
「所詮私はバックアップ機能、あいつも補填する為の機能しかないわ。そんな二人が合わさっても、システムを逸脱するような方法が分からなかった」
「だから俺がそこに足されたって訳だ」
漸く言葉を発したコウジュに、アンジュは優しい笑みを向ける。
「ええそうよ。
笑みを浮かべたままそう告げるアンジュ。
だがそれはコウジュにとっては疑問しか生まれない。
「でも其れならどうして俺なんだよ。俺は何も能力を持たないような一般人だ。運動も勉強も並みだった。才能もない。色んなものに手を出したけど、それでもどれもそこそこでしかない」
コウジュにとって自身とはそんな物だった。
特に何か秀でたものが有るでもなく、良くも悪くも一般人だった。
何処にでも居る様な存在だった。
そんなコウジュを見て、アンジュはクスリと笑う。
「ええ、正直に言えば偶々でしょうね。たまたま私と同じ識別名のキャラクターで、しかも似たような容姿で、そして楽しそうに仲間と冒険して、世界を救っていた。まさしくハッピーエンド。それを偶々見つけてそのまま見ていたのをあの人に見つかったのだと思うわ」
「・・・・・・それだけ?」
「ええ、私とあなたの繋がりなんてそんなものよ」
アンジュの言葉に、コウジュはキョトンとしてしまう。
自身そのものは一般人でしかなかったと認識しているコウジュにとって、その言葉は意外であった。
隠された何かが自分に在るとは思えなかったが、それでも何かしらの理由があると思った。
だがそうではないと彼女は言う。
ただ楽しそうにゲームをしている姿が目についた。
それが理由だろうと言うのだ。
しかしそんなコウジュを見てアンジュは首を振るう。
「貴方にとってはそんなことかもしれない。けれど、私は救われた。私に似た誰かかもしれないけれど、世界をハッピーエンドへと向かわせたのは確かだもの」
コウジュとしては何とも言えない気分だ。
自分としてはただゲームをしていただけだ。
確かに睡眠時間やら何やら削ってまでゲームをしては居たが、そんな物はする人はするであろう程度の事だ。
コウジュ以上にアイテム収集などをやり込んでいた人も当然居た。
だがそれでも、アンジュにとってはコウジュの姿に救われたのだという。
其れ自体はコウジュも嬉しく思う。
何せ自分の愛したキャラが実際に誰かを救ったのだから。
でも、ゲームはゲームだ。
誰かの為にやっていた訳でも、誰かを救おうとしていた訳でもない。
それが評価されるというのは、コウジュにとってはむず痒いものしかなかった。
「ふふ、貴方はそれで良いのよ。今だってあなたは自分の為と言いながら誰かを救おうともがいている。あ、もちろんゲーム感覚でやっている訳じゃないことは理解しているわ。救いたいから救っている、でしょ?」
「・・・・・・まぁ、そうだけどさ」
アンジュの言葉に尚の事、むず痒くなるコウジュ。
アンジュの言は確かにその通りだ。
しかし改めて他人からそう言われると何とも言えない感情に包まれてしまうコウジュであった。
「だからこそ―――、」
瞬間、コウジュは直感に従って武器を呼び出す。
最も使い慣れた、キャリガインルゥカだ。
それを構える。
そしてそのままそれ越しにアンジュの方を見れば、彼女は静かに闘気とでもいうべきものを放っていた。
語るべきものは語った、ということだろう。
「―――だからこそ私はあなたには沈んでほしくない。引きこもった私が言えることではないけれど、あなたにだけは負に引っ張られて欲しくは無い。
あんなものを、あなたに背負わせたくはないのっ!」
先程までとは違い、内に秘めた感情を抑えることなく語気を荒げるアンジュ。
そんな彼女を見て、コウジュは思わず笑みを浮かべてしまった。
コウジュにとって今の話は正直言えば理解しきれているものではなかった。
きっと、アンジュが語り切っていないこともあるのだろう。
だが一つだけ分かったことがある。
アンジュが悔いている事。
それをそのままにして置いてはいけないってこと。
コウジュにしてみれば、自分にしかできないことなのかどうかは分からない。
先程アンジュが言ったコウジュが選ばれた理由も彼女が口にした言葉なだけで、実際に選んだのであろうアンジュの姉の選考理由は分からない。
でもこれは、自分がやりたいことなのは確かであった。
「・・・・・・つまりはアレだ。そのふざけた幻想をぶち壊すってやつをやればいいわけだ」
コウジュは、静かにそう口にする。
自身に出来ることを見つけることができたのだ。
彼女は知らないと言った。
幸福の作り方を知らないと。
でもそんなもの、
寧ろ知っている者がいるのなら教えてほしい位であった。怪しい宗教は別にして。
だけど、目指す方法なら知っている。
それぐらいはコウジュにも分かる。
笑えればいいのだ。
誰かと一緒に笑えれば尚のこと良いだろう。
ただ、それだけだ。
押しつけがましくもあるだろう。
偽善だと罵られることもあるだろう。
だけどそこで止まってはいけないのだと、コウジュは今までの旅路で学んだ。
幸せは人それぞれだ。
一般的な幸せというものが有れば、世界からすれば少数派に当たる幸せもあるだろう。見つけられないという人も当然居るだろう。
だがそれがどうした。
ならば探せばいい。
出来ないというのならば手伝おう。
“人”はその道中から、幸せへと向かっていくことができる。
そして到達した時に、更にその道のりを噛み締め、更に幸福へと至ることができる。
それをコウジュは知っている。
更に言えば、不幸は叩き潰すものだとコウジュは学んだ。
脳筋上等。しかし虚仮の一念岩をも通す。
そんな精神で、コウジュは目の前で泣く少女を助けたいと、そう思った。
足りないならば足せばいい。
その通りだ。
そのままで出来ないのならば仲間を増やせばいい。
綺麗ごとかもしれない。
世間を知らないと言われるかもしれない。
だがコウジュは思う。
本当にそこで限界か?
自分で自分の限界を決めてやしないか?
今までの自身がそうであったように、自分で自分の動ける範囲を狭めてやしないかと、コウジュは思うのだ。
間違えるかもしれなくても、動かなければ何も生まれない。
間違えても、人間は学ぶことができる生き物だ。
そうやって成長する。
決められた枠で生きるより、自身で何かを見つけた時の方が喜びは何倍も嬉しいものだ。
それはちょっとした趣味でも話し相手でも良いのだ。
ただ、笑える何かを探せばいいのだ。
「おーけぃ、こっから先は得意分野だ。やることは増えたけど、まぁ誤差だ。
―――――とりあえず、ハッピーエンドを目指そうじゃないか」
いかがだったでしょうか?
ぶっちゃけて言えば、厨二乙な展開だとは思います。
しかし、あくまでもテンプレを目指すSSですので、お許しいただければと思います。
・・・・・・まぁこれは言い訳でしかないですね。
とりあえず、お察し頂けていたとは思いますが、一番のチートはコウジュじゃなくてコウジュの中の人というオチでしたとさ。
コウジュ自身は結局付属品でしかなかったということですね。
しかしながら、当然そのままで終わらせるつもりはありません。
あ、流石にアンジュの元々みたいなどチートをコウジュに持たせるつもりはありませんのでご安心?下さい。
それに異世界論やらなんやらは、他作品等を参考にさせて頂いてはいますが、結局は私の解釈ですので、どこぞの超高校級の様に「それは違うよ!」というのはお許しいただければと思います。
文中にも書かせて頂いてはいますが、結局は証明されていない部分に関しては神の不在証明と似たように、認識の問題でしかないと思いますので・・・。
さておき、後ろになって申し訳ありませんが、最近の大遅刻をお許しください。
最近毎回言っているような気もしますが、リアル事情と難産も重なって中々筆も進まずとなっています。
妄想だけは達者に出来るのですが、やはり形にするのは難しいものですね。
そしてそんなお話も、今回また伸びてしまいましたがそろそろ言っていた通りに締めないと終わる終わる詐欺だと言われてしまいそうな予感・・・。
後はアンジュへとそげぶして終わりたいと思います。
そういえば、感想でもし違う陣営に召喚されていたらという話はどうかと頂いていたのですが、頂いていた衛宮陣営は勿論の事、他の陣営含めて一番人気は何処なのかなと少し気になりました。
書けるかどうかはさておき、私の妄想(原動力)の一助とさせていただければと思います。
それでは皆様、もうしばしお付き合いくださいませ。
ではでは!
P.S.
FGO、もうアガルタですか!?
鬼ヶ島終わり切っていないのに;;
嬉しいけどもう少し待ってほしかった気もします・・・。
P.S.2
PSO2ではヒーローという新しクラスが来るとか。
SNSなどでは色々話題に上がってはいますが、動画を見る限りあのスタイリッシュさは中々楽しそうですね。
P.S.3
感想度々遅れて申し訳ないです。
内容はもちろん読ませて頂いていますので、もうしばし返信はお待ちください;;