テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。
ごめんなさい前話で調子に乗って早めで行けるかもなんて言って・・・。
ちょっと今回は切る場所に悩んだ結果長くなっています。
ではどうぞ。


『stage7:この少女達にネトネトを!』

 

 

 

 次の日、俺達はジャイアントトード討伐にまた来ていた。

 緩やかな凹凸のあるその丘陵地帯は、足の短い草に覆われ現代知識から言えば絶好のピクニックポイントと言えるだろう。

 しかしここがそんな平和的なことを出来る場所ではないのは昨日の時点で経験済みだ。

 その理由こそがジャイアントトードだ。

 やつらは巨体でありながらも、その身体に見合った膂力で以て飛び跳ね、この辺りの動物たちをぺろりと食べてしまう肉食生物だ。

 その対象の中には人間も入っており、運悪く近くに居た人はその長い舌で取り込まれ食われてしまう。

 だからこの時期になると、繁殖期なジャイアントトード達は農家の家畜を襲いに行き、その際に食べられてしまう人がちょくちょく出てきてしまう。

 そこで冒険者の出番と言うわけだ。

 意外な敏捷性と人すら食うと言う習性を持つとはいえ、所詮はでかくなっただけの両生類なのでそこそこ腕のたつ冒険者からすれば危険度はそれほど高くない。職業が冒険者の俺からすれば十分に危険ではあるけどな。

 

 さておき、そんなジャイアントトードを今日は狩りに来たわけだが、今回はめぐみんの実力を計るというのが真の目的だ。

 とはいえクエストはクエストなので、規定数を退治できればとは思っている。

 何故か食材採取系のクエスト報酬が少し上がっていたのだ。

 受付のお姉さん曰く需要が上がっているからと端的に教えられたが、それこそ今のうちに稼いでおきたい。いつまた元の報酬額に戻るか分からないのだから。

 

「それで、作戦はどうするんだ?」

 

 俺がそう聞いたのは今日ジャイアントトードを討伐するにあたってその討伐数を昨日よりも多くしたからだ。

 もちろん俺が提案したわけではない。

 提案したのはコウジュだ。

 なんでも、折角広範囲攻撃魔法の使い手がいるのだから効率よく倒してしまおうってことらしい。

 あまりにも自信満々で言うものだから特に疑問も持たずここまで来たわけだが、さすがにそろそろ教えてもらわないといけない。

 

 コウジュに目をやると、ふふんと楽しげに笑みを浮かべ前へと出た。

 何をするのかと様子見していると、手でメガホンを作るように口元へ両手を持っていった。

 カエルに向かって「おーきろー!」とでも言うのかと、そんな可愛らしい想像をする。

 しかしそれが間違いだと、痛みと共に俺は知ることになった。

 ふと見ると、アクアは静かに両の耳を手で塞いでいた。

 それに疑問を覚えるも、コウジュは息を大きく吸い込んだ。

 そして―――、

 

「せぇの、

 

 

 

 

 

 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■――――――!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「「アアアアアアッ―――!!!!!? イィッタイィィミミガァァァァァァァァァァァァァッ―――!!!!!!???」」

 

 

「あ、ごめん」

 

 幽かにそうコウジュが呟いたのを聞いた気がしたが、俺はめぐみんと共に耳を抑えながら地面を転がるのに忙しかった。

 キーンと耳鳴りと共に耳奥から痛みが発生しており、鼓膜が破れたのではというほどに頭の中まで衝撃が走った。脳が! 震える!!

 

 

 

   ―――ヒール!―――

 

 

 

「アァァァ!! おおぅ? あれ、痛くなくなったぞ」

 

「・・・・・・おや本当ですね」

 

 先程まで脳内で直接鐘がなったかのような鈍痛がしていたというのに急に消えた痛み。

 同じように驚くめぐみんの声も通常通り聞こえた。

 しかしその理由は自己申告ですぐにわかった。

 目の前にどや顔をしている駄女神がいるからだ。

 

「フフンどうかしら。この私にかかればこの程度一瞬よ一瞬。見直した?」

 

「・・・・・・ミナオシタミナオシタ」

 

 その台詞がなければ素直に誉められたものを、と口に出そうになった言葉を飲み込み、実際綺麗さっぱり痛みはなくなったのでアクアが求めているであろう言葉を告げる。

 ちょっと棒読みになったのはご愛敬だ。

 そしてそれに気をよくしたアクアは『もっと褒め称えなさい敬いなさい、厳密に言えば晩御飯の時におかずを一品差し出すとか・・・・・・』などと世迷い言を抜かし始めたので放置することにした。

 というかそもそもこいつコウジュがああする前から耳を塞いでたよな?

 ってことは何が起こるかわかってたってことだし、先に言わなかったことと合わせれば今の回復でトントンというものだ。

 あ、コウジュ?

 コウジュはあれだよ、何かこう、仕方ねぇなって思えてしまうからセーフ。

 日頃の行いってやつだな。

 

 さておき、問題はそのコウジュだ。

 先程の・・・・・・爆音、爆声? まあつまりは吼えたことで、予定通り地中で眠っていたらしいジャイアントトードが次々と顔を出し始めた。

 そいつらはかなりの広範囲に渡って出てきており、こちらを見ているものもいれば、ただ驚いて出てきただけでどこか違うところを見ているやつも居る。

 このままではただ起こしただけで、こちらをターゲットにしていないやつが散らばってしまう。

 もしそうなってしまっては近くの農家への被害が計り知れない。

 しかし、そんな風に内心でヒヤリとしていたがコウジュの表情には焦りは見えなかった。

 

「さーてと、それじゃあ今度はタゲ取りに行ってくるよ。めぐみんがぶっぱなすタイミングはいつでも良いから、出来るだけ多く巻き込むように宜しくね」

 

 コウジュは言いながら、ゆっくりと散歩でもするかのように前へと歩み出る。

 そしてそのままジャイアントトード達の方へ、ただ歩く。

 いくらコウジュと言えど、あまりにも無防備。

 めぐみんも大丈夫なのかとこちらを見てくるが、正直俺にもわからない。 

 ただ、どこぞの駄女神と違って戦闘力に関しては並外れたものを持っているのは知っている。

 だから何となく、大丈夫なのだろうなとは思う。

 俺はめぐみんを安心させるように、笑顔と共にサムズアップした。

 

 おい何で胡散臭いものを見る目でこちらを見るんだ。

 

「ほむ、ちょっと借りるとするか」

 

 めぐみんの反応に少しばかり不満を募らせていると、コウジュが突如そう言った。

 見ればいつのまにかその両手には蒼を基調としたきらびやかな扇がそれぞれに握られている。 

 それを大きく、そして力強く両の手を同時に振るった。

 

「なんだこれ甘い香り?」

 

 コウジュが扇を振るったと同時に巻きおこった風、それに乗ってどこかで嗅いだことのあるような香りが辺りを漂う。

 

 ああそうだ、これは桃の香りだ。

 一度思い出してしまえば簡単で、鼻腔を駆け巡る桃の匂いについまた食べたいなと脳が求めてしまう。

 それにしてもなぜそんな匂いがコウジュから?

 そう思い、確かめる為にも匂いを感じ取ろうと鼻を鳴らす。

 だが、やはりこの香りはコウジュの方から漂ってきていた。

 見ればジャイアントトードもその匂いに引き付けられたのか、スピスピと鼻を鳴らした後に発生源たるコウジュに向かい始める。

 

「カズマ? いったいどうしたのですか?」

 

「え?」

 

 突如めぐみんが不思議そうにこちらへと声をかけてきた。

 気づけば俺は一歩二歩と前へ進み出していたようだ。

 完全に無意識の行動だった。

 めぐみんに声をかけられなければ俺はそのまま進み続けていたかもしれないほど、自身の足は勝手に動いていた。

 そして、そのお蔭で改めて意識することができ、何故自分がそうなったのかが分かった。 

 この桃の匂いだ。

 この匂いを、何故かもっと嗅ぎたくて俺の足は前へと出た。

 いや意識出来ている今でもその誘惑が俺の中にある。

 この匂いのもとへ、コウジュのもとへと近づきたいという欲求が俺の中から消えない。

 というか、うんあれだ、ぶっちゃけて言うと青少年の若い欲求が何故か刺激されている。

 何故かこう、ムラっと来ている。

 いや俺も男だからね。仕方ないよね。

 元々色々溜まっていたのもあってか、安全圏にいるからか、一度そちらに意識が行き始めると中々戻せずにいた。

 なのでつい、扇を両手に舞うようにしてカエル達の隙間を移動するコウジュへと目が向かう。

 そもそも、いつも思ってたことだが女神二人は服装にもう少し気を使ってほしい。

 こちとら思春期真っ盛りの男なのだ。あんなヒラヒラした格好で目の前を歩かれたら目で追ってしまうに決まっている。

 特にコウジュ。

 今もそうだが、アクロバティックに動くわりになんでスカートなの? 速すぎて中身までは見えないけど、普段からももっと隠す努力をしてほしい。見えないからこそその先に境地が云々とか言う人も居るけど、今の俺には目に毒でしかない。

 というかあの身長で揺れるとか反則じゃね?

 アクアが絶妙にバランスの取れた体型なら、コウジュはこう欲望を詰め込んだような体型をしている。

 まあ俺としてはボンキュッボンなお姉さまタイプが好みなのだが、目の前で揺れていたら目が行くというのは男の本能と言っても過言ではないだろう。

 

 

「どうしたのよカズマ。腰がひけてるわよ? あ、まさかコウジュがたたき起こしたあのジャイアントトードの数に怖じ気づいたのかしら! まあねえ仕方ないわよねえ。なんたって最弱職だし!!」

 

 ちょっと遠目で色々と考察をしている間に青少年のリビドー的なあれのせいでちょっと不自然な姿勢になっていたら、同じく観客状態のアクアがそんな風にからかってくる。

 俺はその姿を見て、思わずため息をついた。

 何でこうもこいつは残念なのだろうか。

 見た目だけは特級だというのに、それ以外の全てがソレをダメにしている。

 人生のステ振り間違ってるんじゃないかとすら思えてくる。

 お蔭で、賢者タイムとはまた違った静けさを心に得ることができた。 

 

「ありがとよ、お前のお蔭で落ち着いたわ」

 

「え? う、うん、どういたしまして?」

 

 俺の冷めた表情とは裏腹の感謝の言葉に戸惑うアクア。

 最近思うんだ。こいつある意味めちゃくちゃすごいやつなんじゃないかって。

 まあ誉めてやんないけど。

 

 ともかく、これで舞台は整ったわけだ。

 

 コウジュが舞いながら蛙達をあしらっている。

 恐らくは倒しきってしまう事も可能なのだろうがそれをせず、ピョンピョンとジャイアントトードの隙間や頭上をすり抜けつつタゲ取りに集中してくれている。

 そこへあとはめぐみんの爆裂魔法とやらをお見舞いし、ジャイアントトードどもを纏めて倒せばクエスト完了だ。

 そう思いめぐみんへと合図を送るためにコウジュに避けるように指示しようと思ったら何やら様子がおかしい事に気付いた。

 コウジュが涙目になっているのだ。

 そしてチラチラとこちらを見つつ、どうやら『はやく!』と言おうとしているようだ。

 パッと見た感じでは上手く全てを捌けている様に見えるのだが、何故か先程までと違ってコウジュの避け方が必死な感じなのに何故?

 しかしそこでカエルの方へと目をやったことで謎が解けた。

 先程の自身の行動についてもだ。

 

 あ、ああ~・・・・・・、あいつら発情してやがるのか・・・・・・。

 

 そう、蛙達はその全てが発情していた。

 それはもう目の中にハートが見える程に。

 理由なんてわかり切っている。コウジュが先程撒き散らした“桃の香り”が原因だろう。

 いや俺もおかしいと思ったんだ。

 幾ら思春期真っ盛りな俺でもこの状況でムラムラするほど飢えてはいない。・・・・・・いない筈。

 しかしそれも、今の蛙達の様子を鑑みれば原因は明らかだ。

 そして、それが効き過ぎたのかどうかは知らないが、ジャイアントトード達はコウジュに対して発情してしまっている訳だ。

 君ら繁殖期だから討伐してほしいって言われてるわけだもんね。余計発情しちゃうよね。

 蛙達は必死にコウジュを食べようとするのではなく、抱えようとしている。

 それを必死の表情で避け続けるコウジュ。

 うん、多分それ抱き付かれたが最後、えろ・・・・・・ゲフンゲフン・・・・・・えらい事になるだろうね。

 

 おっと危ない、また思考がピンクな方に持って行かれそうになってしまった。

 それもこれもコウジュから漂う桃の香りの所為だ。

 全くけしからん。

 とはいえこのまま見ている訳にもいかないので、そろそろ本当に終わりにしよう。

 

 俺はめぐみんの方へと振り向き、あらかじめ決めていた合図を出す。

 ジャイアントトードがコウジュをあかん意味で襲おうとしているのを見てドン引きしているが、俺の合図を見てハッと本来の役割を思い出す。

 

 

「黒より黒く闇より暗き漆黒に我が深紅の混淆を望みたもう。覚醒のとき来たれり。無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ!」

 

 

 めぐみんが詠唱を始める。

 その瞬間に空気が変わった。

 重圧とでもいうべき、空間の重たさが産まれる。

 めぐみんから感じるそれが“魔力”というものなのだろう。

 そのあふれ出た魔力が空間に影響し、詠唱に伴って形を成していく。

 

 

「踊れ踊れ踊れ、我が力の奔流に望むは崩壊なり。並ぶ者なき崩壊なり。万象等しく灰塵に帰し、深淵より来たれ!」

 

 

 現出する魔力が呼応し、黒い光となって収束する。

 掲げられた杖の先に一度収束したそれは、練られるがままに対象とされる空間へと流れ込む。

 今はジャイアントトードどもがコウジュを標的に集っている場所の上空だ。

 そこへ、全てを飲み込む闇のようでありながら、悉くを消し飛ばしそうな光の様にも思える黒き光として魔法を形どる。

 

「これが人類最大の威力の攻撃手段! これこそが究極の攻撃魔法!」

 

 魔法に関して素人ではあるが、今にも破裂しそうなほどに圧を感じるその魔法に、慌ててコウジュへと撤退の指示を出す。

 それを見たコウジュはすかさずその場から逃げ出して、一瞬で俺の横へと帰って来た。

 

 

 そして次の瞬間、弾けた。

 

 

 

 

 

「エクスプロージョン!!!」

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 轟音、そう呼ぶのも烏滸がましい程の音の暴力がカズマたちを襲った。

 勿論それだけではない。

 めぐみんが放った爆裂魔法はその地形を変え、一部を硝子化させてしまうほどの熱量を発揮し、隕石を落したかのようなクレーターを作り上げた。

 あまりの威力に、結構な距離を取っていたにもかかわらずカズマは地面に手を付かなければ飛ばされそうになったほどだ。

 その表情には驚愕がありありと見て取れた。

 

「す、すげぇ・・・・・・」

 

 カズマはそう呟くので精一杯だった。

 この世界に来て初めて見た魔法でもあった。

 しかしそれ以上に、一個人が成し得る現象としてこれほどの破壊を生み出すことができてしまうという事に改めて驚いたのだ。

 確かに今までも幾つかの非現実(ファンタジー)的な現象には出会って来た。

 だが、どれもが小規模であったり、非現実的ではあってもいまいちピンと来ないものばかりであった。

 そこへ来てのこれだ。

 あれほど多く居たジャイアントトードどもなぞ跡形もなく消し飛んでいる。

 これが魔法、これが異世界、これがファンタジー。

 そんな歓喜にも似た感情が改めてカズマを満たしていた。

 その感情は彼には珍しく、ファンタジーらしいファンタジーに触れた純粋な高校生らしい喜びだ。

 ・・・・・・最近が最近だったので余計に。

 

「いやほんと凄いなこれ! これはもう是非うちのパーティ・・・に・・・・・・あれ?」

 

 そしてその嬉しさを胸に満面の笑みを浮かべたままカズマは、頭の中でこれほどの大魔法があれば稼ぎも一気に増えると現実的な意味でも喜びながら立ち上がり、振り返った。

 そしてその振り返った先の状況を見て、思わず間の抜けた声を出してしまった。

 

「あ、あれ? どうしたんだ大丈夫か?」

 

 カズマが見ると、3人ともが倒れていたのだ。

 アクアは腹を押さえながら『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛・・・・・・』と決して女神が出してはいけない声を出しながらのたうち回っており、コウジュはその近くで白目をむいて気絶をしている。めぐみんに至っては立っていた丘からズルズルとなされるがままに倒れたまま滑っていっていた。

 それぞれ、丘陵地というのもあって声が届く程度に離れていた。

 だからカズマはアクアとコウジュの方に行くか、めぐみんの方へと駆け寄るか、この突然の状況もあって戸惑ってしまう。

 

 そんなカズマへと、意識までは失っていなかったのかめぐみんが疲れ果てて掠れた声で話し始めた。

 

「・・・・・・我が爆裂魔法は、その絶大な威力ゆえ、その消費魔力もまた絶大。要約すると、限界を超えて魔力を消費したので身動き一つ、とれません」

 

「・・・・・・まじで?」

 

「まじです」

 

 カズマがめぐみんの話を聞き、漸く出せたその言葉へ無慈悲にも是であると答えが返ってくる。

 脆くもカズマの中に出来上がり始めていた皮算用が崩壊した瞬間であった。獲らぬ狸のとはよく言ったもので。

 ともかくとしてめぐみんが倒れた理由は一先ずカズマも分かった。分かりたいかどうかはさておきでだが。

 問題はコウジュ達の方だ。

 しかしそれも、何とか自分にヒールを掛けて立ち上がったアクアのお蔭で状況が分かる。

 

「うぅ、ヒール・・・・・・。う、うぇ、食べたものが出てきちゃう・・・・・・」

 

「あー、アクア? そっちは何でこんな事になってるんだ?」

 

「え? コウジュが飛んできて私のお腹に頭から突っ込んできたのよ。お蔭で女神にあるまじき悶絶をする羽目になったわ・・・・・・」

 

「ああ、それでお腹を押さえてたのか」

 

 それは確かに痛いだろうとカズマは思う。

 コウジュはその見た目に反してかなりのステータスを持っている。それを知っているカズマは思わずその時の状況を脳裏に描いてしまい無意識に自身の腹を撫でる。

 しかしそのコウジュ自体はどうしたのだろうか、そう思っているとアクアがそのまま説明した。

 

「コウジュの方はきっとあれね、爆裂魔法の時の音か光で気を失ったんだと思うわ」

 

 アクアの言葉にカズマは混乱する。

 

「さっきあれだけの声を出してたのに?」

 

「基本は獣寄りだものこの子。音とかには敏感なんでしょ」

 

「高ステータスなのに?」

 

「幾ら高ステータスでも自分で出すのとは色々違うんでしょうね」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「え、何ですか今のちょっと聞こえなかったんですけど、コウジュが倒れてるとかどうとか・・・・・・。とりあえずアレです。起こして頂けませんでしょうか?」

 

「タイム!」

 

 まじかよ、とカズマはついその言葉を再び心の中で口にする。

 まさかカズマも、こんな事になるとは思わなかった。

 アクアに関しては事故だからと別にしても、まさか爆裂魔法とコウジュの相性が超絶に悪いとは一体誰が予想出来ようか。

 しかし現実は非常である。

 打った本人は魔力欠乏によりダウン。その結果発生した音でコウジュもダウン。アクアはとばっちりを受けた結果だが、元々戦力として数えるには心許ない。

 つまり、現状の戦力はカズマ一人となってしまうわけだ。

 そこで不意に悪い予想が脳裏をよぎる。

 もしこの場に敵が、それも複数で来られたら果たして自分は対処出来るのかどうか。

 そんな予想に思わず口が引きつる。

 

 

 だがそれがフラグとなったのか、ボゴン、ボゴンと音を立てて、未だ地上に出てきていなかったジャイアントトード達がその姿を現す。

 幸いにも、近くのジャイアントトード達は先程コウジュが叩き起こしたため、今出てきたのは比較的遠い位置だ。

 しかしだからといって余裕がある訳も無い。

 

「あ、アクアアアアアアアアア!!! 撤退だ撤退!!!! コウジュを抱えて走れ!! 俺はめぐみんを連れて行くから!!!!」

 

「ええええ!? 私コウジュを持って走るとか出来ないんですけど!? 女神に肉体労働とか向いてないんですけど!!?」

 

「良いから走れやあああああああ!! 死にたくなかったらな!!!!!」

 

 カズマは言いながらめぐみんへと近づき、慌てて背負おうとする。

 めぐみんは一歩も動けないとはいえなんとか縋りつく程度のことは出来たようで、カズマにおんぶしてもらうことは成功した。

 

「あ、すみませんカズマ。お手数をお掛けします」

 

「ホントだよこんちくしょう!!」

 

「大変恐縮なのですが杖と帽子も回収して頂けたら、なんて」

 

「静かにおぶさられててお願いだから!!」

 

 そうカズマは文句を言いつつもしっかりとその二つを回収し――そのままだと杖が邪魔になるので杖をめぐみんの足の下に入れて支えるようにした――、アクセルの方へと走り出した。

 チラリと見ればアクアも何とかコウジュを背負えたようで、同じように町に向かって走り出している。

 

「くそおおおお!! 効率よく大量に狩れると思ったのに!!! めぐみんほんとにもう魔力は空っぽなのか!? 何か目くらまし程度でも良いから魔法使えたりとか」

 

「使えません」

 

「ああもうなら仕方ない! 次はもうちょっと威力低めで良いから数を頼むぞ!!」

 

 使えないものは仕方ないと諦めて走ることに再び集中するカズマ。

 めぐみんが小柄とはいえ、ステータスの高くないカズマは結構いっぱいいっぱいだった。

 だから、めぐみんが「そういうことではないのですが・・・・・・」と漏らした言葉を聞き取れなかった。

 

 だがやはりというべきか、カズマのステータスでは限界があった。

 ジャイアントトードはその鈍重そうな見た目に反して、筋肉の詰まった蛙の脚部から生み出されるジャンプ力は容易くカズマたちとの距離を埋めようとしてきていた。

 いや、実際にカズマたちとの距離はどんどん縮まってきていた。

 ドズン、ドズンとジャイアントトードそれぞれが着地時に生み出す揺れは、すぐそこまで迫っていたのだ。

 

「あ・・・・・・」

 

 そんな声と共に背中からめぐみんの重さが突如消え、カズマはその拍子に体勢を崩したたらを踏む。

 奇跡的に倒れずに済んだが、問題はその消えためぐみんだ。

 

 カズマは慌てて振り返り、その姿を探す。

 いや、見つけるのは容易だった。

 何せ少し離れた場所に居るジャイアントトードの口からめぐみんの足が生えていたのだから。

 

「めぐみんんんんんんん!?」

 

 どうしてそうなったのかカズマには分からなかったが、一先ず救出しようと剣を抜きながらめぐみんを咥えたジャイアントトードへと走る。

 

『あ・・・・・・』

 

 しかしその途中でデジャブを感じる様な声が少し離れた場所から聞こえた。

 走りながらもそちらを見ると、アクアが背負っていたコウジュが、ジャイアントトードの舌で一本釣りされている所だった。

 どうやらめぐみんもそうやってカズマの背中から引き抜かれたらしい。

 そしてあっという間にコウジュもジャイアントトードの口の中にシュゥゥゥットされてしまう。

 

『コウジュ!? ってあれ、何か巻き付いてええええええええええええ!?』

 

 更に、アクアもまた一本釣りされてしまった。

 そしてパクリ。

 ジャイアントトードの口から3人の少女が生えているという頭がおかしくなりそうな状況が出来てしまった。

 

 

 

 

 

 

「なんでさああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 奇しくも、どこぞのブラウニーと同じくとんだ厄介事に巻き込まれた際の口癖がシンクロしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「あっはははごめんねーカズマ」

 

「笑い事じゃなかったんだからな!?」

 

 なんか気づいたらジャイアントトードに食べられていた件について。

 いやまあ妲己・・・・・・ウカノの魅了スキルの効果が高すぎた所為でジャイアントトードに性的に食べられそうになった最初のことを思うと、物理的に食べられた程度は未だマシなんだけどさ。スペック的にジャイアントトードじゃ俺に傷一つ付けられないし。

 けどまさかめぐみんの爆裂魔法で気絶するとは思わなかった。

 お蔭で爆裂魔法の爆音を攻撃と身体がみなしたのかラーニングしてしまった。音だけだけど。

 まあでもこれで爆裂魔法の音に耐性は付いたしそれはそれでありだろうか。

 

 問題があるとすれば、今俺は・・・・・・というか俺達は粘液まみれでネトネトだということだ。

 カズマから話を聞いた加減では、どうやら食われた俺達三人のうち一番耐久力の無さそうなめぐみんを先ず救出。ただしその口から出してしまうと後続のジャイアントトードにまた食べられそうだったので食べるのに集中していたジャイアントトードを倒すだけ倒して次に耐久力の無さそうなアクア先輩を助けに行ったそうだ。ナイス判断。

 しかしアクア先輩に関してはジャイアントトードの口から出して、後続のジャイアントトードの注意を引くように指示したそうだ。

 そしてその間に俺を助けて叩き起こし、意識が回復した俺が残りのジャイアントトードを全滅させたって訳だ。アクア先輩がまたお食べになられていたけど、まあ何とかなった。

 

 そうしてとりあえずの窮地を脱した俺達は、当然ながら帰路へと付いた。

 カズマは当然ながら、アクア先輩もめぐみんももう戦える余力はなく、俺も流石にこのネトネトの状態じゃ居たくない。

 なので今は風呂屋さんへと向かっている途中だ。

 そして俺はアクア先輩を、カズマはめぐみんを背負いながら町中を歩いている。

 ネトネトのまま。

 

「カエルの口の中って、臭いけどいい感じに温かいんですね。初めて知りました」

 

「その情報は知りたくなかったよ」

 

「俺も流石にカエルに食べられたの初めてだわ」

 

「カエルには!?」

 

「ああうん、ドラゴンに一回食べられたことがあって」

 

「「ドラゴンに!?」」

 

「あ、2回だったか」

 

「「違うそうじゃない」」

 

 めぐみんが背負われながらボソボソと口にした言葉にそれぞれ反応する。ただアクア先輩は疲れ果てていてお休み中だけど。

 

 しかしまあこの粘液を早くどうにかしなければいけない。

 何せ先程から町の人々がこちらを見てヒソヒソと何かを話しているのだ。

 しかも俺やめぐみん、アクア先輩には何やら可哀そうな子を見る目を。カズマには殺気交じりに鋭い瞳を向けていた。

 それをカズマも感じ取ったのか、顔が引きつっているのが見える。

 

「うんまあ客観的に考えて粘液まみれの女の子たちを連れ歩いてたらそら訝しむよな」

 

「お願いだから言わないでください」

 

 俺の呟きにカズマが心の底からの言葉を発する。 

 いやすまない。でもとりあえず風呂屋には行かないとどうしようもないよな。

 俺は着替えられるけど、アクア先輩達がこのままじゃ意味が無いし。

 

 そう思い歩いていると、前を最近知り合ったお姉さんが歩いていた。

 その横には見慣れぬ少女が一緒に居たが、そのお姉さんは俺に気付いたのか手を上げて挨拶しようとした。

 しかしすぐに俺達の状態に気付いたのか、ギョッとした目になり、慌ててこちらへと走って来た。

 

「やあキャベツのお姉さん」

 

「コウジュ殿、だから私はダクネスだと言っているじゃありませんか」

 

「あははごめんなさい。あのキャベツがあまりにも美味しかったからつい。ところでそちらの方は?」

 

「ああ、彼女は共にクエストを受ける仲間で、クリスと言います」

 

「クリスです。よろしく」

 

「コウジュです。よろしく」

 

 キャベツのお姉さん、もといダクネスさん。最近俺の歌を聞きに来てくれた時にキャベツをくれるお姉さんだ。

 そのキャベツがまた美味しくてついついキャベツのお姉さんと呼んでしまったが、別に名前を忘れていた訳ではない。ほんとだぜ?

 そしてもう一人のサバサバとした感じの雰囲気を持つ美少女、クリスさんとやら。

 その二人は俺と話をしながらも、俺の状態やその横で居づらそうにしているカズマたちの状態に目線がチラチラと動いていた。

 

 そんな二人に事情を説明しようと口を開きかけて、少し引っ掛かりを覚えた。

 それは臭いだ。

 

「ん? んん?」

 

「えっと、何か?」

 

「ああごめんなさい、何だか知ってる人の臭いを感じたから」

 

 そういうと、クリスさんは一瞬何かに驚いたが、すぐさま首を横に振った。

 

「っ・・・・・・。いや私たちは初対面だと思いますよ?」

 

「うん、そうですよねぇ。ごめんなさい、このネトネトの所為で鼻が参っちゃってるのかも」

 

 実際このネトネト結構生臭いもんだから鼻が辛いのだ。

 たぶんその所為で勘違いしたのだろう。

 そう一人納得していると、流石に待てなくなったのかダクネスさんが口を開いた。

 

「それよりコウジュ殿! あなた方のその状態はどうされたのですか!?」

 

「あー、まあちょっとクエストで下手をやらかしてね。それでみんな仲良くジャイアントトードの粘液まみれってわけさ。あ、そっちの彼、カズマは無事?だけど」

 

「何とうらy・・・・・・ゴホン、何と恐ろしい」

 

 いま最初なんて言おうとしたの?

 聞き間違いでなければうらやましい的な感じで言おうとした?

 いやまさかね、こんな聖騎士みたいな感じの方がそんなわけないか。

 どうやら俺も大分疲れてしまったらしい。

 

「一先ず背負ってらっしゃる方をこちらへ。お疲れだと思いますし手伝いましょう」

 

「え、流石に悪いですよ」

 

 そう言うもダクネスさんは首を横に振り、俺へと近づいてアクア先輩をその手で代わりに抱えてくれた。

 

「私とてクルセイダーの端くれ、困った方を放っては置けません」

 

 自身の鎧が粘液で汚れることも厭わず、彼女は優しい笑顔でそう言った。

 その姿はまさしく聖騎士のようであった。

 クリスさんもカズマと交代しようと声を掛けてくれたが、そちらに関しては男の意地かカズマは辞退した。

 やべえ女神かこの人達。 

 いや俺とアクア先輩か。

 

 そんな風に尊敬の念を抱いていると、俺達が行こうとしていたのが何処かを聞いてきたので風呂屋だと説明した。

 すると、ならばご一緒にとお風呂も一緒に入ることになった。

 まあアクア先輩を抱えたことで一部粘液が付いちゃったしね。

 それ以前に俺としても否やは無いので、そのまま了承と伝えた。 

 それに笑みを持って返してくれるダクネスさん。

 ほんと良い人だ。

 

 改めて、新たに二人加えた俺達は風呂屋へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

「ふふ、これも悪くない」

 

 

 

 

 え、何か言った今?




いかがだったでしょうか?

気付いたら1万2千字近く行っていました・・・。
結局2週間近く掛かっちゃいましたね。
でも御陰で漸くダクネスとクリス登場です!!
いやあこれでまたお笑い時空が加速しますね!!(え

さておき、次回はまた新たな邂逅編となる訳ですが、どっちを掘り下げるか悩んでいます。原作をご存知の方なら察しは付くと思いますが、ドMか、PANTUか、悩ましいですね!!

まあそんなわけで今話はここらで失礼いたします。
ではではまた次話もよろしくお願い致します!!



P.S.
FGOの3周年記念でいっぱい石を貰っちゃいましたね!課金しないと(支離滅裂な言動
さておき、スカサハスカディさんがここで来るかぁといった感じでしたが皆様いかがでしたか? 
私は多くの石が犠牲になりつつ何とか一枚引けました。
福袋の方はエクストラクラスで引いたのですが、快楽天さん意外なら誰でも良いやって思ってたらきっちり快楽天さんでした。ちくせう。
そういえば、どうやら水着イベもすぐそこに差し迫っている様子!!
水着ジャンヌさんですよ!? これはもう鯖が落ちるしかないやろ(確信
今後の展開がまた楽しみで仕方ないですね!!

あ、アーケードはまだ手を出せていません・・・。

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