テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。


大体の春アニメが3話となりそして何かが起こる話数になりましたね。
とりあえず言いたいのは壁(胸)ドン(物理)とか、ハートキャッチ(規制か多分次回?)とか見てて泣きそうになりました。
ロリに厳しい世界線が最近多すぎませんかねぇ…。


『stage41:なせば大抵なんとかなる!! らしい!!』

 ここは…?

 

 

 

 剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣剣――――。

 

 

 

 

 見渡す限りに剣が刺さる大地。

 その色は鉄錆の様な赤土だ。

 ふと上を見上げる。

 空も同じ色をしている。

 それだけではない。

 …歯車?

 空には、この剣が刺さる大地を囲うように歯車が浮いている。

 止まっていても仕方が無い。少し歩こう。

 

 歩きながら刺さっている剣群を見ているとふと気付く。

 見た事もない剣が多いがいくつかはつい最近見た記憶がある。

 コウジュに見せてもらった剣…だよな?

 見覚えのある剣がちらほらと刺さっているため、それらを一本一本見ていく。

 するとどこからか声が聞こえた。

 

 

 

 

  ―――身体は剣でできている―――

 

 

 

 

 あれ?どこで聞いたんだっけ。

 何故か、大事な事の様な気がして、一度立ち止り、必死に思い出そうとする。

 ダメだ。思い出せない。

 しかしなぜかその言葉がとても大事なもののように感じて、諦めきれない。

 …もどかしいな。

 心内にもやもやとした物を抱えつつ再び歩き始める。

 するとごく最近手に持った剣が目に入った。

 これは、エクスキャリバー?

 それは、自分が思いを寄せる人の宝具と似た名前を持つ剣だった。

 自分がコウジュに、カードとしてだが貰ったモノ。

 黄金色の、斬るためではなく儀式用と言われた方が納得できる、剣としては歪な形をしたものだ。

 

 

   ―――もっと…―――

 

 

 目の前に刺さるそれは、俺に対してそう言っている気がした。

 

 右手を伸ばす。

 心臓の音がどんどん速くなっていく。

 更に剣からこう言われている気がした。

 

 

   ―――扱いきれるかな…?―――

 

 

 心臓の音が速まって行くのが止まらない。

 

 それでも手を伸ばし、手が持ち手に触れ――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!」

 

 はあ、はあ、はあっ……。

 心臓が痛むように音を上げている。

 どくどくと血流を速め、自己主張してくる。

 

「ここは…?」

 

 辺りを見回す…までもなく見慣れた自分の部屋だ。

 という事は今のは…。

 

「……夢?」

 

 脳裏に浮かぶのは剣の刺さった赤銅色の空間。

 それはあまりにもリアルで、少し瞼を瞑るだけで鮮明に思い出せる。

 そこでふと気づく。

 俺はいつの間に家に帰ったのだろうか。

 それどころか俺は今まで布団に寝ていたようで、丁寧に寝間着姿にもなっていた。 

 とりあえず自身の身体を起こす。

 そこで、右手に違和感がある事にも気づいた。。

 何か持っている?

 確認すれば持っていたのはカードだ。

 それはコウジュに渡されたカード、真力『エクスキャリバー』。

 しかし、よく見るとエクスキャリバーとクロスするようにエクスカリバーも描かれている。

 柄が変わった?

 

「それにしても、何で持ってるんだろ?」

 

 考え事を始めると、寝起きでくぐもっていた思考が廻り始める。

 ただ、それによって思い出されるのはカードについてではなく―――、

 

「そ、そうだ、俺達あいつと…」

 

 ―――ギルガメッシュ。黄金の英霊と戦った事。

 

 しかし、記憶が途中で途切れてる。

 セイバーと合流した後に俺たちを襲ってきたギルガメッシュ。

 相手取り、瀕死の状態であった俺たちの前に現れたコウジュ。

 その後はコウジュが言う様に勝てるものを投影しようとして、そして産みだされたのが2本の黄金の剣と黄金の鞘。

 

 どうもその後からの記憶が無い。

 

 どうにもすっきりとしない思考の中に居ると、誰かが近づく足音が聞こえてきて考え事から意識がそれる。

 足音から二人くらいのようだが、それに気づいたころにはもう部屋の前に着いたようだ。

 

「士郎? 目は覚めましたか?」

 

「覚めたかー?」

 

 戸を開けて入ってきたのはセイバーとコウジュだった。

 

「あのさ、俺…」

 

「痛みはまだあるか? 傷自体は完全に回復している筈だけど…」

 

 先程の疑問を解消しようと口を開いたが俺の言葉にかぶせるようにコウジュが話してくる。

 すぐ近くまで近づいてきたコウジュにやや驚きすぐに返事を返せなかったが、慌てて返す。

 

「え? あ、ああ痛みとかはないよ」

 

「ほむ、それならよかった」

 

 ホッと一息ついた後に笑みを浮かべるコウジュ。

 

「着てた服も血でドッロドロだったからねぇ。一般人が見たら確実に卒倒するようなスプラッタ状態。だからそのまま寝かせるわけにもいかないし着替えさせたって訳。そも穴だらけだったし。丸っと捨てちゃったけど構わないよな?」

 

「それは構わないけど…って、待ってくれ。コウジュが着替えさせてくれたのか?」

 

「うんそうだけど?」

 

「全部?」

 

「おう。なんかマズかった?」

 

 何か駄目だった?と言わんばかりに首を傾げるコウジュ。

 待て、それはマズい。何がマズいって絵面がマズい

 駄目じゃないけど駄目だってそれは。

 サーヴァントとはいえ見た目幼女に着替えさせられるって駄目だろう。しかも全部ってことは下もってことだろうし。

 

 冷や汗が全身を流れ始める。

 

 何でこの幼女は平然としてるんだ!?

 サーヴァントだから!?

 いつだったか成人してるとは言っていたから男女の機微とか知ってると思うんだけど、英雄ってその辺りも無頓着なの!?

 そういえばセイバーも初めて覗いてしまった時も素で意識されてなかったような。

 って待て俺、初めて覗いたって何だ。

 確かに2回目がある訳だけどもその表現だけで言うと俺が性犯罪者みたいじゃないか。

 いやそうじゃなくて今はこの目の前の幼女に一度全部脱がされた可能性があるってことが問題なわけで!!

 

「どったん?」

 

「い、いや、な、なんでもない、よ?」

 

「ほむ?」

 

 俺の様子に反対側へまた首を傾げるコウジュ。

 だからなんでそんなに異性に対して無頓着なんですかね!?

 

「よくわからんが、まぁその時見た限りでは傷は残ってなそうだったし、士郎自身でも自覚症状が無いのなら大丈夫だろう。良かったよかった。」

 

 身体を剥いただけじゃなく確認までされていたことに身悶えそうになったが、よかったと言った時ににへらと笑うコウジュに思わず見惚れてしまう。

 心からそう思ってくれていることが伝わってくる優しい笑みだった。

 だがすぐにハッとする。

 そして色んな意味で気まずくて話題を変えることにした。

 

「そ、そうだ!! あいつと戦った後どうなったんだ!?」

 

 つい声を大きくして聞いてしまう。

 それに対して少し驚きながらも、セイバーが答えてくれた。

 

「あなたはギルガメッシュを退けた後、倒れたのです。安心して気が抜けたのでしょう」

 

「そっか…」

 

 優しくそう言ってくれるセイバーに俺は安堵する。

 冷静に考えればあの場に居たメンバーがここに集っている以上は無事に事なきを得たのだろう。

 自分のことながら感覚が麻痺しているのだろうと思うが、それなりの傷だろうと回復できると言うのは本当にありがたい。

 コウジュがいつだったか言っていたが、死ななきゃ安いとはまさしくその通りだろう。

 限りなく現代医学に喧嘩を打っているが。

 いや、遠坂曰く魔術にも喧嘩を売っているのだったか。

 

「それで、今回も回復は…コウジュがしてくれたのか?」

 

 いくらこの体が丈夫だって言ってもあれだけの傷があったし、まだ夜中のようだから多分それほどの時間は経ってないだろう。

 思い出すのはコウジュの回復系のカードやテクニックと彼女自身が呼んでいた魔術。

 どういう理屈で回復出来ているのかは分からないが一瞬で回復できる。

 ついでに思い出す…、いや、思い出してしまう修行のこと。

 回復できるからギリギリまで、しかも一瞬で回復するからすぐに再開されて―――ガクブルガクブル……。

 

 ああ、今更ながら感覚が麻痺するはずだ。

 

「うんにゃ、違うよ。俺は何もしてない。それはお前さんが自分で治したんだよ」

 

 トラウマになりかねなかった幼女の所業を思い出して身体を振るわせていると、その犯人は何とはなしにそう告げた。

 自分で?

 自らにそんな御大層な能力は無かったように思うがどういうことだろうか。

 聞きかじりの知識でも魔術であろうと重傷を直すにはそれなりの代償が必要だということは知っている。

 勿論覚えた魔術にそんなことが出来るものは無い。

 

「あなたが最後に顕現させたあの鞘を覚えていますか?」

 

 俺が覚えの無いことに頭を捻っているとセイバーがそう聞いてきた。

 ギルガメッシュの宝具を押し返したあの鞘のこと…だよな?

 あの幻想(イメージ)は意図して生み出したものじゃなかった。

 というよりは、何かを出そうとしたのではなく、ただ勝てるものを、セイバーを、自分を勝利に導くものを幻想(イメージ)した結果出てきたものだった。

 

「覚えてはいるけど、あれって何なんだ?」

 

「あれはエクスカリバーの鞘。私が生前所有し、手を離れ戻る事のなかった鞘です…」

 

 エクスカリバー…の?

 確か、持ち主を不死身にするとかいう…それが俺の中にあったのなら俺が異常とも言える超回復能力があった理由にはなる。

 理由にはなるが…何故?

 何故、そんなものが俺の中に?

 

「なあ、何で…」

 

「それが何故あなたの中にあるかは分かりません」

 

「俺知ってるよ?」

 

「そっか…」

 

 

 ん?

 

 アノ、コウジュサン?

 イマナニカオカシナコトイイマセンデシタカ?

 

 

「コウジュ! あなたは知っているのですか!?」

 

「いや、だから知ってるってば。あと、今真夜中だから、しー…」

 

 人差し指を口の前に持ってきて静かにするよう促すコウジュ。

 それはそうだけど、大声出しても仕方ないって!!

 俺もセイバーが出してなかったら代わりに出してたし。

 

「あのさ、俺が言うのもなんだけど、もう俺が何知っててもそのたびにツッコムのしんどくない?」

 

 

 確かにそれはそうだけど、なんか言われたら腹立つ。

 俺だけじゃない筈だ。

 横のセイバーもぐぬぬといった風に我慢しているし。

 

「そんでだな、何で士郎に鞘が入ってるかだけど、実際は単純な話さね。誰かが士郎に入れた。それが答え」

 

「それは誰なんだ? いや、ひょっとして―――」

 

 誰かが俺に入れた。

 その事を聞いた瞬間、コウジュに聞こうとしながらも俺の中で思い浮かんだ人がいる。

 

 親父だ。

 

 何故親父が浮かんだのかは自分自身まったく分からないが、直感的に絶対そうだという確信があった。

 

「親父…?」

 

「おおぅ!? どうした!? 正解だけど無事か!? どこか頭打った!?」

 

「それはさすがに失礼だろ!? セイバーもそう思うよな!?」

 

 さすがにこう何度もこういう扱いされると反論したくなる。

 セイバーも同意してくれるだろうとそちらを見る。

 

「……」

 

 セイバーさんこっちを見てください…!

 

 

 

 

 

「ごほん…えー、切嗣が入れたという事ですが…いつ? いや、そうか、大火事…」

 

「その通り。それが唯一士郎を生かす方法だったからな」

 

 大体の事は今ので予想はついた。が、詳しく聞きたい。その思いがコウジュ達に届いたのか、よく言われるように顔に出ていたのか、話し始めてくれた。

 

「士郎、切嗣氏はな、前回の聖杯戦争でエクスカリバーの鞘を触媒にセイバーを召喚した。けど、切嗣氏は鞘をセイバーに返さずに自身が持つ事にしたんだ。その方が勝率が上がると考えたから。実際その考えは正解で、勝ち残った。

 けど、あの大火事。闘いが終わって、生存者を探して、探して、探して…やっと見つけた少年は瀕死の重傷。その少年を生かすためには鞘の力を借りるしかなかった」

 

「エクスカリバーの鞘は持ち主を不死身にするほどの癒しを与えてくれます」

 

 それが、俺の治癒能力の正体…。

 

「奇しくも、親子二代にして同じ戦闘方法になったわけだな」

 

 そっか、親父も…。

 そして一つ合点がいった。

 セイバーと俺の縁だ。

 いつだったか遠坂との話で『セイバーに対する並々ならない繋がり、縁があるんじゃないか』、だから魔術師として半端な俺が(言ってて少し悲しくなった)“セイバー”というクラスを引き当て、“アーサー王”を呼び出す事が出来たんじゃないかという話をした。

 それが鞘だったわけだ。

 

 だが、そうなると……。

 

「悪い…セイバー。お前の鞘を…」

 

 知らずとはいえ、セイバーの鞘を俺は取り込んでしまってるわけになるんだよな?

 俺としては正直何度も助けられているわけだし、命の恩人ならぬ恩鞘?になるわけだからありがたいのだが…。

 

「いいえ、謝る必要はありません。その鞘があったおかげであなたが助かってきたというならそれは正直誇らしい。それに―――」

 

 セイバーが頬を赤く染めて、うつむく。

 どうしたんだ?

 

「―――その、なんというか、繋がり…? があるというか。それはそれで嬉しい…? というか…私は何を言っているのでしょうか…?」

 

 時が止まった。

 空気が凍るとかそんなのではなく、ある意味嬉しい止まり方。

 だが、その止まった時に対し、自身の顔が一気に熱くなっていき、心臓は早鐘のごとく鼓動を早くする。

 俺も何が言いたいのか分からない。

 いや、これだけは言える。

 セイバー可愛い。

 

「氏ね。死ねじゃなくて氏ね。末永く爆発してろ」

 

 そして時は動きだす…。

 動かしたのはコウジュだ。

 ゴメン、一瞬居る事忘れてた。

 

 コウジュは立ちあがり、戸を開ける。

 

「コ、コウジュっ! い、今のは違います!! いえ、違わなくはないんですが!! いや、そうではなくてっ!!!!」

 

 セイバーが顔を赤くしたまま、出ていこうとするコウジュに弁解しようするかのごとく話しかける。

 だがそんなセイバーを暖かい眼で見ながら、はいはい分かってますよと言わんばかりにセイバーの肩を無言でトントンと叩き、笑みを浮かべたまま今度こそ戸を潜った。

 

「御馳走さん御馳走さん。こんな甘ぇ所に居れるかっての。俺はちょっと行くとこあるから行くわ。ゆっくり養生しな。くふふごゆっくりぃ~」

 

 そう言ってコウジュは出ていった。

 

 むぅ…。一気に気まずくなる。

 いや、気まずいと言っても嬉しいものではあるのだが…ってこんなことやってるからコウジュにリア充氏ねとか言われるんだよな…。

 

「士郎! あ、あの―――」

 

 意を決したようにセイバーが話を始めた。

 

「お腹はすいてませんか?」

 

「あ、ああ…そうだな。すいてる」

 

 嬉しい沈黙とはいえ、そのまま続ける訳にもいけないし、不自然な話題転換ではあるがこれに乗るしかこの恥ずかしさはどうにもならない。

 実際にお腹も、意識すると自己主張を始めた。

 そのため、2人して、台所の方へ向かうことにした。

 

 あー、これはまたコウジュに起き抜けで弄られそうだ。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 やっはろー。

 現在俺は、耳を塞ぎながら屋根の上に居ます。

 空は白み始めたところで、この身体になってから寒さに大分強くなったせいか息が白くなるほどなのに心地良い位だ。

 とは言え、朝の早くから何故こんなことをしているのか?

 

 聞こえるからだよ!!!

 いちゃいちゃラヴラヴ士郎とセイバーがしてるのがな!!!

 

 いや、さっさと屋根に避難したから音声だけではあるんだけどね?

 だけどこの獣耳(ケモミミ)どんどん馴染んできていて、今じゃぁ息遣いとか衣擦れとかの細かい音も拾っちまってさ。

 ほら、町全体が寝静まって静かだし、気にしちゃいけないって思えば思うほど意識がそっちに行っちゃうじゃん?

 素数数えたり歌を口ずさんだりしたけど駄目だったよ…。

 見えない分余計に生々しいしさ。

 さらに原作とかアニメのシーンが思い出されてしまって、音からシーンが俺の中で補完されていくわけだ。

 恥ずかしいったらありゃしない。

 ちなみに流れ的には大体アニメ版に似てるかな?

 当然、アニメにしてはいけない見せられないよ!な部分も1時間以上あるわけだが…。

 セイバーが士郎に何か食べたほうが良いって言って、セイバーが台所に立つんだけど、料理したことないセイバーに作れるはずもなく、結局二人で作る事になるんだよ。

 台所に二人、セイバーの後ろから士郎が手を握ってこうやるんだって教えつつラヴ空間を発生させるわけだ。

 ま、まぁ、ここまでは、まだ、なんとか、ぎりぎり許容範囲だ。

 けどな、この後からが俺には耐えられなかった。

 その結果、俺が屋根上に引きこもるという、日本語的に意味分からん状況を作り出さざるを得なくなったのだ。

 セイバーの手を後ろから握ってる士郎の顔は必然的にセイバーの耳元にあるわけで、その状態で、士郎がささやくようにセイバーに今を生きて欲しい旨を今度はしっかりと自分の思いを言うんですよ。

 けどまぁ、セイバーはまだそれを受け入れられず、戸惑いやらなんやらで心内を複雑にしながらその場を去るんだ。

 士郎はすかさずセイバーを追い、もう一度セイバーに自分と居て欲しいと告げて、更に口づけをする。

 セイバーはその口づけがが終わった時に『卑怯です』って言って今度はセイバーから口づけを…。

 

 はいこっから18禁!!! もう無理!!

 

 その時点では屋根の上に行って耳を防いでいたわけだが、ギルガメッシュと戦った後ってのもあって俺自身身体が鋭敏になっていた。

 つまりは聴覚やら何やらがいつも以上に敏感だったし、気持ち自体が昂ぶっていた。

 そこにこれですよ。

 耳押さえても聞こえてくるっていう地獄は勘弁してほしい。

 真剣に死ぬかと思いましたよ。

 皆知ってるかい?人って恥ずかしさで死にかけるんだぜ?

 っていうか、テンぱってしまってあわあわはわはわと、どこぞのちみっこ軍師達みたいになりながら変な動きをしていた気がする。

 初々しい二人の空気…というか音に当てられて顔が真っ赤どころの話じゃねぇよ。

 この年で三角座りで顔埋めて耐えることになるとは…。

 とりあえず二人とも運動(直球 したのもあって今は疲れて寝てしまったようではある。

 

 まぁ死にかけた後だし生存本能とかの所為で昂ぶっても仕方ないからね!

 だけど今この屋敷に何人居るか考えて欲しかったかな!!

 

 俺はアイテムボックスの中から冷えた水を取り出す。

 そしてそれを一気に煽り、刺すように冷たい外気もあって一気に頭の中を冷やしていく。

 ふぅ、よし。ちょっとは落ち着いてきたな…。

 

 それにしても、セイバーがかなり原作と変わってきてるなー。もち良い意味でね。

 セイバーの反応がかなり柔らかく感じたのは気のせいじゃない筈だ。

 セイバーが士郎から離れた時の反応も自身を否定されたという想いよりも戸惑いや嬉しさでどうしていいか分からなくなってって感じたし、その後の卑怯だって言葉は自分で気づいてるか分からないけどかなーり嬉しそうな色を含ませてた。

 極めつけは自分からキスした事。

 これは素直に嬉しい。

 俺がハッピーエンドを目指した結果、少なくとも現時点で2人の中は原作以上だ。色々とうだうだしちまったが少なくとも結果がここにある。

 

「……」

 

 キスシーン思い出したらまた頬が熱持ち始めた。

 落ち付け俺。

 仮にも中身は成人しているだろうが。

 子どもじゃないんだからあの程度で赤くなるんじゃない。

 落ち着くためにたい焼きを投影してかぶりつく。

 落ち着くために何でたい焼きだよとかはツッコンだら負け。

 ともかくハムハムと生み出したそれを口内へ放り込んでいく。

 

「まずい…」

 

 が、失敗した。

 さっきまでよりは比較的落ち着けてはいるが、美味しそうなのは見た目だけで味は最悪だ。

 別にそういうのに耐性が無いわけではないと思うんだが、予想以上に慌てていたのかたい焼きはまるでスポンジでも食べているかのような粗悪品に成り下がっている。

 やっぱり知り合いだからかね?

 例えば家族で映画を見ていたら徐にベッドシーンが始まった的な?

 でもまぁ、マズすぎて逆に冷静になった。

 結果オーライとしておこう。

 

「ははっ。なんだよこの不味さ」

 

 冷静になったらなったでなんだか笑ってしまう。

 決して夢の国に居るリア充ネズミのマネとかじゃないよ?

 なんか嬉しくて笑っちまうのさ。

 はたから見たら変人かね? 真夜中にニヤニヤしてる屋根上少女ってのは。

 

 でも、純粋にうれしいのだから仕方ない。

 

 何もかもが中途半端で、行き当たりばったりで、でもここまで来れた。何とか取りこぼさずに来れたんだ。

 しかも後は最後の一手を打つだけ。

 そしてその準備は既に終えている。

 色んな奇跡が折り重なってここに来たのかもしれない。たまたま運が良かったのかもしれない。

 けど、少なくとも俺が居なければ起こらなかった変化だろう。

 最初は小さなマスターを守りたいと思っていただけだったのに、行けると思い始めてからは調子に乗って欲張ってしまった。

 勿論そこに後悔などは無い。

 無いが、それでもこれで良かったのか思う俺が居るのは事実だ。

 取捨選択は可能性の否定。

 俺の好きな言葉だ。

 でもこれは否定的に捉えればただ優柔不断なだけとも言える。

 そう考えると、欲張ったというよりは捨てられなかったというのが正しいのだろうか。

 しかし、やはりというかその捨てられなかったこと自体に後悔がある訳ではない。 

 

「ははは…」

 

 再び、意図せず笑ってしまう。

 良いじゃないか。欲張ったってさ。

 俺はどうやっても理性の効いた、自らの信念に従える英雄になれないのはよくわかった。

 神様見習いで、英雄(サーヴァント)として召喚されて、でも中身は一般人で……。

 ぐっちゃぐちゃだなぁ。やることなすこと、そして俺自身も。

 好き勝手やってハッピーエンドでいいじゃないか。

 あと少しだ、頑張ろう。

 あと少しふざけるだけ(・・・・・・)で終わる。

 

 

 

 

 

 

「何かうれしい事でもあったかね?」

 

 背後でいくつかの気配が生まれる。

 同時に掛かった声。

 俺はそちらを見ずに返事をする。

 

「ああ。ハッピーエンドに近づけてる実感が持てたもんでねー」

 

 後ろを振り向くとサーヴァント勢(勿論セイバーは抜いて)がそこには居た。

 

「改めてみると、サーヴァントが勢揃いってのは壮観だな」

 

 まあ全員小さいけど。

 勿論口に出しては言わないけどね。

 

「1人は下だけどな」

 

 ニシシと軽快に笑いながら言うランサー。

 あんた、絶対明日の朝に『昨日はお楽しみでしたね』とか言うつもりだろ。

 

「ふん、今の状況を分かっていない。特に原因の小僧は…」

 

 いつもの皮肉気な言い方をするアーチャー。

 けどあんたが言うなよ。

 もう既に別人とはいえ、あんたも自身の過去で似たような事やってるだろ?

 おまいうですよおまいう。

 

「別によかろう。今の状況だからこそとも言える。それに、主が言えることではなかろうて」

 

「む…」

 

 ほら、言われてる。

 アサシンの言葉に二の句を継げないアーチャー。

 ちなみに、全員の真名をそれぞれ知っているため、他のサーヴァントもうんうんと頷いている。

 

「はははっ」

 

 その様子に、俺は思わずまたしても笑ってしまう。

 

「さすがに笑われるのは心外なのだがね…」

 

 先程までのヒネた言い方ではなく、どこか拗ねる様に言うアーチャー。

 

「違うって。何て言うか平和だなーって思っただけ」

 

 本来ならこんなことは起こり得ない、俺というイレギュラーが居るからこその異常。

 本来の聖杯戦争は正しく戦争だ。

 だから、こんなにも“異常”であることが“平和”だ。

 それがたまらなく嬉しい。

 その原因は自分であるのだから。

 また一つ、そう思えるものが見つかった。

 

「けどよ、そいつは聖杯戦争に一番似合わねぇ言葉だと思うぜ?」

 

「違いない!」

 

 笑いながら言うランサーの言葉に俺はさらに笑みを深める。

 

「でも、私は平和であっても良いと思います」

 

 眼鏡ではなくいつもの魔眼封じの眼帯に元のサーヴァントとしての服(ロリver)を着ているライダーが言う。

 

「「それも違ぇねぇ!」」

 

 その言葉に俺とランサーが同時に笑いながら答える。

 答えたのは俺とランサーだが皆が同じ思いなのがそれぞれ表情に出ている。

 

「明日…なのよね…?」

 

 魔女としてのローブを目深にかぶったキャスターが聞いてくる。

 

「ああ。いつのまにか日をまたいでるんで実質今日だけど、まぁそうなる。そうなる筈だ」

 

 いよいよ、いよいよだ…。

 実質の日にちはそんなに経っていないのに、それでも一日一日が濃かったからとても長い間ここに居た気がする。

 だけどやっと、“ハッピーエンド”を始められる。

 

「キャスター準備は?」

 

「勿論整ってるわ。あのこ(・・・)もね」

 

「さんきゅー」

 

「そういう契約だもの、当然よ。その分しっかり対価を払ってもらうけどね」

 

 その言葉に一瞬固まってしまう。

 

「俺、これが終わったらコスプレするんだ…」

 

 キャスターさんに対する対価がそれなのです。

 それを思い出し、些か憂鬱になる。

 ゴンっ!!

 そんな俺の頭に衝撃が走った。

 

「痛っ!? 何するし!?」

 

「それ死亡フラグじゃねぇか」

 

 ランサーが槍で俺の頭を小突いて言う。

 あ、やっぱこのランサーは分かるんだ。

 染まってるねー。

 だがまだまだのようだな!!

 

「フッ…甘いな。死亡フラグを乱立させる事で死亡フラグを回避し生存フラグを立てる秘義を知らんのか…?」

 

 ちょっとアーチャー風味にニヒルにカッコつけて言ってみる俺。

 

「なん…だと…?」

 

 どうやら俺の勝ちなようだ。

 元ニート予備軍舐めんなし。

 言ってて涙が溢れそうになったけど…。

 

「あのあの、死亡フラグを折ろうとすることを誰かに言うことが死亡フラグになった例があるそうですよ?」

 

 今まで黙っていたのにボソッとライダーがそう告げた。

 何でそんなの知ってるの!?

 あ、またネットか。

 あんたも色々染まり過ぎだろうに。

 まぁ、今を楽しんでるってことで良いんだろうけどさ。

 

「さってと、キャスターさんそういや向こうはどんな感じ? 仕掛けてきた?」

 

「いいえ、まったくよ。舐めてるとしか言いようがないわ」

 

「って事は、ひょっとして向こうに完全にこっちの戦力バレてないって事?」

 

「もしくは知っていて放置しているか、ね」

 

「その場合はさすが慢心王と言うしかないなぁ…」

 

 あらゆる宝具の原点持ってるんだったら遠見の水晶的なものを持ってるだろうけど、王のすることではないとか言って使ってなさそうだ。

 それに、昨日の橋の下での戦闘も『アーチャー』のカードを使ったとはいえその真価を発揮したわけではないしこちらの圧勝とはいってない。

 それもあって他愛ないとでも思われてるのかな?

 まぁその方が好都合だけど。

 あ、ちなみに『アーチャー』のカードというのは、ちょくちょく使う夢幻召喚スペカのアサシンのやつをアーチャー版にしたやつね。

 ラーニング出来てるUBWだけではなくそこからの派生魔術や技術の模倣を積み込んだカード。

 中々の出来だと自負している。

 素質とかが必要だけど、それさえあれば『今日から君もアーチャーDA☆』ができるチート仕様。

 他のサーヴァントも鋭意制作中です。

 

「だけどあっちが慢心してるなら好都合。ぼこぼこにするだけさね」

 

「俺的には多勢に無勢ってのは気にいらねぇが、コウジュの言う通りの奴ならそれでもなかなか楽しめそうだな」

 

「うむ。身体の変化による不都合もある故丁度良いだろう」

 

「うぐ…」

 

 ランサーとアサシンがそう言ってくるが、アサシンの一言は中々に俺の心をえぐってくる。

 いや、好きでショタ化するようにカード作ったんじゃないよ?

 勝手にそうなるだけですからね?

 

「と、とにかくだ!! 明日は予定通りに行こう!! 士郎達の方も予定通りにってことで!!」

 

 俺の言葉に、静かに全員が頷く。

 

「んじゃまあ、後はゆっくりしていってね。今日は俺が見てるからさ」

 

「お願いするわ」

 

 俺が無理矢理終わらすとサーヴァントの皆はキャスターが作ったゲートに入っていく。

 ゲートは俺のマイルームに繋がっており、中で明日までゆっくりするのだろう。

 俺は俺で明日の為にゆっくりするかねー。

 一応警備しながらだが。

 

 屋根瓦に寝転び空を見上げる。

 

「良い月だ…」

 

 空が白み始めているとはいえ、未だそこにある月。

 満月ではないし、夜ではない分その輝きは多少物足りない。

 でも、確かにそこにある月は何故か心を落ち着かせてくれる。

 こういうのも、なんだか風情があるよな。

 

 映姫…じゃなかった…英気を養うためにたい焼きを投影して口にくわえる。

 

「うん今度は成功だな」

 

 あの商店街のたい焼きを思い出して作ったたい焼き。

 でもやっぱり本物も食べたいなー。

 今度は温かいお茶が入った湯呑を取り出す。

 うん、最高の組み合わせだ。

 

 そんな風にうだうだしながら朝焼けの中で一人、再び“俺の考えた最高の最後(ハッピーエンド)”について考えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 あ、二人が起きてまたまたイチャイチャしてる…。

 独り身にはほんときついなぁこれ…。

 




いかがだったでしょうか?

今回は士郎とセイバーがゴールしちゃった(血涙)話が中心でしたが、最終戦に向けての意気込み的なものを入れてみました。
情けないオリ主だとは思いますが、あくまでも中身は一般人というのを念頭において書いているのでこんなものかなぁと思っています。
まぁたまにテンションが上がって暴走しますが、比較的おとなしい方のオリ主だと思ってます(え

どうぞこんなコウジュですが、そんな彼()のハッピーエンドをお楽しみに!! 

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