テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。
そしてあけましておめでとうございます!(遅い

いやぁ思うようにいかないものですね。色々。
あとシリアスとギャグの割合が難しい。

ではでは一先ずどうぞ!


『stage13:この悲しい決意にも祝福を!』

 

 

 

「ねぇ何でこんなことするの!? 俺が魔王軍幹部だからか!? ああそうだよなお前らからしたら敵だよな!!? だけどちょっと陰険すぎないか!? 一発二発なら許してやろうと思ったけど毎日毎日あの爆音がいつ鳴るかドキドキしながら生活するストレスが分かるか!!? 何回心臓が止まりかけたか分かる

かー!!? 心臓はとっくに止まってるけどなー!!! ちくしょうがっ!!!!」

 

 

 

 なんか、めっちゃ怒ってるんだけど・・・・・・。

 

 

 

 俺がここへたどり着いたのは、カズマを置いて先に来たとはいえ何人かの冒険者が既に集合したあとだった。

 でもこの魔王軍幹部とやらは、少しばかり離れた丘からこちらを見るばかりでアクションも起こさないため、用心深く観察していた。魔王軍だからって理由だけで見敵必殺する気はないしね。

 そして暫くして、冒険者連中が大体集まった辺りでのこれだ。

 醸し出す雰囲気はおどろおどろしく、空は曇り、雷鳴が鳴り響いている。

 そんな中、彼? ・・・・・・の手に持つ頭から繰り出されたのが先の嘆きだ。

 そして嘆きの中には、その原因となったであろう人物を限りなく絞り出すことが出来るワードが含まれていた。

 

 チラリと、すぐ近くに佇んでいる魔女帽子を被った少女を見る。

 

 “爆裂魔法”、確かにデュラハンはそう口にした。

 そして、爆裂魔法という高難易度魔法を使える冒険者というのはこの町に片手で数えられる程度だろう。いや、『初級冒険者の町』であるここでは、ひょっとすると一人の可能性もある。

 そう、めぐみんだ。

 彼女は今、デュラハンが口にした言葉を聞き、自身の杖を抱きながらその身を静かに震わせている。

 周囲では、俺と同じように爆裂魔法と言えば・・・・・・とめぐみんに思い至ったであろう人達も出てきていた。

 うんまあ町の中でも外でも爆裂魔法爆裂魔法と暇があれば口にしているのだから当然の結果だろう。

 少しずつめぐみんへと集まる視線が増えていく。

 それに気づいたのかそうではないのか、彼女は帽子の前縁を下げ、顔を俯ける。

 

 まったく、何で爆裂魔法を魔王軍幹部が居る城にポンポン叩き込むようなことになったかは知らないが、知らんぷりできんよね。

 

 正直な所、魔王軍幹部と相対するなんてのはやりたくない。

 出来るかできないかで言えばそりゃ出来る。

 だが、この世界は種族と種族が争っているのだ。

 そしてその均衡は危ういながらも保たれている。

 集めた情報によれば魔王軍の侵略も積極的には行われておらず、何度か前線である王都にも行ったが定期的に戦闘行為が行われてはいても決着を着ける所まではいかず小康状態だ。

 そんな中で幹部の一人がやられたなんてことになれば、その均衡が崩れる。

 勿論、だからってこのまま争い続けてほしいというわけではない。

 ハッピーエンドのためなら全力を尽くすとも。

 でも、魔王軍幹部と相対するのはまだ(・・)やる訳にはいかない。

 出来れば俺が率いるのではなく、ヒト(・・)が勝ってほしいからね。もしも魔王が実は良い奴だったとかなら話は変わるけどさ。

 ともかく、判断材料が少ない状態で大きく動きたくないってのが正直なところ。

 まあ目の前でもしも・・・・・・、いやそれは置いておこう。

 とりあえず今この状況を放置できないのは確実だ。

 だから俺は、集団の中から歩みだしデュラハンの前へと出る。

 

 仕方がない。爆裂魔法なんぞ使えないけど俺が矢面に立って後衛職のフリでもしようか。嘘をつくのは心苦しいが、この状況でめぐみんを前に出す訳にもいかんでしょう。

 ここは俺が上手く捌いてみせようか。

 

 デュラハンが手に持つ頭が俺へと向向けられる。

 その目はこちらをいぶかしむ様に見ており、同時に品定めをしているようだった。

 俺の見た目は幼女よりの少女(主観)なわけだから、それも当然であろう。

 そんな俺が、怯みもせずに魔王軍幹部の前に立つ。

 それは余程の無謀か無知であろうと考えているかもしれない。

 しかし、俺はそのどちらでもない。

 

 俺はデュラハンを見ながら、不敵に笑った。

 

「ん? 貴様が俺の城に爆裂魔法を叩き込みまくってる頭のおかしいやつか」

 

「ちがいます。・・・・・・あ」

 

 やっべ、頭がおかしいとか言われて素で否定してしまった。

 デュラハンのヒトも「え、じゃあ何しに来たの?」ってな感じに固まっている。

 いや違うんです。

 矢面に立とうと本気で思っていたけどいきなりキ○ガイ扱いされたから否定しちゃっただけなんだ。誰だってそうする。

 でもどうしようか、もう言ってしまった手前今さら言い直しもできない。

 

 俺とデュラハンとの間に妙な間が生まれる。

 しかしそれも束の間、デュラハンは空いている方の手を静かに剣へと伸ばす。

 すわ戦闘かと、俺もいつでも武器を呼べるように右手を少し横に出した。

 だがそれを見たデュラハンは、何故か剣へと伸ばしていた手を何故か戻してしまった。

 何故そんなことをするのか疑問に思うも、すぐに分かった。

 俺は釣られたのだ。

 

「その反応、初級冒険者ではないな。仲間でもかばったか?」

 

「・・・・・・」

 

 きっちりバレとるやないかい。

 とはいえ、初級冒険者ということ自体は間違いではないのだ。

 ただ単にそこそこ戦闘慣れしているだけの話。

 それだけではあるが、このデュラハンが言っているのは当然そういうことではないだろう。

 俺の反応から、それなりに闘えることはバレてしまっている。

 

 このデュラハン、魔王軍幹部と言うだけあって中々に侮れない

 

「どうした。別に庇い立てするというのならそれはそれで構わん。魔に堕ちたとはいえ俺は騎士である。無用の殺戮は好まないからな」

 

 俺がやり辛く感じていると、デュラハンは訝しむようにこちらへと聞いてくる。

 そう、聞いてくるだけだ。

 闘気とでも言うべきか、戦おうとする意志を感じたのは先程の一回のみ。

 今のデュラハンからは全く感じない。当然ながら殺気というものもだ。

 流石にこのまま警戒していても話が進まないので、俺も構えを解いた。

 

「あんたに戦う気が無いのは分かった。けど、それなら尚更何でここに来たんだ? 爆裂魔法を使った犯人を殺そうとするわけでもなく、俺みたいなのが居ても排除する訳でもないみたいだし」

 

 それだけが疑問だった。

 もしめぐみんを害そうというのなら俺も穴熊を決め込んでいる場合ではない。

 でもそうでないなら、態々藪を突いて蛇を出す必要もない。

 

 ただ、普通ならこんな質問をしたところで敵なのだから答えは聞けないだろう。

 しかしこのデュラハンは自らを騎士と言った。

 先程からの言動などからもそこに矜持があると見た。

 ならば答えてくれるかもしれない。

 そんな淡い期待を抱いての質問であったが、なんとデュラハンは答え始めた。

 

「だから言っているだろう 毎日毎日こりもせずに爆裂魔法を使うやつを止めさせに来たのだ」

 

「デショウネ」

 

 至極真っ当なご意見に俺もどうしたら良いかわからなくなるよ。

 実際、デュラハンが居城としている廃城へと毎日爆裂魔法を叩き込むという所業はあまりにも・・・・・・アレだ。

 いやホント何でそんなことになってたの?

 理屈が分からなくて変な汗が出てくる。

 

 そんな時だ。

 ザッザッと、草原を力強く踏みしめ俺に近づく者が居た。

 誰だろうかと目線をやれば、それはめぐみんだった。

 

「ありがとうございますコウジュ。もう私を庇う必要はありませんよ」

 

 不敵な笑みを浮かべ、そう言うめぐみん。

 

「うんまあめぐみん震えてたし放っておけなかったというか」

 

「震えてません! 震えてたとしても武者震いです!!」

 

 めっちゃ食い気味で言われてしまった。

 しかし今も、杖を握る手は力を入れ過ぎてしまっているし、笑みを浮かべる口元は幽かに震えている。

 この姿を見て庇うなというのは無理だろう。

 ああでも、それでも彼女はここに来た。

 ならそれでも庇うというのは彼女の誇りを踏みにじってしまうだろう。

 何を思って連日城を爆破するなんてことをしたのかはわからない。

 でもアークウィザードとなれる素養を持つということはかなり

INT値が高いわけだ。つまり賢い。

 そんな彼女のことだ、きっと何か思惑があるのだろう。

 

 俺はそう帰結して、めぐみんへと後を任せることにした。

 

「良いんだな?」

 

「心配いりませんよ。これ以上庇われてしまっては紅魔族の名折れです」

 

 短く俺がそう問うと、先程までの震えが嘘のようにムフンと自信ありげにめぐみんは笑った。

 そのままめぐみんは俺の前に出て、マントをバサリと大きく翻した。

 

 

 

 

 

「我が名はめぐみん!!!」

 

 

 

 

 

「めぐみんってなんだ。あだ名か?」

 

「違わい!! わ、我は紅魔族にして、この町随一のアークウィザードなり!!」

 

 途中でデュラハンから茶々が入りはしたが、名乗り切っためぐみん。

 ちゃっかりこの町随一とか言っちゃってるし。

 そんな彼女は杖をゆっくりとデュラハンへと向ける。

 

「ふふふ、私が意味もなくあなたの城を毎日爆破していたとでも?」

 

「嫌がらせはないのか?」

 

「ち、違います!! そう、あれは、あなたを誘き出すための作戦だったのです!! 実際にあなたはここへまんまと出てきてしまった。今日があなたの命日というわけです!!」

 

「なにっ」

 

 え、まじで?

 そんな作戦だったの?

 確かに今ここには、この町における戦力が集結している。

 さすがの幹部もこれだけの人数を相手することは困難であろう。

 

 初級冒険者の町というには高い戦闘力を持つ人が何故かちょろちょろと居るこの町。

 俺とアクア先輩は例外として、町ですれ違う人々の中には確かに強者が居るのだ。

 もちろん、今ここに集結している面々にも含まれている。

 中には人間じゃないっぽい、保有魔力が高いヒト(・・)も居るような町だ。

 きっとめぐみんはその人たちを計算に入れて、ここへと誘きだし、この状況を作り上げたのだろう。

 最近のクエスト不足もこの魔王軍幹部が原因のようだし、ならば町の皆で倒してしまおうということか!

 

 すごいな紅魔族。高いINT値は伊達じゃない。

 

 とはいえ純後衛職が魔王軍幹部を目の前にすれば流石に身を震わせてしまったのだろう。

 それでも前へと出ることを決意した彼女には敬意を表する。

 

 俺はそんな彼女の背中を見ながら、嬉しさにも似たような昂りを感じた。

 凶化の時のような闘争本能というわけではない高揚。

 それは、物語の中の英雄に憧れた時の感覚にも似ていて——————

 

 

 

「せんせー! せんせー!! 後はお願いします!!!」

 

 

 

 ——————なんだって?

 

 デュラハンへと杖を向け、相対していたはずのめぐみんはいつのまにかこちらを向き、いや、俺のそのまた後ろへと目線をやり、そう叫んでいた。

 突然のことに俺も訳がわからず呆けていると、めぐみんが目線をやっているのであろう俺の後方からすんごく聞きなれた声が響いた。

 

「まったく、しょうがないわねぇ。こうまで頼られたら女神たる私が出ないわけにも行かないしねっ」

 

 再び俺の横を通り抜けて前へと出る姿があった。

 アクア先輩だ。

 代わりにめぐみんは俺の横へとならび、一仕事やり遂げたような満足そうな笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 なんか思ってたのと違う(´・ω・`)

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 魔王軍幹部が一人、ベルディア。

 彼は元騎士にして、紆余曲折の果てにデュラハンへとなった者だ。

 いや、デュラハンではあるが騎士であるという自負は変わらず、今でも騎士道精神を己の柱としている。

 故に自身の主が魔王に変わろうとも、主君に尽くす為に動く。

 勿論それは全てが全て意のままにというわけではない。

 心がある以上、自らの判断を実行する場合もある。

 

 例えば今がその時だ。

 

 ベルディアは魔王から、新たな勇者が召喚された可能性があるため偵察に行けと命じられた。

 場合によっては命を奪うようにも言われている。

 しかしベルディアには、偵察の名には従っても命まで奪う気はなかった。

 魔王の障害となるならば排除する。それには変わり無い。

 しかしこの町は初級冒険者の町。

 勇者が召喚されていたとしてもへっぴり腰で剣を振るうか、下手をすれば右も左も分からぬ程度の可能性もある。

 将来的に立ちはだかる可能性があろうとも、ベルディアには生まれたての赤子を捻るような趣味はなかった。

 そして強者として立ちはだかれば、改めて騎士として実力で斬り払う。

 今までもそうしてきたし、これからもそうする気だった。

 

 

 だったのだが——————、

 

 

「馬に乗っちゃったりなんかしてえらそうにして! あんたみたいなアンデッド私に掛かれば一瞬よ一瞬! 悔い改めなさい!!」

 

 今、ベルディアの前では青い髪に聖なる力を内包する衣を羽織った女が杖を構えていた。

 その対象は当然のことながらベルディア自身だ。

 そしてこれは、想定していなかった事態だった。 

 

 当初ベルディアは、滞在している古城の障壁へと毎日のようにぶつけられる爆裂魔法の主を脅し、そのあとはゆっくりと任務に当たろうとしていた。

 死して尚この世にしがみつく魔物の一種となり果てても不快なものは不快だ。

 一日一回だと分かったとしてもそれがいつなのか分からず、住処に傷一つつかないとわかっていても音の衝撃波が城を揺らすことには変わり無い。

 それでも騎士の矜持として弱者をいたぶるようなことはしないと決めている以上は、脅してイタズラ(と呼べる範疇にはない気もするが)を止めさせるに留まろうとしていた。

 

 だというのに事態は何がどうなったのかあれよあれよという間に、戦闘を行うような状態となっていた。

 

 ベルディアは考える。

 騎士の矜持とは言うが、いくら弱者とはいえ格上に挑戦しようとする者を無視するのもまた騎士の名折れだ。

 しかしながらこの状況で戦闘を行えば、なし崩し的に頭のおかしいアークウィザードや青いアークプリーストらしき女の後ろにいるもの達とも戦わなければならなくなる。

 それもまた本意ではないのだ。

 ならばどうするか。

 

 その答えはすぐに出た。

 

 仕切り直せば良い。

 いやがおうにもベルディアの下に来なければいけないようにした上で、場所を変えれば良い。

 

 そう思い付いたら、ベルディアの行動は早かった。

 

「何をする気? どんなことをしようったって私がすぐに浄化して——————」

 

「間に合わんよ」

 

 青い女・・・・・・アクアが、浄化魔法を唱える態勢に入る。

 しかしそれよりも早く、ベルディアの行動は終わってしまった。

 めぐみんへと指を指す。

 それだけで用意は終わってしまった。

 

「汝に死の宣告を」

 

 ベルディアの指先に禍々しい魔力が集う。

 死の宣告。

 それはデュラハンの、地球の伝承にもある首なし騎士の呪いだ。

 人々に死を宣告し、後に魂を刈り取る。

 それは死の運命へと向かわせるものであったり、首なし騎士が命を刈り取るといった伝承もある。

 その具現とも言うべき呪いが今放たれる。

 

「貴様は一週間の後に死ぬであろう」

 

 ベルディアがそう告げたと同時に呪いが飛ぶ。

 その狙いは当然めぐみんであった。

 

 めぐみんはその類い希なる魔法への適性で、ベルディアの指先から放たれる禍々しい魔力を的確に感じ取っていた。

 それがひどくゆっくりと自らへと突き進む。

 走馬灯、一般にそう呼ばれるものが起こっていた。

 地球の伝承にあるようなものとは違い、めぐみんの目に映るその呪いは、指向性をもって撃ち出される一種の射出魔法のようであった。

 死ぬのは今すぐではない、そうデュラハンは口にした。

 だが呪いとは、そう易々と解呪出来ないからこそ呪いと言うのだ。

 当たれば確実に死ぬ。めぐみんはその頭脳ゆえに理解できてしまっていた。

 自然と、目を瞑った。

 

 爆裂魔法には自負があった。

 これまでめぐみんは、至高の爆裂魔法を放てるようになるためだけに生きてきたといっても過言ではない。

 幼い頃、脳裏に焼き付いた強烈な光景。それがめぐみんにとっての原点。

 ただただそこに近づくために、否、超えるために自信を高め続けてきた。

 でも未だ発展途上なめぐみんの魔法は、古城の結界を破るには至らない。

 デュラハンの言うように、一日一回ではあるが両手では足りないほどに結界へと撃ち込んではみたがびくともしなかった。

 最初の一発は気まぐれだった。

 誰も住んでいないであろう古城を練習のための日課の標的としただけであった。

 しかし文字通り全力で撃ち込んだ筈の爆裂魔法でも、地震でも起これば崩れそうな古城であるにも拘らずその存在をありありと残していた。

 そこからは意地だった。

 一発撃てば立つこともままならない状態になるが、幸いにも協力者(・・・)を得ることが出来たために新たな日課として城を標的とし続けた。

 それに魔王軍幹部とやらのせいでクエストには出られない。

 個人的にはその魔王軍幹部とやら自身に爆裂魔法を叩き込みたかっためぐみんであったがそれも叶わず、一先ず身近にある古城を標的とし続けた。

 

 その結末が、これだった。

 

 めぐみんが走馬灯のように浮かぶ映像はどうしてこの状況になったかだけではない。

 故郷の家族や級友等の顔が次々と脳裏に浮かんでいく。

 後悔が無いと言えば嘘になる。

 しかし彼女は信念に従い、進み続けてきた。

 それがここまでだっただけのこと。

 

 そう諦め——————

 

 

 

 

 ——————きれる訳がなかった!!

 

 

 

 生きたいと。

 まだこの先を見たいのだと。

 強く、あの時(・・・)のように、自身の原点となったあの日のようにめぐみんは願った!

 

 生きたいと!!

 

 

 

 

 

 

 

「それだけ強く願うんなら、次は気を付けなよ」

 

 

 そんな言葉が、めぐみんに聞こえた。

 この場において相応しくないと感じる程に気負いも無く、日常の一風景かの如く響いた声。

 それと同時に自身の身体が横へ、誰かに抱き付かれながら押し倒される。

 横に倒れた痛みに少し顔を顰めてしまうめぐみんだったが、すぐに閉じていた目を開ける。

 すると押し倒したのはダクネスであった。

 しかし声の主は彼女では無かったのだ。

 ならばと自分が居たであろう場所へとめぐみんは目を向けた。

 

 そこには両手を広げ、庇うようにして立っているコウジュが居た。

 

「庇うか」

 

「当然さね」

 

 禍々しいオーラをその身に浴び、黒い渦の様な魔力に包まれているコウジュ。

 そう、ダクネスもめぐみんを庇う為に身を挺したが、その前方へとコウジュが割り込み代わりに呪いを受けていた。

 呪いは、最初の標的とは違うも当たったコウジュを対象と決めたようで、その身体へと纏わりつく。

 

 そんなコウジュを見て、デュラハンは面白くなさそうに鼻を鳴らす。

 そしてそのまま視線をコウジュの後ろ、めぐみんへとやった。

 

「予定とは違ったが、仲間同士の繋がりが強固な貴様らにはこちらの方がよく効くであろうな。紅魔族の娘よ。これが貴様の招いた結果だ」

 

「っ・・・・・・」

 

 その言葉を聞き、めぐみんが声を漏らす。

 

「その銀の小娘は、貴様の所為で苦しみ抜いた末に一週間後死ぬことになるだろう。その姿を傍で見続け悔いるがいい」

 

「わ、私は・・・・・・」

 

 デュラハンの言葉を聞き、ダクネスと共に起き上がっためぐみんが手を震わせながらコウジュへと近づく。 

 めぐみんと同じようにダクネスも、コウジュへと近寄り、今度はダクネスがコウジュを庇うように静かに前へと立った。 

 

「ふん、初めからあんな事をしなければ良かったのだ。しかしもう遅い。呪いを解いてほしくば正々堂々と真正面から古城へ来るんだな。そしてそこで再び(まみ)えることができたなら解いてやらんことも無い」

 

 そう言うと、デュラハンは騎乗する馬を操り踵を返した。 

 そして禍々しい魔力を展開したかと思いきや、そのまま魔力に包まれ姿を消す。

 自らの住処(古城)へと転移したのだ。

 そのため、先程まで辺りを埋め尽くさんばかりに溢れていた気配は消えさり、今度は気持ち悪い程の静寂がそこにはあった。

 しかしそれも束の間のこと。

 静寂を消し飛ばすように、コウジュ達へと駆け寄る姿があった。

 

「コウジュ!! 無事か!?」

 

 ダクネスと同時に走り出してはいたがステータスの差で漸く追いつくことが出来たカズマ。

 息を切らせながら彼は、コウジュへと問うた。

 しかしそんなカズマへとコウジュはニヘラと笑う。

 

「大丈夫だよカズマ。本当に何でもない」

 

「だけど呪いが直撃してたじゃないか!」

 

「ああ、あれは——————」

 

 コウジュの状態を心配して聞くも、変わらずコウジュは飄々と返す。

 そんなコウジュに、当事者であるめぐみんは目に涙を浮かべながら、口を開いた。

 

「何でもない訳、無いじゃないですか。私を庇ってくれた所為で呪いを掛けられてしまったのですから・・・・・・」

 

「気にすんなってば」

 

「で、でも!!」

 

 めぐみんは、そんな風に言うコウジュが自分を心配させまいと強がっているように見えた。

 そうでなければ、死の呪いを受けたというのに飄々として居られるわけがない。

 

 めぐみんは、力強く涙をぬぐった。

 そして杖を強く握り力強く地面を踏みしめた。

 

「あ、おいどこ行くんだよめぐみん!!」

 

「止めないでくださいカズマ。これは私の責任です。ちょっと古城まで行って、呪いを解いてもらいに行くだけです」

 

「おまえ・・・・・・」

 

 覚悟を決めた表情でいきなり歩き出しためぐみんにカズマが声を掛けるが、めぐみんは薄らと微笑むだけだ。

 その笑みは何処か儚げで、カズマは見ていられなかった。

 色々と問題児だとはいえ、それでも日々を共に過ごした仲間だ。

 見捨てられるわけがない。

 それに元より、カズマもコウジュを見捨てる選択肢は取れなかった。

 だからカズマもまた決心し、めぐみんの横へと並ぶ。

 

「カズマ?」

 

「馬鹿野郎。一発撃ったら終わるお前ひとりに行かせるわけがないだろ? いつも町に連れて帰ってるのは誰だと思ってるんだ?」

 

「・・・・・・まったく、あなたって人は。しかし敵は魔王軍幹部。一筋縄ではいきませんよ?」

 

「ああ、分かってるさ」

 

 そんな二人へともう一人並んだ。

 

「ダクネス、あなたまで」

 

「お前まで来る必要はないんだぞ?」

 

「馬鹿を言わないでくれ。ここで仲間を見捨てたら女神エリスに顔向けできない。何よりも、私自身が見捨てるという選択肢を取ることはできないさ」

 

「ダクネスお前、まるで本物のクルセイダーみたいだぞ」

 

「ふん、馬鹿者。私はいつでもクルセイダーだ」

 

 今から死地へと赴く。

 しかし自然と3人には笑みが浮かんだ。

 戦力差は絶望的、だが負ける気がしない。

 魔王軍幹部、何するものぞ。

 3人はもう一度顔を見合わせた後、古城がある方へと歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとコウジュ、終わったんなら早く帰りましょうよ」

 

「ちょ、アクア先輩待ってくださいって。なんか覚悟決めちゃった3人に言い出し辛くて・・・・・・」

 

「そんなの良いから早くシュワシュワを飲みに行くわよ! デュラハンを仕留め損ねてモヤモヤしてるんだから!!」

 

「いやでもですねぇ。この状況で何て切り出したらいいか」

 

「良いからさっさと食べてしまいなさい・・・よ!!」

 

「あ、アクア先輩なんで叩こうとして・・・・・・ゴクン・・・・・・ケプ」

 

 

 

 

 

「「「ん?」」」




いかがだったでしょうか?

ほんとシリアスとギャグの割合が難しい。
切り替わりが唐突過ぎやしませんかね?
今更ですが、いやいつまでたってもこういうのは難しいですね。
銀〇みたいに緩急をつけたいところです。

さてさて、一先ずは魔王軍幹部を撃退(?)したわけですが、何と原作ではララティーナ嬢が呪いを受けるはずだったのにコウジュが代わりに呪いを受けてしまった!!
タイヘンダー。
しかもパワハラ先輩女神の所為で勢い余って飲み込んでしまった!!
ナンテコッタイ。
そんな続きからが次回ですね。
そして次回と言えば、魔剣の勇者様ですね!!
さぁてどうなるんでしょうねー(*´з`)

そして、最後になりましたが、1年程音沙汰もなく行方不明になっていた私を温かいお言葉でお迎えくださり本当にありがとうございますm(_ _)m
もちろん頂いた感想は全て目を通しております。
本当にありがたい…。
不定期更新ではありますが、ボチボチとまた続けさせていただきたく思いますので今後とも宜しくお願い致します。

ではでは皆さま、また次回もよろしくお願い致します!!


P.S.
水曜日からはFGOでアマゾネス・ドットコムのイベですねー。
さてさてどんなのが来るのだろうか。
日にちを使うようなやつじゃなければ良いなぁ...("= =)

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