テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうも毎度おなじみonekouでございます。

今回で決着。

くどい書き回しになってないといいなぁ…。


『stage27:歓迎しよう! 盛大にな!』

 

 

 あの時助けてくれたのはコウジュだったのか…。

 確かにカードもあの時から無い。あれ、ならあの宝石は? 

 いや、それは今は置いておこう。

 なんでわざわざ生かした相手を今殺すのかとかいろいろ疑問はある。

 けど、今は戦闘に集中しないといけない。

 

 先程まで持っていたギターも、セイバーの様子から理不尽な効果を持っていたのは分かる。

 しかしそれ以上に、あの子がさっき出したライトニングエスパーダと呼ばれていた大剣がこの場の圧力を増している。

 コウジュ自身を覆い隠しそうな幅の、輝くオーラを纏ったあの刃からはどれだけの破壊力が生まれるのか…。

 掠るだけで、致命傷となるのは想像に難くない。

 

「行くぜ?」

 

 コウジュは大剣を持ったまま飛び上がり、回転しながらセイバーに斬りかかる。

 

「っ!!」

 

 コウジュをしてもそれなりに重たいのだろう。

 先程までギターを持っていた時よりも隙が多い様に見える。

 だがセイバーは、迎撃を選ばず先程までよりも余分に大きく後方へと回避した。

 

 直後響く轟音。

 それはコウジュの剣によって産みだされた地面の亀裂ともに辺りへと降り注いだ。

 力比べでは不利だろう。

 受けようものなら諸共に潰されそうだ。

 

「っらぁ!!」

 

 当然それだけで終わらない。

 コウジュは、今度はその大剣でもって棒高跳びの様に身体を空中へと持ってきたかと思うと、そのまま再び剣を引き抜き遠心力を利用してセイバーへと連撃を加えていく。

 

 セイバーもなんとかコウジュ本人へと攻撃しようとするが、コウジュは巧みにその幅広い刃の陰に隠れながら攻撃してくる。

 コウジュの身体が小さいために、セイバーも手をこまねているようだ。

 

「せやぁ!!」

 

 セイバーが斬りかかる。

 

 だがやはりコウジュは大剣を盾にそれを防いだ。

 

 

 

 

 

 少しでも気をそらさないと…。

 

 ―――トレース・オン。

 

 自身の胸の内で詠唱し、持っている木の枝を矢に作り替え、放つ!

 

「おろ?」

 

 しかし、障壁ではじかれる。

 

 くそ、俺には何もできないのか?

 セイバーを助けることも、共に戦うことも…。

 

 俺に出来ることは…。

 

 俺に出来ることなど…所詮…。

 

 

『お前に出来ることは1つ。その1つを極めてみろ。イメージするのは常に最強の自分だ』

 

 

 何故か、アーチャーのあの言葉が心の中で強く想起された。

 

 イメージする?

 

「ぐぁ!!」

 

「セイバー!?」

 

 いつの間にかセイバーが吹き飛ばされている。

 でも、ただ飛ばされただけなようですぐに立て直した。

 

 早く何とかしないと…。

 

 武器が欲しい。弓じゃだめだ。

 剣だ!

 コウジュを倒せる無敵の剣。

 

 目を瞑りイメージする。

 

「くっ…」

 

 セイバーの苦しげな声と共に何かが砕ける音がする。

 眼を開いてすぐに飛び出そう取るも、すぐに思い直す。

 無手で飛び込んでも意味は無い。

 それに今は、何故か出来ると思えるこれ(・・)を優先させる方が勝率は上がるはず。

 いや、勝利を創るんだ。

 

 集中しろ!

 

 セイバーを信じて今は集中するんだ!

 

「引いて! セイバー!!」

 

 再び集中しようとする前に、遠坂も仕掛けてくれた。

 

 遠坂が詠唱らした後、何かを投げる。

 とっておきと言った宝石を出し惜しみせず使ったのか、コウジュにいくつも色取りの宝石をぶつける。

 それを、コウジュは全て剣で斬りはらう。

 

「やっべ」

 

「とった!!」

 

 遠坂の魔術はどうやったのかコウジュを中心に重力が何倍にも増したように地面ごと押しつぶしていく。

 

 その隙に遠坂が近づき、ほぼゼロ距離で最後であろう宝石をコウジュに放った。

 今度はコウジュが凍っていく。

 

「勝ったのか?」

 

「ふう」

 

 完全にコウジュの全身が凍った。

 遠坂が息を抜く。

 

 最後はあっけなかったな…。

 

 ふと、イリヤに視線を向けた。

 ニヤリと笑っているのに気づく。

 

 まさか…。

 

「遠坂!! 離れろ!」

 

 慌てて未だ近くに居た遠坂に声を掛ける。

 だがその瞬間――、

 

「っらあぁ!!」

 

 コウジュは身体の氷をすべて弾き飛ばし、中から出てきた。

 

「う…そ…」

 

「残念だな…。途中までは良かったんだけどな」

 

 どうやってコウジュがあの魔術を打ち破ったのか、それは素人の俺でも分かった。

 魔力だ。

 俺がイリヤの暗示を抜けるために使ったあれをコウジュはやったんだ。

 ただ、俺なんかとは込められた魔力の量が違う。 

 

「そいじゃ、一人めっと…」

 

 コウジュは今されたことなど無かったかのように、軽く剣を持ち上げすぐ近くに居た遠坂へと振り下ろそうとする。

 放心してしまっている遠坂は動けない。

 そこへと無慈悲にも振り下ろされていく大剣。

 すぐに駆け出すが、距離が離れている。

 

 間に合わない!?

 

「させません!!」

 

 飛び出す俺を抜いて、すかさずセイバーが遠坂を助けるためにコウジュへと斬りかかる。

 だがそれも予想されていたのか、コウジュはすぐさま大剣を盾にして防いだ。

 

「くぅっ」

 

「来ることが分かってれば、俺でも容易に防げるさ!」

 

 鍔迫り合っていた剣を、コウジュが力任せに振った。

 その結果セイバーは再び弾き飛ばされる。

 

「セイバー!?」

 

 飛ばされてきたセイバーへと手を伸ばし、なんとか抱きかかえる。

 だが、俺の力では勢いを殺しきれず、諸共に後ろに在った木へと叩き付けられた。

 

 コフっと、肺から息が漏れる。頭もジンジンと痛む。

 

「士郎!? 何を無茶な…」

 

 気づいたセイバーはすぐに飛び起き、今度は俺を抱き起す。

 

「無事…か……?」

 

 なんとかそうとだけ声にすることができた。

 しかしそれを聴いたセイバーは、苦虫を噛み潰したような表情になってしまった。

 

「私はサーヴァントです。この程度何ともありません!」

 

 そんなことを言われても仕方ない。勝手に身体が動いてしまったのだから。

 そう口にしようとするも、声にはならなかった。

 そのことに気付いたのか、俺の内心を察したのか、更に難しい表情となるセイバー。

 

「このあんぽんたんめ…」

 

 いつの間にか近づいていたコウジュがそんなことを言いながらこちらを見ていた。

 

 そのままコウジュは何かを言い淀むように何度か口を開いては閉じ、最後には覚悟を決めたようでまっすぐ俺を見ながら口を開いた。

 

「なぁ士郎、もしも俺がセイバーを差し出してマスター権限を破棄するなら士郎と凜ちゃんだけは助けてやるって言ったらどうする?」

 

「拒否…する……」

 

 何とか整い始めた息で、考えるまでもなく俺はそう答えた。

 当然だろう。

 誰かを犠牲にして助かるなんてのは間違ってる。

 

「士郎もうやめてください! 無茶だ!!」

 

 セイバーの制止を振り切り、俺はフラフラになりながらも立ち上がる。

 そして、目を反らさずにもう一度コウジュに答える。

 

「誰かを犠牲にして生き残るなんて選択肢は、俺には無い!」

 

 俺が言うと同時にコウジュが俺へと大剣を向ける。

 俺の命を容易く奪うであろう剣だ。

 近づいた分、圧倒されるほどの存在感が更にわかる。

 それを突きつけられている現状。 

 でも、俺の心は変わらない。

 

「でも士郎は負けそうだよ?」

 

「それでもどうにかする」

 

「どうやって?」

 

「さぁどうしようかな。でも、負けられないなら勝つしかない」

 

 勝つ算段なんて正直言って無い。

 無いけど、ここで諦めたらその先は無いんだ。

 だったら自分にだけは負けちゃいけない。

 勝つと信じなければ、何も始まらない!!

 

「そっか。それが士郎の答えか」

 

 俺の言葉に、何かを噛み締めるようにつぶやくコウジュ。

 少し俯いてその表情は見えないが、先程まで見せていた苛烈さはそこには無い。

 こうして見れば、やはりただの少女だ。

 しかしその裏側には、狂戦士となりうる何かを秘めているのだろう。

 実際に俺たちは追い込まれている。

 

 

 

 

「ふふ、あはは、アハハハハッハハハハハハハハハ!!!」

 

 突如コウジュが笑い声をあげた。

 剣から手を離してまでお腹を押さえ、息も絶え絶えに笑い続ける。

 

「なんだよ何とかって、この状況で、敵を前にして何とかって、くく、色々考えてる俺がバカみたいじゃないか」

 

 しばらく笑い続けたコウジュが、未だ肩で息をしながらもなんとか持ち直し始めた。

 

「あー、笑った笑った。うん、参った(・・・)。まさかそんな選択肢が出てくるとはね」

 

 涙目になるほど笑ったコウジュだったが、漸くその息を整えた。

 

「そこまで笑うことか?」

 

「勿論さ。この状況でそこまでのことを言えるなんて、よっぽどのバカかヒーローくらいのもんさ」

 

 先程までの緊迫した緊迫した空気は何処へ行ったのやら。

 思わず拗ねるように言ってしまった俺に笑顔でコウジュがそう答えた。

 

「もうやめないか?」

 

 つい、そう聞いてしまった。

 その俺の言葉に、コウジュは朗らかに笑う。

 だけどすぐに笑みを消し、真剣な表情になった。

 

「駄目だ。士郎がそれを選んだのなら尚更駄目だよ。途中で止まっちゃいけない。だから、やっぱりやろうか」

 

 言いながらコウジュは何故か、大剣を消して無手になる。

 そしてその場から下がり、先程の応酬の間に気絶してしまっていたのだろう遠坂を抱き上げ近くの木へともたれ掛からせる。

 それが終わると再びこちらを向き、無手のまま構えた。

 

 

 

 

 

「さぁ、最終ラウンドと行こうか。俺を倒せば士郎達の勝ち。単純な話だ」

 

 

 

 瞬間、コウジュから魔力と光があふれた。

 

 それは物理的な力を持って俺を吹き飛ばそうとするが何とか踏みとどまる。

 セイバーが俺の前に出て壁になってくれたのも大きいだろう。

 

「……なるほど、それがバーサーカーたる所以ですか」

 

 荒れ狂う嵐の様に起こっていた風が止まる。同時にコウジュから生まれていた光も収まった。

 そうしてやっと見ることができた姿に驚く。

 なるほど、これは確かにセイバーが言うように狂戦士の名が相応しい姿だろう。

 

 黄金の狐。

 

 そう言い表すのが一番早いだろう。

 人の形はしている。

 だが、それ以外は全て狐の様相を呈している。

 あえて違う場所を言うならば、本来の狐のような愛らしい姿ではなく触れるだけで切断してしまいそうな爪や両前腕に刃のようなものが生えている所が、狩りをするための物ではなく全てを切り裂くために存在しているのではないかと思わせる所だろうか。

 そして何よりも、2メートルを超えるであろうその巨体。

 少女の姿であった時ですら恐ろしい力を発揮していたのだ。今のその太い腕からはどれだけの破壊力が生まれるかは考えたくもない。 

 

 

『当たるなよ…?』

 

 

 先程までよりも重く響いてくる彼女の声。

 同時に、彼女が姿勢を低くした。

 

「士郎! 下がって!!」

 

 ドンッとコウジュが居た場所の土が爆ぜた。

 違う、踏み込んだんだ。

 それだけで彼女の姿が消える。

 そして、前に出ていたセイバーの目の前には既にコウジュの姿があった。

 

「せやぁ!!」

 

『っるぁ!!』

 

 セイバーの剣と横薙ぎに振るわれるコウジュの爪がぶつかる。

 

「くぅっ!?」

 

 何とか爪を受け流したセイバーはコウジュの懐へと入る。

 しかしそれを、コウジュは体を捻ることで尾を振りセイバーに叩き付けることで防ぐ。

 尾を剣を盾に防ぎ自ら後ろに飛んだセイバーは、空中を飛ばされる中で身体を一度翻し、背後の樹に着地した。

 そのまま樹を踏み台に、今度はセイバーが飛び出す。

 

 先程までと同じように、いやそれ以上に全身を武器に攻撃するコウジュ。

 爪、腕の刃、足、牙、尾――。

 先程までよりも速度は上がり、一撃一撃の重さも上がっているようだ。

 ただ、幸いなことにと言って良いのかはわからないが、あのギターの時の様な特殊な力は無いようだ。

 それでもその怪力だけでこちらにとっては恐るべきものだ。

 

 それらの攻撃を巧みに剣一つで防ぎ、弾き、受け流すセイバー。

 隙を見てコウジュへと斬り掛かるも、それほどのダメージを与えることはできていない。

 徐々に、徐々にだがセイバーは押され始めている。

 

 何かしないと…。

 

 

 

 

 

『現実で叶わぬ相手なら、想像の中で勝てるものを幻想しろ』

 

 

 

 

 

 

 ふと何故か、本当に何故か、再びあのキザな紅い弓兵の言葉が脳裏をよぎった。

 理由は分からない。

 でも、それが、ひどく自分に浸み込んだ気がする。

 何故こんなにもあいつの言葉は心に引っかかるのだろう?

 そして同時に、いつしか夢で見た一本の剣が頭に浮かんだ。

 

 ああそうだ、さっき自分で言ったじゃないか。

 負けられないのなら勝つしかないと。

 

 コウジュと戦う前の作戦会議。

 その際にセイバーからどこまで聞いたことだが、現状のセイバーは通常戦闘はできても宝具の使用はまだ出来ない。

 正確に言うならば出来ないわけではないが、宝具を使用した後の余裕が未だない。

 俺とのパスが強くなったとはいえ、パスが強くなっただけで貯蔵された魔力がそこまで増えた訳ではないのだ。

 それに、使用には若干の溜が要ると言っていた。

 だから当初の予定では何とか俺と遠坂で隙を作り、セイバーに止めを刺してもらう予定だった。

 だが、遠坂は気絶している。そして俺の弓は通用しなかった。

 つまり、セイバーが今のコウジュに当てられる状況を作るか、コウジュの障壁を突き破る武器が必要だ。

 

 だったら、俺が創る。

 

 今勝つために必要な剣を、勝利をもたらしてくれるであろうあの剣を、俺が創る!!

 

「っ!!!」

 

 魔力が身体をうねる。魔術回路を荒れ狂い、自身の限界を、いや、さらにその先を無理矢理顕現させる。

 

 思い浮かべるのは、エクスカリバーと似て非なる黄金の剣。

 

 手には剣が現れる。

 

「それは!?」

 

『……さっすが』

 

 俺の手から漏れ出した黄金に、セイバーとコウジュが剣と爪を交わらせながらも反応した。

 

「士郎! 私が隙を作ります!!」

 

『させねぇよ!!』

 

 再び二人が苛烈な応酬を始める。

 しかし先ほどまでとは違うのはセイバーの被弾が多いような気がすることだ。

 時折セイバーの身体をコウジュの攻撃が掠り、血が舞っている。

 つい飛び出しそうになる。

 だがその気持ちを無理やり押さえる。

 セイバーは隙を作ると言ってくれた。なら信じよう。信じて待つ。

 手の中の黄金を握る手に力を入れたまま、その時を待つ。

 

 しばらくして、セイバーが刹那の間こちらを見た気がした。

 すかさず飛び出す。

 

『ちぃっ』

 

 コウジュが舌打ちをした。

 セイバーが自身の防御をある程度捨てて懐に飛び込んだのだ。

 そしてその時、セイバーの合図の御陰で既に俺はコウジュの後方に居た。

 俺たちは挟む形で、コウジュへと同時に斬り掛かる。

 だがコウジュもやられっぱなしではない。

 セイバーへと腕を振り下ろしつつ、反対側の腕を後ろ手に俺へと振ってきていた。

 それを俺は避けずに、正面から今俺が創りだした剣で斬りかかる。

 コウジュが一番に警戒しているのはやはりセイバーだからか、目線は前を向いたままだ。

 視野が広くなっているだろうから、ある程度は見えているのだろうが、やはり散漫になっているのだろう。

 なんとか俺が先に斬ることができた。

 

『こんにゃろうっ!』

 

 コウジュが慌てて尻尾を地面に叩き付けて、逃げた。

 

 それは何故か?

 

『まさか、防御抜いてくるとはねぇ…』

 

 そう、俺が出した黄金の剣は障壁ごとコウジュの肩口を切り裂いていた。

 

 けど、ダメだ。

 コウジュを斬ったと同時に剣が砕けてしまった。

 

 足りない。

 

「もう一度だ。砕けないはずの剣が砕けたのは、想定に綻びがあったからだ。投影…開始…」

 

 再び、先ほどの剣を思い浮かべる。

 今度はさらに完全を目指して。

 

『戦ってる最中に目を瞑るなんて、余裕だな!?』

 

「させません!」

 

 コウジュが今度はこちらへと迫る。

 それをセイバーが押しとどめてくれる。

 

 なら俺がすべきは再度の構成。

 

 俺が挑むべきなのは自分自身。

 

 ただ一つの狂いも妥協も許されない。

 

『りゃぁ!』

 

 コウジュがセイバーの隙をついて斬りかかってくる。

 

「っつ!?」

 

 それが分かった俺は、まだ作っている途中の剣で、何とか受け流す。

 

 だが、創っている途中の剣は再び砕ける。

 

 もう一度最初からだ。

 

 大体の感覚はつかめた。

 今度は、コウジュから離れながら。完成を目指す。

 

 

 ―――基本となる骨子を想定し―――

 

 

   ―――構成された材質を複製し―――

 

 

 ―――蓄積された年月を再現し―――

 

 

     ―――あらゆる工程を凌駕し尽くし―――

 

 

 ―――ここに幻想を結び! 剣と成す!!

 

 

 再び俺の手に、黄金の剣が現れる。

 

 

 

「士郎!」

 

「ああ!!」

 

『諸共にぶっ潰す!!』

 

 俺とセイバーは同時に駆けだす。

 構えるコウジュ。

 それに対し、再び挟むような位置を取る。

 

 しかしやはり、俺の剣技ではサーヴァントの戦いに混ざることはできない。

 だから基本はセイバーに任せる。

 

 一瞬たりとも見逃さないように、いつでも振るえる様に剣に力を入れて待つ。

 

 

 

『っ!?』

 

 セイバーが足の爪と爪の隙間を斬り、コウジュが姿勢を崩す。

 今だ!

 

「駄目だ!」

 

 既に斬り掛かろうとしていた俺にセイバーが叫ぶ。

 その時にはコウジュの尻尾が視界の端まで迫っていた。

 

「ぐぅぅぅっ!」

 

 咄嗟に剣を振りかぶり、何とか当てる。

 

 弾けた! しかも今度は砕けてもいない!

 逆にコウジュの尻尾には血が流れている!

 

『なめんなぁぁぁぁ!!!!』

 

 コウジュは足を始め、所々から血を流しつつも、気丈に吼える。

 そしてその拳に魔力を集中させた。

 それは次第に帯電したように火花を散らし、莫大な力を感じさせ始める。

 これで決めるつもりなのだろう。

 

 俺はセイバーと目を合わせた。

 そして二人同時にうなずき、持っている剣にそれぞれ魔力を流す。

 輝き始める剣。

 その光は辺りを黄金に染め上げる。

 

 コウジュはその場から動かずに魔力を込めた拳を構えたまま迎え入れる姿勢だ。

 いや、動けないのだろう。

 セイバーが自身が傷つくのも厭わず少しずつ攻撃してくれたおかげか、コウジュの足元には結構な血が流れ落ちている。

 

 そこへ、俺とセイバーは同時に駆けだした。

 

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」

 

『らぁぁぁぁ!!!!』

 

 

 コウジュの初動がさっきより遅い!

 

 今度は俺が先に斬り掛かる。

 当然俺に振り下ろそうとする拳。

 

風王鉄槌(ストライク・エア)!!!!」

 

『本命はこっちか!!』

 

 俺に気を取られたコウジュに、セイバーが宝具の一つを解放した。

 恐らくあれが聞いていた比較的使いやすい方の宝具だろう。

 だがそれでも、その力は宝具ゆえの高い威力を持っている。

 コウジュが慌ててセイバーの方へと拳の向かう先を変えた。

 

 拮抗し、込められた力同士が反発しあい、辺りを閃光と音で埋め尽くす。

 

 

 そこへ、俺もコウジュへと剣を振り抜いた。

 

 

 

 

 ――やるじゃん――

 

 

 

 

 そうどこかから聞こえたと思った瞬間、拮抗は崩れ、セイバーが持っている剣がコウジュを貫いた。

 

「これで…あんたらの…勝ちだ…」

 

 そのままコウジュは倒れて、大量の血と共に地面に倒れた。

 

 そして、その姿が少女の姿へと戻った。

 

 

 終わった…のか…?

 

 

 

「コウジュ…」

 

 イリヤがコウジュの元に歩いて行く。

 

「負けちゃったね…」

 

 イリヤはコウジュの血に濡れることもかまわず、横に座る。

 

 

「イリヤスフィール…」

 

 セイバーが横でイリヤに剣を向けていた。

 

「セイバー、もうイリヤを殺す必要はない。コウジュは倒したんだ。俺達の勝ち…だ…」

 

 突然目が霞む。

 そっか限界まで力を使ったからか…。

 頭でそんな風に妙な冷静な事を考えながら、身体が倒れていくのが分かる。

 

 そして、いつまでも地面がこないなんて考えながら、俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?

『完』と字が入りそうな終わりですが、まだまだ続きますので、どうぞ今後ともよろしくお願いします。


P.S.
コウジュが成った金狐モードはPSPo2で言うナノブラストのガヴリ・ヴァルに当たります。
バッジは「衝撃」で、カッコいいけど、決め手の技が隙だらけなのが特徴。

使い勝手よりロマンを求める方向けですかねw


P.S.2
言ってた投稿時間の中でも最後の方になって申し訳ないです<(_ _)>

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