テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。

昨日はちょっとお酒を飲んだりで何もできませんでした。すみませぬ。
そ、その分今回ちょっと多めなので許してください!

くそぅ、PSO2もできなかった…orz


『stage22:あいあむざぼーんおぶまいそーど』

 

 

 

 魔力を身体に無理矢理流す。

 

「っ……」

 

 やっぱり負担はあるな…。

 身体から何かが抜け出る感覚と共に、やすりで体内を削られるかのような感覚が少し生まれる。その結果か、血が口元から一筋垂れた。

 

 だが…、よし!!

 

 縄もほどけたし、身体の調子もほとんど戻った。

 早く、屋敷を出ないと……。

 扉の方へ向かい、部屋の外の様子を窺う。

 しかし、数人の足音が聞こえてくる。それもこちらへと近づいてきている。

 

 見回りか!?

 

 1度部屋に戻り、何か武器を探す。

 暖炉の近くに鉄の棒を見つけた。

 未だ本調子ではないから強化はできない。少し心許ないがひとまずこれで対応するしかない。

 

 気づけば足音はすぐそこまで来ている。

 このまま通り過ぎることを願うが、何故か、その誰かのうちの一人は必ずここに来るような予感がした。

 その予感が何を示すものなのかよくわからないが、警戒を怠る訳にはいかない。

 棒を強く握りしめ、いつでも振り下ろせるように構える。

 

「士郎!無事ですか!?」

 

 バァン!と蹴破る勢いで扉を押し開けると同時に入って来たのはなんとセイバーだった。

 振り下ろしそうになっていた鉄棒を気合で押しとどめ、静かに下ろす。

 

「セイバー…?」

 

 どうしてセイバーがここに居るのだろうか?

 セイバー自身の魔力を温存させるために寝てもらっているはずだった。

 というのも、コウジュに生命力を吸収されたせいで通常戦闘はまだしも今後を考えるならば宝具の解放は厳しいとセイバー自身から聞いたから少しでも回復してもらうためだ。

 気休め程度らしいが、食事で魔力を回復することも可能だと聞いていたからセイバーに寝てもらっている間に食事の材料を買いに行ったのだが、そこで捕まってしまった。

 何かあった場合は令呪を使うように言われていたが、それをする暇もなく連れて来られてしまったわけだ。 

 

「どうしてここに?」

 

「それは私のセリフです」

 

 淡々と話すセイバーだが、かなり怒っているのが分かってしまう。

 本当はセイバーが起きてから一緒に行くはずであったが、手間を惜しんだ結果がこれである以上言い訳にしかならない。 

 

「思ったより元気そうね。これなら私たちが出向くこともなかったでしょう。」

 

「だからそう言っただろう。衛宮士郎は放っておけと」

 

「遠坂にアーチャーまで。どうして…」

 

 どうすればいいものかなどと悩んでいると、セイバーの後ろから人影が二つ。遠坂とアーチャーだ。

 同盟を組んでるとはいえこの二人までいるとは素直に驚いた。

 アーチャーならば皮肉気に放って置けと言いそうなものだが…。

 

 疑問を持った俺に気付いたのか、セイバーが答えてくれた。

 

「私が協力を要請したのです。士郎がイリヤスフィールに拉致されたと…。そして丁度イリヤ達が外出したのでその隙に侵入しました」

 

「ま、一応協力関係にあるわけだしね。さぁイリヤスフィールが戻ってくる前に早く行くわよ」

 

 そう言って早足に部屋を出ていく遠坂。

 

 礼を…いや、礼は帰ってからにしよう。

 今は脱出をしないとだな。

 

 

 

 

 城の中を走る俺達。

 お城というだけはあるようで、既にかなり走った筈だが出口は見えてこない。

 周囲には高価そうな置き物や絵が置いてある。

 こんなときでなければ楽しめたかもしれないが、今そんな余裕はない。

 

 そんな風に思考が横道に逸れている内に出口が見えた。

 しかし、出口に至るまでに少々問題がありそうだ。

 

「正面入り口…。こんな所通って大丈夫なのか? 丸見えだぞ」

 

「相手が留守にしてるんだから最短距離を一気に行った方がいいでしょ? さ、行くわよ」

 

 そう言いまた走り出す遠坂。

 大胆と言うか何と言うか…。

 だが、考えている間にもイリヤが戻ってくる可能性は増すので俺も追いかける。

 

 出口まででもおよそ50mほどか。

 ちょっとしたスポーツ程度なら出来そうである。

 そんな所を走る俺たちの靴音は当然のように響くが、誰も出てくる気配はない。

 

 待て、気配はない…?

 隠れて出てこないのならまだしも、気配が無いのはおかしくないか?

 確かに俺の感覚は未だ未熟で、多少なりとも心得を持つ人間が居たのならどうしようもない。

 でも、だからってお客様を迎え入れるように何も妨害なく明かりだけが付いているってのはおかしくないか?

 

 そしてこの状況の中で一つ思い出したことがある。

 

 あのライダーとの戦闘時も、コウジュは何処からともなく現れなかったか? 目で確認するまで、気配もなく突如現れなかったか?

 

「どうしたのですか士郎?」

 

 気づけば俺の脚は止まっていた。

 そんな俺を怪訝に思い、同じく止まったセイバーが声を掛けてくる。

 だが俺は今思いついたことが頭から離れず、周囲を見回していた。

 

 気のせいなら良いが、もしも、もしも最初からコウジュ達はこちらをどこかから監視し続けていたとしたら?

 

 だがやはり不審な点は無い。

 無いが、どうしても何かが引っ掛かる。

 

「ちっ…。なるほどそういうことか」

 

「どうしたのよアーチャー」

 

 俺を見て同じように足を止めていたアーチャーと遠坂。

 遠坂は首をかしげるだけだったが、アーチャーは俺の様子を見て途中で何かに気付いたようで口汚く舌打ちをする。

 

「どうやら凜、我々はまんまと嵌められたようだ」

 

「どういうことよ。あの子たちは出て行ってるし、罠じゃないことが簡単に分かるくらいに無防備じゃない。結構念入りに調べたけど罠っぽい魔術や仕掛けなんて見つけられなかったわよ?」

 

「しまった…。そういうことですか」

 

 遠坂の答えに溜息をつくアーチャー。

 その様子を見て遠坂の額に血管が浮き出たような気がするがさておき、セイバーもまた何かに気付いたようで、剣を構えた。

 

「良いかね凜。ここはアインツベルンの拠点だ」

 

「それがどうしたってのよ」

 

 どこか拗ねるように答える遠坂だが、対するアーチャーは皮肉気な態度はそのままにどこか焦っているように見えた。

 

「ここは魔術師の拠点だと言ってるんだぞ? なぜ工房であるはずのこの場所を無防備にさらけ出している?」

 

「まさかっ!?」

 

 驚きの声を上げる遠坂。

 同時に、俺も合点が行った。

 

 俺を拘束するために魔術を使っていたのに、それ以降この屋敷では魔術的な気配が無かった。

 言うなれば学校の時とは逆のパターン。

 在る筈のものが無い違和感。

 それを、やっと認識することができた。

 

 

 

 

 

「な~んだ、もうばれちゃったの? せっかく色々用意したのに台無しじゃない」

 

「ぶぶ漬けを出しはしないしさ。ゆっくりしていきなよ」

 

 今一番聴きたくない声が辺りに響く。同時に、ただでさえ重かった空気が更に重くなる。

 後ろを振り向くと、外に居るハズのイリヤとコウジュがあらかじめそこに居たかのようにドアから出てきた。

 

「イリヤ…スフィール。バーサーカーまで…」

 

 信じられないといった感じで二人の名を口に出す遠坂。

 イリヤ達は外出したんじゃ…なのにどうして後ろから?

 だが、心の中でやっぱりという気持ちも出てきていた。

 

「こんばんわ。あなたの方から来てくれてうれしいわ、凛」

 

「……」

 

 微笑みながら、話しかけるイリヤは、天真爛漫という言葉が良く似合う。

 だが、そのイリヤが放つ言葉はあまりにも残酷なものだった。

 

「黙っていてはつまらないわ。せっかく時間をあげてるんだから、遺言位は残した方がいいと思うわよ?」

 

 遺言、つまり今から俺たちを殺すってわけか。

 正直、色々と言いたくなる言葉だが場の空気に押し潰されないようにするだけで精一杯だ。

 

 そんな中でも遠坂が話しかけた。

 

「じゃあ、一つ聞いてあげる。あんた達が屋敷を出たから入ってきたのに後ろから表れるのはどうしてかしら? 気配も確かに外に行った。なのに何故、今そこに現れたの?」

 

 その問いに、コウジュがクフフと楽しげに笑う。

 

「答えは単純、空間転移はキャスターだけの専売特許というわけじゃないってことさ」

 

「なるほどね、最初から私たちを待っていたのね」

 

 コウジュの答えに頬を引きつらせる遠坂。

 それは事も無げに空間転移なんていう大魔術を行使するコウジュの規格外さにか、それとも罠にまざまざと嵌められてしまった所為か。

 

「さて、私はこの城の主だからおもてなししてあげないとね」

 

 その瞬間コウジュがイリヤの横から飛び、俺達の前方まで降りてきた。

 

「もう話すことはないかしら?」

 

「もうどうでも良いさ。さぁやろう。はやくやろう。この瞬間を待っていたんだ。来い、スヴァルティアトマホーク」

 

 コウジュが頭の上に片手を掲げるとそこに何かが現れる。

 

 トマホークと言った所から、斧なんだとは思うが、コウジュの手に表れたものは斧としては異形。あまりにもな巨大さ。

 コウジュの身長の二倍はあるんじゃなかろうか。

 刃であろう部分も、長い持ち手につけた鋼鉄を無理矢理に刃形にしたといった感じだ。

 その一撃を受けてしまったとしたら、斬れるとかそれ以前に圧倒的な圧力で粉みじんになるだろう。

 

 それを軽々と無造作にコウジュは構える。

 

「誓うわ。今日は一人も逃がさない」

 

 イリヤの宣言がいやに頭に響いた。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 まずい。まずいぞ。

 どうしてセイバーが戦闘しようとしているのか!!

 この時点でフラフラになってませんでしたかね!? 魔力ギリギリじゃなかったですかね!?

 

 ど、どうしよう。 

 

 俺としては原作通り、アーチャーを残して、士郎、セイバー、凛がこの場を脱出してくれることを望んでた。そして俺がアーチャーを倒して、その後士郎達を追っかけて戦うっていう感じがベスト。

 だから、この場でアーチャーには死んでもらわないといけなかった。

 と言っても、ライダーみたいに一旦だけどね。

 それにやりたいことがあるからアーチャーとの戦闘は経ておきたかった。

 だけど俺が構えるのに合わせて、アーチャーだけでなくセイバーも前に出てきて戦闘態勢へ。

 タイム! 

 そんな気持ちでチラリとイリヤの方を向く。

 しかし審判(イリヤ)見ていない! 試合続行!

 ちょっとSっ気のある笑みで士郎達を見ているイリヤさん素敵です。だけど俺のシグナルに気付いてほしかった。

 

 うん、そういえばライダー戦の時にセイバーって宝具開放してなかったな。あれの所為だ。

 いやいやうっかりじゃありませんとも。ええ。

 

 原作ではセイバーの魔力は士郎からの供給が無い所為でカツカツだった。

 その状態で宝具を使うもんだからバーサーカー戦ではアーチャーを残しセイバーは士郎・凜と一緒に一時退却する。

 けど現状ではおそらく俺のメギバース分くらいしか大きな消費は無い筈だ。

 メギバースでどれだけ削れたかはわからんが、少なくとも原作時よりは魔力が余ってるってことだろう。

 

 詰んだ。

 俺の計画詰んだ…。

 

「未来…、変わっちまったな…」

 

 諦めと、気を引き締め直すためにそう呟く。

 確かに俺の計画は詰んだけど、やると決めたことはやり通さなきゃ男が廃る。

 

 そう改めて決意し、武器を持つ手に力を一層込める。

 

「未来…。なるほどそういうことか」

 

 アーチャーが突然そう呟いた。

 独り言だったんだが、どうも聞かれたようだ。

 独り言のつもりだったのに反応されると恥ずかしいよね。なのでちょい恥ずい…。

 

「下がれ、セイバー」

 

「な、アーチャー!? どういうことですか!?」

 

「アーチャー、どういうつもり?」

 

 何か得心がいった様子のアーチャーが突然セイバーにそう言った。

 その発言はアーチャーの独断だったようで、凜も訝しげにアーチャーへと問う。

 

「忘れたのか。我々の目標はバーサーカーを打倒することではなく、小僧を救出することが目標だったはずだ」

 

 そのアーチャーの発言に凜が少し考えるそぶりを見せた後、口を開いた。

 

「良いわアーチャー、少しの間一人で足止めして」

 

「遠坂?」

 

「馬鹿な、正気ですか凛? アーチャー一人でバーサーカーの相手など。私はまだ戦えます!」

 

「私たちはその隙に逃げる。良い?」

 

 士郎・セイバー組の言葉を聞かず、もう決定したと言わんばかりにアーチャーへと命令する凜。 

 

「賢明な判断だな。凛が先に逃げてくれれば私も逃げられる。それに単独行動は弓兵の得意分野だ」

 

 心得た。

 そう雰囲気で語るアーチャーが、セイバー達の前に立つ。

 その姿は確かに英霊だった。

 俺には無い過去がその姿の向こうに見える気がするほどだ。

 あぁ、なんだろうな。

 心が逸る。熱くなる。今にも走り出しそうになる。

 偶然にも俺が求めていたシチュエーションになりそうだが、そんな事とは別に、心の底から今のアーチャーを見て湧き出す何かが止まらない。

 

「そんな誰とも知れないサーヴァントでバーサーカーに立ち向かうっていうんだ。案外可愛い所があるのね、凛」

 

 俺とは別の意味で興が乗っている様子のイリヤさん。

 イリヤがそんなこと言うから、アーチャーがこっちを睨んでいる。

 鷹の目とはよく言ったもんだ。怖い。怖いなぁ…。

 

「早く行け、凜」

 

「そうね。バーサーカーの雰囲気が変わった。あれは確かにバーサーカーよ。気をつけなさい」

 

「わかっているさ。だが、早く離れなければ私が倒してしまうかもしれんぞ」

 

「アーチャー……。えぇ、遠慮はいらないわ!」

 

「では、期待にこたえるとしよう」

 

 くは、カッコいいなぁアーチャーは。

 言葉は違えど、やはりアーチャーはアーチャーってことなんだろう

 それこそが彼が彼たる所以。

 幾人もの厨二病患者を生み出しただけはある。

 その彼と対峙できるってのはある意味すごい幸運なのかな。

 やばいなぁ、スイッチ入っちゃったっぽい。

 

「ふん、そんな生意気な奴、バラバラにして構わないんだから。やりなさいバーサーカ!!」

 

「Yes,my Lord!!」

 

 その言葉を待っていた。

 さぁ、素敵なパーティーをしようじゃないか。

 

「行くわよ士郎! セイバー!」

 

 そう言って凛が出口へ走っていく。

 

「でも…」

 

「士郎、それしかありません」

 

 少し逡巡する士郎。

 まだアーチャーを残して行くことに納得しきれないのか、足が中々動かない。

 だが割りきったのか、歯をかみしめ、セイバーと共に出口に向かった。

 

 その士郎にアーチャーが声を掛ける。

 

「衛宮士郎。いいか、おまえは戦う者ではない、生み出す者にすぎん。余計なことは考えるな。お前に出来ることは1つ。その1つを極めてみろ」

 

 そう士郎に背を向けたま言い、いつもの黒白双剣、干将・莫耶を投影して出し、構える。

 

「アーチャー……」

 

「忘れるな…。イメージするのは常に最強の自分だ。外敵などいらぬ、お前にとって戦う相手とは自身のイメージにほかならない」

 

 そして、持っていた干将・莫耶も内の片方を天井に投げる。

 刺さった剣が天井を崩した。

 丁度アーチャーの後ろで、逃げた士郎達と俺達を分かつように。

 

 ま、とりあえずは予定通りになったか。

 

 色々な理由で高揚する俺は今か今かと、飛び出しそうになっている。

 だが、アーチャーは戦う前に俺へと言いたいことがあるのか、さて…と切り出した。

 

「戦う前に一つお聞かせ願おうか」

 

「ん、戦うんじゃないん?」

 

「少し…、気になることがあるんでね」

 

 これは予想外だね、話ってなんだろ?

 いや待てよ。

 さっき未来って言葉に反応していたな。

 ってことは…。

 

「凛達がいない方が好都合な話だったり?」

 

「ふむ、君は私が何の話をしたいのか気づいているのか」

 

「いや、大体の想像だよ未来の英霊さん。本来バーサーカーとして召喚されるのは俺じゃないって言いたいんだろ?」

 

「コウジュどういうこと?」

 

 そっか、この辺の話はイリヤに言ってなかったっけ。

 

「イリヤ、アーチャーはね。イリヤもよく知る人が今現在から見て未来で英霊になった姿なんさ」

 

「私も知ってる…?」

 

「私の真名まで知っているとはね…恐れ入る」

 

 アーチャーが俺を見る目が更に鋭くなる。

 だから怖いですって。

 

「私が良く知る人間で英霊に至りそうな人なんて、思いつかないわ」

 

「ま、そうだろうね。現在の姿からは思い浮かばないだろうさ。な、エミヤシロウ?」

 

「シロウ!? うそ、本当に!?」

 

「肯定だよ、イリヤスフィール」

 

 イリヤに答えてすぐに再び俺の方を向く。

 

「それにしても、なぜ君は私の真名まで知っているのかね? 異世界から召喚されたと言っていたが、それなら私の真名など知る筈がないと思うんだがね」

 

 そう思うのは当然だな。

 本当のことを言う訳にはいかないからいつもの嘘を使わせてもらうか。

 

「それなら簡単だ。俺はアカシックレコードに接続する方法を持っている」

 

「!? …そうか。それなら納得できるというものだ。まさか根源に至っているとは。個人的には納得したくないが」

 

 実際は原作知識なんですけどね。

 アカシックレコードに繋げる携帯を確かに持ってるけど何でか言うこと聞いてくれないんだ。

 って言うか馬鹿にされてる。

 

「さて、どうしたものか…根源に至っているのであらば魔法も使えるのかね? 使えなかったとしても十二分に脅威だが」

 

「使えるぜ?」

 

「……。本当に規格外だな…。ヘラクレスの方がまだ勝てる可能性は高かったよ」

 

「私もコウジュを召喚してしばらくは驚いてばかりだったわ。山一つ吹き飛ばすし、アインツベルンの大結界は一発で破壊するし、龍脈の制御もやっちゃうし、空間転移も軽々だし……」

 

「規格外にも…程があるな…」

 

 汗をかきつつ口元がヒクついているアーチャー。

 

 待って。ねぇ待って。

 イリヤさんあなた俺のマスターですよね。

 なんか言い方に棘があるんですけど?

 ってか俺ってそんなに規格外?

 チート持ってるから何とか聖杯戦争に参加できてるけど、中身の所為でプラスマイナスゼロですよ?

 

 って、そんなことより!

 

「あのさ、バトルするんじゃなかったっけ?」

 

 なんかちょっとさっきまでの高ぶりが覚めてきたけど、未だに戦闘意欲は消えちゃいない。

 それに、理想通りの状況になったし、やはり闘うことは避け得ない。

 なら、さっさと済ませてしまいたい。

 煮え切らない気持ちがまた湧き出してしまいそうだ。

 

「ふむ、そうだったな。勝ち目はないが1秒でも多く時間を稼がせてもらおう」

 

 そう言うや否や干将・莫耶を振りかぶるように斬りかかってくる。

 

「うぉ!?」

 

 とりあえず、スヴァルティアトマホーク―――長いからスヴァルでいっか―――の持ち手で防ぐ。

 辺りに甲高い金属音が響いた。

 

 ほむ、やられてばかりじゃいられないかな。

 次は俺が行かせてもらうかね。

 Let's(レッツ) party(パーリー)!ってね。

 

「でりゃぁ!!」

 

 受けているのを弾くように横薙ぎにスヴァルを振るう。

 

「くっ!」

 

 アーチャーは難なく避けたように見えたが、俺が思い切りスヴァルを振るったからか鎌鼬が発生し、アーチャーを軽く切り裂く。

 

 うわ、すんごい威力。

 スヴァルには何の概念も付与してないから、ただ馬鹿でかい斧でしかないのにこの威力。

 いや、犯人俺だけどさ。

 この身体の筋力だけでも、十分チートだな。

 さっすがビースト。

 過酷な環境でも生きていけるようにって設定なだけはあるね。

 そこにカンストしたステータスが乗ってるわけだし尚更か。

 

「完全に避けた筈なんだがな」

 

 投影していた双剣はどこかにいったのか再びアーチャーは干将・莫耶を投影する。

 

「良い調子よバーサーカー」

 

「声援ありがとよ! てりゃぁあ!!」

 

 再びアーチャーに俺は斬りかかる。

 美少女の応援があるんだ。

 がんばらなくっちゃなぁ!!!!!

 

「ッ!!」

 

 上段から斬りかかったが、横に身体を移動させ避けられる。

 

「何の!! オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」

 

 連続ででたらめにアーチャーに斬りかかる。

 どうせなら拳でやるべきだったかな?

 でもまぁすぐにこの勝負を決めるつもりはない。

 だから挙動の大きい斧を選んだ。

 セイバー達に逃げてもらう時間を作るのと、アーチャーにあれ(・・)を使ってもらわないといけないからな。

 逃げに徹せられると負ける可能性がある。

 遠距離からの宝具連発は今の俺だと対応しきれない。

 だから、ぎりぎりまで追い込んで最後に畳みかける。理想は中・近距離戦だ。

 

「流石に良く避けるなぁ!」

 

 アーチャーは俺の斬撃を全てかわしていく。

 だが今度は、先ほどの鎌鼬すら避けるように幾分か動きが大きくなっている。

 

「隙有りだぜ!」

 

 アーチャーにスヴァルを横薙ぎに振るう。

 

 今度は避けられないと思ったのかアーチャーはとっさに双剣をクロスさせ、俺の斬撃を受け止める。

 だが、俺の筋力はチートだ。

 だから力を込めると…。

 

「っらぁぁぁ!!!」

 

「ぐあっ…!!」

 

 一瞬拮抗したが、すぐにアーチャーは吹っ飛び、壁にめり込む。

 そしてすぐに、壁が砕け、アーチャーは落ちてくる。

 

「ありゃりゃ…。やっぱり俺じゃぁスマートな戦い方は無理か」

 

 なかなか、きれいには行かないものだ。

 ごり押しも良いけど、剣と剣での応酬とかやってみたいな。

 そういう意味ではアーチャーとは相性が良い。

 受け流せないほどの威力で叩き潰せばいいからな。

 

 そんなことを考えていると、ゆっくりとアーチャーが立ち上がり始めた。

 

「まったく、何が不満なのかね」

 

 薄く笑いながら、アーチャーは再びしっかりと地に足をつけ構えた。

 

「あんたこそ、何が楽しいんだい?」

 

「いやなに、見た目は美少女なのに攻撃はえげつないなと思ってね」

 

「美しょ…!?」

 

 な、なな、何言ってやがる!?

 士郎もそうだけどたらし属性でもあんのか!?

 

 そんな風にちょっと動揺していると、アーチャーは突然上へ飛び、二階の手すりに立つ。

 

「って、あ!!」

 

「――――I am the bone of my sword.(体は剣で出来ている)」

 

 そうアーチャーが詠唱すると、手には鉄製の黒いハンドガードが付いた弓と、刃が螺旋状になった剣が現れた。

 

「やっべ!! おらぁ!!」

 

 それは自動防御――というか障壁?――を突破される可能性があるんで潰させてもらうぜ!

 俺は慌ててアーチャーの方に向かって跳び上がる。

 

 しかし、アーチャーの攻撃の完成の方が早かった。

 

「―――“偽・螺旋剣”(カラドボルグⅡ)!!」

 

「うぉわ!!?」

 

 空中だったのもあってかわせなかった俺は、咄嗟にスヴァルを盾にするもカラドボルグの余波を喰らい、地面に叩きつけられる。

 

「いてて…。うわ、服が若干破けてる…」

 

「コウジュに攻撃が通ったの!? あの士郎がこんなレベルまでなるなんて……」

 

 いや、それはさすがにひどくないっすかイリヤさん?

 確かに今の士朗はへっぽ子だけどさ。

 

「並みのサーヴァントなら即死だが、服が少し破けた程度とは……」

 

 アーチャーは冷や汗を掻きながらまた口元をヒクつかせている。

 

「あ、ここは擦りむいてるし…。ヒリヒリする。来いウォンド。んでもって、レスタ!」

 

 スヴァルは片手に持ったまま、片手杖(普通の短杖)を使い回復する。

 

 俺の身体は一瞬光に包まれ、傷を修復する。服も。

 服まで修復してくれるからほんと便利だね。

 

「生半可な攻撃ではすぐに回復される…か…」

 

 アーチャーはそう言って先ほど開けた天上の穴から外へ飛び出る。

 

「中々に順調だね。よし、第2ラウンドといこうか」

 

 

 俺は背中に羽を出し、追いかける。

 

 




いかがだったでしょうか?

今回は結局戦闘ちょっとだけして終わりでしたw

次回は戦闘ばかりになる予定です。
なんとかアーチャー戦を盛り上げたいところ。
が、がんばるます(震え声

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