テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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皆様あけましておめでとうございます。onekouです。

今年もどうぞよろしくお願いします!


『stage25:繋がり(意味深』

 アインツベルン城から逃げている途中、前を走っていた遠坂が急に立ち止まって自らの令呪を見た。

 何を、と声をかけようと思った瞬間にはその令呪の存在は消えていた。

 元々何もなかったように、ほんの少し前まで赤くその存在を示していたものが、無くなってしまった。

 その役目を失ったのだ。

 それが表すことは1つだけ。

 アーチャーが死んだ。

 隣を走っていたセイバーもその事に気づいたのか、苦々しい表情をしている。

 俺も似た表情をしているだろう。

 

 遠坂にどう声をかけようか悩んでいると…、

 

「イリヤスフィールがすぐに追ってくるわ、急ぎましょう…」

 

「遠坂…!」

 

 何かを言おうとしたわけではないが、つい声をかけた。

 絞り出すような彼女の声に掛けずにはいられなかったのだ。

 

「早く…。あいつらに殺されるようなことがあったら許さないからね…」

 

 それだけを言うと、遠坂は再び走り出した。

 何かをこらえる彼女に、俺は何をすればよかったのだろう。

 

 

 

 

 しばらく走り続けると建物が見えてきた。

 

「廃墟…?」

 

 窓は割れ、壁がめくれてはいたがちょっとしたものだった。

 

 ここが目的だったのか、遠坂は中に入っていく。

 自分も慌てて中へと続く。

 やはりというか、中も荒れていた。

 しかし、隙間風さえ我慢すれば少し休憩する分には良いだろう。

 

「来るときにね、アーチャーが見つけておいたの。万が一の時の隠れ家にしようってね」

 

「しかし凛。あちらもめぼしい場所は探すはず」

 

「ええ。でもイリヤスフィールが追ってくるにしてももう少し時間がかかるはずよ。多少の偽装はしたし、探すのに戸惑えば朝方までかかるでしょうね」

 

 遠坂が窓から外を窺いながら、セイバーにそう返す。

 しかし、その表情はどうしても暗いものに感じた。

 

「遠坂、アーチャーは…」

 

 思わず口に出してしまった。

 しまったと思った瞬間には、遠坂は顔をうつむかせる。

 

「足止めだけで良いって言ったのにさ…。あいつ、最後までキザだったな…」

 

「……」

 

 馬鹿か俺は。

 励ますつもりが傷つけてどうする。

 

 その失態に自分の事ながら呆れていると、遠坂は先ほどまでの暗い表情をやめてこちらを見た。

 

「無駄になんかしない。アーチャーを失った以上バーサーカーはここで倒す。悩んでる暇があったら行動するのが私の信条。だから、あなた達にも覚悟を決めてもらうからね?」

 

 遠坂は気合を入れるように、掌を反対の拳で撃った。

 

「覚悟…、ですか?」

 

「いくらあのバーサーカーが規格外だからって、アーチャーが全力でいったのなら何かしらの傷を負っているはず。私だってとっておきの宝石は全部持ってきてるし、まだ手はある」

 

 遠坂はセイバーの質問に答えずジッと見つめながら、ポケットから大粒の宝石を一つ取り出した。

 

 確か、遠坂は宝石魔術を使うって言ってたからそれか。

 魔力をずっと貯め込んできたとも言ってたな。

 

 しかし覚悟って一体?

 

「セイバーの魔力を回復させるわ」

 

 そう言った彼女自身も覚悟を決めた表情をしていた。

 

「でも回復する方法はどうするんだ?」

 

「セイバーは単に魔力が切れて弱っているだけ。一定以上の魔力さえ回復できれば以前どおりの能力を発揮してくれるはず」

 

「回復する方法があるのか!?」

 

 だがちょっと待てよ。

 いつだったか教えてもらった魔力を得る方法は人の魂を喰らうこととかい言ってた。

 それ以外のまともな方法があるなら遠坂は教えてくれていたはず。

 それが無かったということはまともではない方法ということか。

 だからこその覚悟。

 

「セイバーに衛宮君の魔術回路を移植する」

 

 移植? そうすることでセイバーが回復するのか?

 その程度なら、俺は構わない。

 そう遠坂に言おうと口を開くが、先にセイバーが待ったをかけた。

 

「凛、ちょっと待ってください」

 

「セイバーの言いたいことは分かるけど一応聞くわ。何?」

 

「魔術師にとって魔術回路は己の寿命より大切なものです。それに――」

 

「そうね、魔術回路を移植させるためには、張り巡らされた神経を引きちぎるの同じことをしないといけないわ。そしてその負担は士郎へ…」

 

「それはあまりにも酷です」

 

 なんだそんなことか。

 それでも俺の意思は変わらない。

 

「やろう」

 

「本当にいいの?」

 

「お前も言ったろ。あいつの為にも俺たちは勝たなきゃいけない」

 

「いいわ、それなら…」

 

 そう言って遠坂がこちらに近づいてきた

 自らの口に宝石を放り込み、続いて俺の顔を徐にその手で固定し――、

 

「え? んむ!?」

 

 き、きき、キス!?

 

「うわっ!?」

 

 遠坂から慌てて離れる。

 

「儀式の前のちょっとした下準備よ! セイバーにも頑張ってもらわないといけないんだし……」

 

 遠坂が何か言ってるが、耳に入ってこない。

 いや、えっと、そんなことよりキス? え?

 完全に俺の脳はフリーズしてしまっていた。

 そんな俺は放っておいて、遠坂はセイバーに強く突き放すことができないセイバーの服に手を掛け脱がそうとする。

 手加減しているとはいえそこはサーヴァント、遠坂の手をうまく避けていくが遠坂はしつこくセイバーを脱がそうとする。

 

「あーもう! 移植の前段階として少しでも接触を多くしないといけないの!!」

 

「士郎! 凛を…! 止めてください…!!」

 

 未だ混乱していた俺だが、助けを求めるセイバーの声で何とか立ち直った。

 だが、止めろって言われても…。

 遠坂はそんな俺にお構いなしに続ける。

 

「何事も儀式の成功率を上げるためよ。さぁ、士郎も」

 

 え?

 一瞬何を言われたのか分からなかったが、我に返り内容が頭の中に入ってきた時点で慌ててしまう。

 

「お、俺も!?」

 

「二人とも覚悟を決めなさい! もうこれしかないの! セイバーも魔力残量が微妙なのは自分で分かってるしょう!?」

 

「それは…」

 

 遠坂の言葉に、セイバーは弱々しく俯くことしかできなかった。

 図星だったのだろう。

 見ている限りでは普通に動けているが、戦闘となっては怪しいと確か言っていた。

 それも相手が相手だ。

 魔力が足りない現状では確かに勝ちの目を見ることは叶わないだろう。

 

「あ、凜!」

 

「あとは衛宮君だけよ」

 

 セイバーの隙をついて肌をさらけ出させることに成功したのか、先程より肌色の多いセイバーを遠坂がベッドへと押し倒していた。

 窓から差し込む月明かりが二人を照らし幻想的で、そして官能的で背徳的なその姿に、俺は頭が真っ白になってしまう。

 すると遠坂がセイバーの上から避け、俺と代わるよう促す。

 ベッドにはいつもとは違ってどこか弱々しい姿のセイバーが恥ずかしげに居る。

 その姿に束の間見惚れていた俺は、後ろから遠坂に押されて先程までの遠坂のようにセイバーを押し倒すような形になってしまった。

 互いの吐息が掛かる。

 セイバーもまたこの状況を受け入れつつも、やはり恥ずかしいのかどうすればいいのか分かっていないようだ。

 

 そんな俺達を置いてきぼりに、遠坂が詠唱を始めた。

 

 

 

 ふと、気づくと俺はひたすら暗闇の中を落ちていた。

 そしてしばらくすると光が見え始める。

 光を越えると、そこには広い空間が広がっていた。

 灼熱の溶岩が支配する荒々しくも力強い脈動を感じさせる世界。

 

 ここは、セイバーの中…なのか?

 何故かはわからないが、そう感じた。

 

 そうか。ここで、よりセイバーの本質に近いここで魔術回路を分け与えれば…。

 

 

『GRRRRR…』

 

 はじめは聞き違いかと思った。

 だが違う。

 どこからか、大きな音が確かに鳴り響く。

 いや、そんなもんじゃない、これはまるで咆哮…。

 

『GRRRRUAAAAA!!!!!』

 

 辺りを見回すと、大きな、それこそ山のような竜がこちらを見ていた。

 

「っ!?」

 

 意図せず息をのみこむ。

 鼓動は早打ち、汗が背中を濡らして行く。

 

 な、何なんだこれ…。

 

 だが、そんなことを考える暇を俺にくれなかった。

 竜は翼を広げ、刃のような鋭い牙の隙間から炎の吐息を漏らし、こちらに向かってきたのだ。

 その羽ばたき一つですら轟音をまき散らしながら、こちらへ突っ込んでくる。

 いつの間にか空中に止まるようにして居た俺は、がむしゃらにドラゴンを避ける。

 どういう理屈か、俺は空中を滑るように何とかドラゴンを避けた。

 

 しかし―――、

 

『GRUAAA!!!!』

 

 ドラゴンはすぐに折り返し、こちらへ再び向かってきた。

 

「がぁぁぁぁぁ!!!」

 

 今度も俺は避けようとしたが間に合わず、片腕を食われてしまった。

 言い表しようが無い痛みが身体を駆け巡る。

 あまりにもな痛みに、意識が飛びそうになる。

 だが、その激痛のせいで意識が覚醒する。

 

 そんな中、俺の中からグチリと何かが千切れる音と共に自分の中の物抜けて行く感覚があった。

 それに代わり、セイバーとどこかで強く結びついた感覚がする。

 その繋がりに心まで近くなったような気がして、気づけば俺はセイバーに心の中で呼びかけていた。

 

 ――シロウ…。

 

 確かにセイバーがそう俺を呼ぶ声が聞こえた気がした。

 そうする内に、俺の意識は再び飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 未だ日の上らない森の中を、俺はイリヤと共に歩いていく。

 

 

 結局、俺たちはマイルームでの話し合いを朝まで続けた。

 色々と打ち合わせしないといけないこともあったしね。

 まぁライダーは途中で寝てたが…。

 というか中身まで幼女化してないか、あれ…。

 いや、気にしないでおこうか。

 

 とりあえず――、

 

「さぁ、シマっていこう」

 

「……」

 

 某部長の様に威厳が欲しくて言ってみたけど痛い子を見る目で見られただけだった。

 最近この目で見られることが多い気がする。

 

「やめて!? そんな目で見ないで!?」

 

「まったく…、真剣にはできないのかしら…」

 

「無理だ。これが俺クオリティ」

 

 いつも通りになりつつあるやり取りをイリヤとしながら朝の森を歩いている。

 ちなみにアーチャーとライダーはもちろんのことお留守番。

 セイバー戦をするために例の廃墟へ行く所だからな。

 

「それで…、ホントに良いの?」

 

 突然、歩みを止めてそう聞いてくるイリヤ。

 何を聞きたいのかはわかる。

 俺も歩みを止め、振り返る。

 未だ日は登り切っていない森の中だからか、少し離れただけでその表情は見えない。

 でも、その声音からは少しの躊躇いを感じる。

 その躊躇いの意味も分かる。

 だけど俺はやる。やり切る。そう誓った。

 

「俺は別に構わないよ。俺自身に叶えたい夢は無いさ。だけど、最後は士郎次第だね。ってか、俺が言うのもなんだけどイリヤこそ良いのか?」

 

 おかしなものだね。

 イリヤが躊躇っているのは、俺の事。

 そして、俺もまたイリヤについて未だ迷いがある。

 互いが互いを心配して、頼って、迷って、でもやりたいことができた。だからやると決めた。

 だけど――、

 

「別に構わないわ。一度諦めたことだもの」

 

 歩みを止めていたイリヤが、俺の横まで来てそう言った。

 その表情には言葉通りの諦めが含まれている。

 思わずギリッと奥歯を噛んだ。

 まったくなんて表情してやがるんだか。そしてこの顔を何度見たことか。

 こんな少女がこんな表情をして良い筈が無ぇよな。

 

 イリヤは一度了承してくれた。

 だけど、彼女は未だ悩んでる。

 元々先の無い自分が犠牲になれば、俺が余計に苦しむ必要はないって。

 

 ああ、でも駄目だ。やっぱ駄目だ。

 スペックがどうとか、やるだけの力を持ってるとか、そんなことは関係なく。

 こんな顔をさせる、イリヤを取り巻く環境がどうしても許せない。

 魔術? 魔法? 知ったことじゃない。

 いつだか言ったがルールが違うんだ。

 狂戦士だからな。やっぱり好き勝手させてもらう。

 

 最初の俺の願いは彼女を助けることだった。

 だけど俺の今の願いは違う。

 どうも今の俺は強欲みたいでね。

 ただ彼女を助けるだけでは我慢できなくなった。

 

「駄目だ。それだけは許さない」

 

「まったく、あなたは…」

 

 強く、従者(サーヴァント)でありながら強くイリヤに告げる。

 その言葉に若干の呆れと嬉しさを込めて返してくれるイリヤ。

 

「言っただろ、イリヤを助ける。ハッピーエンドだ。俺はハッピーエンドが好きなんだ」

 

「でもあなたを犠牲にしては意味が無いでしょう?」

 

「なに、ちょっと頑張るだけだ。おにーさんに任しときなさいって」

 

「その容姿でおにーさんって言われてもねぇ…。でも、死なないとはいえ痛いんでしょ?」

 

「…デレ期?」

 

「……デレ期って何?」

 

「いやいやこっちの話。うんと、大丈夫だとは思うよ? 昨日一回死んだけど、心が壊れるとかはなさそうだし」

 

「そう」

 

 顔を少し背けながら言うイリヤ。

 まったくうちのマスターは心配性だ。

 血は繋がっていなくても姉弟は似るものなのかねぇ。自分を犠牲にして他人を助けようとするなんてさ。

 ポンと、イリヤの頭に手を置いて一撫でした後、再び歩き出す。

 

「ソフトがアレだけどさ、助けたいと思っちまったんだ。だから頑張るさ」

 

「なんのこと?」

 

「いや独り言。何でもないさ」

 

 

 

 

 二人して歩く内に広けた場所へ出た。

 目標の廃屋まではまだしばらくあったが、目的は達せられたために足を止めた。

 眼の前には、弓を構えた士郎、回復したセイバー、そして凛が居る。

 

「やほ、皆さんごきげんうるわしゅう~」

 

 自分ながら場違いな声だ。

 でも俺の力は感情に左右される。

 だから、出来る限り陽気に、何でもないように挨拶をする。

 

「全然うるわしくないわね。気分は最悪よ」

 

「つれないなぁー」

 

 俺の言葉に、どこか緊張した面持ちながらも笑みを浮かべる凜へ、俺もにぱっと笑いながら話す。

 真剣な面持ちの相手方なんぞほっといて、俺はシリアルをするさ。

 

「でもまぁ、当然か。かたき討ちなわけだもんな」

 

「そうよ、だから今日は負けてもらうわ」

 

 不敵に笑う凜。

 同時に残り2人が臨戦体勢に入った。

 

「悪いけど、そう簡単にはやられないぜ」

 

 俺が宣言すると共に、場の空気が一気に張り詰める。

 一触即発。

 その空気に俺の意識も徐々に昂ぶっていく。

 

「まぁ、話はこんなものにしとくか」

 

 イリヤが後ろに下がる。

 逆に俺は前へと出た。

 

「ではでは、“しょーたいむ”といこうじゃねぇか」

 

 

 




いかがだったでしょうか?

実はこの話、1月1日に出そうとしてたんですが色々あって、今日になってしまいましたw
御年玉企画なんて銘打とうとして、結局いつも通りの週末にw

ま、まぁともかく、今後も皆様の御暇つぶしになれればと思いますので、よろしくお願いします。

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